二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.129 )
- 日時: 2013/09/27 08:01
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
海洋神話 オーシャンズ・ネプトゥーヌス 水文明 (9)
進化クリーチャー:メソロギィ/リヴァイアサン/ポセイディア・ドラゴン 18000
進化MV—自分のリヴァイアサン一体と水のクリーチャー二体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー(このクリーチャーの下にある、このクリーチャーと同じ文明のすべてのクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCD能力を得る)
CD6:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを3枚まで引いてもよい。
CD9:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手の手札とシールドを見る。その後、相手の手札からカードを一枚選び、持ち主のシールドゾーンに置いてもよい。そうした場合、相手のシールドを一つ選んで持ち主の手札に加える。ただし、その「S・トリガー」は使えない。
CD12:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のバトルゾーンにあるクリーチャーをすべて持ち主の山札に加え、シャッフルする。
T・ブレイカー
「なんで、君みたいな一般人が『神話カード』を……!?」
予想だにしない場面で現れた『神話カード』、《海洋神話 オーシャンズ・ネプトゥーヌス》だが、とりあえず今はデュエルを進行する。
単純に考えて、流の場にはT・ブレイカーの《ネプトゥーヌス》と、《プロメテウス》がいる。これだけでシールド残り三枚の夕陽はダイレクトアタックを喰らってしまうのだが、流はさらなる追い打ちをかける。
「まずは《ネプトゥーヌス》の能力を発動させる。CD6で三枚ドロー。さらに、CD9で、お前の手札とシールドをピーピングする」
「っ……」
手札とシールドを見られた夕陽。それだけなら構わないのだが、《ネプトゥーヌス》の能力は見るだけではない。一枚だけ、手札とシールドを入れ替えさせられるのだ。
「……なら、お前の手札《ガイアール・アクセル》をシールドに埋め、シールドからはこいつを手札に加えてもらう」
「くっ、《スーパー炎獄スクラッパー》が……!」
手札は補充され、S・トリガーは潰される始末。しかも、
「CD12、お前のクリーチャーを全て、デッキに送り込む」
「全部デッキに!? なんて効果だ……」
とはいえ、ただでさえ進化MVは進化元が確保しづらい中、《ネプトゥーヌス》の進化元は重量級のリヴァイアサン。しかも自身のコストも9とかなり重い。ゆえに、それに見合うだけのカードパワーを備えているのだろう。
反撃の芽を摘み終えると、遂に流と《ネプトゥーヌス》による攻撃が始まる。
「行くぞ。《オーシャンズ・ネプトゥーヌス》でT・ブレイク!」
夕陽の残り三枚のシールドがすべて割られる。その中に、S・トリガーはない。
「《プロメテウス》でダイレクトアタックだ!」
そしてとどめを刺された。完全に夕陽の敗北である。
だがこの時、夕陽には敗北感や悔しさより、疑問や驚きの方が強かった。そして夕陽は流を問い詰める。
「お前も、“ゲーム”の参加者だったのか……?」
「……? そういえば、さっき『神話カード』がどうとか言っていたな。聞き違えではなかったか。ということは、お前もか?」
「え? ああ、そうだけど。というか、僕の《アポロン》を狙って来たわけじゃないのか……?」
今まで夕陽に戦いを挑んできた者はほぼすべて《アポロン》が狙いだったため、てっきりそう思い込んでいたが、しかし流の様子を見るからに、そういうわけでもないようだ。というより、夕陽が“ゲーム”参加者であることも知らなかったようである。
だが、夕陽のことを何も知らないということでもなかった。
「《アポロン》……そうか、お前が『昇天太陽』か。名前は聞いたことがある。かなりの強者だと聞いていたが——」
流が言葉を紡ぐ。ちょうどその時、視界の端に、海から戻って来たらしいこのみと姫乃、そして汐の三人が映った。しかし夕陽の脳はその三人を認識するよりも、流の言葉に反応する。
「——思ったほどでもない、弱いな」
はっきりと、突きつけられるように放たれる。
一人のデュエリストとしては反論したいところだが、負けた後ではなんの説得力も生まれない。夕陽は黙ってその発言を受け、そこで三人の存在に気付いた。向こうも、こちらの状況をある程度は察したのか、
「空城くん、もしかしてその進化クリーチャーって……」
「光ヶ丘の思ってる通りだよ、『神話カード』だ。そして、こいつも“ゲーム”参加者みたいなんだ」
夕陽の一言で鋭い視線が流に集まる。しかし流は動じる素振りを一切見せず、淡々と語る
「参加者と言っても、どこかの組織に属しているわけではないがな。しようと思って参加しているわけでもない。今回も、別にお前を狙っていたわけではない、『昇天太陽』。ただ、実力に関しては少し拍子抜けだったが——」
「そんなことはどうでもいいです」
流の言葉を遮ったのは、意外や意外、汐だった。
「汐ちゃん……? どしたの? なんか怖いよ?」
このみの言うように、表情こそ変わらないが汐からは言いようもないオーラのようなものが滲み出ていて、恐怖すら感じる。そんな汐はこのみの言葉を無視して、
「さっきの言葉、撤回してください」
「? どの言葉だ?」
「先輩を弱いと言ったことです。先輩は、弱くなんてないです」
「御舟……?」
汐の発言に首を傾げる夕陽。後輩が自分の名誉を気にしてくれているのは嬉しいが、しかし汐の性格を考えると、どうしても違和感を感じてしまう。やはり、いつもの汐とは少し違うように見える。
「俺はただ、思ったことを言っただけだが……しかし、現に『昇天太陽』は俺に負けている」
「たった一回の対戦では、デュエマの強さは分からないですよ。なら、こうしないですか」
そこで、汐は一つ提案する。
「今から私と対戦してくださいです。それで私が勝てば、さっきの発言を撤回してください」
「……俺が勝てば、どうなるんだ?」
「これを譲渡するですよ」
そう言って汐が取り出したのは、彼女が持つ『神話カード』、《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》だった。
「『神話カード』……」
他の『神話カード』と比べて、《ヘルメス》の能力は明らかに異質である。強力無比なその力は、“ゲーム”参加者なら是が非でも欲しがるだろう。
「どうでしょうか。あなたのデッキは水文明が主体のようですし、少し構成を弄ればこのカードもすんなり入ると思うのですが」
「……分かった。その申し出、受けよう」
しばし考え込んでから、流は汐の提案を受け入れた。
「では、私はデッキを取ってくるです。少し待っていてください」
そう言って、汐は踵を返し荷物を置いてある部屋へと向かう。その間、流は夕陽とのデュエルで展開していたカードを片付け、シャッフルしていた。
「あ……御舟! ちょっと待って」
と夕陽が言っても、汐は止まらず、結局ロッカールームのような荷物置き場まで同伴した。
「御舟、どうしたのさ。なんからしくないよ? 僕のことを思ってくれるのは嬉しいけど、負けたのは事実だし……それにあいつ、かなり強かった。一筋縄でいく相手じゃないよ」
ごそごそと鞄を漁る汐にそう言う夕陽。しかし、汐はなにも言わない。
だが、ふと一つのデッキケースを掴んだ時、彼女は振り返る。
「……先輩は、私がどうして今の学校にいるのか、ご存知ですか」
「へ? あー……まあ、覚えてるよ。転校してきたんだよね、東鷲宮中学に。デュエマの強い転校生がいるからって、このみに引っ張られたのはよく覚えてるよ」
「そうです。では、その前の学校はどこか、知っているですか」
「えっと……いや、それは知らないな……」
夕陽がそう言うと汐は、でしょうね、と返して続けた。
「私は昔、周りの子供たちとの壁や両親の問題で、地元を離れたり一人で暮らしていた時期があるのです。この地に来る前は、いわゆるデュエリストの専門学校……いや、養成学校に在籍していたのです」
「そうだったんだ……それは知らなかった」
汐の過去を垣間見た夕陽。同時に、汐がどうしてあんなにも強いのかも判明した。
「そこには、凄い“先輩たち”がいたのです。詳しくは言わないですが、その人たちのお陰で今の私があると言っても過言ではないくらいです。だから私は、“先輩”を侮辱する人が、許せないんです」
無表情なのは変わらないが、いつになく感情的な汐。その様子は、夕陽たちの知らない汐の姿があった。
そして汐の言う“先輩たち”の語感が、夕陽には自分たちに向けられる敬称と違うように思えた。本当の先輩と言うよりは、友達や仲間、といった感覚が伝わってくる。
「……では、行って来るですよ、先輩」
「あ、御舟っ」
初めて見る汐の様子に戸惑っていると、汐は立ち上がってすたすたと歩き去ってしまう。反射的に手を伸ばす夕陽だが、その手は届かない。
「……あれ?」
ふと夕陽は気付いた、汐が手に持つデッキケースがいつもと違うことに。
そのケースは年季が入ったように傷だらけだった。