二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.127 )
- 日時: 2013/09/25 18:14
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
数時間ほどデュエマをし続けた四人。時計の針はもう真上を指しており、昼休憩に入った。
……のだが、
「昼過ぎたらもうあんまり客来ないから、適当に遊んで来てもいいよ」
という店長の一言で、このみが爆発。汐と姫乃の腕を引っ掴んで浜辺へと爆走していった。
「相変わらず落ち着きない奴だなぁ……高校入ったら少しは変わると思ったけど、そうでもなかったな」
「あれ? お前は海行かないの?」
昼時も過ぎて人もかなり減った店のテーブルに夕陽が一人で座っていると、店長から声がかかった。彼女の言うように、夕陽は浜辺をぼんやりと眺めているだけで、動こうとする気配がない。
「ちょっと午前中ではしゃぎすぎて、疲れたんですよ。あと僕は、海は泳ぐよりも見る方が好きなので」
「へぇ、犯罪的だな」
「人を見てるわけじゃないですよ!?」
またあらぬ誤解を受け弁解する夕陽だが、店長は笑って返すだけだった。冗談なのだろうが、どうしてもペースを狂わされる。
「で、夕陽だっけ? あの三人のうち、誰がお前の女?」
「……いや、いやいや。なに自然な流れでとんでもないこと聞いてるんですか。別にそんな間柄じゃないですよ、あの三人は」
あまりにも唐突で、しかし自然すぎる流れだったために反応が遅れたが、そこはきっちりと否定する夕陽。
「このみはただの腐れ縁ですし、御舟は後輩で、光ヶ丘は友達ですよ」
「はぁん、腐れ縁に後輩に、友達なぁ……」
いまいち納得していないような店長の態度。しかし意外にも、深くは追及してこなかった。しきりに店内の壁時計を確認している。
「どうしたんですか? 団体客でも入る予定があるんですか?」
「そんなシステムはうちにはねぇよ。いやなに、そろそろ“あいつ”が来る頃だなと思ってな。さっきはあんなこと聞いたが、お前はハナッからここに残すつもりだったんだ」
「あいつ? 誰ですか? その言い方だと、その人もデュエマするんですか?」
「まあそんなとこだ。ここらじゃ一番強い奴でな、歳はお前と同じぐらいだが……お? 噂をすればなんとやらだ、来たぞ」
そう言って店長が指差す方向には、正直に言って人混みしか見えない。しかしやがて、その人混みからゆっくりと出て来る人影を見つけた。その人影は、こちらに歩んできている。
そのうち人影の姿が明瞭になる。性別は男、確かに年齢は夕陽とそう変わらなさそうな青年だ。背は夕陽より少し高いくらい。前髪の切れ目からは鋭いが、どこか無感動さも感じられる瞳が覗いている。
服装は遊びに行くためのものと言っても不自然ではないが、見たところ手ぶらなため、海水浴が目当てではなさそうだ。しかし腰には、明らかにデッキケースがぶら下がっている。
青年は無言のまま店内へと入り込み、店長の目の前まで来る。しかし、先に言葉を発したのは店長だった。
「よう、リュウ坊。今日は少し遅かったな」
「何度も言ったが、俺の名前はナガレだ。いい加減間違えるな。今日は少し海岸を歩いていたから遅れた、それだけだ」
「あっそ。そういや、今日で最後だっけか。まあそんな遠くに行くわけでもないみたいだし、休みの日くらいは顔出せよ」
「暇だったらな。それより——」
どこか気の置けない間柄と言うか、関係と言うか、そんな空気を醸し出す二人の間に入り込めないでいた夕陽。青年はそんな夕陽に視線を移した。
「今年はバイトが足りないんじゃなかったのか? それともフロア担当か?」
「いや、おまえの思ってる通りだよ。ちょっとダチに頼んで来てもらったのよ。ちょろっと見たけど、結構強いみたいだぜ? お前も危ないんじゃないのか?」
「それはやってみないと分からないな」
などと、また二人の会話が始まったかと思うと、青年が踵を返して店の奥——つまりデュエルスペースへと歩いて行った。
「ほら、なにぼけっとしてんだ。お前も行くんだよ」
「え? 僕ですか?」
「たりめーだ。バイトだろ、ほら」
「はぁ……」
どうも釈然としないが、しかしやることはデュエマだ。午前中に来た相手の中で、高校生くらいの強い相手は汐がすべて受け持っていたため、夕陽は小中学生としか戦っていない。なので同じ年代の相手となると、多少は気合が入る。
「ねぇ、君さ。名前はなんて言うの? さっきはリュウって呼ばれてたけど」
互いに位置に着くと、デッキをシャッフルしながら夕陽はそう尋ねた。すると青年は、店長の時と変わらないどこか無感動ながらもぶっきらぼうな調子で答える。
「違う、俺の名前はナガレだ。水瀬流、水の瀬で水瀬。流れると書いて、ナガレだ」
「へぇ……」
成程、と思った。確かにその漢字なら初見だとリュウと呼んでしまうだろう。
「さて、じゃあ始めようか」
「ああ」
こうして、夕陽と流のデュエルがスタートした。