二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ メソロギィ ( No.223 )
- 日時: 2013/12/25 08:01
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
突如現れた《深海の伝道師 アトランティス》とデュエルをすることとなったひまりは、絶大な危機に直面していた。
ひまりの場には何もないが、シールドは五枚ある。
対するアトランティスは、シールドこそ一枚だが、バトルゾーンには《ディープ・パープルドラゴン》と《深海の伝道師 アトランティス》のコンボで一気に展開した《熱湯グレンニャー》《火焔タイガーグレンオー》《極楽!オンセン・ガロウズ》《永遠のリュウセイ・カイザー》と、《ディープ・パープルドラゴン》の五体。しかもこの五体は《リュウセイ・カイザー》の能力ですべてスピードアタッカーだ。
「まずい、このままじゃ……」
S・トリガーを引かなければ、ひまりの敗北は確定する。
そう思った直後、《オンセン・ガロウズ》によるシールドブレイクが叩き込まれる。
極楽!オンセン・ガロウズ 水/火文明 (7)
クリーチャー:サイバー・コマンド/フレイム・コマンド/エイリアン 4000+
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
自分のマナゾーンに水のカードが3枚以上あれば、このクリーチャーは「S・トリガー」を得る。
自分のマナゾーンに火のカードが3枚以上あれば、このクリーチャーのパワーは+4000され、「W・ブレイカー」を得る。
自分のマナゾーンに水または火のカードが合計7枚以上あれば、このクリーチャーは「このクリーチャーがシールドをブレイクする時、そのシールドをかわりに持ち主の山札の一番上に置く」を得る。
勿論、アトランティスのマナゾーンには火のカードが三枚以上、水のカードと合わせて七枚以上あるため、三つの能力のうちあとの二つが発動する。
《オンセン・ガロウズ》はWブレイカー、そしてブレイクしたシールドは山札の上へと送還されてしまう。
実質、ひまりはS・トリガーの可能性を半分近く削り取られてしまったことになる。
「残るシールドは三枚……この数のクリーチャーを何とかできる……?」
続けて《リュウセイ・カイザー》の剣が振り下ろされる。ひまりのシールドは二枚ブレイクされたが、今度のシールドは手札に入る。そしてそのうち一枚が、光り輝く。
「っ、来た! S・トリガー《ナチュラル・トラップ》! 《リュウセイ・カイザー》をマナゾーンに!」
大地へと取り込まれる《リュウセイ・カイザー》。これで残る《グレンニャー》と《タイガーグレンオー》は攻撃できなくなる。
だが最後に、《ディープ・パープルドラゴン》の攻撃があった。これで、ひまりのシールドはゼロ枚となってしまう。
「まだ……S・トリガー発動! 《ジャジャーン・カイザー》!」
ジャジャーン・カイザー 火文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター 4000
S・トリガー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト6以下の相手の、「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体破壊する。
トリガーでドラゴンが出たが、アトランティスの場にはブロッカーがいないので、効果は発動しない。
「私のターン」
なんとかアトランティスの猛攻を凌ぎ切ったひまり。しかし、状況が劣勢なのは変わらない。スピードアタッカーが引ければこのターンでとどめを刺せたのだが、引いたのは《コッコ・ルピア》。
(しかも、相手の手札には《アトランティス》《マーシャル・クロウラー》ついでに《アクア・サーファー》とかも握ってるから、こっちのクリーチャーは全部手札に戻されちゃう。《ディープ・パープルドラゴン》でクリーチャーも増えるし、どうにかしてこのターンで決めないと……)
《深海の伝道師 アトランティス》と《ディープ・パープルドラゴン》、さらにその二体のコンボを起動する《マーシャル・クロウラー》と、こちらの残ったクリーチャーを除去するための《アクア・サーファー》。これらのクリーチャーの能力を組み合わせたコンボは、非常に強力だ。上手くはまれば、さっきのひまりのようにワンショットキルにすらなりうる。
「このターンで決める方法……やっぱり、これしかない! まずは《コッコ・ルピア》召喚!」
まず最初に《コッコ・ルピア》を召喚する。そして、
「次に《闘龍鬼ジャック・ライドウ》召喚! その効果で《ジャック・ライドウ》と同じ種族の進化クリーチャーを手札に加えるよ。来て、《アポロン》!」
山札からサーチするのは、やはり《アポロン》。そしてひまりの場には、ファイアー・バードの《コッコ・ルピア》と、二体の火のクリーチャーが並んでいる。
「《コッコ・ルピア》《ジャック・ライドウ》そして《ジャジャーン・カイザー》の三体を、進化MV! 出て来て、《アポロン》!」
三体のクリーチャーを包む爆風と爆炎から現れたのは、《太陽神話 サンライズ・アポロン》。
「これで決める! 《アポロン》で攻撃! その時、山札の一番上を捲って、それがファイアー・バード、ドラゴン、火文明のクリーチャーのいずれかならバトルゾーンに出せる!」
《アポロン》は小型太陽のエネルギーを凝縮。その際に発生する熱風で山札の一番上を吹き飛ばし、ひまりがそれをキャッチ。
「来たよ。《インフィニティ・ドラゴン》をバトルゾーンに! 《アポロン》で最後のシールドをブレイク!」
エネルギーの充填が終わり、凄まじい熱線がアトランティスの最後のシールドを突き破る。しかしそのシールドは、光に包まれた。
S・トリガーだ。
「最後の最後に出て来たね……!」
現れたのは《深海の伝道師 アトランティス》。
その能力で、《アトランティス》はどういうわけか自身を残し、他のクリーチャーを手札に戻した。同時に《ディープ・パープルドラゴン》の能力が四回発動し、《爆竜ンゴロ・ンゴロ》《熱湯グレンニャー》《戦攻竜騎ドルボラン》そして二体目の《ディープ・パープルドラゴン》が場に出る。
そしてひまりも自身のクリーチャーを手札に戻すのだが、ここでひまりが《アポロン》を残せば、《インフィニティ》はいなくなり、とどめまで行けない。しかし《インフィニティ》を残せば《アポロン》が消え、スピードアタッカーでなくなってしまう。
ひまりの命運もここで尽きたかに思われたが、しかし両方のクリーチャーを場に残せるのなら、その限りではない。
「残念だけど《インフィニティ・ドラゴン》の能力発動! 自分のドラゴンが場を離れる時、山札の一番上を墓地に置いて、それがドラゴンかファイアー・バードなら場にとどまる!」
ひまりは《アポロン》を残すことを選択し、《インフィニティ》がバウンスされる。ここで《インフィニティ》の能力が発動し、ひまりは山札の一番上を墓地へ。
「《エコ・アイニー》——ファイアー・バードだから、《インフィニティ》は場に残るよ」
さらに《ドルボラン》の能力で《アポロン》がバウンスされそうになるが、ここでも《インフィニティ》の能力が発動。
「今度は《ボルシャック・NEX》だよ。ドラゴンだから、《アポロン》は生き残る。さあ、もう除去は弾切れかな?」
《アトランティス》にはもうシールドがない。手札は豊富だが、そんほとんどが《アトランティス》の能力で戻したクリーチャーなので、シノビを握っているとも考えにくい。
無防備な状態を晒す《アトランティス》に、《インフィニティ》は飛翔する。
そして、《アトランティス》に向けて砲門を開いた。
「《インフィニティ・ドラゴン》で、ダイレクトアタック!」
神話空間が閉じ、ひまりが現実世界へと戻る。
「ふぅ……危なかったぁ」
一息吐くひまり。そんなひまりに、流は歩み寄る。
「大丈夫か?」
「え? うん、大丈夫だよ。ちょっと危なかったけど、なんとか勝てた」
ピースサインを送りながら微笑むひまり。顔には出さないが、それで流もホッとする。
「あ、それよりさ。これあげるよ」
そう言ってひまりは、流に一枚のカードを差し出す。
「《深海の伝道師 アトランティス》……?」
「うん、さっき私が戦ってたクリーチャーだよ」
「……それはお前が勝ち取ったものだろう。俺に受け取る資格はない」
ひまりの申し出を拒否する流。しかし、それに対してひまりは吹き出す。
「あはは! 汐ちゃんと同じことを言うね、流君は。資格とかそんな難しいこと考えなくてもいいよ。私にはこのカードは使いこなせないだろうし、私のデッキにも合わないからさ。それなら流君の方がうまく使ってくれると思うんだ。ほら、流君ってリヴァイアサンとか好きなんでしょ? 前にリヴァイアサンのデッキを使ってたって聞いたよ。やっぱりカードも使ってくれる人がいないとかわいそうでしょ」
「…………」
はっきり言って、リヴァイアサンを好む流には、《アトランティス》は魅力的だ。ひまりよりも上手く扱う自信もある。
だからだろうか、流は半ば無意識に、差し出されたカードを受け取っていた。
「……すまないな。ありがたく貰っておく」
「いいよいいよ、受け取って。それよりさ」
ひまりはにんまりと笑って、流に詰め寄る。
「私のこと、ひまりって呼んでよ。お近づきの印っていうかさ」
「いや、それは……」
いつもはクールな流も、困ったような表情になる。
「ほら、呼んでみて。ひまりって、ひーまーり!」
「っ……」
どんどん詰め寄ってくるひまりに、流はたじたじだ。そっぽを向いてひまりを視界に入れないようにする。
「照れてるの? あはっ、流君ってクールに見えるけど、意外と可愛いとこあるんだね」
「……お前は、やっぱり苦手だ」
そう言うと、流はひまりに背を向け、そのまま速足で去ろうとする。
「あ、待ってよ! 流君!」
逃げるように去っていく流を、ひまりは追いかける。
なんだかんだ言って、この二人は意外と相性が良いのかもしれなかった。