二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ メソロギィ ( No.224 )
日時: 2013/12/25 14:02
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 日に日に深まっていく夕陽たちとひまりの親交。このみや姫乃、汐だけにとどまらず、聞くところによると流とも仲良くなっている模様だ。
 そんなことはともかく、今日この日、夕陽たちとひまりはこのみの家——即ち、カフェ『popple』に来ていた。
「なんか喫茶店にデュエマ・テーブルがあるって凄い違和感だけど……使ってみるといいね、これ」
 ひまりの感想は、わりと好評だった。そもそもひまりはあまり酷評をしないのだが。
「うーん、やっぱりまりりんせんぱいには勝てないなぁ……ホームなら勝てると思ったのに」
「デュエマにホームも何もないだろ」
 というか、このみはひまりのことを、まりりんせんぱいなどと呼んでいるのか、と初めて知った夕陽だった。基本的に三音以上の名前を記憶できないこのみにしては長い愛称をつけたものだ。
「このみー、ちょっと来て」
「ん? どしたのー、おねーちゃん」
 このみは姉、木葉に呼ばれ、ぱたぱたとカウンターへ向かう。
 ひまりたちと談笑するこのみだが、今は営業時間帯だ。客の出入りは少ないものの、本来ならこのみは給仕をしなければならない立場にいる。ちなみに、姫乃は普通に働いていた。
「木葉さん、だっけ? すっごいい美人さんだよね……同じ日本人とは思えないよ」
「まあ、このみの姉ですし、容姿に関しては姉妹揃って、って感じですね」
 しばしば現実離れしている、アニメからそのまま飛び出した、などと形容されるこのみ。だが姉である木葉も、ベクトルは違うものの一般的な女性の容姿とは一線を画していた。
 一言で言ってしまえば、美人。このみがアニメから飛び出したのなら、木葉はドラマから飛び出したような美人だ。このみがアイドルかアニメキャラならば、木葉は女優かモデル、と言ったところか。
「スタイルもいいし」
「まあ……このみの姉ですからね」
 体型に関しては、このみほど現実離れはしていないが、日本人離れはしている。このみがアニメキャラ、木葉がモデルという風に比較されるのも、無理からぬ話である。
 木葉と言葉を交わしていたこのみは、夕陽に身振り手振りでサインを送ると、カウンターの奥、店の勝手口から外に出て行った。
「このみ先輩は、なんて」
「ちょっと待ってて、だってさ」
「え、今の仕草で分かるんだ……凄いね、夕陽君」
「付き合いだけは長いですからね」
 もう少し距離が近ければ、アイコンタクトだけでも意思疎通は可能だ。ちなみに、意思疎通と言ってもこのみの理解力がなさすぎるせいで、夕陽の意思はまったく疎通されない。一方的な意思疎通である。
「ちょっと待ってて、か。何だろうね」
「勝手口から出て行ったんで、ゴミ捨てとか商品の運び出しとか、そんなところでしょう。デュエマでもして待ってればいいですよ」
 ちょうど紅茶を飲み終えた夕陽は、デッキケースを手にしてデュエマ・テーブルに着く。だが、ひまりは、
「んー……ちょっと席外すね」
「え? はぁ……どこ行くんですか?」
「秘密、女の子にそういうこと訊かないの。ま、何もなければすぐ戻るよ」
 と言うや否や、ひまりは店から出て行ってしまった。
「なんだろ……ま、いいか。御舟、二人が戻るまで相手してよ」
「了解です」



 店の裏側、人通りのない裏路地で、このみは段ボールを積み上げていた。
「ふぅ、とりあえずここに置いとけばいいかな」
 夕陽が言ったように、このみは新しく入荷する商品の整理をしていた。整理というより、ただ邪魔にならないところに置いているだけだが。
「さてと、おねーちゃんに言われたことはこれで全部だし、はやくゆーくんやまりりんせんぱいのとこに戻ろう——」
 と、その時だ。

 黒い影が、このみの目の前を高速で通過する。

「わっ、なに……?」
 虫や鳥ではない。それにしては大きすぎる。
 黒い影はひゅんひゅんと動き回り、このみの目では追えない。その姿を視認できないでいる。
 だが、やがてその黒い影は動きを止める。
「な、なにこれ……クリーチャー……?」
 それは、小さな妖精のような出で立ちだった。背中や頭部の大きな飾り、服装など、民族的な意匠。左手には軍配団扇のような杖を携えている。
 見るからにその姿は、クリーチャーそのものだ。
「クリーチャーが実体化してるってことは、前にゆーくんが言ってた【師団】……?」
 あまりよく覚えていないが、近頃クリーチャーが実体化して襲い掛かってくることが多いらしい。それに【師団】という組織がかかわっているようだが、このみの理解力では大したことは分かっていない。
 しかし、目の前のクリーチャーが敵であることだけは分かった。
「……よーし、だったらあたしが——」
 デッキケースを取り出し、好戦的な視線を向けるこのみ。しかし、

「待って!」

 このみとクリーチャーの間に割って入るように、人影が飛び込む。
「まりりんせんぱいっ? え? どしたの? なんでここに?」
「ちょっと気になって……まあ、予想通りクリーチャーが実体化してるみたいだね。ここは私に任せて」
 と言うと、ひまりはこのみの返答を待たずに神話空間へと入ってしまった。
「……行っちゃった」