二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.162 )
- 日時: 2013/10/09 02:45
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「とりあえず倒せたな」
「そだね。やっぱ重いドラゴンなだけあって強かったー」
ひとまず出現した三体のドラゴンはカードに戻したものの、それですべて解決というわけではない。
「……所長」
「分かってるって。このドラゴンたちはサドンリィに現れた。カードをばら撒いているパーソンが私たちをファインドしてこのドラゴンたちをけしかけたのなら、すぐ近くにいるはずだよ」
「じゃあ、そいつを捕まえればこれ以上の騒動はなくなるってことに——」
「捕まえられればな」
夕陽の言葉を遮り、否定するかのような言葉を放つ黒村。
「言っただろう、カードをばら撒いた本人はもう学校から去っている可能性が高いと。所長の言い分は、俺たちを監視していて、その上でけしかけてきた場合だ」
「だったら、今襲って来たクリーチャーは一体……?」
「そんなのイージーだよ。実体化したクリーチャーは元々そのクリーチャーが有する能力をユーズできる。つまり、他のクリーチャーをコールするようなクリーチャーがいれば、そいつらを数体ばら撒くだけでミッションコンプリート! ってわけ」
実体化したクリーチャーは、元々の能力が使える。成程、確かにそれなら、他のクリーチャーを呼び出すようなクリーチャーに後のことを任せて、自分は安全に撤退できる。
「さしあたっては、そのクリーチャーがなんなのか、ということだな。他のクリーチャーを踏み倒すにしろ、その踏み倒しを行うクリーチャーは元々の能力の制限や、自身の種族に縛られる。さっき俺たちが戦ったのが《ジオメテウス・無限・ドラゴン》《黒神龍ヘヴィ・ケルベロス》《ボルベルグ・クロス・ドラゴン》だ」
「三体ともドラゴン、それも7〜8の重量級ですね」
「プラスして言うなら、《ジオメテウス》と《ボルベルグ》はアーマード・ドラゴン、《ヘヴィ・ケルベロス》はドラゴン・ゾンビだね」
全体的に見て、ドラゴンを踏み倒すクリーチャーということだろうか。だがドラゴンを踏み倒すクリーチャーは《紅神龍バルガゲイザー》を筆頭にいくらでもいる。夕陽の持つ《アポロン》だってそうだ。
と、四人で考え込んでいると、また影が差す。
「っ、《黒神龍グールジェネレイド》……! コスト7のドラゴン・ゾンビ!」
「これでほぼ確定だな。近くにドラゴンを踏み倒すクリーチャーがいる。しかし、早く見つけなければ一般人にも被害が出るな……」
「あ……」
言われて気付く。クリーチャーが実体化すると独自の神話空間を作り出し、“ゲーム”参加者以外は基本的に入れなくなる。しかし稀に、無関係の者もその中に迷い込んでしまうことがあり、文化祭というこの日この場所での人の多さを考えると、その被害は少なくないだろう。
それに、クリーチャーを呼び出すクリーチャーがこの近辺にいるだろうクリーチャーだけとは限らない。普通に考えれば、他の場所にも分散して配置するだろう。
また無関係な人を巻き込んでしまううのか、そう思っていると、ラトリが不思議なほど軽い調子で、
「あ、その辺はノープロブレムだよ? たぶんそろそろデリバリーしてくれるし」
「……?」
ラトリの意味不明な発言に首をかしげていると、屋上の扉がやや控えめに開く。
「所長さーん……あ、いました——って、なんですかこれ!? クリーチャー!? 実体化してます!?」
現れたのは一人の女——というにはあまりに若い。見た感じでは夕陽たちと同じくらいに見える。よくて亜実と同じくらいの年齢だろうか。身長はラトリより少し高いくらいの平均的な背丈だが、顔はやや幼い。 外国人なのか、肌は日本人らしからぬ白さ。髪の色素もラトリ以上に薄い。服装も水兵のような白いセーラー服で、全体的に白を基調とした出で立ちだ。
女はグールに怯えながら、小走りでラトリの下へと駆け寄る。
「ヘイ、ミーシャちゃん。リクエストした“あれ”、持ってきてくれた?」
「あ、はい、もちろんです! というか、なぜ新人の私がこんな重役を……?」
「特にディープなミーンはナッシングだよ。ただ君なら文化祭の中に溶け込めるかなーって。新人だったらアナザーの組織に知られてないし。それより早く、例のブツを頂戴」
「ブツって……えっと、これです」
ミーシャと呼ばれた女が手渡したのは、デッキケース。ラトリは素早くそれを開け、中から一枚のカードを取り出す。
「さーて、それじゃあレッツ、スタート。いらない被害は未然にブロックしなきゃね。頼んだよ!」
そのカードを空高く掲げて、叫ぶ。
「オールディフェンス——《守護神話 エンパイアス・アテナ》!」
その瞬間、その場の空気が一変した。
「え……これって、神話空間?」
「イエス、ザッツライト。これが私の『神話カード』《アテナ》の能力」
それは、《守護神話》の名に相応しい力だった。
「《アテナ》は一定範囲内に神話空間を展開するんだ。しかも中に入れる人をチョイスできるから、これなら一般ピープルが入り込む余地はナッシング。心置きなくデュエっていいよ」
その言葉を聞いて安堵の溜息を漏らす夕陽。それならもう心配はない、と思ったが、
「でも、タイムリミットがあるから気をつけて。リミットは……うーんと、この範囲で私が使用したから、長くて三時間、ってところかな?」
「三時間? 長いような短いような……でも、何体呼び出すクリーチャーがいるかもわからない状況でその時間はちょっと厳しいか……?」
「それに、そいつらが呼び出したクリーチャーも殲滅しなくてはならんからな。もたもたしている暇はない。さしあたって、こいつから排除するか」
こちらを待っていたわけではないだろう、唸り声を上げるグールに目を向ける一同。
「よし、じゃあ僕が——」
「いやいや、ここは私に任せて。さっきサボった分、きっちり返済するからさ」
勇んで前に出ようとする夕陽を、ラトリが制する。そして、屋上に備え付けられている給水塔を指差し、
「君はこのクリーチャーたちをコールしてる元凶をデストロイしといて」
「え!? このクリーチャーの発生源見つけてたの!?」
「うん、さっきね。たぶん当たってると思うよ」
「所長……そういうことは早く言って下さいよ」
と言っているうちに、また新しいドラゴンが出て来る。言われてみれば、確かに給水塔の方から現れている。
「また来たよ!」
「ちっ……空城、お前はこいつらの発生源を潰せ。ミーシャ、お前も手伝え」
「は、はいっ! 私でお役にたてれば……」
ラトリはグールの前に立ち、このみ、黒村、ミーシャはそれぞれ新たに飛び出すドラゴンと戦う。そして夕陽は、給水塔の陰になっている場所へと向かって、駆け出して行った。
ラトリの言うように、給水塔の陰にクリーチャーがいた。しかも、今までのドラゴンとは明らかに違う空気を醸し出している。
「……見つかったか」
「お前は……」
見覚えのあるクリーチャー。白く、辛うじて人型をした龍。左手には水晶のはまった杖を携えている。そのクリーチャーの名前を思い出そうとしているうちに、向こうから名乗りを上げた。
「俺の名は、ガーリック。お前が『昇天太陽』か」
「そうだけど……ガーリックって確か、コスト8以下のアーマード・ドラゴンかドラゴン・ゾンビを山札から呼び出す、光臨持ちのクリーチャー……」
その能力でドラゴンたちを呼び出していたようだ。思い返してみれば、どのドラゴンもアーマード・ドラゴンかドラゴン・ゾンビで、すべてコスト8以下だった。
「本来ならこのままドラゴンを量産し続けるつもりだったが、見つかってしまっては致し方ない。相手をしよう」
「へぇ、逃げないのか。逃亡されたら厄介だと思ってたところだから、ちょうどいいよ」
「逃げろ、という命令は受けていないのでな」
そして次の瞬間、夕陽とガーリックの前に五枚のシールドが展開される。
「行くぞ!」
「ああ、デュエマ・スタートだ!」