二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.27 )
日時: 2013/07/07 13:24
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://dm.takaratomy.co.jp/card/search/

 今はデュエル中で、記のターン。
 ゲームにおける戦闘を行っている最中にそのゲームの説明をするというのは、言わば大きな大会でデュエマをしながらその大会のルール説明をするようなものだが、それはさて置き。
 記があまりに長々と話すものだから、汐も我慢できずい苦言を呈し、記は特に悪びれた風もなくターンを進める。
「僕はお喋りだからね、少しは大目に見てくれ……じゃ、とりあえず《クゥリャン》を召喚してカードをドローだ」
 記の場には今しがた召喚した《クゥリャン》と《予言者フィスタ》が二体、《予言者シュウ》が一体と、やたらとブロッカーを並べた防御的な姿勢。
 対する汐の場には《ブラッディ・イヤリング》《電脳封魔マクスヴァル》《古の羅漢バグレン》がそれぞれ一体ずつ。シールドはどちらも五枚ある。
(しかし、本当にクリーチャーが実体化するとは……にわかに信じがたいです)
 ふとそんなことを思う汐だったが、しかしこの状況では信じないわけにはいかない。
 記がターンを終え、汐にターンが回ってくる。
「……とりあえずは、これです。《凶刻の刃狼ガルヴォルフ》を召喚です」


凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ 闇文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、種族をひとつ選び、相手の手札を見る。その中から、選んだ種族を持つカードを1枚選んでもよい。そうした場合、相手はそのカードを捨て、自分自身のシールドを1枚選んで墓地に置く。
W・ブレイカー


 《ガル・ヴォルフ》を召喚し、汐は場を見渡す。彼女の視線は記のバトルゾーン、マナゾーン、墓地と順番に移動し、一度その目を閉じた。
「場から考えて、あなたの手札にあるのはライト——いえ、サイバーロードですね」
 ライトブリンガー、と言いかけて修正する汐。その咄嗟の変更に少しだけ驚いたような表情を見せた記は、手札を公開する。
「勘がいいね。見ての通り、僕の手札にライトブリンガーはいない。捨てるのはこの《コーライル》でいいよね?」
「はいです」
 捨てられる中では最も厄介そうな《コーライル》を墓地に送り、記のシールドが一枚、《ガル・ヴォルフ》に切り裂かれる。
「そして、《バグレン》でシールドをブレイクです」
「《予言者シュウ》でブロック」
 《バグレン》は腰から刀を抜いて振りかざし、シールドへと駆けだす。だがその間に《シュウ》が割り込み、《バグレン》の一閃を止めたが、すぐさま破壊されてしまう。
「やるねぇ僕のターンだ」
 デッキからカードを引き、記の表情が少しだけ緩む。
「ちょうど良いところに来てくれたよ。手札がやられて困ってたんだ。《クゥリャン》進化、《エンペラー・マルコ》!」


エンペラー・マルコ 水文明 (5)
進化クリーチャー:サイバーロード 6000
進化—自分のサイバーロード1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを3枚まで引いてもよい。
W・ブレイカー


 記は《マルコ》の効果で、《ガル・ヴォルフ》に削られた手札の穴埋めをするかのようにカードをドローする。
「さて、それじゃあ一応ブロッカーもいることだし、ここは攻めようかな。《エンペラー・マルコ》で《古の羅漢バグレン》を攻撃!」
「《ブラッディ・イヤリング》でブロックです」
 先端が球状になった触手のようなコードを伸ばして《バグレン》に襲い掛かるが、《ブラッディ・イヤリング》が体を張ってその攻撃を防ぐ。残念ながら《ブラッディ・イヤリング》のパワーは《バグレン》で弱体化した《マルコ》にも及ばず、一方的に破壊されてしまった。
「ターンエンド、君の番だよ」
「言われるまでもないです」
 記の一言一句に僅かな苛立ちを感じながら、汐はカードをドロー。
(あちらさんのデッキは、見たところ水と光のコントロールデッキ。ここまででまともにアタッカーと言えるようなクリーチャーは《エンペラー・マルコ》のみ……《ヘブンズ・ゲート》が主体ならエンジェル・コマンドでしょうし、《マルコ》の存在からしてサイバー系統をフィニッシャーに据えているのでしょうか)
 冷静に相手を分析しながら、汐は今しがた引いて来たカードをを一瞥。マナをタップする。
「召喚です《死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル》」


死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド 6000
相手のクリーチャーが破壊された時、自分の山札をシャッフルした後、上から1枚目を表向きにする。そのカードが進化ではないデーモン・コマンドであれば、バトルゾーンに出す。それ以外の場合、自分の手札に加える。
W・ブレイカー


「《ベル・ヘル・デ・ガウル》か……また厄介なのが出て来たね。怖い怖い」
 と言う記の表情は、怖がっているというより、明らかに面白がっている風だった。
 そんな記を無視して、汐は攻撃を宣言。
「《ガル・ヴォルフ》で《エンペラー・マルコ》を攻撃です」
 《ガル・ヴォルフ》の四つの刃が《マルコ》を魂まで切り裂く。そして《マルコ》は水泡のようなものを発しながら消滅した。
「やられたか……ってことは」
 《死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル》の効果が発動する。
「《ベル・ヘル・デ・ガウル》の効果発動です。《マルコ》が破壊されたことでデッキをシャッフルし、その一番上を捲ります」
 汐がデッキを手に取ろうとすると、デッキはスッと浮かび上がり、自らカードをシャッフルし始めたため、おとなしく手を引き戻した。
 シャッフルが終わり、汐はデッキの一番上を表向きにする。
「来たですよ《死神の邪険デスライオス》。効果で《デスライオス》を破壊です」
 《死神の邪険デスライオス》は、登場時に相手クリーチャーを自分の死神諸共道連れにするクリーチャー。要するに、自分の死神と相手のクリーチャーをそれぞれ破壊するのだ。
「僕は《フィスタ》を破壊するしかないね。効果で《フィスタ》はデッキボトムに行くけど……」
「《ベル・ヘル・デ・ガウル》の効果発動です」
 《フィスタ》の効果はあくまで、墓地に行くかわりにデッキの底へと行く能力。破壊を免れるわけではないので、《ベル・ヘル・デ・ガウル》の効果はきっちり発動する。
「デッキをシャッフルして一番上を捲り、デーモン・コマンドならそのまま登場ですよ」
 と言って再び山札の一番上を表向きにするが、今度のカードは《電脳封魔マクスヴァル》だった。
「外しちゃったねぇ」
「…………」
 挑発するような記と、黙って《マクスヴァル》を手札に加える汐。
 《ガウル》の二度目の効果は上手くはまらなかったが、しかし汐の攻撃は終わっていない。
「《古の羅漢バグレン》でシールドをブレイクです」
 《バグレン》が刀を抜き、地を蹴って特攻。記のシールドを切り裂く。同時に《バグレン》が薙いだ衝撃波が記に襲い掛かった。記はそのダメージに少しだけ呻いたが、すぐに軽薄な笑みを浮かべて何事もなかったかのように取り繕う。
(本当にダメージがプレイヤーに返って来るんですね……それにしても嫌な感じです)
 記が、ではない。いや記も嫌な奴ではあるが、汐の感じているのは嫌な気配、とでも言うべきものだ。その気配が記か、もしくは記のカードから伝わってくる。
(ここまでは概ね良好な流れです……ですが)
 まだ気は抜けない。
 彼の奥に見える巨大な影の正体を掴むまでは——