二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.303 )
- 日時: 2014/01/02 03:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「っ……」
夕陽が引いたカードは《超次元の手ブラック・グリーンホール》だった。そのカードを見て、夕陽は悔しそうに噛みしめる。
夕陽がここで引き当てたかったカードはいくつかあるが、つまり場に二体揃っているサイキック・セルの三体目を揃え、覚醒リンクさせたかったのだ。そのサイキック・クリーチャーを呼び出すための超次元呪文を引きたかったが、残念ながら引けなかった。
(ここで《ブラック・グリーンホール》かよ……せめて《グリーンレッド・ホール》が来れば、マナゾーンから超次元呪文を回収できたのに……!)
そもそも《フォーエバー・カイザー》がいる時点で相手プレイヤーには攻撃できないのだが、しかし巨大なクリーチャーが一体いるのといないのでは、精神的にも状況は変わってくるものだ。
(どうせ手札はこれ一枚だし、墓地のクリーチャーをマナに置けるんだから、このカードをマナに置くよりサイキック・クリーチャーを出した方が遥かに合理的だ。でも、どいつを呼び出す……?)
候補は二つ。一つは相手クリーチャーをロックする《勝利のプリンプリン》。もう一つはブロッカーの《時空の踊り子マティーニ》だ。
(除去カードが少ないって言っても、相手にはまだ手札があるし、除去カードを引かないとも限らない。《デトロイト・テクノ》がいるからマナに困ることもないだろうし、ブロッカーじゃあ返しのターンに除去される可能性がある。だったら《勝利のプリンプリン》を出して《サスペンス》をロックする方が確実でいい)
しかし、
(そうすると、もし次のターンに《グリーンレッド・ホール》を引いた時に困る。僕のデッキ——超次元ゾーンにある自然のサイキックは《プリンプリン》だけ。一応、二枚積んであるけど、一体は場にいるから、もう一体を出したら自然のサイキックが超次元ゾーンからいなくなって、《グリーン・レッドホール》の効果が発動せず、マナから回収ができなくなる)
超次元グリーンレッド・ホール 火/自然文明 (4)
呪文
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
コスト5以下のサイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
このようにして火のサイキック・クリーチャーをバトルゾーンに出した場合、このターン、バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体はタップされていないクリーチャーを攻撃できる。
このようにして自然のサイキック・クリーチャーをバトルゾーンに出した場合、カードを1枚、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。
(……まあ、ブロッカーを出しても、クリーチャーをロックしても、相手の場にはWブレイカーが四体、Tブレイカーが一体いるわけだから、焼け石に水な感が否めないわけだけど……)
S・トリガーが出ることを前提とし、次にどう動くか。こんなことを考えている時点で、自分も随分と“ゲーム”の世界に染まってしまったな、と夕陽は思った。いつものデュエマなら普通に諦めて適当にプレイしている。
その後も自分の手札と、バトルゾーン、超次元ゾーンを交互に見遣りながら散々悩み、悩み抜き、
「……決めた。呪文《超次元の手ブラック・グリーンホール》発動!」
手札の超次元呪文を発動させる。夕陽が意を決し、呼び出すサイキック・クリーチャーは、
「《時空の踊り子マティーニ》をバトルゾーンに!」
ブロッカーの《マティーニ》だった。
「おや? ここでブロッカーですか……てっきり二体目の《プリンプリン》を出して来ると思ったのですが、まさか除去される恐れのあるブロッカーとは……なにか企んでます?」
「どうだろうな」
内心ではかなり焦っているが、そんなことはおくびにも出さない……とはいかないが、平静を装う夕陽。そもそもS・トリガーが出てくれなければ、夕陽は負けるのだ。焦らないはずがない。
「まあ、なんでもいいですけどね。どの道、このターンで私の勝利です……ああ、しかし安心してください。さっきはああ言いましたが、私たちの目的はあくまで『神話カード』、【ラボ】の研究員でもありませんし、基本的に人物に興味はないのですよ。他の『神話カード』所有者との交渉の材料くらいにはなってもらうかもしれませんが、大人しくしてくださるのなら命の保証くらいはしてあげてもいいですよ?」
余裕な笑みを浮かべながら——実際余裕があるのだろう、ニャルラトホテプはカードをドローする。
「手札もマナをあることですし、このターンなにもせずに終わるのはもったいないですね。なので、まずは3マナで《孫子》を召喚します」
《デトロイト・テクノ》の力で3枚のカードをマナコストにし、《孫子》が召喚される。
「続けて2マナで《舞踏のシンリ マクイル》を召喚します。無色クリーチャーが出たので《孫子》の能力で一枚ドロー。次は《メガギョロン》を召喚して、墓地の《トリプル・ZERO》を回収し一枚ドロー。さらに今引いた二体目の《マクイル》を召喚して一枚ドローです」
アタッカーとブロッカーを同時に増やしていくニャルラトホテプ。手札が減らず、マナもかなり抑えて連続召喚するせいで、一気に場数が倍になった。元から期待はしていなかったが、このターンを凌げたとしても、次のターンに決めなければ負けは確定しそうだ。
一通りクリーチャーを召喚し終えると、ニャルラトホテプは一呼吸置く。そして、
「では……参ります」
攻めに出た。
「まずは《「呪」の頂 サスペンス》でTブレイク! さらにアタック・チャンス発動! 《黄泉秘伝トリプル・ZERO》を二枚発動し、シールド、手札、マナを二枚ずつ追加!」
《サスペンス》から攻撃を仕掛けてきたが、同時にアタック・チャンスで一気にシールドを回復されてしまった。しかしそれでも、夕陽のすることは変わらない。
「《マティーニ》でブロック!」
最初の《サスペンス》の攻撃は迷わずブロックする。Tブレイクだと一撃でシールドをすべて吹き飛ばされるので、流石に受けられない。
「まあ、そうするでしょうね。ならば次は、《真実の名 修羅丸》で攻撃です!」
その時、山札の一番上を捲り、それが進化でない無色クリーチャーならコストを踏み倒して場に出せる。こうしてニャルラトホテプが捲ったのは、
「《真実の名 メガパウンダー・マック》……無色クリーチャーなのでバトルゾーンに!」
真実の名 メガパウンダー・マック 無色 (8)
クリーチャー:ジャイアント/アンノウン 8000
このクリーチャーまたは自分の他の無色クリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分の無色ではないクリーチャーを1体選び、マナゾーンに置く。その後、相手はバトルゾーンにある自身の、無色ではないクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置く。
W・ブレイカー
現れたのは、真実の名に目覚めたジャイアント、《真実の名 メガパウンダー・マック》だ。よりによって面倒な奴が出て来たと、夕陽は顔をしかめる。
「《メガパウンダー・マック》の効果で、あなたのクリーチャーを一体、マナゾーンへ置いてください」
「くっ……《勝利のプリンプリン》をマナゾーンに置くよ」
しかしサイキック・クリーチャーはバトルゾーンと超次元ゾーン以外では生きられない。マナゾーンに移動した《プリンプリン》は、またすぐに超次元ゾーンへと戻ってしまった。
(くそっ、やっぱり前のターンは《プリンプリン》を出すのが正解だったか……!)
これでまた覚醒リンクが遠のいてしまった。しかも、
「並びにアタック・チャンス発動《トリプル・ZERO》!」
「また……!?」
恐らく最初の《トリプル・ZERO》で引いたのだろう。これでニャルラトホテプのシールドは六枚にまで回復いてしまった。
「そして、効果の発動処理も終わったところで、《修羅丸》のWブレイクですよ!」
《修羅丸》によって二枚のシールドが割られてしまう。これで残り一枚になってしまったが、
「S・トリガー発動! 《黒神龍オドル・ニードル》をバトルゾーンに!」
なんとか《オドル・ニードル》をトリガーする。とはいえ、これでもまだ足りない。
「私の場にアタッカーは三体、あなたのシールドは残り一枚。それでは耐えきれませんよ。とりあえず《真実の名 白金の鎧》で《オドル・ニードル》に強制アタック」
《白金の鎧》は場に出てしまえば能力なしのクリーチャーなので、《オドル・ニードル》に攻撃し、共に破壊される。これで残ったアタッカーは《神聖鬼 デトロイト・テクノ》と《流星のフォーエバー・カイザー》の二体。
「さて、最後のシールドをどちらにブレイクさせるかが悩みどころですね……」
顎に手を添えて考え込むニャルラトホテプ。ふと彼女の視線(フードで目は見えないが)が夕陽のマナゾーンへと向けられた。
「ふむ、あなたのデッキのS・トリガーは《オドル・ニードル》だけでなく《王龍ショパン》もいると見ました。では、パワー6000の《フォーエバー・カイザー》の攻撃を後にすると《ショパン》で破壊されかねないので、ここは《フォーエバー・カイザー》から攻撃です。最後のシールドをブレイク!」
ここまで優位に場を進めているにもかかわらず、ニャルラトホテプは用心深かった。S・トリガーで《ショパン》が出る可能性も考慮し、《フォーエバー・カイザー》から攻撃を仕掛けてくる。
《フォーエバー・カイザー》により、夕陽の最後のシールドがブレイクされた。
「っ……!」
このままニャルラトホテプは《デトロイト・テクノ》によるダイレクトアタックを決めにかかろうとするが、しかしその最後のシールドが光の束となって収束する。