二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.111 )
- 日時: 2013/09/15 17:45
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
偽りの名(コードネーム) シャーロック 光/闇文明 (10)
クリーチャー:アンノウン 23000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、サイキック・クリーチャーをすべて破壊する。
誰も、サイキック・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。
Q・ブレイカー
バトルゾーンにあるクリーチャーを相手が選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
現れたのは、異次元の力を封じる策略のアンノウン、《シャーロック》。
「っ、相変わらず理解できないな……多少のマナブーストは入っていても、そのデッキに《シャーロック》は合わないだろうに……」
「僕はかの名探偵、シャーロック・ホームズを敬愛している。それと同じ名を冠するこのカードを入れてもおかしいことはない。他人にデッキ構築についてとやかく言われる筋合いはないな、しかもそれが、デュエルで負けている相手ならなおさらだ」
痛いところを突かれたというように呻く亜実。
直後、栗須のクリーチャーによる猛攻が開始される。
「少し長引きすぎたな、あまりに冗長になる推理は良いものではない、これで終わらせるぞ。《ミスディレクション》と《サイバー・N・ワールド》で攻撃!」
最初に《ミスディレクション》のW・ブレイクが炸裂し、亜実のシールドが削られる。だが、
「S・トリガー! 《デーモン・ハンド》及び《めった切り・スクラッパー》! 《ミスディレクション》と《サイバー・N・ワールド》を破壊!」
《アクア・スーパーエメラル》で仕込んだS・トリガーを発動させ、追撃を阻む。だが《シャーロック》は選ばれないため、破壊できないのが痛いか。
「とりあえずこのターンは凌いだ……だが」
栗須のシールドは残り二枚、場にもシャーロックが一体だけ。にもかかわらず、亜実は劣勢を感じている。
(あたしの場も《ピピッピ》しかいない、シールドは三枚だが、うち一枚は《ディス・メルニア》で、残りのシールドにもS・トリガーはあるか……)
《シャーロック》はQ・ブレイカー、三枚のシールドも、一撃で消し飛ばされる。
「ともかく、殴り手を増やしておくか。《セブ・コアクマン》を召喚、さらに《斬隠テンサイ・ジャニット》を召喚」
《コアクマン》で手札を補充し、《ジャニット》手数を増やす亜実。
「さらに、《ピピッピ》でシールドブレイク!」
破壊される栗須のシールド。これで残り一枚。次のターンに《ピピッピ》が殴り返されても、そのまま攻め切れる。
と、思うのは些か甘い考えだ。
「僕のターン。やはり君の推理は甘い、《虚構の支配者メタフィクション》を召喚」
虚構の支配者メタフィクション 光文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド 6500
ブロッカー
相手が呪文を唱えた時、呪文を1枚、自分の墓地から手札に戻してもよい。
W・ブレイカー
「さらに呪文《ミステリー・キューブ》……来たぞ、二体目の《メタフィクション》だ」
「っ、ブロッカーが二体……!」
一気に攻め入ろうと思っていた亜実だが、その考えは崩されることとなった。ブロッカーが二体も並んでしまえば、どうしたって攻めきれない。
「次のターン、確実にとどめを刺してやる。《シャーロック》でQ・ブレイク!」
一瞬で吹き飛ばされる亜実のシールド。その中に、S・トリガーはない。
亜実のシールドはゼロ、アタッカーこそ三体いるが、栗須の場にはブロッカーの《メタフィクション》が二体おり、さらには選ばれない《シャーロック》まで存在している。
このターンで決めなければ確実に亜実の敗北。とはいえ、それで亜実が失うものがあるとすれば、そういうわけでもない。プライドの問題はあっても、そもそもの地位は栗須の方が上なのだ。ある意味、負けても仕方ないと言うことはできる。
だが、
(……負けて得るものなんてなにもない。負ければただ失うだけ、『神話カード』も、プライドも、そして、強さも……それは嫌だ)
沸々と何かが込み上げてくる。怒りとも憎しみとも違う、熱く煮え滾ったそれは、亜実の中で燃えるように爆発する。
「負けられるかってんだ! あたしのターン!」
このターンで決めなくては負ける。逆に言えば、このターンで決めれば勝てるということだ。そのためには《メタフィクション》を排除するか、このターンで攻撃できるアタッカーを増やすかの二択。
(だが、除去呪文は手札にはない。スピードアタッカーを出すにしても、《ディス・ドライブ》は墓地だ。召喚はできない)
そう、“召喚”は。
「みじめだな、最後の最後でそんな虚勢を張るか。証拠を突きつけられた犯人だって、もっと潔い。それとも、このターンで逆転できるというのか? だったら証拠を見せてほしいものだ」
「ああ、構わない。そんなに見たいなら見せてやる、これであたしの勝ちだ。《鬼人形ボーグ》を召喚! そして——」
まず最初に出されたのは《鬼人形ボーグ》。勿論、このクリーチャーが逆転に繋がるわけではない。
だが亜実は。続けて手札からもう一枚のカードを抜き取り、《鬼人形ボーグ》の上に重ねた。
「拡大せし異世界の侵略者よ、死したものへ鞭を打て! 蘇りし数多の配下を率い、愚鈍な狩人、傲慢な未知を制圧せよ! 《魔水晶スーパー・ディス・リバイバー》!」
魔水晶スーパー・ディス・リバイバー 水/闇文明 (7)
進化クリーチャー:リキッド・ピープル/ゴースト/エイリアン 9000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
進化—自分の水または闇のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト3以下のクリーチャーを2体、自分の墓地から選び、バトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
「! 《スーパー・ディス・リバイバー》だと……!?」
ここで進化クリーチャーを出されるだけでも、栗須としては苦しい展開だ。加えて《スーパー・ディス・リバイバー》の能力が、さらなる追い撃ちを駆ける。
「《スーパー・ディス・リバイバー》の効果発動! 甦れ《ディス・ドライブ》!」
《スーパー・ディス・リバイバー》の効果は、墓地のコスト3以下のクリーチャーを二体、復活させること。それによりスピードアタッカーの《ディス・ドライブ》が二体とも復活してしまった。
これで亜実の場のアタッカーは六体。いくら栗須にブロッカーがいても、残りシールドが一枚では防ぎきれない。
「終わりだ! 行け《ディス・ドライブ》!」
二体の《ディス・ドライブ》が栗須のシールドへと特攻をかけ、最後のシールドが割られる。
「っ、まだ終わらない! S・トリガー発動! 《ハピネス・ベル》!」
ハピネス・ベル 光文明 (6)
呪文
S・トリガー
自分の山札の上から2枚を裏向きにして、それぞれ別の新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加える。
次の自分のターンのはじめに、自分のシールドを2枚手札に加える。ただし、その「S・トリガー」は使えない。
決死のS・トリガーでシールドを二枚増やす栗須。だがその壁では、まだ亜実の軍勢の方が多い。
「二枚シールドを増やした程度じゃ、あたしは止められない! 《スーパー・ディス・リバイバー》でW・ブレイク!」
「《メタフィクション》でブロックだ!」
「だったら《ディス・ドライブ》でブレイク!」
亜実のアタッカーは残り三体、対する栗須のブロッカーは一体、シールドも残り一枚だ。
しかし、割られた栗須のシールドが、光の束となって収束する。
「S・トリガー発動! 《クリスティ・ゲート》!」
発動されたのは、まさかの《クリスティ・ゲート》。
ここで栗須が残り一枚のシールドを見て、逆転に繋がるクリーチャーを場に出せるかにかかっているのだが、彼のデッキに入っている《クリスティ・ゲート》で出せるブロッカーはもう出尽くしている。ゆえに、彼がここで亜実の攻撃を止められる確率は限りなく低い。
仮に《クリスティ・ゲート》が不発だったとして、残り一枚のシールドにトリガーが出ることを信じるにしても、基本的に栗須のデッキは攻め切られる前に制圧するようにして動くため、攻撃を凌ぐタイプのS・トリガーは少ない。
なんにせよ、栗須にとってこの一枚の呪文が、生死を分けることとなる。果たして、その結果は——
「——出たぞ、僕の勝ちだ! 《偽りの羅刹 アリバイ・トリック》!」
偽りの羅刹(コードファイト) アリバイ・トリック 光文明 (8)
クリーチャー:デーモン・コマンド/アンノウン 8000
バトルゾーンにある相手のクリーチャーがタップされた時、バトルゾーンにある自分のクリーチャーを1体アンタップしてもよい。
W・ブレイカー
「《アリバイ・トリック》……!?」
栗須の場にはブロッカーである《メタフィクション》が一体残っている。そこに《アリバイ・トリック》の効果が合わされば、《メタフィクション》はバトルに勝つ限りクリーチャーの攻撃を止めることが出来る。
そして亜実の場に、《メタフィクション》を超えるパワーのクリーチャーはいない。唯一《メタフィクション》を凌ぐ《スーパー・ディス・リバイバー》はタップ状態で、スレイヤーである《ディス・ドライブ》も攻撃済み。
これで完全に、亜実は手出しができなくなってしまった。もうシールドのない栗須に対し、その攻撃は届かなくなってしまった。
そしてシールドはゼロ、ブロッカーもいない亜実に、未知なる存在が襲い掛かる。
「《偽りの名 シャーロック》で、ダイレクトアタックだ——!」
「……負けた、か」
気付けば仰向けになっていた。最後の《シャーロック》の攻撃が相当効いたのだろう、体のいたるところに痛みが走る。
「お、おい! 大丈夫か?」
誰かが近寄ってくる、夕陽だ。少し前までは敵意を向き出していたのに、今は心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。
夕陽を押し退けながら体を起こし、栗須に視線を動かす亜実。栗須は酷く不愉快そうに、熱意が冷めてしまったかのようにため息をつき、踵を返した。
「……興がさめた。『昇天太陽』、今日のところは退く。デッキの中身もばれてしまったしな。だが、僕に限らずお前は『神話カード』を持つ限り、様々な敵に狙われることだろう。精々、守り通すことだ」
そう言い残して、立ち去った。
興ざめ。いつもどこかエンターテイメント性を求める彼らしい理由だった。なんにせよ、夕陽としては無益なデュエルをすることがなくなり、安堵しているだろう。
(しかし、負けたな……思ったよりも喰らいつけたが、やっぱり負けたか。強い奴とこうして戦うのは、久しぶりだな……)
ふと亜実は思い返した。自分が【神格社界】などという不穏な集団に属する理由。そのきっかけを。
そして、独り言のように、呟くように、隣の彼に言う。
「……おい、空城」
「え? あ、なに?」
少し戸惑いながらも言葉を返す夕陽。その挙動に若干の苛立ちを感じるが、この際気にしない。
「お前、これから先も自分が狙われたり、襲われたりすると思うか?」
「は? さあ……どうなんだろう。さっきの奴もそうだったけど、事情を知ってる人が言うには、僕の『神話カード』は狙われやすいみたいだし、きっとまた僕らを襲ってくる連中は現れるんじゃないかな……?」
どうやらそこまでは認識しているらしい。ただの高校生にしては切り替え早いなと評価しつつ、次の言葉を紡ぐ。
「なら、もしまた敵が出てきたら、あたしを呼べ」
「? なにそれ? 一緒に戦う、ってこと?」
「どう解釈しようと構わないが、あたしにも戦わせろと言いたい。これはあたしの勘だが、お前はもっと大きな戦いに巻き込まれるだろうからな。もしそうなら、あたしも戦う」
つっても勘違いするなよ、と亜実は続け、
「あたしはより強い奴と戦い、勝つためにここにいる。人は戦うことで進化してきた。それは実際の戦争でも、“ゲーム”の戦争でも同じだ。勝敗は確かに重要だ、負けたところで得られるものなんかたかが知れてる。だが、それでも戦うことに意義があるんだと、あたしは思っている」
だから強い敵が現れたら、あたしに戦わせろ。そう言って、亜実は締めくくった。
「……お前、意外といい奴だったんだな」
「だから、勘違いするなって言っただろう。あたしはただ、自分の目的のために言っているだけだ。利害が一致しているだけだ、お前を助けようだなんて微塵も思っていない」
「それでも、結果的にそうなるように、一緒に戦ってくれるなら、凄い助かるよ。僕らもまだ、“ゲーム”については知らないことが多いし」
「いやだから、あたしはあたしとして戦うだけで、一緒に戦うわけじゃ——」
「ま、助けてくれるなら願ったり叶ったりだ。よろしく頼むよ、アミ」
「人の話を聞いてるのかお前は! つーか人の名前を軽々しく呼ぶな!」
『昇天太陽』と『炎上孤軍』の同盟関係、なんだかんだと言いつつも、最後には共同戦線を張る彼らの姿は、名軍師《マルス》とその盟友《アポロン》と、どこか被っていた。