二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.190 )
日時: 2013/10/24 04:06
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 日蓮のターン。今までほとんど防御しかしていなかった日蓮が、遂に動き出す。
「行くぞ、《ミル・アーマ》でコストが1軽くなり、呪文《プライマル・スクリーム》! 山札の上から四枚を墓地へ送り、墓地から《ブラッディ・シャドウ》を回収」
「《プライマル・スクリーム》……」
 今更だが、日蓮は序盤からやたらと墓地を増やしていた。厄介なブロッカーたちに気を取られていたのと、墓地に行くのも軽量クリーチャーばかりなので特に気に留めていなかった。
 実際、墓地を利用するデッキは多いが、大抵の場合は墓地から大型クリーチャーを釣り上げたり、墓地にクリーチャーが溜まることで強化されるクリーチャーを採用していることが多い。だが日蓮の墓地には、そういったカードはない。
 だがそれでも、墓地を増やす理由があるとすれば——

「さらに呪文《復活のトリプル・リバイブ》!」


復活のトリプル・リバイブ 闇文明 (6)
呪文
コスト3以下の進化ではないクリーチャーを3体まで、自分の墓地からバトルゾーンに出す。


「やばっ……!」
 墓地を増やす理由、それは大型クリーチャーを呼び出すためでも、切り札を強化するためでもない。一気にクリーチャーを展開するためだった。
「さあ蘇れ、我が僕たちよ!」
 墓地から復活したのは《腐敗電脳ディス・メルニア》《電脳封魔マクスヴァル》《霊王機エル・カイオウ》の三体。いずれも厄介なブロッカーだ。
「さらに《ブラッディ・シャドウ》をG・ゼロでバトルゾーンに! 《アカダシ》で《ロッキオ》を攻撃!」
「ぐっ……!」
 予想通り殴り返されたが、ここまでブロッカーを並べられるとは思わなかった。しかも、また光臨が発動する。
「《アカダシ》、光臨発動! 山札から出でよ、大地を喰らう神聖にして新星なる戦攻の神! 《戦攻右神マッシヴ・アタック》!」


戦攻右神マッシヴ・アタック 無色 (6)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/アースイーター 6000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーがゴッドとリンクした時、カードを1枚引いてもよい。
W・ブレイカー
右G・リンク


 現れたのは、青くずんぐりした奇形の体。赤く光る一つ目に、手のような部位は枝のような剣を握っている。異形の神だ。
「《マッシヴ・アタック》の登場時能力で一枚ドロー!」
 派手さはないが、《スクエア・プッシャー》と比較して堅実で実用的、汎用性の高い能力だ。
「くそっ……とりあえず《ツクモ・スパーク》召喚! 《マッシヴ・アタック》をバウンス! そして進化《エンペラー・マリベル》! さらに《マリン・フラワー》を召喚! 《マリベル》で《アカダシ》を攻撃、メテオバーンで《ディス・メルニア》をバウンス!」
 まずはリンクされると困るゴッドを排除し、次にスレイヤーの《ディス・メルニア》をバウンス、さらに光臨を持つ《アカダシ》を破壊する。
「意外にあっさり破壊させたな……《アストラル・ラッシュ》でシールドブレイク!」
「それは《ブラッディ・シャドウ》でブロックだ」
 一気に日蓮のクリーチャーを削った零佑。しかしまだ《ミル・アーマ》《エル・カイオウ》《マクスヴァル》の三体のブロッカーが残っている。
「まずは《マッシヴ・アタック》を再び召喚し、一枚ドロー」
 ドローしたカードを見るや否や、日蓮はニヤリと微笑む。
「《黙示護聖ファル・ピエロ》召喚、即破壊して墓地から《神の裏技ゴッド・ウォール》を回収し、そのままG・ゼロで唱える。これで《マッシヴ・アタック》は、次の私のターンまで決して場を離れなくなる!」
「なんだと……!」
 日蓮の手札には左神である《スクエア・プッシャー》がいる。次のターンに除去できないということは、どうしたってゴッド・リンクされてしまうということだ。そうなってしまうと、現状でも苦しいのにさらに苦しい展開になる。
「まずい、このターンでなんとかしねぇと……」
 しかし、日蓮のシールドは四枚、ブロッカーも三体いる。
「《ツイート》を召喚、そのまま《アストラル・ラッシュ》に進化! 《ミル・アーマ》をバウンス!」
 これでブロッカーは二体。
「一応、こっちには《マリン・フラワー》がいるし、殴り返しは大丈夫か……《マリベル》と《ラッシュ》二体でシールドブレイク!」
「《マクスヴァル》《エル・カイオウ》でブロック。さらにニンジャ・ストライク、《光牙忍ハヤブサマル》で《マッシヴ・アタック》をブロッカーにし、《アストラル・ラッシュ》をブロック」
「なっ、ぐぅ……!」
 いくら攻めても日蓮に零佑の攻撃は届かない。ことごとく防御されてしまう。どころか、《アストラル・ラッシュ》を一体破壊されてしまった。
「さて、私のターン。さあ、神の真の力を思い知るのだ! 《スクエア・プッシャー》召喚! ゴッド・リンク!」
 左神《スクエア・プッシャー》と右神《マッシヴ・アタック》が一つとなる。
「《マッシヴ・アタック》のリンク時効果で一枚ドロー! さらに《スクエア・プッシャー》の登場時及びリンク時効果で山札の上四枚を墓地へ!」
 ドローや墓地肥やしを多用しているため、日蓮のデッキはかなり削られ、もうあと僅かしか残っていない。しかしそれでも、もうそろそろ勝負を決めに来るだろう。
 それに、そろそろなどという余裕も、ないのかもしれない。
「良いカードが引けた、そして良いカードが墓地に行った……これで終わりだ! 呪文《インフェルノ・サイン》! 墓地から《暗黒皇女アンドゥ・トロワ》をバトルゾーンに!」


暗黒皇女アンドゥ・トロワ 闇文明 (6)
クリーチャー:ダークロード 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト1のクリーチャー、コスト2のクリーチャー、コスト3のクリーチャーをそれぞれ1体ずつ、自分の墓地からバトルゾーンに出す。


「なっ……!?」
 墓地より蘇ったのは、闇の皇女。その能力は、墓地からコスト1、2、3のクリーチャーを復活させること。
 一見すると《復活のトリプル・リバイブ》が劣化した代わりにクリーチャーとなった能力とも取れるが、《アンドゥ・トロワ》と《トリプル・リバイブ》では決定的に違う点がある。それは、《トリプル・リバイブ》は進化クリーチャーを出せないこと。

 そして《アンドゥ・トロワ》は進化クリーチャーも出せることだ。

「さあ蘇れ、皇女の下僕共! 《ねじれる者ボーン・スライム》を墓地進化《死神術死デスマーチ》! 《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》を墓地進化《鬼面妖蟲ワーム・ゴワルスキー》! 《電脳封魔マクスヴァル》を墓地進化《死神竜鳳ドルゲドス》!」


死神術士デスマーチ 闇文明 (1)
進化クリーチャー:デスパペット 1000
ブロッカー
墓地進化−闇のクリーチャーを1体自分の墓地から選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーがバトルする時、そのバトルの終わりまで、バトルしている相手クリーチャーのパワーは−4000される。


鬼面妖蟲ワーム・ゴワルスキー 闇文明 (2)
進化クリーチャー:パラサイトワーム/デビルマスク 4000
墓地進化—闇のクリーチャーを1体自分の墓地から選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーが破壊された時、相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。


死神竜凰ドルゲドス 闇文明 (3)
進化クリーチャー:ティラノ・ドレイク 5000
墓地進化—闇のクリーチャーを1体自分の墓地から選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーはブロックすることができない。


「マジかよ……!」
 墓地から蘇って来るのは、すべて進化クリーチャー。召喚ターンに攻撃できるクリーチャーだ。
 つまり、このターンで勝負を決めに来る。
「まずは《ドルゲドス》の能力で《マリン・フラワー》のブロック能力を無効にする!」
「やばっ、それはまずい……!」
 これで零佑は日蓮の攻撃を止められるクリーチャーがいなくなった。シールドは四枚あるが、T・ブレイカーのゴッドとアタッカーが三体、どうしたって止めきれない。
「まずは神でシールドをTブレイク!」
 神の一撃で、零佑のシールドは瞬時に一枚になる。しかし、割られたシールドのうち一枚が、光となって収束し、零佑の手元へと戻ってくる。
「S・トリガー《スパイラル・ゲート》! 《デスマーチ》をバウンス!」
 なんとかS・トリガーでアタッカーを減らすが、零佑のシールドは残り一枚、日蓮のアタッカーは二体。ギリギリとどめまで行かれてしまう。
「《ゴワルスキー》で最後のシールドをブレイク!」
 これでシールドはゼロ、S・トリガーも出ない。
「これで終わりだ! 《ドルゲドス》、とどめ——」
 その時だった。

 《ドルゲドス》が突如発生した荒波に飲まれ、日蓮の手札へと押し返される。

「っ!? な、なにが起こった……!」
「ふぅ……危ない危ない、最後のシールドがこいつで良かった」
 とどめの一撃を防がれ焦りを見せる日蓮と、対照的に落ち着きを取り戻した零佑。
「ニンジャ・ストライク《斬隠テンサイ・ジャニット》。コストが低いのが仇になったな、こいつの効果でコスト3以下のクリーチャーは手札に戻されるぜ」
 なんとか命は繋いだ零佑。それでも日蓮のシールドは四枚、零佑のアタッカーは二体。ここからとどめまで行くのは難しいが、
「やるっきゃねぇ……《ロッキオ》召喚! さあ来いっ!」
 山札の上二枚を捲り、その順番を入れ替える零佑。口元には隠しきれない笑みが零れ、勝利をほぼ確信していた。
「《ペロリ・ハット》召喚! 連鎖で山札の上を捲り、進化! 《アストラル・リーフ》! 三枚ドローし、サイバー・ロードがいるからG・ゼロ《パラダイス・アロマ》召喚! さらに、ソウルシフトで3マナ軽くなって4マナ《パラダイス・アロマ》進化!」
 怒涛のような勢いでクリーチャーを展開し、すぐさま進化させる零佑。最後、零佑の周囲に磁場が乱れるかのような激しい嵐が吹き荒ぶ。

「Zの力をその手に掲げ、呪文殺しの超電磁よ、吹き荒れろ! 《超電磁マクスウェルZ》!」

 磁場の嵐から現れたのは、電脳の使者にして零佑の切り札《マクスウェルZ》だ。
「これで俺の場にアタッカーは四体、うち一体がW・ブレイカーだ。終わりにしてやるぜ、《マクスウェルZ》でWブレイク!」
 《マクスウェルZ》は両手からバチバチと弾ける電撃を放ち、日蓮のシールドを二枚破壊。
「っ、S・トリガー発動! 《地獄門デス・ゲート》!」
 ここでS・トリガーを引き当てた日蓮。しかも《デス・ゲート》が発動すれば、零佑のアタッカーを減らしつつ墓地の軽量ブロッカーも呼び出せるため、このターンはほぼ確実に凌げるだろう。
 ——発動すれば、だが。
「それは無理だぜ、《マクスウェルZ》の能力で、俺たちは自分の墓地にある呪文と同じ文明の呪文は唱えられない。お前の墓地には《プライマル・スクリーム》や《復活のトリプル・リバイブ》があるから、闇の呪文は唱えられない!」
「なんだと……くっ!」
 歯噛みする日蓮。続けて零佑の《マリベル》と《アストラル・リーフ》もシールドをブレイク。また《デス・ゲート》がトリガーしたが、無論唱えることは出来ない。

「トリガーはもうないな、だったらこれで決めるぜ……《アストラル・ラッシュ》で、とどめだ!」

 《アストラル・ラッシュ》の無数の拳が凄まじい勢いで繰り出され、日蓮を吹き飛ばす。全身打撲どころでは済まなさそうなほど酷い打撃痕が出来上がる。
「ぐはっ……まさか、あそこで逆転されるとはな……だが、負けたところで私が失うものなどない。元より私たちは、お前たちを足止めするための、使い捨ての盾だからな……」
 クリーチャーとしての実態を維持できなくなっているのか、消えゆく中、日蓮は壁にもたれかかって、遺言のように呟く。
「もう間もなくだ。あれほど巨大なクリーチャーを顕現させるにはそれ相応の時間と準備が必要だが、それも整った……じきにお前たちの前に立ちふさがるだろう、神々を誕生させる大地の化身……《ヘラクレス》がな……」
 そして、日蓮は弾けるように光を発し、完全に消滅した。