二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.333 )
- 日時: 2014/01/07 13:26
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
九頭龍と龍泉のデュエルは、九頭龍が追い込まれていた。
シールドは残り二枚。場にクリーチャーはおらず、《ベートーベン》は墓地へと落とされてしまった。
対する龍泉の場には《極仙龍バイオレンス・サンダー》《腐敗無頼トリプルマウス》《緑銅の鎧》の三体。シールドはまだ五枚残っている。
「……仕方ない。これに賭けるか」
九頭龍は今しがた引いてきたカードを発動する。
「呪文《運命》」
九頭龍は山札からカードを五枚引く。そしてそれらの手札は、龍泉の目の前まで移動した。
「こんな状況でこんなこと言うのもなんだけど、運命の選択権は君にある。君の運命は、君が決めてくれ」
「……はっ」
九頭龍の言葉を、龍泉を鼻で笑い飛ばす。
「んなこと言われるまでもねえな。俺の運命は勝利! お前の運命は敗北! それ以外はねえ」
と言って、選んだ三枚のカードを投げつけた。残るカードは九頭龍の手元に戻ってくる。
「選んだカードを投げる人なんて初めてだ……乱暴だなぁ。とりあえず公開だ」
龍泉が選んだ三枚のカードは《黒神龍オドル・ニードル》《フェアリー・ライフ》《王龍ショパン》の三枚だった。
ドラゴンでない《フェアリー・ライフ》も九頭龍の手札へと戻っていき、ドラゴンである二体はバトルゾーンに出る。
「《オドル・ニードル》はタップ状態でバトルゾーンへ。《ショパン》は能力発動、《トリプルマウス》とバトルして破壊だ」
クリーチャーの数を減らし、《オドル・ニードル》で攻撃も牽制できるが、しかしそこまでだ。10マナも払って残せた結果が、たったこれだけである。
「ギャハハハハ! どうやら最高の三枚を引いたようだな!」
「……どうかな。ターンエンド」
《運命》でほとんどマナを費やしてしまったため、このターンは終了する九頭龍。
そして、龍泉のターンが回ってきた。
「……来たぜ、最高だ!」
ドローしてきたカードを見るや否や、龍泉は突然叫び出す。
「《無頼勇騎ウインドアックス》を召喚、マナを追加! 《熱湯グレンニャー》も召喚し、一枚ドロー!」
最高と言う割には、地味な動きだ。しかし、彼の言う最高はここからだった。
「《インビンシブル・スーツ》をジェネレート。そして、この呪文だ! 《母なる星域》!」
前のターン、《バイオレンス・サンダー》を呼び出した呪文《母なる星域》。
それがまた、詠唱されたということは、
「《グレンニャー》をマナへと送り込み、マナゾーンからこいつを引っ張り出す。《ウインドアックス》進化!」
《ウインドアックス》が光に包まれ、同時に雷鳴が轟く。光もやがて雷光へと変化し、雷の中からさらなる龍が誕生する。
「《極仙龍バイオレンス・サンダー》!」
現れたのは、二体目の《バイオレンス・サンダー》だった。
一体だけでも膨大なアドバンテージを叩き出す《バイオレンス・サンダー》。それが二体も並べば、オーバーキルどころではなくなる破壊力が生み出されるだろう。
「どうせお前のシールドは残り二枚だ。極仙の雷で消し飛ばしてやるよ! ギャハハハハ!」
狂ったように高笑いする龍泉。だが今の状況は、圧倒的に龍泉が有利だ。
「まずは《緑銅の鎧》で《オドル・ニードル》を攻撃! 相打ちで破壊だ!」
元より《バイオレンス・サンダー》で殴るとは思わないが、攻撃を牽制する《オドル・ニードル》が消え去ってしまった。
「そして、一体目の《バイオレンス・サンダー》で残りのシールドをすべてブレイク!」
《バイオレンス・サンダー》の轟雷が放たれる。同時に《ショパン》と九頭龍の手札が三枚墓地へと叩き落とされた。
「二体目の《ベートーベン》が落ちたか! さっき《運命》で引いた奴か? 残念だったなぁ、折角引いたのに出せねえで!」
「……ちょっと黙ってもらいたいなぁ」
皮肉ってもハイテンションになった龍泉はまるでこちらの言葉に耳を貸さない。正直、鬱陶しいだけだった。
直後、九頭龍のシールドがすべて吹き飛ぶ。
「ギャハハハハ! これでとどめだ! 《バイオレンス・サンダー》で、ダイレクト——」
アタック、と言う直前に、九頭龍からストップがかかる。
「待った、S・トリガー発動。《黒神龍オドル・ニードル》をバトルゾーンに出すよ」
「……ちっ、運がいいな」
勢いを削がれ、不愉快そうに舌打ちする龍泉。しかし、
「だがどの道お前は次のターンで終わりだ。俺のシールドは五枚。仮に次のターン《バイオレンス・サンダー》を除去できたとしても、これだけ手札があればすぐにリカバリできる。とっとと諦めたらどうだ?」
「勝てなければ諦めるけどね。ただ、僕は君の選択した運命の通り動くだけさ」
そんなことを言う九頭龍に、龍泉は意味不明と言うように首を傾げ、
「……まあいい。《オドル・ニードル》が邪魔だが、残しておけば返しのターンにはタップ状態の《バイオレンス・サンダー》が破壊される。ならここは選択肢を狭めておくべきだな。もう一体の《バイオレンス・サンダー》で《オドル・ニードル》を攻撃!」
《ダイオレンス・サンダー》と《オドル・ニードル》は相打ちで両方とも破壊される。
「へぇ、感情的なようでいて、そこそこ脳みそはあるんだ。人は見かけによらないって言うか、頭いい人ほど人格とか性格とか破綻してるものだよね」
などと軽口を叩きつつ、カードを引く九頭龍。そして、
「……君はさっき選んだ三枚を、最高のカードって言ったね」
「あ? そうだな、お前にとっては最悪だろうがな」
「そうだね、最悪ではないけど、普通に考えればいいカードを引いてもらえなかったと嘆くだろう。でも、運命っていうのは、なにも“選択したもの”だけが繋がるわけじゃない」
どこか意味深な九頭龍の言葉に、龍泉は疑問符を浮かべている。
「はぁ? なに言ってんだよお前。なんでもいいから、早くターン終わらせろよ」
「まあまあ、そう急かさないでよ……次のターンなんて、来て欲しくなくなるだろうから」
そして九頭龍は、手札のカードを一枚抜き取る。
刹那、荘厳な戦慄が響き渡った。
「——《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》」
直後、バトルゾーンが吹き飛んだ。
「……っ!?」
一瞬にしてクリーチャーを一掃された龍泉は、今の状況に理解が追いついていないようだった。しかし、やがてその状況を認識する。
「君がこのカードを選んでくれなくて助かったよ。もし選ばれてたら、クリーチャーを除去できなくて普通にとどめを刺されてた。お礼を言いたいくらいだよ、ありがとう」
「っ、ぐぅ、てめぇ……!」
九頭龍の言葉、そして現状に呻く龍泉。
《VAN・ベートーベン》は、召喚してバトルゾーンに出した時、相手クリーチャーをすべて手札に戻す能力がある。さらに、相手がコマンドがドラゴンをバトルゾーンに出せば、問答無用で墓地へと落とされてしまう。
つまり、実質的に龍泉はもう《バイオレンス・サンダー》を出せないのだ。
「さ、君のターンだよ。このターンで僕にとどめを刺すんだっけ?」
「この野郎……!」
歯噛みする龍泉。龍泉のデッキは《バイオレンス・サンダー》を出すことに特化しているため、他のフィニッシャーとなるようなカードはない。《VAN・ベートーベン》に太刀打ちできるだけのカードはほとんど入っていないのだ。
「だが、奴のシールドはもうゼロだ。こうなっちまったからには《バイオレンス・サンダー》は諦めるしかねえ」
などと言って、龍泉は攻め方を変えてきた。
「俺のターン! まずは《グレンニャー》を召喚して一枚ドロー! 《ウインドアックス》を召喚してマナを追加! 《緑銅の鎧》を召喚し、山札から《スーパー炎獄スクラッパー》をマナゾーンへ! さらに《ジャスミン》も召喚! 破壊はしないぜ」
小型だが、一気にクリーチャーを四体揃えた。これなら、並みの除去では対応できないだろう。
並みでは、だが。
「《偽りの王 モーツァルト》を召喚。ドラゴン以外はすべて破壊するよ」
「なんだと……!?」
生憎、キング・コマンド・ドラゴンに並みのクリーチャーは存在しない。並んだ龍泉のクリーチャーは一瞬で消滅した。
「くそっ、《グレンニャー》《ジャスミン》《青銅の鎧》《トリプルマウス》を召喚! 《トリプルマウス》に《インビンジブル・スーツ》をクロス!」
今度も四体のクリーチャーを並べるが、それも無駄だった。
「《メッサダンジリ・ドラゴン》を召喚。続けて《真実の王 ヴィオラ・ソナタ》を召喚。《トリプルマウス》を破壊して、墓地から《オドル・ニードル》を復活」
追加のドラゴンを呼び、さらに《オドル・ニードル》とのコンボで防御まで固めてしまう。
こうなってしまったら、逆転はほぼ不可能。
「《メッサダンジリ》の能力で《ヴィオラ・ソナタ》はスピードアタッカーだ。Tブレイク」
意趣返しのつもりか《ヴィオラ・ソナタ》の雷が龍泉のシールドを三枚砕く。
「《モーツァルト》でブレイク」
残った二枚のシールドも、《モーツァルト》の咆哮ですべて吹き飛んだ。
最後に残ったのは小さなクリーチャーたちと、龍泉のみ。
「《「修羅」の頂 VAN・ベートーベン》で、ダイレクトアタック——」