二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.218 )
- 日時: 2013/11/22 22:25
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ひまりとヴァーズ・ロマノフのデュエル、状況はひまりが不利だ。
ひまりのシールドは残り二枚、場には《コッコ・ルピア》と《エコ・アイニー》そして《紅神龍バルガゲイザー》の三体。
対するヴァーズ・ロマノフはシールドが三枚、場には《聖黒獣アシュライガー》に、《暗黒導師ブラックルシファー》《魔刻の斬将オルゼキア》がおり、手札には《ヴァーズ・ロマノフ》を握っている。
「私のターン。とりあえず、二体目の《バルガゲイザー》を召喚。さらに《偽りの名 バルキリー・ラゴン》も召喚」
とりあえずひまりは場数を増やし、ヴァーズ・ロマノフにプレッシャーをかけていく。
「そして、《バルキリー・ラゴン》の効果で山札を見て、好きなドラゴンを手札に加えるよ。この状況じゃ《アポロン》の召喚はきつそうだし……《竜星バルガライザー》を手札に」
スピードアタッカーに加え、ドラゴンを場に出す可能性のある《バルガライザー》を握っておき、次のターンに備える。
さて、ここでひまりの一番の悩みどころは、攻撃対象だ。
ひまりの場のクリーチャーを見れば、シールドを攻撃してもとどめまではいけないが、《バルガゲイザー》の能力でスピードアタッカーが捲れればその限りではない。
だがそれは賭けだ。確かにひまりのデッキはスピードアタッカーを持つクリーチャーが比較的多いが、ややリスキーと言えるだろう。
ならば、
「《バルガゲイザー》で《アシュライガー》を攻撃!」
ひまりは攻撃対象をクリーチャーにする。これでヴァーズ・ロマノフの場数を減らし、次のターンまで生き残り、確実にとどめを刺す戦略だ。
とはいえこの戦術にも穴はある。そもそもヴァーズ・ロマノフの場にはクリーチャーが三体、うち二体がWブレイカーで、手札には墓地進化で飛び出てくる《ヴァーズ・ロマノフ》もいる。このターンで次のターンまで生き延びられるほどのクリーチャーは破壊できない。
だがひまりは先ほど、《バルキリー・ラゴン》の能力で山札を見ており、それはつまり、シールドに埋まっているS・トリガーを確認しているということだ。それもあって、次のターンまで生き残る算段が立っている。
「攻撃時、《バルガゲイザー》の能力発動! 山札の一番上を捲って、ドラゴンなら場に出すよ」
《バルガゲイザー》の咆哮が響き、山札から次なる龍が飛び出る。
「よしっ、来たよ。《王龍ショパン》! 出た時の効果で《オルゼキア》とバトル!」
《ショパン》も《オルゼキア》もパワーは6000。相打ちとなり、共に破壊される。
「そして、《バルガゲイザー》の攻撃で《アシュライガー》も破壊! 《エコ・アイニー》でシールドブレイク!」
やっとシールドの数でもヴァーズ・ロマノフに追いついたひまりは、これでターンを終える。
『随分と張り切っているようだが、貴様の努力はすべて無に帰すのだ。私のターン、《腐敗聖者ベガ》を召喚。シールドを追加し、貴様の手札を一枚墓地へ』
「えっ……!?」
追いついたと思ったら、ヴァーズ・ロマノフはシールドを増やし、ひまりは手札を削られてしまう。しかも捨てられたのは《バルガライザー》だ。
『さらに、《アシュライガー》から墓地進化! 《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》!』
暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ 闇文明 (7)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド/ダークロード 7000
墓地進化—闇のクリーチャーを1体自分の墓地から選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手の進化ではないクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー
墓地から現れたのは、大剣を携えた悪魔。騎士のようでいて騎士でない魔神だ。
『私の効果で《バルキリー・ラゴン》を破壊! さらに《バルガゲイザー》を攻撃!』
「っ、シールドじゃないの……?」
どうやら、前のターンのプレイングからひまりのシールドにS・トリガーがあることは見抜かれているようだ。皮肉にもひまりは披露した戦術を敵に取られた形となる。
『《ブラックルシファー》で《エコ・アイニー》を破壊! そしてターンエンド。さあ、次のターンでとどめを刺してやろう』
「…………」
《ヴァーズ・ロマノフ》の威圧的な視線を受け、俯くひまり。その姿は敗北を目前にし、絶望しているように見えるだろう。
だが、実際はそうではない。
「……良かったよ」
『なに?』
「だからさ、シールドを割られなくって良かったよ。クリーチャーでも心理戦とか効くんだね」
『どういうことだ?』
訝しむ《ヴァーズ・ロマノフ》に対し、ひまりは、
「実は私のシールドにはS・トリガーはないんだ。前のターンのはただのブラフ。あの状況からじゃとどめまでは行けそうになかったから、試にやってみたんだけど、上手くかかってくれたね」
『この私を謀ったというのか……!』
怒気を含む声で唸る《ヴァーズ・ロマノフ》。つまりひまりは、わざと自分のシールドにS・トリガーがあるように見せかけるプレイングで《ヴァーズ・ロマノフ》の動きを誘導し、生き延びたのだ。
「そして、このターンで決めるよ。私があるカードを“引かなければ”あなたの負け」
と言って、ひまりはカードを引く。その表情からは、なにを引いたのかは読み取れない。
「よし、いい感じ。まずは《コッコ・ギルピア》を二体召喚、続けて《エコ・アイニー》を召喚! さらに《バルガザルムス》も召喚!」
ひまりはクリーチャーを並べていくが、スピードアタッカーではないのでこれではとどめまで行くことは不可能だ。
『その程度か。だからどうした』
「まあまあ、最後まで見ててよ。次はこれ、呪文《魂の呼び声》!」
魂の呼び声 自然文明 (3)
呪文
種族をひとつ選び、自分の山札を見る。その中から選んだ種族を持ち名前が異なるクリーチャーを3体選んで相手に見せる。山札をシャッフルしてからその3体を好きな順序で山札の一番上に戻す。
要するに、選んだ種族の好きなクリーチャーを三体、山札の上に積み込める呪文だ。コンボ向きのカードで、ひまりのデッキでも《バルガゲイザー》などと相性が良い。
「選ぶ種族はアーマード・ドラゴンだよ」
『スピードアタッカーを積み込み、《バルガゲイザー》で呼び出すつもりか?』
「そういうわけじゃないけどね。積み込むのはこの三枚。上から《アポロン》《NEX》《トルネードシヴァ》だよ」
《ヴァーズ・ロマノフ》と、外にいる汐もその選択に疑問を覚える。確かに《バルガゲイザー》の能力で《アポロン》は呼び出せるが、《バルガゲイザー》は攻撃する必要があるのでどうしたってタップ状態で出てしまう。
「じゃあ行くよ。《コッコ・ルピア》でシールドブレイク! そして、《バルガゲイザー》でシールドブレイク! 能力発動!」
《バルガゲイザー》の咆哮で、山札から太陽の如き輝きが溢れだす。そして、
「《コッコ・ギルピア》《コッコ・ルピア》《バルガゲイザー》を進化MV! 出て来て、《アポロン》!」
《アポロン》が現れる。だがタップ状態で、攻撃時の能力も発動しない。
「でも攻撃は通るよ。行って《アポロン》!」
そうだ。攻撃途中で進化したとはいえ、《バルガゲイザー》がそのまま《アポロン》にすり替わっただけで、攻撃自体は止まっていない。《アポロン》の熱線が《ヴァーズ・ロマノフ》に放たれる。しかし、
『甘い! ニンジャ・ストライク《光牙忍ハヤブサマル》を召喚! そしてブロック!』
その攻撃も、防がれてしまった。
『残念だったな。これで貴様の攻撃は終わりだ』
最後の攻撃を止められてしまい、これでひまりは本当に打つ手がなくなった、かに見えたが、
「なに言ってんの? 私の攻撃は終わってないよ?」
ひまりは平然とそう言ってのける。
「どうせ手札にシノビでも握ってると思ったよ。だからスピードアタッカーを呼ばなかったんだ。どうせ止められるなら、数で勝負すべきだってね」
『……貴様こそなにを言っている? 貴様の場に、もう攻撃できるクリーチャーなどいないぞ』
怪訝な眼を向ける《ヴァーズ・ロマノフ》。対するひまりは得意そうに言い返す。
「いるんだなーそれが。《アポロン》のCD5——私の場のファイアー・バード、ドラゴン、火文明のクリーチャーは、すべてスピードアタッカーになる」
『なんだと……!?』
直後、《ヴァーズ・ロマノフ》に小さき鳥たちが特攻する。
「《ギルピア》と《エコ・アイニー》でシールドブレイク!」
そして最後には、大地の力をつかさどる龍が、雄叫びを上げる。
「《緑神龍バルガザルムス》で、ダイレクトアタック!」
「……大丈夫、ですか」
ヴァーズ・ロマノフとのデュエルを終えたひまりに、汐は駆け寄る。ひまりは「大丈夫だよ」と平気の平左で返した。
「あの……ありがとう、でした。あさひな——」
「ひまり」
汐の言葉を遮って、ひまりは言う。
「せっかくなんだし、名前で呼び合おうよ。これから長い付き合いになるかもしれないんだし。ね?」
「……はい。ひまり……先輩」
「お? 先輩までつけてくれるなんて、さっすが汐ちゃん! 可愛いね」
「そんな……えっと、ありがとう、でした。助けていただいて」
普段からクールな汐もひまりを前にするとペースを崩される。だからかあわてるように話題を変えた。
「いいんだよそんなの。それよりさ、これ。汐ちゃんにあげる」
ひまりが汐に手渡したのは一枚のカード。それも、さっき倒したばかりの《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》だった。
「でも、これはひまり先輩が勝ち取ったものではないですか……受け取れないですよ」
「いいよー別にそんなこと気にしなくても。私のデッキには合わないし、汐ちゃんのデッキってデーモン・コマンドがメインでしょ? 墓地だって上手く使ってるし、私よりずっと使いこなせると思う。だから、さ」
にっこりと笑うひまり。その笑顔でそこまで言われては汐も引き下がらざるを得ない。
「……分かりました。ありがたく、頂くです」
「うん。じゃあお店に戻ろうか。みんな待ってるだろうし」
「はいです」