二次創作小説(紙ほか)
- デュエル・マスターズ メソロギィ 第二回オリキャラ募集 ( No.270 )
- 日時: 2013/12/30 06:54
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
九頭龍が手札から唱えたのは、《運命》だった。
「《ベートーベン》専用のアタック・チャンス呪文である《運命》を、手打ちだと……?」
完全に盲点だった。九頭龍のデッキはマナ加速カードが多いため、普通にプレイングしているだけでも10マナ程度ならわりと簡単に溜まってしまう。なら、《ベートーベン》がいない時や手札が枯渇している時に、手札から普通に唱えることもあり得る。
「山札から五枚ドロー……さあ黒村さん、選択の時ですよ。あなたの運命、あなた自身で決めてください」
九頭龍の引いた五枚のカードが、黒村の前に並ぶ。最高で三体のドラゴンが並んでしまうわけだが、運が良ければすべて外れることもある。とはいえ、九頭龍のデッキのドラゴン比率から考えて、すべて外れは期待できない。ならば強力なキング・コマンド・ドラゴンではなく、通常のドラゴンを一、二体程度が、黒村の望むところだ。
「……ならば、この三枚だ」
黒村は中央の三枚を選択。その三枚はその場に残り、残る二枚は九頭龍の手元へと戻ってきた。
「分かりました……では、公開です」
偽りの王 ヴィルヘルム 闇/火/自然文明 (9)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 12000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のクリーチャーを体破壊する。その後、カードを1枚相手のマナゾーンから選び、持ち主の墓地に置く。
相手のカードがどこからでも墓地に置かれた時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。
T・ブレイカー
真実の王(トゥルーキング) ヴィオラ・ソナタ 無色 (9)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 12000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のクリーチャーを1体、破壊する。その後、進化ではないドラゴンを体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
T・ブレイカー
自分の進化ではないドラゴンが破壊される時、墓地に置くかわりに、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに裏向きにして加える。
現れたのは、三体ともドラゴンだ。《偽りの王 ヴィルヘルム》《真実の王 ヴィオラ・ソナタ》そして《黒神龍オドル・ニードル》。強力なキング・コマンド・ドラゴンが二体も出て来てしまった。
「これがあなたの選んだ運命ですか……この組み合わせは最悪ですね。黒村さん、もしかしたら明日にでも死ぬんじゃないですか?」
軽く冗談めかして言う九頭龍だが、黒村にとってこの状況は冗談でもなんでもない。自身の選んだ運命そのものだ。
「さて、まずは《ヴィルヘルム》の能力で《ホネンビー》を破壊、マナゾーンの《リバース・チャージャー》も墓地送りです。そして相手のカードが二枚墓地に落ちたので、《ヴィルヘルム》の能力で2マナ加速します」
相手のカードがどこからでも墓地に落ちればマナを追加できる《ヴィルヘルム》。派手さはないものの、存在しているだけで膨大なアドバンテージを獲得できる能力は、やはりキング・コマンド・ドラゴンらしく強力だ。
「続いて《ヴィオラ・ソナタ》の能力を発動させますよ。こちらも《ホネンビー》を破壊、そして墓地からドラゴンを復活させます。復活させるのは《メッサダンジリ・ドラゴン》です」
序盤に手札から叩き落とした《メッサダンジリ》が、真実の名を得たキング・コマンド・ドラゴン《ヴィオラ・ソナタ》の力で蘇る。
「これで《ヴィルヘルム》と《ヴィオラ・ソナタ》はスピードアタッカー、黒村さんの場にもブロッカーはいないけど、《オドル・ニードル》が攻撃できないから、このターンにとどめまではいけない……手札を与えて逆転されるのも嫌ですし、ここはターン終了です。どの道、あなたはもう僕を倒すことはできませんしね」
意味深なことを言ってターンを終える九頭龍。黒村は、顕著に出したりはしないが、内心かなり焦っていた。
(《ヴィオラ・ソナタ》と《オドル・ニードル》……確かに、俺の運命は最悪の道だったようだな)
パッと見れば、ここで黒村がアンノウンでない《オドル・ニードル》を選択したことで、ダイレクトアタックを免れたように見える。それはそれで事実だが、この組み合わせは最悪なのだ。
(《ヴィオラ・ソナタ》はドラゴンが破壊される時、墓地に行く代わりにシールドに埋める。そして《オドル・ニードル》はS・トリガーのドラゴン、攻撃目標を強制的に変更させ、バトルを行えば相手もろとも自身も破壊される)
つまり、巨大なドラゴンを無視して九頭龍に攻撃しようにも、その攻撃対象を《オドル・ニードル》に固定されてしまい、確実のこちらのクリーチャーが破壊される。しかも《オドル・ニードル》は《ヴィオラ・ソナタ》の能力でシールドに埋め込まれ、そのシールドをブレイクしようものならまた《オドル・ニードル》が飛び出す。そしてその《オドル・ニードル》を破壊すれば、またしてもシールドになり、ダイレクトアタックを阻む。
つまり、《オドル・ニードル》を破壊以外の方法で除去するか、《ヴィオラ・ソナタ》を先に除去しなければ、黒村は九頭龍にダイレクトアタックを決められないのだ。しかも《ヴィオラ・ソナタ》自身もシールドに戻るため、すぐにとどめを刺さないとリカバリされてしまう点も厳しい。
(生憎、俺の手札に除去カードはない。ブロッカーを並べて凌ぐのもいいが、俺の手札は少ないし、ただの時間稼ぎにしかならないからな……)
黒村はちらりとシールドを見遣った。まだ五枚フルに残っている。
「……確実性に欠けることはしたくないんだが、ここは賭けるしかないか」
仕方ない、と言うようにため息を吐くと、黒村は手札にある、前のターンに回収したカードを一枚抜き取った。
「全ての果てに残された命は僅かなり、世界と未来の終わりを告げろ——《世界の果て ターミネーター》!」
世界の果て(エンド・オブ・ザ・フューチャー) ターミネーター 闇文明 (8)
クリーチャー:アウトレイジMAX 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を下から5枚を残してすべて墓地に置く。
W・ブレイカー
自分の山札の最後の1枚を引く時、かわりにカードを1枚、自分の墓地から手札に戻してもよい。
現れたのは、剣を携えた黒龍の如き姿をした闇のアウトレイジ《ターミネーター》だった。その凶暴なおぞましい風貌や、狂気染みた叫び声は、あらゆるクリーチャーを恐怖させる。
だが、彼が《世界の果て》などと呼ばれるのはそんな理由ではない。もっと根本的なところにあり、それは彼の力そのものであった。
「《ターミネーター》の能力発動! 山札の下から五枚を残し、残りをすべて墓地へ!」
黒村のデッキは、一番下の五枚を残し、すべて墓地へ落ちてしまった。
山札を大きく削るこの能力こそが、《世界の果て ターミネーター》の名の由来だ。これで黒村は山札切れで負ける可能性すら生まれてきたが、しかしそんなことを気にする余裕はない。山札切れ以前に、次のターンを生き延びられるかが黒村には重要だ。
「さらに《ブラッドレイン》で《オドル・ニードル》を攻撃!」
《ブラッドレイン》は《オドル・ニードル》へと突っ込む。バトルは《ブラッドレイン》の負けだが、《オドル・ニードル》はバトルをすれば問答無用で破壊される。
「でも、《ヴィオラ・ソナタ》の能力で《オドル・ニードル》はシールドへ。もしかして黒村さん、この二体の関係について分かってないんですか?」
「そんなわけないだろう。無論分かっている。どの道、《オドル・ニードル》は邪魔だ。ターンエンド」
これでターンを終える黒村。しかしこれでは、九頭龍のターンにとどめを刺されてしまう。
「もしかして、運を天に任せてS・トリガー頼みですか? らしくないですね」
「分かっている。俺だって、こんなギャンブル染みた真似、したくてやっているわけではない」
だが、今の黒村にはこれしか打つ手がない。ならば、その手で行くしかない。
もし次のターン凌ぎ切ることができれば、それは、黒村の勝利に繋がるのだから。