二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.329 )
日時: 2014/01/05 13:19
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 黒村と陽花のデュエル。
 まだターンは進んでおらず、シールドは互いに五枚。クリーチャーもおらず、マナチャージだけだ。
「俺のターン。《エメラル》を召喚し、手札とシールドを入れ替える」
「あれ?」
 黒村の召喚するクリーチャーに、意外そうな声を上げる陽花。
「『傀儡劇団ティアリカル』って、デスパペットを中心としたデッキを使うって聞いてたけど、水文明? マナゾーンを見る限り闇はなさそうだけど」
「……お前には関係ない。ターンエンドだ」
「ふぅん……まあ、いっか。私のターン」
 深入りするつもりはないのか、陽花はそのまま自分のターンを開始する。
「いい感じの手札だ……まずは呪文《進化設計図》!」


進化設計図 自然文明 (2)
呪文
S・トリガー
自分の山札の上から6枚を表向きにする。その中から進化クリーチャーをすべて自分の手札に加え、それ以外のカードを好きな順で自分の山札の一番下に戻す。


「《進化設計図》か……」
 ふと黒村は陽花のマナゾーンを見遣る。
(重量級の進化ドラゴン……進化クリーチャーを織り込んだ連ドラ、か……?)
 とすると、夕陽やひまりに近いデッキ構成なのかもしれないと思ったが、陽花が捲った六枚のカードで、その考えは吹き飛ばされる。
「っ!? なんだ、それは……!」
 陽花が捲った六枚のカードは、《超竜ヴァルト》《超天星バルガライゾウ》《超竜バジュラズテラ》《超竜ヴァルト》《神羅マグマ・ムーン》《超竜機神ボルガウルジャック》の六枚。
「すべて進化クリーチャーだと……!?」
 しかも、どれもこれも重量級のドラゴンで、進化元も決して安くはない。《マグマ・ムーン》に至っては究極進化獣だ。
「よーし、じゃあこの六枚は手札に。ターンエンド」
「…………」
 訝しむような視線を向ける黒村。陽花のデッキがまったく読めず、警戒心が一気に高まる。
「怪しいな……早めに決めるが吉、か」
 疲労を吐き出すように溜息をつく黒村。実際疲れているように見える。
「まずは呪文《時空の庭園》。マナを追加し、《アクア・ベララー》を召喚」


アクア・ベララー 水文明 (2)
クリーチャー:リキッド・ピープル 1000
自分の他のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、いずれかのプレイヤーの山札の上から1枚目を見る。その後、そのカードを持ち主の山札の一番下に置いてもよい。


 クリーチャーを出すたびに自分か相手の山札を操作できるクリーチャーだ。これだけを見れば、黒村のデッキは《転生プログラム》などを用いたコスト踏み倒しの構成にも見える。
「《エメラル》でシールドをブレイクし……ターンエンドだ」
 普段ならここでは攻めないようなデッキだが、黒村はスピードを上げて攻めに出た。とりあえず先手は取ったものの、陽花のシールドはまだ四枚。
「ギアを上げて来たね? でも、今の私の追いつけるかな?」
「……お前のターンだ。早くしろ」
 陽花を急かす黒村の声は、どこか力なく感じられた。
 とはいえ陽花もそんなことを気にする性分ではないので、構わずターンを進める。
「じゃあ早く決めてあげるよ。呪文《強欲の開拓》!」


強欲の開拓 自然文明 (3)
呪文
種族を1つ選ぶ。その種族のクリーチャーを自分の手札から好きな枚数選び、自分のマナゾーンに置いてもよい。


「《進化設計図》に続いて《強欲の開拓》だと……? まさか……」
 薄々感づいてはいたが、陽花のデッキは連ドラなどではない。デッキの半分以上をドラゴンで占めているという点で言えば連ドラと言えなくもないが、恐らくその構成は異色も異色、異端とすら言えるようなものだろう。
「宣言する種族はアーマード・ドラゴン! 手札のアーマード・ドラゴンを五枚マナゾーンへ!」
 陽花は《進化設計図》で大量に増えた手札を一気にマナゾーンへと埋める。これでもう8マナだ。
 元々《強欲の開拓》はコンボ向きのカードだ。一つの種族に絞ったデッキで、大量のカードをドローすることができ、なおかつマナもかかるようなデッキで採用されることが多い。
(となると、奴のデッキもなにかしらのコンボが入っていると見るべきか……もしくは、ただ早くブーストする必要があるだけ、か)
 ともあれ、陽花のデッキの動きは遅そうだ。ここは早く勝負を決めたい。
「俺のターン……《雷鳴の守護者ミスト・リエス》を召喚。クリーチャーが出たので《アクア・ベララー》の効果で俺の山札の一番上を見る」
 黒村は捲ったカードを見ると、山札の底へと沈めた。不要なカードだったようだ。
「……さらに《エメラル》と《アクア・ベララー》でシールドをブレイク」
 これで陽花のシールドは二枚。しかも陽花の場にはクリーチャーがゼロで、手札も進化元がいないような重量進化クリーチャーばかり。このままなにもなく攻めて行けば勝てるだろう。
 なにもなければ、だが。
「私のターン! 《超次元ストーム・ホール》を発動! 《ミスト・リエス》を破壊して、開け、超次元の門! 《時空の神風ストーム・カイザーXX》をバトルゾーンに!」


時空の神風ストーム・カイザー XX 火文明 (10)
サイキック・クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド 12000
T・ブレイカー
覚醒—自分のターンのはじめに、自分の山札から1枚目をすべてのプレイヤーに見せる。そのカードがドラゴンであれば、このクリーチャーをコストの大きいほうに裏返す。


 超次元の扉から飛び出したのは、一体の龍。金色の鎧に身を包み、燃える剣を携えている。
 《時空の神風ストーム・カイザー XX》、覚醒すれば非常に強力なのだが、覚醒前ではただのバニラクリーチャー同然と言うスペックだ。しかし巨大なクリーチャーであることには変わりないので、弱小クリーチャーしかいない黒村にとってはこのままでも少々辛い相手だろう。
「…………」
 その巨体に気圧されたわけもないだろうが、黒村は息を荒げてその存在を見上げていた。呼吸は乱れ、息苦しそうにしている。
「? なんか随分と苦しそうだけど、大丈夫?」
「……お前には、関係ない」
 口ではそう言うものの、明らかに黒村は疲弊している。シールドはまだ一枚も割れていないどころか、このままだと小型クリーチャーで押し切って勝ってしまえそうな状況にもかかわらずだ。
「俺の、ターン……」
 呼吸を乱しながらカードを引く黒村。もはやその疲労感はまったく隠せていない。
「《お清めトラップ》を、発動……マナを追加し、お前の墓地のカードをすべて山札に戻す……さらに、《カブラ・カターブラ》を召喚し、《ハヤブサマル》を回収……《アクア・ベララー》の能力発動。お前の山札を、見せてもらう」
 上手くいけば、これで《ストーム・カイザー XX》の覚醒を止められるかもしれないと思いながら、黒村は《アクア・ベララー》の能力によって捲られた陽花の山札を見る。捲られたのは《超竜バジュラ》だった。
「……これは山札下へ送る」
 これで次のカードがドラゴンでなければ覚醒は阻止できる。その可能性に賭け、今度は攻める。
「……《エメラル》と《アクア・ベララー》でシールドブレイク」
 これで陽花のシールドはゼロ。場にいるのも、パワー12000のTブレイカーとはいえ、クリーチャーが一体だ。対する黒村はシールド五枚、クリーチャーも小型とはいえ三体並んでいる。
 陽花のデッキは、色的にブロッカーもいそうにないため、次の黒村のターンには勝利が確定する。
 そのターンが訪れれば、だが。
「ここまで来たら、もう終わりだよ。あなたに次のターンは来ない」
 そう宣言して、陽花は山札の一番上を捲る。捲れたのは《超竜バジュラ・セカンド》。
「捲れたのはドラゴン。だからこれで《ストーム・カイザー XX》の覚醒条件達成!」
 刹那、噴火のように爆炎が噴き上がり、嵐のような熱風が吹き荒れる。《ストーム・カイザー XX》はその爆炎と熱風に包み込まれ——覚醒する

「見よ、奇跡の力を! 《時空の神風ストーム・カイザー XX》覚醒! 出でよ《奇跡の覚醒者ファイナル・ストーム XX NEX》!」