二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ メソロギィ  ( No.222 )
日時: 2013/12/23 22:05
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「あ、流君! 大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない」
 神話空間から出て来た流は、空中から舞い降りてくる一枚のカードを手に取る。さっき倒した《キング・アトランティス》だ。
「……クリーチャーがいきなり実体化したが、これはどういうことなんだ?」
「さ、さあ? 私にも詳しくは分からないけど、前にもこんなことがあったよ。夕陽君は、【神聖帝国師団】が関係してるんじゃないかって、言ってたけど」
「【師団】か」
 流は師団についてはほとんど知らないのだが、文化祭での一件に【師団】が関わっているだろうということは知っている。
「大事になりそうだな……」
 なにやら不穏な空気を感じ取る流。もう『神話カード』を持っていないとはいえ、この世界に足を踏み入れた以上、無関係でいられるとは思っていない。
 と、そんなことを思いながら流が一歩踏み出した、その時だ。
「! 流君!」
「っ!」
 流に衝撃が走る。強い力ではないが、不意打ちだったため、よろけて近くの塀にぶつかる。その時点で自分が誰かに突き飛ばされたことに気づく。
 立ち上がりながら振り向くと、そこには誰もいなかった。誰もだ。

 そう、ひまりすらも。

「朝比奈……?」



 気付いた時、ひまりは神話空間にいた。
 流があの一歩を踏み出した瞬間に、流の周りの空間が歪んのが見えたので、つい反射的に突き飛ばしてしまったが、彼は大丈夫だろうか。そんなことを思いながら、ひまりは目の前のクリーチャーを見る。
「《キング・アトランティス》……じゃ、ないね」
 目の前の巨大な怪物。それは《キング・アトランティス》と酷似していたが、少し違う。完全な魚型ではなく、杖を持ち、宗教的な装飾が見て取れた。
「《深海の伝道師 アトランティス》……オラクル化した《キング・アトランティス》か。何があってこんな連続で出てきたのかは知らないけど、こうなっちゃたからには、やることは一つ」
 言いながら、ひまりはサッとデッキケースからデッキを取り出す。
 次の瞬間、彼女の目の前には、五枚のシールドが展開されていた。



 ひまりとアトランティスのデュエル。
 現在シールドは、ひまりが五枚、アトランティスが三枚だ。
 クリーチャーはひまりがゼロ、アトランティスは《アクア・サーファー》と《火焔タイガーグレンオー》の二体。見て分かるように、ひまりは立て続けにS・トリガーを踏んでしまい、クリーチャーを一掃されてしまった。
 アトランティスは、《ブレイン・チャージャー》でマナと手札を追加すると、攻撃せずにターンを終える。
「ちょっとまずいかも……私のターン」
 クリーチャーは一掃されたものの、ひまりにはまだ手が残っている。
「まずは《ボルシャック・NEX》を召喚! 効果で山札から《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに出して、ターンエンド!」
 とにかくドラゴンとファイアー・バードを並べる。攻撃手を絶やさず、さらにドラゴンをサポートするバードがいれば、主導権を握られることはない。
 続くアトランティスのターン。アトランティスは、一体のクリーチャーを呼び出す。


ディープ・パープルドラゴン 火文明 (7)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 6000
K・ソウル
W・ブレイカー
水の呪文または水のクリーチャーの能力によって、相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。
このクリーチャーまたは自分の他のクリーチャーがバトルゾーンから自分の手札に戻された時、自分の山札の上から1枚目を表向きにする。それが火のクリーチャーであれば、バトルゾーンに出してもよい。


「《ディープ・パープルドラゴン》? 珍しいカードが出たなぁ……でも、私のデッキに水のカードはないし、特に問題はないかな。私のターン、《セルリアン・ダガー・ドラゴン》を召喚して二枚ドロー! 《NEX》でWブレイク!」
 《ボルシャック・NEX》の爆炎が、アトランティスのシールドを二枚粉砕する。これでアトランティスのシールドは残り一枚だ。
 しかし、割られたシールドのうち一枚が、光の束となり収束する。
「っ、S・トリガー……!?」
 収束した光は巨大な渦となり、水流を巻き起こしながら巨大な深海の伝道師を呼び起こす。


深海の伝道師 アトランティス 水文明 (10)
クリーチャー:オラクル/リヴァイアサン 4000
S・トリガー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分のクリーチャーを1体選び、残りを手札に戻す。その後、相手はバトルゾーンにある自身のクリーチャーを1体選び、残りを手札に戻す。


「うっ、出ちゃった……」
 現れたのは、《アトランティス》そのもの。巨大なリヴァイアサンである《アトランティス》は、どこからともなく途轍もない激流を放つ。
 《アトランティス》は《ディープ・パープルドラゴン》を場に残し、他のクリーチャーをすべてバウンス。
「じゃあ、私は《コッコ・ルピア》を残すよ」
 次のターンにドラゴンを出しやすくするために《コッコ・ルピア》を残すひまり。
 そしてこの時、アトランティスのクリーチャーが一気に手札へと戻っていったため、《ディープ・パープルドラゴン》の効果が発動する。
 アトランティスは山札を捲る。三体バウンスされたので、捲るのは三回だ。一枚目は《熱湯グレンニャー》、二枚目は《マーシャル・クロウラー》。二枚目が水のカードで、山札の上から移動しないため、三枚目に捲れるのも同じカード。幸運にも、アトランティスは《グレンニャー》を追加しただけだった。
「よかった……相手のシールドは残り一枚だけど、ここは攻撃しないでおこう。ターンエンド」
 ここでアトランティスのシールドをゼロ枚にしておきたいが、《コッコ・ルピア》で攻撃しても殴り返されて破壊されてしまうだけだ。手札にはスピードアタッカーもいないので、ここは攻撃しないでおく。
 そしてアトランティスのターン。アトランティスはここで、さらに巨大な怪物を呼び出す。


マーシャル・クロウラー 水文明 (8)
クリーチャー:アースイーター 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の手札を好きな枚数、新しいシールドとしてシールドゾーンに裏向きにして加えてもよい。その後、同じ数のシールドを自分の手札に加える。
W・ブレイカー


 続けて呼び出されたのは、上半身が美しい女性の姿、しかし下半身は大地を喰らう怪物という、異形のクリーチャー。世界を制した歌姫の力を取り込んだアース・イーター、《マーシャル・クロウラー》だ。
 《マーシャル・クロウラー》は本家《マーシャル・クイーン》と同じく、自分の手札とシールドを入れ替える能力を持つ。まず最初に手札をシールドに置き、次にシールドを置いた枚数だけ手札に戻す。この時手札に加わったシールドは、シールドブレイクと同じ扱い。
 即ち、S・トリガーが発動する。
「うっ……!」
 アトランティスは手札のカードを三枚シールドに置き、置いたカードをすべてそのまま、手札に戻す。勿論、三枚ともS・トリガーだ。
「う、うわわ……」
 一枚目は《アクア・サーファー》。ひまりの場に残った《コッコ・ルピア》がバウンスされる。
「《コッコ・ルピア》が……!」
 二枚目に発動するのは《シークレット・クロックタワー》。山札の上三枚を見て、山札を操作する。
「山札操作……場には《ディープ・パープルドラゴン》がいるし、ってことは次に出て来るのは……」
 それは、ひまりの察した通りのクリーチャーだ。
 三枚目のS・トリガーは、《深海の伝道師 アトランティス》。能力で《ディープ・パープルドラゴン》を残し、自身と《アクア・サーファー》《マーシャル・クロウラー》《熱湯グレンニャー》をまとめてバウンス。
 そして同時に《ディープ・パープルドラゴン》の効果が四回発動する。
 最初に捲れたのは、また《熱湯グレンニャー》だ。次に《火焔タイガーグレンオー》。三回目は《極楽!オンセン・ガロウズ》。そして最後に捲れたのは、ひまりにとっては最悪なクリーチャー《永遠のリュウセイ・カイザー》だった。
「これって、かなりやばいんじゃ……」
 アトランティスの場には、《ディープ・パープルドラゴン》《熱湯グレンニャー》《火焔タイガーグレンオー》《極楽!オンセン・ガロウズ》《永遠のリュウセイ・カイザー》の五体。しかもこれらのクリーチャーは《リュウセイ・カイザー》の能力でスピードアタッカーとなっている。
「ただの大型S・トリガー獣だと思ってたけど、まさか《アトランティス》にこんな使い方があったなんて……!」
 一気に形勢逆転されてしまったひまり。
 アトランティスが従える炎の獣たちは、その牙を彼女へと向ける。