二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.206 )
- 日時: 2013/11/10 08:32
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
神話空間で夕陽とヘラクレスが戦っている様子を、ラトリはじっと眺めていた。
「残り時間は五分を切ったか……」
《アテナ》のカードを見つめながら、ぼそりと呟く。その何気ない呟き一つも、彼女らしからぬ落ち着きと、そして焦りがあった。
「たぶん今回の騒動は【師団】が元凶、そして狙いはきっと《アポロン》。それと、『昇天太陽』」
視線を夕陽に戻すと、今まさにシールドを割られた所だった。見たところ劣勢だ。
「頑張ってよ、空城夕陽君……君にはこの“ゲーム”から降りてもらったら困るんだ」
そして、
「君がいないと、この“ゲーム”は変わりそうにないんだから……」
神誕の大地ヘラクレス 自然文明 (12)
クリーチャー:ガイア・コマンド 12000
このクリーチャーを召喚する時、自分のマナゾーンにあるゴッドのマナの数字は1のかわりに2となる。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、好きな数のゴッドを、自分のマナゾーンから手札に戻す。
自分のゴッドを召喚するコストを3まで少なくしてもよい。ただし、コストは1より少なくならない。
T・ブレイカー
遂に《ヘラクレス》自身が出てしまった。実体化するクリーチャーは、自身を核としたデッキを生成するらしいので、もう切り札を召喚されたようなものである。
『我が召喚時の効果により、マナゾーンから《ディーヴォ》《クラフト・ヴェルク》《イズモ》のゴッド三体を回収』
——《ヘラクレス》の能力は、大型クリーチャーとしては複雑で、システムクリーチャーというには強大だ。
《ヘラクレス》の能力は、全部で三つ。大雑把に言えば、自身のコスト軽減と、ゴッドのマナ回収、そしてゴッドのコスト軽減。この三つの能力は非常に噛み合っており、莫大なコストに見合った、一枚で完結した能力を持つ高い完成度のカードである。
一つずつ能力を見ていくと、まず一つ目。マナゾーンにあるゴッドからは2マナ生み出せる能力。言い換えれば、マナゾーンのゴッドの数だけコストを軽減できる能力だ。下限が半数の6マナなので、厳密には違うが。
つまり《ヘラクレス》を普通に出そうとすれば、マナゾーンにはそれなりの数のゴッドがいるわけで、ここで二つ目の能力が生きてくる。それが、マナゾーンのゴッドを好きな枚数回収できる能力だ。
さらにこうして手札に加えられたゴッドは三つ目の能力、ゴッドの召喚コストを3下げる能力で一気に展開できる。上手くはまれば1ターンでゴッド・リンクを完成させることすらできる。
「《ヘラクレス》で回収したゴッドは三体、奴のマナゾーンにあるゴッドも、その三体だった」
つまりこの《ヘラクレス》は9マナで呼び出されたことになる。このターンのマナチャージも含め、残るマナは10マナ。
この時、夕陽は理解してしまった。それと同時に、戦慄を覚えた。
(10マナ……確か、こいつが回収したゴッドって——)
そこまで思考が到達したところで、大地に続き今度は空——天文学的な空ではなく、ここでは上方の空間という意味での空——が不穏に蠢き、不吉な音を響かせる。
そして、神々しき光とともに、三体の神が、降臨する。
『出でよ、我らが神々よ!《双魔左神ディーヴォ》! 《双天右神クラフト・ヴェルク》! 《イズモ》!』
双魔左神ディーヴォ 無色 (7)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ 7000
このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーがリンクしている場合、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、相手はそれを自身の山札の一番下に置く。このクリーチャーがリンクしていない場合、相手のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー
左G・リンク
このクリーチャーがリンクしていれば、シールドをさらに1枚ブレイクする。
双天右神クラフト・ヴェルク 無色 (7)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ 7000
このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーがリンクしている場合、カードを1枚引き、その後、自分の手札を1枚、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに裏向きにして加える。このクリーチャーがリンクしていない場合、自分の山札の上から1枚目を裏向きにして、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加える。
W・ブレイカー
右G・リンク
イズモ 無色 (5)
クリーチャー:ゴッド・ノヴァ/オラクル 5000+
中央G・リンク(このクリーチャーまたは他のゴッドをバトルゾーンに出す時、自分の好きな数のゴッドからカードを1枚ずつリンクを外してもよい。その後、このクリーチャーを「右G・リンク」または「左G・リンク」とあるゴッドにリンクしてもよい)
空より降り立ったのは、漆黒の翼に黒き弓を構える神と、純白の翼に白き弓を番える神。そして、奇怪な片腕の少年のような神。三体のゴッド・ノヴァが、莫大なマナの力を得て召喚された。
『さらに、《ディーヴォ》よ、《クラフト・ヴェルク》よ! 神人類の後継者たる神の両腕となれ! 三神合体!』
《ディーヴォ》は左に、《クラフト・ヴェルク》は右に、それぞれ控え、《イズモ》の両腕となる。そして——
『三体神《イズモ》!』
——三体の神は、一体となった。
「くそっ、過剰なマナブーストから強引に三体のゴッドを召喚するなんて……盲点だった」
《ババン・バン・バン》で18マナまでマナを溜めれば次のターンで19マナ。そこから9マナで《ヘラクレス》を出し、マナゾーンから回収したゴッド——コスト7の《ディーヴォ》と《クラフト・ヴェルク》、コスト5の《イズモ》——のコストをそれぞれ3下げて一気に召喚。とんでもない方法で三体によるゴッド・リンクを完成されてしまった。
『さあ行くぞ、リンクしたゴッドはそのターン召喚酔いしない。三体神《イズモ》で攻撃!』
両腕の神が持つ弓を向ける《イズモ》。そこから、第一射が放たれた。
『《ディーヴォ》の能力発動! 《ミツルギブースト》をマナゾーンへ!』
「くっ」
《ディーヴォ》が放つ黒き矢に射抜かれた《ミツルギブースト》は、為す術もなく山札の下に封じ込められてしまう。しかもこれだけでは終わらない。
続けて、第二射目が放たれる。
『《クラフト・ヴェルク》の能力発動! 一枚ドローし、手札を一枚シールドへ!』
《クラフト・ヴェルク》が放つ白き矢は《ヘラクレス》の手札を巻き込んで飛び、シールドゾーンを通過する直前で停止。そのままシールドとなった。
そして、第三射目——一際巨大な矢が、放たれた。
『Tブレイク!』
「ぐぁ……!」
弓矢によって夕陽のシールドは射抜かれ、その衝撃で周囲のシールドも吹き飛び、一気に三枚ブレイクされた。
『さらに《ババン・バン・バン》でWブレイク!』
蹄で大地を蹴り、地響きを起こしながらシールドに突貫。残った夕陽のシールドをすべて破壊してしまった。
「やばい、もうシールドがゼロ……」
対する《ヘラクレス》のシールドは四枚、うち一枚は《クラフト・ヴェルク》の能力で仕込んでいるため、S・トリガーの可能性が高い。
「でも、シールドブレイクで手札が増えた。なんとか逆転につながるカードを引ければ……」
願うようにしてカードを引く夕陽。少なくとも今の手札だけでは、《ヘラクレス》のクリーチャーを除去することも、このターンにダイレクトアタックを決めることもできない。このドローにかけるしかないのだ。
「……《ジャック・ライドウ》か」
手札とマナを交互に見て、歯軋りする夕陽。
(ダメだ、《アポロン》を呼びたいけど、手札の《コッコ・ルピア》でコストを下げてもマナが足らない……!)
今の夕陽のマナは14マナ。ここで《コッコ・ルピア》《ジャック・ライドウ》と出せば8マナ残り、《アポロン》召喚のために4マナ必要なので6マナのドラゴンがいれば進化できるのだが、
(こんな時に限って《NEX》も《GENJI》もいない、これじゃあ《アポロン》を呼べても進化できない)
生憎なことに、今の夕陽の手札には、6マナのドラゴンはいない。《ジャック・ライドウ》を除き、すべて7マナ以上だ。
(あそこで《ミツルギブースト》をマナに送っていれば、なんとかなったんだけどな)
だが、今更後悔しても遅い。そもそもあの局面で《ミツルギブースト》をマナに送る意義は限りなく薄いため、この展開は仕方ないと言える。
(どうする? 今の手札じゃとどめまで行けない。この状況を打開するには《アポロン》しかいないけど、そうするとマナが足りなくなる)
(くそっ、本当に腹立つな。あれだけクリーチャーをマナに送られておきながら、こんな時に限ってマナが足りなくなるなんて……!)
その時、ふと気が付いた。
「ん……? マナ……?」
再びマナゾーンに視線を落とす夕陽。刹那、頭の中でなにかが繋がった。
「そうだ、これだ……これなら、行ける!」
活路を見出した夕陽。その視線は、今度は《ヘラクレス》に向いた。
「さあ見てろよ《ヘラクレス》! ここから一気に逆転してやる!」
そして猛々しく豪語する。
太陽のように、輝かしく。