二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.168 )
日時: 2013/10/10 03:32
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 姫乃と仄は手当たり次第に教室の扉を開きながらイザナイを探していた。とにかくしらみ潰しにやっていき、手間のかかる方法ではあったが、思いのほか早く見つけられた。
 そこは、四階の音楽室だ。本来なら吹奏楽部や軽音部、合唱部など、音楽系の部活動の控室になっているはずだが、今は人はいない。当然だ、《アテナ》が特殊な神話空間を展開しているのだから、一般人が入れるわけがない。
 しかし、人がいないだけで、誰もいないわけではなかった。中央には、巨大な何かが直立していた。
 一応、人の形をしており、腕と脚、胴体に頭などのパーツは見て取れる。しかし腕にしろ脚にしろ、機械的な装甲のようなものが装着されていて、かなり巨大になっている。いや、よく見ればそれはただの乗り物のようで、下半身から背部にかけての装甲に、人型の何かがすっぽりとはまっているようだ。
 その何かとは、問うまでもない、そして言うまでもない。クリーチャーだ。しかも、
「あれがイザナイ……《ロイヤルティー》か」
 仄が呟く。それが聞こえて存在に気付いたのか、それともこちらのアクションを待っていたのか、ロイヤルティーはゆっくりと振り返る。
「いかにも。私がロイヤルティーです。意外と早かったですね」
 ロイヤルティーは右手の金色の杖を揺らしながら、少し高い声を発する。その言葉は、余裕に満ちていた。
「敵には見つからないようにと言われていましたが、見つかった場合の対処も言われています。見つかった場合は、その敵を倒せと。さて、私に始末されるのは、どちらが先ですか?」
 杖を上げ、その先端で姫乃、仄と順番に指すロイヤルティー。その動きで、仄はデッキケースを開き、一歩までに出ようとするが、
「待って」
 姫乃に制止された。
「わたしが行く」
「わたしが行くって……大丈夫なの? このクリーチャー、見る限りでは夏祭りの時の《パイル》とは明らかに違う。見ただけで分かる、強い」
 姫乃に対し、仄は強い語調で返すが、姫乃も退かなかった。
「それはわたしだって分かるよ。でも、相手が強いからって逃げちゃいけないし、誰かに頼るのも良くないと思うの」
 さらに姫乃は続ける。
「夏休みの、夏祭りの時は武者小路さんに助けられたし、今度はわたしの番だよ。それに、わたしだって空城くんやこのみちゃん、御舟さんの力になりたいんだ。だから、お願い」
「っ……」
 真摯な瞳で仄を見上げる姫乃。その真摯さに気圧されたかのように、仄はたじろぎ、
「……分かった。そこまで言うなら、任せる。絶対に負けないでよ」
「うんっ、ありがとう。行ってきます」
 姫乃を送り出した。
 姫乃は前に進み出て、デッキケースからデッキを取り出す。
「最初の相手は貴女ですか。どうにも、私と似た香りを感じますが、だからといって手加減などはしませんよ」
「手加減なんて、最初からしてくれるなんて思っていないよ」
「そうですか……しかし、貴女との戦いに終始してしまっては、あちらの彼女が手持無沙汰になってしまいますね。どうせ後で私と戦わなくてはならない定めとなっているとはいえ、なにもないのは少々寂しい。どうせなら、私の下僕と遊んでいてはどうでしょう?」
 と言った直後、ロイヤルティーは杖を振り、そこから煙のようなものが発せられる。その煙は仄へと向かっていき、その途中で姿を形成。仄の正面に辿り着く頃には、完全に一体のクリーチャーとなっていた。
「《星鎧亜イカロス》……! 武者小路さんっ」
「大丈夫、問題ない。この程度のクリーチャー、私の相手にはならないよ」
 仄は開いたデッキケースからデッキを取り出し、素早く臨戦態勢。そのいつもの勝ち気な態度を見て、姫乃もロイヤルティーと向かい合う。
「武者小路さんなら大丈夫……よし、それじゃあこっちも始めよう」
「言われなくても」

 刹那、音楽室の、仄とイカロスの、そして姫乃とロイヤルティーの間の空気が、豹変した。



 姫乃とロイヤルティーのデュエル。ロイヤルティーが似ていると言うだけあって、両者の序盤の動きは多少似通っていた。
 姫乃はシールド五枚、場には《ハッチャキ》と《知識の精霊ロードリエス》。
 ロイヤルティーはシールド四枚。場には《シンカイタイフーン》が一体。
 そして、ロイヤルティーのターンが来る。
「私のターン。4マナで呪文《湧水の光陣》を発動」


湧水の光陣 光文明 (4)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンに自分の水または自然のクリーチャーがあれば、コスト5以下のクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出す。なければ、コスト3以下のクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出す。


 ロイヤルティーの場には水文明の《シンカイタイフーン》がいるので、コスト5まで出せる。しかもその《シンカイタイフーン》で既に墓地にクリーチャーを落としている。
「墓地より蘇りなさい、《純潔の信者 パーフェクト・リリィ》!」


純潔の信者 パーフェクト・リリィ 光文明 (5)
クリーチャー:オラクル/メカ・デル・ソル 2500
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップしてもよい。
このクリーチャーがバトルゾーンを離れる時、そのパワーが0より大きければ、離れるかわりにとどまる。


 衰弱しない限り、決して場を離れない不滅の信者、《パーフェクト・リリィ》。しかもタップ効果も相まって、その不滅はかなり攻撃的になっており、非常に厄介だ。
「わたしのデッキにパワーを下げる除去カードはないから、攻撃を止めるしかない。攻撃を止めるには、もっとブロッカーが必要。だから《ハッチャキ》が破壊されるのを防がないと……《光器ペトローバ》を召喚!」


光器ペトローバ 光文明 (5)
クリーチャー:メカ・デル・ソル 3500
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、メカ・デル・ソル以外の種族を1つ選ぶ。その種族のクリーチャーすべてのパワーは+4000される。
相手がクリーチャーを選ぶ時、《光器ペトローバ》を選ぶことはできない。


「アンノイズを指定するよ。これで《ハッチャキ》のパワーは6000、《ハッチャキ》でシールドをブレイク! その時、《ハッチャキ》の効果発動!」


ハッチャキ 光/水文明 (3)
クリーチャー:サイバーロード/アンノイズ 2000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーが攻撃する時、「ブロッカー」を持つコスト5以下の進化ではないクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。


「効果で手札から《光器パーフェクト・マドンナ》を召喚!」
 ロイヤルティーの《パーフェクト・リリィ》に対抗するかのように、姫乃はパワーがゼロにならない限り場を離れないブロッカー、《パーフェクト・マドンナ》でロイヤルティーを止めようとする。
 ロイヤルティーは《ハッチャキ》の攻撃をブロックせず、これで残りシールドは三枚。
「さらに、ブロッカーが場に出たから、《ロードリエス》の効果で一枚ドロー」
 場を固めながら手札も補充し、布陣を作っていく姫乃。しかし、ロイヤルティーはまだまだ余裕の表情だ。
「私のターン……それでは、そろそろ私の本領をお見せしましょうか。呪文《ヒラメキ・プログラム》!」


ヒラメキ・プログラム 水文明 (3)
呪文
自分のサイキックではないクリーチャーを1体破壊する。その後、自分の山札の上から、その破壊されたクリーチャーよりコストが1多いクリーチャーが出るまで、カードをすべてのプレイヤーに見せる。そのクリーチャーをバトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。


 自分のクリーチャー一体を、そのクリーチャーよりもコストが1高いクリーチャーに転生させる呪文、《ヒラメキ・プログラム》。本来ならz分のクリーチャーを一体破壊するため、場数は増えない呪文だが、
「私が破壊するのは、《パーフェクト・リリィ》だ」
「でも、《パーフェクト・リリィ》はパワーがゼロにならないと破壊されない……!」
 要するに、自分のクリーチャーを減らさず、コスト6のクリーチャーを山札から呼び出せるということだ。
 しかも《ヒラメキ・プログラム》の利点は、コストを絞れるという点。ロイヤルティーのデッキは、恐らく《パーフェクト・リリィ》を選択して《ヒラメキ・プログラム》を使用することを前提としているため、デッキのコスト6のクリーチャーを一種類だけにしておけば、狙ったクリーチャーを呼び出せる。
 ロイヤルティーのデッキが次々と捲られていき、しばらく捲られるとその動きが止まる。そして、その時デッキの一番上のカードが弾かれるようにして場に飛び出た。

「さあ、私の登場です。《光機のイザナイ ロイヤルティー》!」