二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.332 )
- 日時: 2014/01/06 13:06
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
奇跡の覚醒者ファイナル・ストーム XX NEX(ダブルクロス ネックス) 火文明 (20)
サイキック・クリーチャー:アーマード・ドラゴン/フレイム・コマンド 23000
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せる。それがドラゴンであれば、このターンの後、もう一度自分のターンを繰り返す。
Q・ブレイカー
《ストーム・カイザー XX》が覚醒した姿は《XX》と《NEX》の力を取り込んだ、奇跡の龍だった。
ドラゴンの力を得ることで、その時空を支配してしまう、正に奇跡のような力を持っている。
「次のターンはない、か……」
確かにその通りかもしれなかった。《ファイナル・ストーム XX NEX》が攻撃し、山札の一番上のカードがドラゴンだった場合、自分のターンを1ターン伸ばすことができる。
つまり、黒村のターンが訪れないのだ。
「シールドがゼロでも、相手にどんだけアタッカーがいても、相手にターンを回さなければ関係ないよね。さあ、《ファイナル・ストーム XX NEX》で攻撃! 効果発動!」
その瞬間、嵐のような熱風が、陽花のデッキを捲り上げた。捲られたのは《超竜ヴァルト》。
進化ではあってもドラゴン。なので、陽花は追加のターンを得られる。
「ドラゴンだから、次も私のターンだね。それじゃあ、Qブレイクだ!」
燃え盛る大剣を振り下ろす《ファイナル・ストーム XX NEX》。その一撃で爆炎が噴き上がり、凄まじい衝撃波が放たれる。
「っ……!」
たった一撃で四枚のシールドが吹き飛ばされた。だが、
「S・トリガー発動だ。《猛菌保聖ペル・ペレ》をバトルゾーンへ。そして《アクア・ベララー》の能力発動だ」
陽花の山札の一番上を見て、そのカードを山札の下に沈める。
「ブロッカー? 無理無理、たった一体のブロッカーで、私の《ファイナル・ストーム XX NEX》を止められは——
「もう一枚……S・トリガーだ」
黒村はもう一枚の輝くカードを掲げる。
「《緊急再誕》……《エメラル》を破壊し、《アクア・スーパーエメラル》をバトルゾーンへ。効果で手札とシールドを、入れ替える……ついでに《アクア・ベララー》で……お前のデッキトップは、底に沈める」
「へぇ、またS・トリガーかな? でもそのデッキじゃまともな除去はなさそうだし、ターンが回らなければ関係ない。次の攻撃行くよ!」
次に捲られたのは《神羅マグマ・ムーン》。またもエクストラターンを得た。
「《ペル・ペレ》でブロックだ」
なんとかその一撃を防ぐ黒村。しかし、また陽花のターンがやって来る。
「一体でちまちまやるのは時間かかりそうだなぁ……ならこれはどう? マナ進化GV! 《超天星バルガライゾウ》!」
「…………」
マナゾーンのドラゴン三体を進化元に、アタッカーがまた一体、増えてしまった。
「まずは《ファイナル・ストーム XX NEX》で攻撃! 効果発動!」
次に捲られたのは《超竜バジュラズテラ》。またしてもエクストラターンをもぎ取られてしまった。
「……ニンジャ・ストライク。《ハヤブサマル》を召喚し、ブロックだ」
さらに《アクア・ベララー》の能力で、陽花の山札の一番上を見て、元に戻す。
「ここで握ってたシノビを出した……そろそろブロッカーも切れてきたかな? 《バルガライゾウ》でシールドブレイク!」
「《スーパーエメラル》でブロック」
なんとか攻撃を凌ぐ黒村だが、しかしそろそろ限界だろう。
陽花のデッキは起動が遅いものの、コンボが決まってしまえばほぼ勝利が確定してしまう。
その内容は、ほぼすべてが進化アーマード・ドラゴンという極端な構成となっている。《進化設計図》で手札を集め、《強欲の開拓》でマナブースト。後は《ストーム・ホール》から《ストーム・カイザー XX》を《ストーム・カイザー XX NEX》に覚醒させ、エクストラターンを得て押し切るだけだ。
つまり、覚醒までされてしまえば、もう相手のターンは訪れない。一回、二回でも追加ターンを得られれば、《ファイナル・ストーム XX NEX》の打点で押し切ってしまえるので、デッキの七割ほどがドラゴンで占められているこのデッキなら、追加ターンを得ることなど容易。
ここまで勝負がもつれ込んだ時点で、黒村の敗北はほぼ確定していたと言っても過言ではないのだ。
「またまた私のターンだね。まさかここまで粘られるとは思ってなかったけど、ブロッカーもシノビももう弾切れだろうし、このターンで終わらせるよ! まずはデッキ進化! 《ボルガウルジャック》を進化元に、《超竜ヴァルト》を召喚!」
さらに殴り手が増えてしまった。これで陽花のアタッカーは三体。対する黒村は、ブロッカーもシノビもいない、シールドは残り一枚だ。
そのシールドは《アクア・スーパーエメラル》で仕込んだシールドだが、そのS・トリガー一枚でこの重量級ドラゴン三体を止められるのか。
そして、遂に奇跡の覚醒者が動き出す。
「《ストーム・カイザー XX NEX》で攻撃!」
その時、効果が発動。
ここでまたドラゴンが捲れれば、陽花の追加ターンが得られる。なくても十分だが、《スーパー・スパーク》などの相手全体をタップさせる呪文が来る可能性を考えれば、できればターンを追加しておきたい。
《ストーム・カイザー XX NEX》の咆哮と共に灼熱の嵐が巻き起こり、陽花のデッキを舞い上げる。そして、
「え……?」
陽花は目を丸くした。舞い上げられたカードは、いつもなら来るはずのカードではなかったのだ。それは——
——《進化設計図》だ。
「なんで……?」
いつもならここでドラゴンが捲れていた。勿論、山札の一番上を参照するのだから、運が絡む。不発になることもないわけではない。
しかし、今回ばかりはそうではなかった。
「……お前は、頭が悪そうだが」
頭を痛そうに押さえている黒村が、ゆっくりと口を開く。
「俺はこう見えて、理系だったんだ……確率の計算くらいは、できる……」
「確率……?」
なんのこと、とでも言いたげな陽花。しかし、黒村の場のクリーチャーを見て、ハッと気づく。
「《アクア・ベララー》……!」
「そうだ」
本来なら、自分の山札の上にカードを積み込んだり、相手の山札操作を妨害する目的で使われる《アクア・ベララー》だが、黒村は今回、それらとはまた違う用途で能力を使っていた。
簡単に言えば、陽花のデッキを見て、ドラゴンなら山札の底へと送り込んでいたのだ。そうすることで、山札の上にあるドラゴンの比率を少なくし、早く呪文が捲れるようにした。呪文が見えたなら、そのまま戻せばいい。
こうして《ファイナル・ストーム XX NEX》が追加ターンを得ること妨害していたのだ。
「ただ、思いのほか、ドラゴンばかり出て来たがな……」
「っ、でも、追加ターンがなくなったってだけで、まだ負けたわけじゃないよ! 私の場にはまだドラゴンが二体残ってる。《ファイナル・ストーム XX NEX》で、最後のシールドをブレイク!」
黒村の最後のシールドが吹き飛ばされるが、それは光の束となって収束する。やはりS・トリガーを仕込んでいたようだ。
「S・トリガー発動……《神託の守護者 胡椒》を召喚」
「スパーク呪文じゃなかった……残念だったね。ブロッカー一体じゃ、私のドラゴンは止まらないよ! 《バルガライゾウ》でダイレクトアタック!」
「どうだかな……《胡椒》でブロック」
《バルガライゾウ》の攻撃は《胡椒》で防ぐ。バトルに負けた《胡椒》は破壊され、そして、
「《胡椒》が破壊され、能力発動……墓地の《ハヤブサマル》を回収」
「っ、またブロッカー……!」
これでは、残った《ヴァルト》でとどめを刺すことができない。
ギリギリまで追い込んでいたはずなのに、いつの間にか追い込まれてしまっていた。
「……《ヴァルト》で、ダイレクトアタック!」
「ニンジャ・ストライク《ハヤブサマル》を召喚し、ブロックだ」
砕け散った《ハヤブサマル》。しかしこれで、陽花の場にアタッカーはいない。
「……次の俺のターンは、来なかったんじゃなかったのか?」
「うぅ……!」
悔しそうに歯を噛みしめる陽花。四ターンも連続でプレイしておきながら、こんな形で逆転されては、悔しくはないだろう。
遂に自分のターンが回り、黒村は自分のクリーチャーを一体、横に曲げる。
「《カブラ・カターブラ》で、ダイレクトアタック」
神話空間が閉じ、陽花と黒村は現実の空間へと戻ってくる。
「負けた……でも、私が負けたくらいじゃあ【師団】は止まらないよ。とりあえずは撤退だ!」
陽花は窓枠に手をかけると、そのまま飛び降り、颯爽と去って行ってしまった。
正に、あっという間もなく。瞬く間に消え去った。
「……校舎を飛び下りるな」
力なく呟くと、黒村は遂に堪えきれなくなったようにその場にへたり込んでしまう。
「はぁ、はぁ……思った以上にきついな、これは……」
本棚を背にし、ポケットから一枚のカードを取り出す。
「《守護神話》……自分だけは守れぬ盾、か……」
霞む視界でそのカードを見つめる黒村。
やがて、彼の意識は闇へと沈んでいった。