二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.185 )
日時: 2013/10/14 20:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 クロは視聴覚室にて、何者かと対峙していた。
 それは、人の形こそ成してはいるが、人間とは思えない雰囲気を醸し出している何か。先端に縦長の水晶を付けた杖を持ち、顔は黒子のように隠れ、側頭部から二対の羽が生えている。
 クロは聞くまでもなく直感で理解した、目の前のこの惨事は、クリーチャーであると。しかも、その様子を見るからに呼び出されたクリーチャーではなく、呼び出すクリーチャー、イザナイだ。
「…………」
「…………」
 二人は向かい合ったまま、無言の時間が続く。クロもそうだが、このクリーチャーも無口なのか、まったく会話がない。
「……我が名は、ハゴロモ」
「知ってる」
 遂にクリーチャー、ハゴロモが名乗りを上げるが、クロは冷たいとも取れるあっさりした態度で流す。すると、また沈黙の時間が発生した。
 だが今度は長くは続かない。すぐさま、二人の間の空気が豹変する。



 よく分からないままに行われたクロとハゴロモのデュエル。ここまで、両者ともシールドは五枚、特に大きな動きは見せていない。
 クロの場には《蔵禄の守護者カメンビー》《白骨の守護者ホネンビー》《雷鳴の守護者ミスト・リエス》の三体。
 ハゴロモの場には《兵法のサトリ 孫子》《暗躍のサトリ 山椒》《犠心のイザナイ 一休》の三体。
「我がターン……我を召喚」


神光のイザナイ ハゴロモ 光文明 (6)
クリーチャー:オラクル 4000
光臨—自分のターンの終わりに、このクリーチャーがタップされていた場合、自分の山札を見る。その中からコスト8以下の無色クリーチャーを1体選び、バトルゾーンに出してもよい。その後、山札をシャッフルする。


 無色クリーチャーを降臨させる力を持つイザナイ、《ハゴロモ》。発動条件は通常の光臨と同じだが、踏み倒せるコストが8と広く、《策士のイザナイ ゾロスター》や、コストだけならあの《神聖斬 アシッド》をも上回る。
「私のターン。《ライフプラン・チャージャー》で山札から五枚捲って、《守護聖天タース・ケルケルヨ》を手札に加える。さらに《漆黒の守護者ハラッカダン》を召喚して、ターンエンド」
 手札、マナを増やしながら、場にガーディアンを並べていくクロ。小型ブロッカーばかりだが、最低限《ハラッカダン》で《ハゴロモ》と相打ちになるため、《ハゴロモ》が攻撃してアンタップできず、光臨は許さない。
 と、思われたが、
「《交錯のインガ キルト》召喚、効果で我をタップ」
 《ハゴロモ》は《キルト》の能力で攻撃することなく自身をタップ状態にしてしまう。
「ターン終了。その時、我の光臨発動。山札からコスト8以下の無色クリーチャーを降臨させる……《孫子》を進化」
 刹那、《ハゴロモ》の杖が白い光を放つ。その光は魔方陣のような紋章を描き、《孫子》を囲む。

「荒廃せし時代に終焉を、世界に新たな秩序を。全ての始まるたる無に、全ての事象を帰せ——《聖忌祀ニューウェイヴ》」


聖忌祀せいきまつニューウェイヴ 無色 (8)
進化クリーチャー:オラクリオン 13000
進化—自分の無色クリーチャー1体の上に置く。
T・ブレイカー
このクリーチャーまたは自分の他のクリーチャーが破壊された時、相手のクリーチャーを1体破壊する。
相手のターン中に自分のシールドがブレイクされた時、このクリーチャーは相手のシールドを1枚ブレイクする。


 《孫子》から進化し降臨したのは、二体の偽りの神。筋骨隆々の身体に、月と太陽を喚起させるような紋様と体色。
 進化したオラクリオンは、偽りの神でありながらも、本物の神に近い存在となる。二体で一体、一対の存在であることが、その証左だ。
「……私の、ターン」
 かなり厳しい展開となったクロ。《ニューウェイヴ》は普通にパワーや打点が打点が高い上に、下手に破壊すればこちらのクリーチャーも破壊されてしまう。
「だったら……《ミスト・リエス》進化、《守護聖天タース・ケルケルヨ》」


守護聖天タース・ケルケルヨ 光文明 (6)
進化クリーチャー:ガーディアン 9500
進化—自分のガーディアン1体の上に置く。
自分の他のガーディアンが破壊される時、墓地に置くかわりにこのクリーチャーの下に置いてもよい。
このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるクリーチャーを1体選び、表向きにして自分の山札の上に置いてもよい。そうした場合、そのクリーチャーをバトルゾーンに出す。
W・ブレイカー


 《ミスト・リエス》は光に包まれ、細い翼の生えた、平たい空母のようなクリーチャーへと進化する。
「さらに呪文《時空の庭園》。マナを追加し、マナゾーンから《シャングリラ》を《ケルケルヨ》の下に置く。《ケルケルヨ》でWブレイク」
 《ケルケルヨ》から光線が放たれ、《ハゴロモ》のシールドが二枚割られる。だが同時に、《ニューウェイヴ》からも光線が放たれ、クロのシールドが二枚ブレイクされた。
 やられたことをやり返す《ニューウェイヴ》。その能力で、シールドをブレイクされても、ブレイクし返す。
 だが、
「《ケルケルヨ》の能力発動、攻撃時、このクリーチャーの下にあるクリーチャーを山札の一番上に置いて、そのクリーチャーをタダで場に出す」
 《ケルケルヨ》の下にあるクリーチャーは二体。一体は進化元となった《ミスト・リエス》。そしてもう一体は、先ほど《時空の庭園》で仕込んだクリーチャー。

「墓地の《ハラッカダン》と《ドクロンビー》を進化元に、超無限進化Ω——《「無情」の極 シャングリラ》」

 《ケルケルヨ》から射出された光の球体は、墓地に落ちたガーディアンの魂を媒介に、その姿を顕現させる。
 全てを守りたいという思い、しかしそのためには外敵を排除しなければならないという現実。守るために破壊するという矛盾したガーディアンの思念がゼニスという形となった愛憎の守護者、《シャングリラ》。進化ゼニスというだけあって、相当強力な能力を有しているクロの切り札だ。
「《シャングリラ》で《ハゴロモ》を攻撃、その時《シャングリラ》のメテオバーンで、《ニューウェイヴ》を山札に送還」
 《ニューウェイヴ》が能力を発動できるのは破壊された時のみ。なので、《シャングリラ》のようにデッキに送り込んだり、バウンスなど破壊にはならない除去なら安全に処理できる。
 だが、クロは失念していた。《ハゴロモ》の場に《山椒》がいることを。
「《暗躍のサトリ 山椒》のウルトラ・セイバー発動……無色クリーチャーが場を離れる時、《山椒》を身代わりにし、破壊する」
「……っ!」
 《ニューウェイヴ》を囲む魔方陣に向かって突っ込む《山椒》。すると《山椒》は消滅したが、《ニューウェイヴ》は無傷。どころか、光線を《シャングリラ》へと放つ。
「《シャングリラ》が……」
 《山椒》が破壊されたことで《ニューウェイヴ》の能力が発動し、《シャングリラ》は破壊される。些細な見落としから、一気に劣勢となってしまったクロ。ここから巻き返すのは非常に困難だろう。
 そんなクロに向かって一対の存在となった偽りの神とその信者は、静かに彼女を見下ろすのだった。