二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.112 )
日時: 2013/09/19 04:19
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 夏のイベントと言われ、人は真っ先に何を思いつくだろう。一般的な感性なら高校野球などと言えるだろう、現代に即せばコミックマーケットなども挙がるか。
 勿論、何を思い浮かべようと個人の自由なのだが、言うなればそれらは祭典のようなものである。
 祭典、即ち祭り。夏の祭り。
 あまり意味のない前置きだったが、というわけで、夕陽たちは地域の夏祭りを訪れていた。



 訪れていた、はずなのだが。
「——《守護聖天タース・ケルケルヨ》で攻撃、その際能力で《ケルケルヨ》の下にある《シャングリラ》を場に出して、《シャングリラ》でも攻撃、メテオバーンで《爆竜 GENJI・XX》をデッキの一番下へ。さらにアタックチャンス《無情秘伝LOVE×HATE》を発動。二体目の《シャングリラ》を召喚、そのままダイレクトアタック」
「嘘だろ!? 《シャングリラ》二体とか、防げても後がないって……」
 デュエマをしていた。
「まさか一回戦から霊崎と当たるとは、ついてない……」
 一回戦、という言葉から概ね想像できるかもしれないが、一応説明すると。
 どういうわけか夏祭りでデュエル・マスターズの大会が催されており、このみの提案で夕陽ら四人は出場することになった、というわけだ。
「しっかし、こんな特設ステージまで作ってこんなことするとは、運営はなにを考えてるんだ?」
「さぁ……?」
 適当な椅子に座り、初戦敗退組である夕陽と姫乃は隣り合っていた。まずはこの大会について疑問があるのだが、それを応えてくれる者はいない。
「でも、意外とクラスメイトとかの知り合いも多いね。さっき空城くんと戦ってたのって、霊崎さんだよね?」
「ああ、そうだね。前に見た時は速度の遅いデッキだったから油断してたよ、まさか序盤からマナブーストして、速攻で《タース・ケルケルヨ》から《シャグリラ》を展開してくるとは……」
 そもそも油断などできる相手ではなかったのだが、それでも意表は突かれた。
「そんな時は! やられる前に押し切っちゃえばいいんだよ!」
 と、唐突にこのみが走ってきた。どうやらこちらの対戦も終わったらしい。
「それができたら苦労しないっての」
「お疲れ、このみちゃん。勝った?」
「当然! あと、汐ちゃんも勝ったみたいだよ?」
「流石、御舟はやるなぁ……」
「わたしたちの中で一番強いのって、御舟さんだもんね」
 とかなんとか言っていると、当の汐もこちらへと歩み寄ってきた。
「や、お疲れ、御舟」
「汐ちゃん、今日はかなり気合はいってるねー」
「えぇ、まあ、そうですね。今日はちょっと、どうしても勝たなければいけない理由があるのです」
「へぇ? 御舟がそういうこと言うのって、珍しいな。なにがあるの?」
 普段からクールな汐は勝負ごとに頓着しない、と言うほどでもないが、そこまでがっつくようにも見えない。少なくとも、どうしても勝たなければいけない、という言葉が出て来るとは思わなかった。
 と、その時。
「そこから先は俺が説明しよう」
「うわっ!? 澪さん、いたんですか……?」
「まあな」
 突如姿を現したのは、汐の兄である澪。
「しっかし、今日も今日で女を連れて遊び歩いてるな、主人公。しかも一人は俺の妹ときた。これで浴衣でも着てれば、言い逃れは出来ないな」
「嫌な言い方しないでください」
「両手に持ちきれないほどの花があるのは結構だが、もうすぐ海の家のバイトがあるからな。忘れるなよ?」
「忘れてませんって。というか、なんですか? なにしに出て来たんです?」
「そうだ、汐が大会に出ている理由だったか。まあなんてことはない。俺が頼んだだけだ」
 だからなんだ、と言いたいところではあるが、そう言ってしまうと話が進まないのでとりあえず黙っている夕陽。
「実は、俺の店もこの祭りの露店として出しているんだ。だから汐には、その宣伝も兼ねて優勝してもらおうと思ってな。うちの店は、どうも客の出入りが少ないからな」
「はぁ……そうですか。御舟も大変だな」
「いえ別に、ただデュエルしていればいいだけですから、特に苦もないです」
 素気ない返しだったが、しかし彼女らしいと言えばらしい。恐らく、汐からすれば宣伝はついでなのだろう。
「そういえばうちのおねーちゃんもそんなこと言ってような気がするなー?」
「木葉さんが? っていうか『popple』も露店出してるの?」
「そだよー。たぶん飲み物配ってるんじゃないかな?」
 カードショップと喫茶店、どう考えても夏祭りのムードとは合わないと思うのだが、しかしデュエマの大会が催されている時点でそんなことを気にしても仕方ないのかもしれなかった。
「……このみ先輩、そろそろ二回戦が始まる時間です。急いだ方がいいですよ」
「ん、分かったよ。そんじゃねー、ゆーくん、姫ちゃん、澪にーさん! みんなの分も勝ってくるよ!」
 グッと親指を突き上げてサインを出すこのみ。しかし、それに対する反応は淡泊なものだった。
「……好きにしろ」
「頑張ってね、このみちゃん」
「俺はそろそろ店に戻るか」
 主に夕陽と澪の二人は。
 このみと汐は、三者三様の言葉を受け、ステージへと向かっていった。