二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.174 )
- 日時: 2013/10/10 22:08
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
道中でクリーチャーを蹴散らしながら、流が訪れたのは図書室。理由は、二年二組の教室から比較的近い特別教室だったことと、校舎の隅にあるので人があまり訪れないこと。そしてそれなりの広さがあり、物陰も多いので隠れるのにはうってつけであることなど。他にもあるが、概ねこんなところだ。
神話空間が展開されているため、当然ながら中には誰もいない。だがこの教室は、元々文化祭で使う予定のない教室だ。飲食禁止なので休憩所にもならない。文化祭に嫌気が差した生徒がサボりに来る程度だろう。
そんな誰もいないはずの図書室を歩き回る流。やはり誰もいない、気配も感じない——こともなかった。
「……ここじゃないな。司書室か」
流が目をつけたのは、司書室。その名の通り、学校の図書館司書が管理している部屋で、古い蔵書や入荷したばかりの新書などが積まれている。
流れはゆっくりと司書室の扉を開く。さほど広くはない。机や椅子、本棚でスペースが圧迫されているからだろう。そして、だからこそこの部屋の中央に佇む者の存在感は、際立っていた。
「……おや? 見つかってしまったか」
こちらの存在に初めて気がついたと言うように振り向く。人の形こそ成しているものの、直感的にそれが人間でないことは、流には分かった。
H字型の赤と白の髪。服装は白を基調とした、中世を思わせるもの。凛々しい顔つきをしているものの、その眼差しはどこか悪っぽい。
「《ゾロスター》か」
「よく知っているな。そうだ、私の名はゾロスター。イザナイの中でも、策士を生業としている」
ゾロスターは薄ら笑いを浮かべ、手にした杖を手元に寄せる。その直前には、なにか煙のようなものが窓の外に出ていた。恐らく実体化するクリーチャーを外へと放っていたのだろう。
「教室からではなく、屋外に一度出してから襲わせる、か。随分と用心深いものだな」
「それが私だ。そんなことより、こうして私とお喋りに興じている暇はあるのか? 貴様の目的は、もっと別にあるのではないのか?」
「……お見通し、か」
ゾロスターに言われ、デッキケースからデッキを取り出す流。ゾロスターも手元に寄せた杖を構える。
「見つかったら、直接排除しろという命令だからな。ここで葬る」
「物騒だな。言っておくが、俺はデュエマをするだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。行くぞ」
刹那、二人の間の空気が一変する。
流とゾロスターのバトルは、どちらも大きな動きは見せていない。
流の場にはなにもない。シールドは五枚あり、マナの数ではゾロスターに勝っている。
ゾロスターもシールドが五枚あり、場には《浮魂 ターメリック》と《信心深きコットン》の二体。
「俺のターンだ。前のターンに回収した《ガチンコ・ルーレット》を再び唱える」
ガチンコ・ルーレット 自然文明 (3)
呪文
自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。
相手とガチンコ・ジャッジする。自分が勝ったら、この呪文を唱えた後、墓地に置くかわりに手札に戻す。
《ガチンコ・ルーレット》は、要するにガチンコ・ジャッジに勝ちさえすれば、永久にマナを加速し続けられる呪文だ。その効果で流はマナを加速させて6マナ。そして、
「ガチンコ・ジャッジだ」
流が捲ったのは、コスト7の《真実の名 リアーナ・グローリー》、ゾロスターはコスト4の《交錯のインガ キルト》だ。
「ガチンコ・ジャッジに勝ったので《ガチンコ・ルーレット》を回収、そしてもう一度唱え、マナを加速。ガチンコ・ジャッジ」
続くガチンコ・ジャッジでは、流はコスト8《偽りの名 イージス》。ゾロスターはコスト7《神聖騎 オルタナティブ》。
またもガチンコ・ジャッジに勝利し、流は手札を減らさず7マナまでマナを伸ばすことに成功した。
「ふん、だが貴様の場にクリーチャーはいない。私のターン、《舞踏のシンリ マクイル》を召喚してターンエンド」
またブロッカーを並べるゾロスターだが、今度は攻撃もできるブロッカーだ。
「俺のターンだ。《ガチンコ・ルーレット》」
またもマナ加速。そしてガチンコ・ジャッジ。
流はコスト7《真実の名 白金の鎧》。ゾロスターはコスト5《ヤミノサザン》。またまた流の勝利だ。
「回収し、《ガチンコ・ルーレット》だ」
流はコスト3《ガチンコ・ルーレット》。ゾロスターはコスト2《浮魂 ターメリック》。
「《ガチンコ・ルーレット》」
流、コスト4《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》。ゾロスター、コスト2《失楽のカルダモン》。
三連続で流がガチンコ・ジャッジに勝利し、手札がほとんど減らないまま11マナも溜まってしまった。
だがそれでも、マナが溜まっただけだ。場にクリーチャーはまったくいない。
「あまり呑気にマナを溜めていると、取り返しのつかないことになるぞ。さあ私を召喚だ!」
策士のイザナイ ゾロスター 光/闇文明 (5)
クリーチャー:オラクル 2000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
自分のターンの終わりに、自分の他のタップされているクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、次のうちいずれかひとつを選ぶ。
▼自分の山札を見る。その中から、コスト7以下の無色クリーチャーを1体選び、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。
▼コスト7以下の無色クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
召喚されたのは、《策士のイザナイ ゾロスター》。タップされているクリーチャーを生贄にすることで、より巨大な無色クリーチャーを呼び出す力を持っている。
「《マクイル》でシールドをブレイク!」
《ゾロスター》の場で唯一攻撃可能な《マクイル》が流のシールドをブレイク。とはいえ、たった一枚のシールドをブレイクしただけでは流に手札を与えているようなものだが、しかしこの攻撃は流のシールドを減らす以上に、《マクイル》をタップすることに意味がある。
「ターン終了時、私の効果を発動させる。タップ状態の《マクイル》を生贄にし、出でよ!」
突如、《ゾロスター》の杖が青白く発光し、魔方陣を描き出す。その魔方陣から、石像のような巨大な何かが、少しずつ姿を現していく。
「新たなる時代を斬れ、そして膨張せよ! 神聖なる偽りの神——《神聖斬 アシッド》!」