二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.30 )
- 日時: 2013/07/11 01:46
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://www27.atwiki.jp/duel_masters/pages/1.html
賢愚神話 シュライン・ヘルメス 水文明 (7)
進化クリーチャー:メソロギィ/サイバーロード/リキッド・ピープル 14000
進化MV—自分のサイバーロード一体と、水のクリーチャー二体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー(このクリーチャーの下にある、このクリーチャーと同じ文明のすべてのクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCD能力を得る)
CD4:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるクリーチャーを一体選び、持ち主の手札、または山札の一番上か一番下に戻してもよい。
CD9:自分のターンに相手がクリーチャーをバトルゾーンに出した時、または呪文を唱えた時、それを無効にし持ち主の墓地に置いてもよい。この効果はそれぞれ一回ずつ使うことができる。
CD12:相手のターンに相手がクリーチャーをバトルゾーンに出した時、または呪文を唱えた時、それを無効にし持ち主の墓地に置いてもよい。このこうかはそれぞれ一回ずつ使うことができる。
Tブレイカー
現れたのは若い男の風貌のしたクリーチャー。
全身に輝く氷を鎧の如く纏い、飛沫を散らす水の外套を羽織っている。頭部にある帽子のような装飾と具足からは凍てつく羽が生え、両手にはそれぞれ湾曲した液状の剣と水流の巻きついた杖を携えていた。
そのクリーチャー、《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》は、記と同じように軽薄で邪悪な笑みを浮かべ、汐とそのクリーチャーを嘲笑うかのように見下ろしている。
「どうだい? これが僕の『神話カード』、《ヘルメス》だ。こいつの力は、他の『神話カード』とは一線を画す……と言っても、僕も全部のカードを知ってるわけじゃないけどね——僕が知ってる十二神は、ファイアー・バード、ヒューマノイド、スノーフェアリー、サイバーロード、ダークロード、ゴースト、メカ・デル・ソル、ガーディアンの八体だ——それでも《ヘルメス》の力は、十二の神々の中じゃあ最強クラスに匹敵するんじゃないかな?」
また冗長に語る記。だが汐は、それを咎めることはしなかった。
(この感じ……間違いないですね。これがさっきの悪寒の正体ですか……)
ずっと感じていた不吉な気配。それは間違いなく、目の前に鎮座する《シュライン・ヘルメス》が発しているものだ。
「さ、て、と。お喋りはこれくらいにして……いや、たぶん無理だけど、とにかくデュエマを進めようか。まずは《ヘルメス》のコンセンテス・ディー能力、CD4! 《狼虎サンダー・ブレード》をデッキボトムへ!」
《ヘルメス》が杖を振るう。すると次の瞬間、杖に巻きついていた水流が《サンダー・ブレード》を取り囲み、山札の底へと誘う。
「っ、《サンダー・ブレード》が……」
「さらに、《魂と記憶の盾》! 《死神の邪蹄ベル・ヘル・デ・ガウル》をシールドに!」
「《ベル・ヘル・デ・ガウル》まで……」
一気に大型クリーチャーを消されてしまった汐。しかも記のターンはまだ終わらない。
「いよいよアタックステップだよ。まずは《ホルルン》で《炎獄の剛魔ビルギアス》を攻撃!」
「《ブラッディ・イヤリング》でブロックです」
「まだ終わらないよ。続いて《予言者コロン》でも攻撃だ」
《コロン》の雷と《ビルギアス》の炎がぶつかり合い、双方共に消滅する。記の場はこれで《ヘルメス》だけになったが、汐の場も《ブラッディ・イヤリング》と《コロン》でタップさせられた《電脳封魔マクスヴァル》しかいない。
「《ヘルメス》でT・ブレイク!」
「《ブラッディ・イヤリング》でブロックです」
《ヘルメス》が湾曲した水の剣を振るい、《ブラッディ・イヤリング》は切り裂かれる。
これで、汐の場には《マクスヴァル》だけとなる。
「まずいことになってしまったようですね……なんとかしないと」
デッキからカードを引く汐。とりあえず、《ヘルメス》さえ除去できれば態勢は立て直せるはずだ。そして幸いなことに、ちょうどそのカードを引くことができた。
「呪文、《デーモン・ハンド》を発動です。効果で《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》を——」
と、その時、汐の言葉が途切れる。
理由は一つ。カードから黒い悪魔のような手が飛び出した、それ自体は別段なんとも思わない。流石にもう慣れた。だがその手が《ヘルメス》に襲い掛かろうとした瞬間——氷結したのだ。
「え……」
「ふふ、無駄だよ。そういうのは、《ヘルメス》には効かないんだ」
ボロボロと崩れていく、凍りついた悪魔の手。同時に《デーモン・ハンド》のカードは墓地へ送られる。
「呪文の発動を禁じる効果、ですか……ならば守りを固めるまでです。《マクスヴァル》を召喚——」
また汐の言葉が途切れた。理由は簡単だ、召喚した《マクスヴァル》が凍りつき、その場で崩れ落ちたからだ。
「な……っ」
唖然とする汐。その光景を見て、記は堪え切れなくなったかのように噴き出した。
「ははは! いやー、何度見てもこういう光景は面白いね。だから無駄なんだよ、そういう時間稼ぎみたいなのはさ。《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》の効果は、お互いのターン中に一回だけ、相手のクリーチャーの召喚と呪文の詠唱を無効化できるんだ」
つまり、相手ターンに召喚と呪文を一回ずつ無効にし、自分のターンでもそれらを一回ずつ無効化できる能力。
それを聞き、汐は無感動な瞳を見開く。
「そんな……そんなの、おかしいですよ……」
明らかにパワーバランスを無視している、強力すぎる能力。その事実は、汐を愕然とさせた。
デュエル・マスターズの基本はクリーチャーの召喚と呪文の詠唱。これはデュエル・マスターズというカードゲームが生まれた当初から存在するカードであり、戦術だ。それを根本から、両方を封じてしまうようなカードは、本来なら制作すらされないだろう。
だが、それを肯定した上で記は言う。
「いやまあ、確かに強いんだけど、進化元のコスト合計が12以上じゃないと発動しないからね。軽いサイバーロードにとってはなかなか骨だよ」
そう、《ヘルメス》の能力が以下に強力でも、その力を全て発揮しようとするなら、三体の進化元となるクリーチャーのコストがそれなりに重くなければならない。だから記は《エンペラー・ベッシークーン》で進化元を入れ替え、最終的に《ヘルメス》の下に置かれるクリーチャーのコスト合計を調整していたのだ。
なにはともあれ、《デーモン・ハンド》と《マクスヴァル》の召喚は無効にされた。勿論、支払ったマナは戻ってこない。汐の手札には、残った僅かなマナで呼び出せるクリーチャーは存在しないため、これでターン終了となる。
「僕のターン……じゃ、一気に決めちゃうかな」
と言って、記は手札から二枚のカードを抜き出す。
「まずは《斬隠テンサイ・ジャニット》を召喚! 《マクスヴァル》をバウンス! そして進化《エンペラー・マルコ》!」
バウンスから進化、そして手札補充。流れるようなプレイングだ。
その流れに酔いしれるように調子の上がってきた記は、嘲るような笑みを露わにする。
「さあ、そろそろゲームセットだよ。愚行の賢者の力、たっぷり味わっていってね」
立ち塞がる賢愚の神が、知識の化身と共に汐に襲い掛かる——