二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.173 )
- 日時: 2013/10/10 21:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
現状、姫乃は相当な危機に瀕していた。
シールドこそまだ四枚あり、場には三体の《光器パーフェクト・マドンナ》と《光器パトローバ》がいる。
しかし《ロイヤルティー》の場が異常だ。シールドは三枚だが、ゴッド・リンクした《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》と《真滅右神ジーザス・メリーチェーン》、光臨持ちの《光機のイザナイ ロイヤルティー》、場を離れないうえに攻撃するたびにクリーチャーをタップする《純潔の信者 パーフェクト・リリィ》、呪文を唱えるコストを下げる《王機聖者ミル・アーマ》、攻撃可能なブロッカー《光機のファミリア チャイ&シルク》。他にもアタッカーなら《転々のサトリ ラシャ》《天雷導士アヴァラルド公》、ブロッカーなら《王機の神兵 ヴォルビック》《シンカイタイフーン》と、頭数だけで言っても倍以上の差がある。
加えて、毎ターンバトルに勝てば墓地の無色カードを回収できる《ジーザス・メリーチェーン》の効果で、毎ターン回収した《神の裏技ゴッド・ウォール》を使用するため、神は不滅となっている。
《ブラッディ・バレンタイン》もブロッカーを持ち、ターンの終わりにアンタップするため、反撃しづらい。
さらに《ロイヤルティー》は毎ターン攻撃すれば、光臨で確実にクリーチャーを増やすので、ターンが進めば進むほど攻撃を防ぎにくくなる。
このように、場の主導権は完全に《ロイヤルティー》が握っており、流れを支配されてしまっている。
「このままじゃ押し切られる、でも打つ手がない……どうすればいいの……」
恐る恐るカードを引く姫乃。しかし、逆転に繋がるようなカードは引けない。
「だったら《コアクアンのおつかい》を発動。これでなにか引ければ……」
捲れたカードは、《光器パティ・スミス》《光器の裏技ディーヴァ・ライブ》《スパイラル・ゲート》の三枚。
「う……《スパイラル・ゲート》は墓地に置いて、残りを手札に加えるよ」
キーカードは引けず、どころか捲ったS・トリガーがシールドにないことも分かってしまい、ますます不安を煽られる。
「まだ……《ロードリエス》を召喚してドロー!」
しかし、やはり逆転に繋がるようなカードはない。どころかこれでマナを使い果たしてしまい、このターンはこれ以上なにもできない。
「……ターン、エンド」
「お終いですか。ならば私の勝ちも同然ですね」
圧倒的な戦力差から、余裕ある態度を崩さない《ロイヤルティー》。だが実際、ここからの逆転は困難だ。
「しかし、念のために手札は補充しておきましょうか。私も《コアクアンのおつかい》を唱え、山札から光か闇のカードを手に入れます」
《ロイヤルティー》が捲ったのは、《王機の神兵 ヴォルビック》《慈愛のマントラ フリル》そして《スーパー・スパーク》だった。
「良いカードが手に入りました。《ヴォルビック》は墓地へ、残りを手札に加えます」
「《スーパー・スパーク》……ってことは」
姫乃の背中に悪寒が走る。
「その通りです、このターンで決めて差し上げましょう。《神の裏技ゴッド・ウォール》をG・ゼロで唱え、神を不滅に。さらに《フリル》を召喚し、呪文《スーパー・スパーク》!」
次の瞬間、眩い閃光と共に激しい電撃が放たれる。
「あ……」
これで、姫乃を守るブロッカーはすべてタップ状態。つまり、このターン姫乃は完全に無防備。《ロイヤルティー》の攻撃を防ぐ手立てがなくなってしまった。
「まずは私でWブレイク!」
「うぅ……!」
これで残りシールドは二枚。しかし、《ロイヤルティー》のアタッカーは尽きない。
「これで貴女のシールドをゼロにします! 神よ、この少女のシールドをすべて破壊するのです!」
《ブラッディ・バレンタイン》の光線と《ジーザス・メリーチェーン》の斬撃が繰り出され、姫乃のシールドはゼロに。ブロッカーはおらず、《ロイヤルティー》のアタッカーはまだ五体もいる。
普通ならここで敗北を覚悟する。ここまで追い詰められてしまえば、逆転は不可能に近い。
しかし、“近い”ということは、“不可能”と決してイコールでは結ばれないのだ。
「っ!? これは……?」
「来た……!」
最後に割られた二枚のシールドが姫乃の手元へと戻り、光の束となって集束する。
「S・トリガー発動《調和と繁栄の罠》!」
刹那、《スーパー・スパーク》とはまた違う閃光が放たれる。そしてその光を浴びたバトルゾーンのクリーチャーは、そのほとんどが動きを止めてしまう。
「な、なにが起きたのです……!?」
「《調和と繁栄の罠》その効果で、このターンは光文明のクリーチャーの攻撃はすべて禁止だよ」
運の良いことに、《ロイヤルティー》のクリーチャーで、アタッカーとなりうるクリーチャーはすべて光文明。《調和と繁栄の罠》一枚で完全に動きを止めてしまった。
「なっ、くっ、しかし私のブロッカーは生きています。たった1ターン凌いだだけでしょう」
「分かってる。だからS・トリガー二枚目、《ヘブンズ・ゲート》。最初のブレイクで手札に入った、この二体を場に出すよ」
光り輝く天国の門が開かれ、そこから二体の女神が姿を表す。
「調和を、繁栄を、栄光を、そして勝利を。光り煌く私の女神様——《勝利の女神ジャンヌ・ダルク》!」
勝利の女神ジャンヌ・ダルク 光文明 (7)
クリーチャー:メカ・デル・ソル/ハンター 7500
ブロッカー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、または、このクリーチャーが攻撃あるいはブロックした時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを2体まで選び、タップしてもよい。
W・ブレイカー
火の呪文または火のクリーチャーの能力によって、相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
天門より現れたのは、勝利をもたらす女神と言われる二体のクリーチャー《ジャンヌ・ダルク》。
「《ジャンヌ・ダルク》二体の効果で、《シンカイタイフーン》《ヴォルビック》《ミル・アーマ》《チャイ&シルク》をタップ!」
これで《ロイヤルティー》のブロッカーはすべてタップ状態。姫乃のアタッカーは三体で、うち二体がW・ブレイカーなのでこのままとどめまで行けるように見える。
「くっ、このターンは終了するしかありませんが……ターン終了時に神はアンタップ。さらに私の力で山札からブロッカーの《サーカスの信徒 パミュ・パミューン》を出します。どの道、貴女に勝利は訪れません!」
「ううん、勝つよ。わたしのターン!」
強引に流れを引き寄せる姫乃。そこで彼女が引いたのは、《ヴィーナス》だった。
「《ヴィーナス》、来てくれたんだ……よし、《パティ・スミス》召喚。さらに《パティ・スミス》と《パーフェクト・マドンナ》《ロードリエス》を進化元に——」
三体のメカ・デル・ソルが一ヶ所に集まり、眩い光に包まれて、さらに神聖で神々しき、神話級の存在となる。
「愛慕を、恋慕を、慈悲を、そして慈愛を。光り輝く私の女神様。神々よ、調和せよ! 進化MV! 《慈愛神話 テンプル・ヴィーナス》!」
ブロッカー三体を進化元にして現れた《テンプル・ヴィーナス》。これでアタッカーが四体。ダメ押しではあるが、直感的に《ヴィーナス》の力が必要と感じた姫乃。ここでこのカードを引いたことには意味があるように思う。
「行くよ、《ジャンヌ・ダルク》で攻撃、効果発動! ゴッドと《パミュ・パミューン》をタップ!」
「なっ、そんなことが……!」
これで本当に、《ロイヤルティー》を守るブロッカーはいなくなった。直後、《ジャンヌ・ダルク》の光線が《ロイヤルティー》のシールドを貫く。
「くぅ、しかしS・トリガー発動です! 《光陰のリバイバー・スパイラル》! 二枚トリガーしたので、もう片方の《ジャンヌ・ダルク》と《ヴィーナス》をデッキに送り込みます!」
光陰のリバイバー・スパイラル 水文明 (4)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。バトルゾーンに自分の光または闇のクリーチャーがあれば、選んだクリーチャーを持ち主の山札の一番上に置く。なければ、それを持ち主の手札に戻す。
このタイミングで二枚も除去カードを引いた《ロイヤルティー》も相当だが、しかしこの時に限れば姫乃の方が一枚上手だった。
「《ジャンヌ・ダルク》は山札に行くけど、《ヴィーナス》は守るよ。 CD10発動、二体の《パーフェクト・マドンナ》をタップして、《ヴィーナス》は場を離れない! 《ヴィーナス》で最後のシールドをブレイク!」
《ヴィーナス》の光線で《ロイヤルティー》のシールドはゼロ。ここでまさかの三枚目の《リバイバー・スパイラル》を引いたが、姫乃の場に残っているのは選ばれない《光器ペトローバ》。《リバイバー・スパイラル》では除去できない。
「《光器ペトローバ》で、とどめだよ!」
《ペトローバ》の無数の光線に貫かれ、《ロイヤルティー》は崩れ落ちる。
「ぐあぁ……! し、しかし、私の役目はただの足止め、こうして戦うだけで概ね完了しているのです。今更足掻いたところで、もう遅いですよ——」
消えゆく中、ロイヤルティーはそう言い残し——消滅した。