二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.167 )
- 日時: 2013/10/10 01:14
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ガーリックを倒した夕陽は、カードに戻ったガーリックを拾い上げ、そのままこのみたちがいる場所まで戻る。
見たところこちらも終わっているようで、各人がカードを回収していた。
「あ、ゆーくん。戻って来たってことは、倒したんだね」
「見ての通りな。流石に手強い相手だったけど……あと、なんか妙なことを言ってた」
「妙なこと? なんだ?」
最後まで聞き取れなかったものの、ガーリックが消える間際に口走っていたことを思い出しながら、夕陽は伝える。
「俺を倒しただけでは何も変わらない。まだ他に五人のイザナイがいる。そして、奴が現れるのも——って言って、消滅しました」
最後の“奴”というのが気になるものの、この情報の価値は大きい。
「ふーむ、ふむふむ。そこからシンクするなら、たぶんクリーチャーをコールするクリーチャーをばら撒いただけで、元凶はもうバックしてるだろうね」
「そして、俺たちの当面の目的は、その残った五人のイザナイを倒し、カードに戻すことだな。奴というのがなんなのかが気になるが……今は情報がない。制限時間もあることだ、この学校にいる“ゲーム”参加者を総動員して、イザナイを撃破するぞ」
とりあえずの指針が立った夕陽たち。後は行動するだけだ。
「ならあたし、佑さんに連絡するよ。そしたらリュウ兄さんにも伝わると思うし。あ、汐ちゃんにも伝えなきゃね」
「光ヶ丘は携帯持ってないから、うちのクラスに呼びかけるなら霊崎か。このみ、お前霊崎の連絡先知ってるか?」
「とーぜん! 一年の連絡先はほとんど知ってるよ!」
「じゃ、私たちは私たちで、ちまちまサーチ&デストロイといきますか。どうせイザナイがコールしたクリーチャーもデストロイしなきゃだし。ミーシャちゃんもやるからね?」
「わ、私もですかっ? 私、戦うのは専門外なのですが……」
「さっき大暴れしていたような気もするがな」
連絡を終えると、夕陽、このみ、黒村、ラトリ、ミーシャの五人は屋上から飛び出し、散開した。
「《ネプチューン》で攻撃! メテオバーンでクリーチャーを一掃してTブレイク! 《ウルファス》でダイレクトアタック!」
「《タース・ケルケルヨ》で攻撃、メテオバーン発動。《シャングリラ》を呼び出してWブレイク。《シャングリラ》でダイレクトアタック」
「《ヴィーナス》でTブレイク! 《ディーヴァ・ライブ》の効果で攻撃可能な《パーフェクト・マドンナ》でとどめだよ!」
一年四組の教室では、姫乃、クロ、仄の三人がわらわらと湧いてくるクリーチャーと戦っているが、いくら倒しても次から次へと出て来るため、相当参っている。
「なんなのこれは……これじゃあキリがない……!」
カードを拾う間もなく現れるクリーチャー。見える限りでは《魔光王機デ・バウラ伯》《賀正電士メデタイン》《光器ペトローバ》《光霊姫アレフティナ》などだ。
「ん……」
数は多くないが、倒しても減らないクリーチャー軍団に辟易していると、クロが携帯を取り出す。見たところメールが届いたようだが、今はメールを気にしている場合ではないだろう。
と、思うのが普通だが、この時に限ってはその確認は重要だった。
クロは無言で仄に携帯を投げ渡す。
「うわっ、急に投げないでよ……なにこれ?」
「このみちゃんからだ」
メールの内容は、今学校に五人のイザナイの階級を持つクリーチャーがいて、そのクリーチャーが次々とクリーチャーを生みだしていること。今は『神話カード』の力で巨大な神話空間を展開して一般人に被害が出ないようにしているが、それにも制限時間があることなどが書かれていた。
「ざっくりした内容だけど、要するに学校にいるクリーチャーを倒していけばいいってこと?」
「たぶん。だけど、先にクリーチャーを呼び出すイザナイを倒せば、それ以上クリーチャーは呼び出せない。だから、先にイザナイを倒すべき」
「それじゃあ、早くそのイザナイを見つけに行った方がいいよね。ここにいても、ずっとそのイザナイが呼び出したクリーチャーの相手をさせられるだけだよ」
姫乃の言葉を皮切りに、三人は駆ける。今は無尽蔵に湧く雑魚の相手をしている暇ではないと見て、その脇をすり抜けて教室から飛び出た。
「じゃあ……わたしはこっちの校舎を探すよ!」
「あ、ちょっと待った! 君一人は危険だって!」
姫乃と仄は南校舎の方へ、なのでクロは西校舎の方へと走っていった。
「《マクスウェルZ》でWブレイク! 《ロッキオ》でとどめだ!」
「《白金の鎧》《アカデミアン》《リアーナ・グローリー》で残りのシールドをブレイク。《イージス》でダイレクトアタック!」
二年二組。こちらの教室でも、流と零佑の二人が次々と現れるクリーチャーと戦っていた。
「おいリュウ、さっき春永からメールが来たぞ」
「ナガレだ。内容は?」
クリーチャーの波が弱まった頃合いを見計らって、携帯を投げ渡す零佑。流はそれをキャッチし、すぐさまメールの内容を確認する。
「五人のイザナイか……どうやら、お前たちは随分と深く“ゲーム”に関わっているようだな」
「正直、俺としてはあんま自覚ないんだけどな。そういや、お前も春永たちみたいに、実体化するクリーチャーと戦ったことあんのか?」
流と零佑は出会ったその日でかなり気が合っていた。しかしそれでも、零佑も流の知らないことは多い。
「こういう現象がある事は知っていた。だが経験はない」
どの組織にも属していない、立場としては夕陽たちと近い流だったが、“ゲーム”に関する知識はそれなりにあった。独自で調べたらしいが、どんな方法を取ったのかが謎である。
ひとまず周囲を確認する流。周りにはクリーチャーが立ち並んでいるが、正直、数はそこまで多くない。それも《ノウメン》や《神託のサトリ 最澄》といった無色クリーチャーが主だが、たまに《朱雀神ガリョウ》《白虎神テンセイ》といったゴッドも出て来るのだから侮れない。
「とりあえず、こいつらはそのイザナイってのが呼び出してるクリーチャーなんだな」
「そのはずだ。イザナイは様々なクリーチャーを呼び出す。発生源を絶たなければ、いくらこの雑兵を倒してもキリがない」
問題はそのイザナイがどこにいるかだが、そこは分からないのだから仕方ない。少なくとも教室内で籠城を決め込むよりも有意義な選択肢があった。
「行くぞ、リュウ!」
「ナガレだ!」
流と零佑の二人は襲い来るクリーチャーの群れを掻い潜り、教室から飛び出る。そして二手に分かれ、全速力で校舎を駆けていった。
「《ドルバロム》でTブレイク、《ガル・ヴォルフ》でWブレイク、《サンダー・ブレード》でダイレクトアタックです」
とりあえず注文した品を完食し、『aurora』から出た汐は先輩たちを探そうとふらふら歩いていた。だがそこで、急に神話空間が展開されたのだった。
「ちょっと急すぎる気もしますが……ともかく、このみ先輩からのメールによると、どこかにイザナイのクリーチャーがいるはずです。全部で五人、私たちの側に何人いるのかは知らないですが、最低でも一人くらいは倒しておきたいところですね」
汐も出来る限り出て来るクリーチャーとは戦わない。回り道をしたり、脇をすり抜けたりして上手く戦闘を回避していくが、それだけではなかった。クリーチャーの行動やどこからやって来たのか、その動作から、このクリーチャーたちがどこから出現したのかを探っていた。
しかも、《舞踏のシンリ マクイル》などの知性がありそうな人型のクリーチャーとはわざと戦ったりして情報を引き出そうとしている。その結果、汐はこのクリーチャーたちを呼び出しているイザナイの位置を大まかにつかんでいた。
(問題は、そのクリーチャーがなにかですね。数はそれほどでもないですし、クリーチャーも《マクイル》や《メガギョロン》といったあまり強くないクリーチャーばかりです。しかし……)
たまに《偽りの羅刹 ゼキア・エクス・マキナ》や《魔光神レオパルドⅡ世》《魔光神ルドヴィカⅡ世》といった大型クリーチャーも現れるため、油断はできない。
「ここまでで出て来たクリーチャーはすべて、無色クリーチャーかゴッド。それらを呼び出せるイザナイといったら——」
と呟いているうちに、目的地である空き教室まで来た。後ろの扉から《インガ・ルピア》が飛び出したので、間違いないだろう。
意を決し、汐は一息に扉を開く。すると、
「——来たか」
中には、白く輝く甲冑に身を纏った、人型のなにかがいた。装飾も雰囲気も、明らかにクリーチャーだ。
そしてそのクリーチャーは、汐の予想通りだった。
「やはり、《天草》でしたか。無色とゴッドと言えば、あなたしかいないですしね」
「左様。我が名は天草。この地に呼び出された六人のイザナイの一人。ガーリックは『昇天太陽』に敗れたようだが、私は奴ほど甘くないぞ」
杖をこちらに向け、敵意を剥き出しにする天草。それに対し、汐は静かにデッキケースからデッキを取り出す。
「そうですか。私は、先輩よりも厳しいつもりです」
刹那、二人の間の空気が豹変した。