二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.348 )
- 日時: 2014/01/19 07:50
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
汐とルシエルのデュエル。
まだお互いシールドは五枚。汐の場にはなにもないが、ルシエルの場には《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》が一体いる。
これだけ見れば、汐が一歩で遅れているようにも見えるが、しかし実のところ、汐はかつてない高速で動いていた。
「私のターンです。まずはマナチャージ、そして呪文《プライマル・スクリーム》です」
山札の上から四枚——《セブンス・タワー》《ボーンおどり・チャージャー》《デーモン・ハンド》《暗黒導師ブラックルシファー》——を墓地へと送る。
「そして墓地の《ブラックルシファー》を回収です。さらに呪文《再誕の社》。墓地の《ボーンおどり・チャージャー》と《デーモン・ハンド》をマナゾーンへ」
汐は前のターンから、闇文明における墓地肥しとマナ加速カード《ボーンおどり・チャージャー》だけでなく、《霞み妖精ジャスミン》や《フェアリー・ライフ》をも利用し、超高速でマナを加速させている。このターンで既に9マナだ。
「その分、手札の消費が激しいようですが……マナ加速ですか」
『神話カード』を持たないわけではないが、デッキに組み込んではいない汐は、わりと有名であった。普通、『神話カード』ほどの強さ、それも《賢愚神話》ほどの飛び抜けた強さを持つカードを所有しておきながら使用しないというのはありえない。“ゲーム”の世界でなくても、制限をかけられていなければ普通に使っているだろう。
しかし汐は頑なに《賢愚神話》を使用しない。そのことが彼女の名前を広めているのだ。そして名が広まっているということは、それだけデッキの中身も露呈しているということになる。
「確かあなたのデッキは、闇のデーモン・コマンドを連打する構築でしたね。ですが今回は、そのマナ加速を見る限り、特に重量級のデーモン・コマンド……《ドルバロム》の召喚でも狙っているのでしょうか」
「……どうでしょう」
汐は表情を一切変えず、ルシエルを軽くあしらう。しかし傍から見ても、汐の考えは見え見えだ。
マナを一気に加速させ、特に重いデーモン・コマンドを早期に呼び出す。この場合、汐の切り札でもある《悪魔神ドルバロム》辺りが狙いだろう。現に、マナゾーンに《ドルバロム》が一枚見えている。
「しかし《ドルバロム》では私は倒せません。そして、マナ加速に終始していては、肝心の進化元と進化先を用意できなくなりますよ?」
「……どうでしょう」
同じ答えを返す汐。事実、汐の手札は先ほど手に入れた《ブラックルシファー》一枚。マナが増えても手札がなければ意味はないのだ。
「……まあいいでしょう。こちらも早く準備を終わらせなければいけないことですし。私のターン《神門の精霊エールフリート》を召喚。山札の上から三枚を見ます」
ルシエルの山札の上三枚が表向きなる。そして彼女はそのうちの一枚を掴み取った。
「呪文を一枚手札に加え、ターン終了です」
ルシエルが手に入れた呪文を見て、汐はほんの少しだけ目つきを細める。
「そろそろ警戒ですね……私のターンです。マナチャージはせず、呪文《ライフプラン・チャージャー》。山札から《威牙の幻ハンゾウ》を手札に加え、このカードはチャージャーでマナに。続けて《ブラックルシファー》を召喚です。山札の上五枚を墓地へ」
一気に墓地を増やした汐。しかし序盤のマナ加速もあり、かなりデッキが削られている。
「10マナ溜まりましたか。しかし、肝心の進化先が確保できていなければ恐れることはありません」
言って、ルシエルはスッと手札のカードを一枚抜き取る。
「開きなさい、暗黒と祝福の門——《ウェディング・ゲート》」
ウェディング・ゲート 闇文明 (6)
S・トリガー
光でも進化でもないエンジェル・コマンドを2体まで、自分の手札からバトルゾーンに出す。
虚空より開かれた暗門。そこから漆黒の瘴気と共に、闇へと堕ちた天使が降臨する。
「私が出すのはこの二体。一体目は《偽りの星夜 エンゲージ・リングXX》。そして二体目、フフフフ……!」
偽りの星夜 エンゲージ・リングXX (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン 9000
ブロッカー
W・ブレイカー
このクリーチャーが破壊される時、かわりに自分のシールドを1枚墓地に置いてもよい。
気がふれたように不気味に笑うルシエルは、もう一枚のカードをかざす。突如、暗門より凄まじい闇の激流が流れ、もう一体の堕天使が降臨する。
「暗黒の星夜よ、生ける者をすべて飲み込め! 《偽りの星夜 スター・イン・ザ・ラブ》!」
偽りの星夜 スター・イン・ザ・ラブ 闇文明 (9)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン 13000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある他のクリーチャーをすべて破壊してもよい。そうした場合、自分のシールドをすべて墓地に置く。
T・ブレイカー
《ウェディング・ゲート》から呼び出されたのは、二体の堕天使。どちらもかなり大型の、アンノウンを併せ持つ闇のエンジェル・コマンドだ。
「しかも《エンゲージ・リングXX》と《スター・イン・ザ・ラブ》ですか……」
この二体の組み合わせは厄介だ。
「《スター・イン・ザ・ラブ》の能力発動です。さあ、バトルゾーンのクリーチャーをすべて破壊です!」
直後、《スター・イン・ザ・ラブ》は漆黒の光線を無差別に乱射する。敵も味方も関係なく、暗黒の砲撃を撃ち放った。
「墓地に進化デーモン・コマンドはいないです……《ブラックルシファー》が破壊されたですか……」
同時にルシエルの場も《スター・イン・ザ・ラブ》を除いて一掃されるが、しかし《エンゲージ・リングXX》は違う。
「《エンゲージ・リングXX》の能力発動。私のシールド一枚墓地へと置き、破壊を免れます。そして《スター・イン・ザ・ラブ》の能力で、私のシールドをすべて墓地へ」
《スター・イン・ザ・ラブ》は非常に強力なリセット能力を持つが、強力すぎるが故の弱点もある。それは自分のシールドがすべて墓地へと落ちてしまうことと、味方も巻き込んでしまうことだ。
流石にシールドが墓地へと落ちるのは仕方ないが、味方の破壊を防ぐ方法はある。それが《エンゲージ・リングXX》。このクリーチャーは自分のシールドを犠牲にすることで破壊を免れる効果があるため、《スター・イン・ザ・ラブ》による破壊を防ぐことができる。どうせ《スター・イン・ザ・ラブ》でシールドはすべて墓地へと落ちるため、一枚や二枚シールドが減ったところで関係ない。
自分のシールドを削ることで様々な能力を発揮するのが闇のエンジェル・コマンド。自らの肉を切り、相手の骨を断つその戦い方は、守りの力を持つ光のエンジェル・コマンドとはまるで異質なもの。
「これで私のターンは終了。ですがこの時、墓地の《結納の堕天ノシーレ》の能力が発動します。このターン、シールドから闇のコマンドが墓地ているので、《ノシーレ》を墓地からバトルゾーンに」
シールドがゼロで、守りが薄くなったと思われたルシエルだが、当然防御も考えている。《スター・イン・ザ・ラブ》で闇のコマンドがシールドから墓地に落ちているので、墓地の《ノシーレ》二体がバトルゾーンへと降り立つ。
「……私のターン、《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》を召喚、効果でエンジェル・コマンドを指定です」
ルシエルの残る一枚の手札が公開される。そのカードは《龍聖霊ウルフェウス》。エンジェル・コマンドなのでそのまま墓地へ。シールドは既にゼロなので、ハンデスだけに終わる。
「それだけですか。ならばもう、私が勝ったようなものですね」
不気味な笑みを崩さず、ルシエルのターンがやって来る。
「まずは《コアクアンのおつかい》です。山札の上三枚を公開」
捲られたのは《インフェルノ・サイン》《先導の精霊ヨサコイ》《超次元ブルーホワイト・ホール》の三枚。すべて光か闇のカードなので、三枚とも手札に入る。
「残ったマナで《ヨサコイ》を召喚。そして《スター・イン・ザ・ラブ》と《エンゲージ・リングXX》で攻撃! シールドをすべてブレイク!」
「っ……」
《スター・イン・ザ・ラブ》によるTブレイクと《エンゲージ・リングXX》によるWブレイク、合計五枚のブレイクを受け、汐のシールドはすべて吹き飛ばされてしまう……かに見えたが。
「S・トリガー発動。《デーモン・ハンド》で《エンゲージ・リングXX》を破壊です」
《スター・イン・ザ・ラブ》によってブレイクされた三枚目のシールドから悪魔の腕が伸び、《エンゲージ・リングXX》が破壊される。なんとか汐は二枚のシールドを残すことができた。
しかしルシエルの場にはまだブロッカーが三体。加えて《スター・イン・ザ・ラブ》という超大型の堕天使までいる。シールドブレイクで増えたとはいえ、この少ない手札で逆転するのは難しそうだ。
「流石に厳しいですね、これは……」