二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.346 )
- 日時: 2014/01/19 02:43
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ひまりを探して町中を駆け回る夕陽たち。しかし、ひまりの姿は一向に見当たらない。
「いないですね、ひまり先輩」
「だねー……もうけっこーいろんなとこ探したはずなんだけどなぁ」
このみは連絡係として、定期的に他の者たちから連絡を受けているのだが、ひまりを見つけたという連絡はない。わりと大人数で探しているため、もう町の半分近くは見て回っているはずだ。神話空間が展開され、交通機関も利用できなくなっているのだから、ひまりだってそう遠くへは行けないはず。にもかかわらず、ここまで見つからないとなると些か妙だ。
「ひまり先輩が敵に捕まっている可能性もあるにはあるですが、あの人が安々と捕まるとは思えないです。となると、なにかしらの理由があって身を隠している、とかですか」
「理由って、なに?」
「流石にそこまでは分からないです……」
汐も困り果てている。身を隠しているとなれば、それはそれで厄介だ。一般人がいないということは、目撃情報を得ることもできない。なんの情報もなく、一から探すのは無理だ。
「まあ、身を隠していてもいなくても、状況は変わらないです。ここまで探しても見つからないということは、もしかしたら郊外の方にいるのかもしれないですね」
町の半分近くは見て回ったが、逆に言えばまだ半分残っているのだ。町中を探すとなると、入れ違いになる可能性も相当高いが、遠くにいる可能性も否定はできない。
「じゃあ、とりあえず街中から離れたとこにいる誰かに探してもらって、それからあたしたちも向かった方がいいかな?」
「そうですね。とはいえ、街中にいて見落としている可能性も捨てきれないので、半数くらいはこちらに残しておいた方がいいかと——」
と、汐は途中で言葉を切った。
「? どしたの? 汐ちゃん?」
「誰かの気配がするです」
妙に他人の気配に鋭い汐。普段なら一般人で済むのだが、ここは神話空間の中だ。汐たちに近づく人間は二種類しかいない。
一つは夕陽や姫乃、流など。しかし彼らがわざわざ姿を悟られないように近づいてくるはずがない。普通に呼びかければいいのだ。それに、三人とも今は汐やこのみから離れた位置にいる。それは先ほど確認したばかりなので、ここにいるはずがない。
だとすると、考えられるのはもう一つの可能性。それは、敵だ。
「【師団】でしたか。隠れていないで出て来たらどうですか」
物陰に向かって呼びかける汐。すると、思いのほかあっさりとその者は姿を現した。
「別に隠れていたつもりはないんですけれども。しかしあまり唐突に姿を現すのもどうかと思いまして」
「そんなこと、気にすることじゃないと思いますけどね。それこそどうでもいいのですが」
現れたのは二人、どちらも女だ。そして外見に分かりやすい特徴を持っている。
一人は、言うなればシスター。所々跳ねている、肩口までの金髪に碧眼。そして白い修道服を身に纏っている。
もう一人は民族的な意匠の女だ。細長い布を巻きつけたような出で立ち、いわゆるサリーを纏っている。
「……誰、ですか」
外見のインパクトが少々強く、圧倒されてしまいそうになるが、所詮はは外見。それだけでは恐れる材料にはならない。
「申し遅れました。私は【神聖帝国師団】第八小隊長、ルシエル・フォーリンジェルでございます」
「同じく【神聖帝国師団】第九小隊長、マカ=チャルルカよ。短い間だと思うけど、よろしくお願いするわ」
不気味な薄ら笑いを浮かべるルシエルに対し、ボーっとしておりまったく表情の読み取れないマカ。色々と対極的に見える二人だ。
「小隊長……それが何を意味する階位なのかは知らないですが、私たちになにか用ですか」
とは言うものの、この場面で出て来たのだから、言うまでもないだろうし、聞くまでもないことだ。
「……本来なら『太陽一閃』を探し、捕縛、ないしは無力化することが私たちの使命。しかし、そのための障害となるものを排除するのも、副次的な目的となりうる。この説明で、ご理解いただけますか?」
「私はただルシエルさんに着いてきただけだから、あまり気にしなくていいわよ」
言わなくてもいいことを付け足すマカはとりあえず無視。そして汐は、すぐさまルシエルの言葉を理解する。
つまり、見つけた後の対応こそ違うが、夕陽たちも【師団】も、ひまりを見つけるという目的は合致している。言い換えれば、夕陽たちからすれば【師団】が、【師団】からすれば夕陽たちは競争相手なのだ。
競争において、確実に目的を遂行するためにはなにをすればいいか。簡単だ、競争相手を潰してしまえばいい。相手がいなくなれば、目的を達成するのは残ったものになる。簡単な話だ。
ゆえにルシエルとマカ、【師団】の小隊長二人は、汐とこのみを狙ってきた、というわけだ。
「まあ、別段狙っていたわけではないのですけれど……たまたま、『太陽一閃』を探すついでに見つけたので、ここで潰しておこうと、そう思っただけにすぎません」
「要するに思いつきね。そっちの方が効率的かどうかはともかく効果的だし、私としても異論はないわ」
微妙にずれた発言をするマカは置いておくとして、汐はデッキケースに手をかける。
「このみ先輩、今までの話の流れ、理解できたですか」
「んー……びみょー。えっと、つまり、このおねーさんたちは、あたしたちと戦うつもりってこと、なのかな?」
「……とりあえずは、その理解で大丈夫かと。話の経過はともあれ、負けさえしなければ、問題はないのです」
今は経過よりも結果が大事だ。負ければそこで終わり。しかし勝てれば問題はない。
そこさえ理解できれば、このみにそれ以上の情報はいらないのだ。
「うん、それならわかる。じゃあ早速はじめようか」
「ですね。こちらも、あまり時間をかけてはいられないですし、手早く終わらせるですよ」
二人とも、それぞれデッキを取り出し、臨戦の構え。
「……手早く終わらせる、ですか。言いますね。ではお望み通り、すぐさま神々の贄としてあげましょうか」
「ルシエルさんは、黒髪の女の子の相手ですか? では私は、あちらのおさげの女の子ね」
こちらもそれぞれの相手と向かい合い、いつでも戦える体勢となる。
刹那、その場一帯が、歪み始める。