二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.350 )
日時: 2014/01/19 13:22
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 汐にとっては苦しい展開となった、ルシエルとのデュエル。
 シールドの枚数では、汐が二枚、ルシエルはゼロだが、やはり場数が違う。
 汐の場には《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》が一体だけ。
 対するルシエルの場には《偽りの星夜 スター・イン・ザ・ラブ》。さらにシールドがゼロのルシエルを守るブロッカー《結納の堕天ノシーレ》が二体と、《先導の精霊ヨサコイ》。
 攻めるにしてもブロッカーが邪魔だ。かといってもたもたしていては《スター・イン・ザ・ラブ》に押し切られる。
「なら……私のターン。《ジャスミン》を召喚です。破壊はせず、《魔刻の斬将オルゼキア》を召喚。私は《ジャスミン》を破壊です」
「……ちっ。なら私は《ノシーレ》と《スター・イン・ザ・ラブ》を破壊」
 露骨に不愉快そうに舌打ちし、《ノシーレ》と前のターンに出したばかりの《スター・イン・ザ・ラブ》を破壊するルシエル。ルシエルとしては大型アタッカーである《スター・イン・ザ・ラブ》を残しておきたかっただろうが、ここでブロッカー二体を破壊すれば次のターンには《ガル・ヴォルフ》と《オルゼキア》にやられてしまうため、仕方ないだろう。
「さらに《ガル・ヴォルフ》で攻撃です」
「《ノシーレ》でブロック」
 《ガル・ヴォルフ》の斬撃を《ノシーレ》で防ぐルシエル。これで残ったクリーチャーは《ヨサコイ》のみ。
 このターンはもうできることはないが、このまま攻めて行けば押し切れそうである。幸いなことに、《ウェディング・ゲート》の反動でルシエルの手札も切れかけている。
「このまま押し切れる、だなんて思わないでほしいですね」
 汐の胸中を見透かしたような、鋭い言葉を投げかけるルシエル。心なし、その声は棘っぽかった。
「この程度で終わる私ではありません。まずは呪文《リバース・チャージャー》。墓地の《ブラッディ・シャドウ》を回収し、G・ゼロでそのまま召喚。続けて呪文《超次元ブルーホワイト・ホール》。超次元ゾーンよりコスト5以下のサイキック・クリーチャーを呼び出します。開け、超次元門。《時空の霊魔シュバル》をバトルゾーンへ」
 超次元の門より、《シュバル》がバトルゾーンへと呼び出される。覚醒すれば厄介なクリーチャーだが、覚醒するためにはコスト6以上のエンジェル・コマンド、ないしはデーモン・コマンドが二体場にいなくてはならない。今のルシエルの手札状況とバトルゾーンの状況では、覚醒は難しいだろう。
「光のクリーチャーを呼び出したので、手札を一枚シールドへ。ターン終了」
 手札をすべて使い切り、ブロッカーを呼びながらシールドを追加して守りを固めてきたルシエル。その中でも、汐は追加されたシールドに視線を向ける。
(あの人の手札には、確か《インフェルノ・サイン》があったはずです。このターンに使用したカードを見るからに、追加したのはそのカードでしょう。墓地には《エンゲージ・リングXX》や《ラスト・プロポーズ》、《ブラック・オブ・ライオネル》が見えていることですし、迂闊に攻撃はできないですね)
 わざわざこちらから罠に掛かることもない。ここはとどめを刺すために必要な戦力をじっくりと蓄えてから攻めるべきだろう。
「とはいえ、手札がこれでは攻めるものも攻められないですね……」
 汐の命運は山札次第、とも言うべき状況だが、こんな時に引いてくるのは《カラフル・ダンス》。これ以上デッキを削るのも危険なので、即マナにする。
「《威牙の幻ハンゾウ》と《死神の邪険デスライオス》を召喚です。《ハンゾウ》で《ヨサコイ》のパワーをマイナス6000し破壊、《デスライオス》も能力発動です。私は《デスライオス》を破壊です。あなたもクリーチャーを一体破壊してください」
「なら、《シュバル》を破壊」
 《オルゼキア》で除去した時とは違い、さほど感情がこもっていないルシエル。どうやら《シュバル》の覚醒は最初から狙っておらず、《ブルーホワイト・ホール》によるシールド追加が目的だったようだ。
「ここは攻撃せず、ターンエンドです」
 汐のデッキには数多くの除去カードが入っているため、ブロッカーの一体や二体なら、軽く除去してしまえる。墓地のカード状況と、デッキの枚数から考えて、《オルゼキア》ならまだ引けそうな感じだ。
(あの邪魔なブロッカーを除去してからが勝負どころです。さて、どう動いてくるですかね……)
 お互いに残りシールド、手札が少ない状況。迂闊に攻めても逆転を許してしまうが、かといって攻めなければ勝てない。かなり緊迫した状況だ。
「……《コアクアンのおつかい》を発動」
 鬱陶しそうに汐とそのクリーチャーたちを見遣るルシエルは、山札の上三枚を捲る。捲られたのは《乾杯の堕天カリイサビラ》《先導の精霊ヨサコイ》《魔光騎聖ブラッディ・シャドウ》の三枚。またしてもすべて光か闇のカードだ。
「残ったマナで《ヨサコイ》を召喚、G・ゼロで《ブラッディ・シャドウ》も召喚です」
 とにかく守りに徹するルシエル。運よく引き当てたブロッカーを並べていく。シールドを削る戦略ゆえに、ブロッカーは多く積まれているようだ。
「ターン終了ですよ。さっさとしてください」
 防戦になっているのが気に入らないのか、ルシエルの言葉が荒っぽくなってきている。それを気にする汐ではないが、場違いながらもマナーが悪いとは思う。
「では、私のターンです」
 ここで除去カードを引きたいところだが、しかし天は汐を敵視しているかのように狙ったカードを引かせない。
(《ジャスミン》ですか……このまま召喚して場数を増やしてもいいのですが……)
 ふと、汐は視線を動かす。その先にあるのは、ルシエルのバトルゾーン、そのクリーチャーたちだ。
「……《ボーンおどり・チャージャー》を発動です」
 少し思案し、汐は《ボーンおどり・チャージャー》を使用。そしてバトルゾーンのクリーチャーに手を添えた。
「……《ハンゾウ》で攻撃、シールドをブレイクです」
「前のターンは攻撃を渋っていたというのに、ブロッカーが増えたら攻撃ですか。なかなかわけのわからない思考回路ですね。いいでしょう、そのブレイクは受けます」
 《オルゼキア》の攻撃をスルーしたルシエル。そしてブレイクされたシールドは、当然S・トリガーが発動する。
「S・トリガー発動、《インフェルノ・サイン》。墓地から《偽りの星夜 ブラック・オブ・ライオネル》をバトルゾーンに」


偽りの星夜 ブラック・オブ・ライオネル 闇文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/アンノウン 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出したとき、相手のシールドを1枚選び墓地に置く。その後、自分の墓地からコマンドを1枚選び、新しいシールドとしてシールドゾーンに裏向きにして置く。
W・ブレイカー


 地獄の扉から這い出て、墓地より蘇ったのは《偽りの星夜 ブラック・オブ・ライオネル》だ。光のエンジェル・コマンドを率いていた《ライオネル》が、その力を負の力へと差し引かれ、堕天使となった姿である。
 正の力が負になったことで、その力も逆転する。
「《ブラック・オブ・ライオネル》の能力で、貴女のシールドを一枚墓地へ! そして私は、墓地の《スター・イン・ザ・ラブ》をシールドへ!」
 汐のシールドを墓地へと送りつつ、ルシエルはシールドを追加する。これでシールドの枚数は並んだ。
「《ガル・ヴォルフ》でシールドブレイクです」
「……? ここでも攻撃ですか? では、その攻撃も通します」
 これでルシエルのシールドはまたゼロになる。しかし、手札に《スター・イン・ザ・ラブ》が入った。
「いいんですか? 次のターンには《スター・イン・ザ・ラブ》が、またすべてを破壊し尽くしますよ? その残り少ない手札とシールドで、耐えきれるでしょうか?」
「……《オルゼキア》で攻撃です」
 ルシエルの言葉を聞き流し、汐は《オルゼキア》でも攻撃を仕掛ける。ルシエルのシールドはゼロ枚、なのでこれが決まればとどめを刺せるが、
「《ブラッディ・シャドウ》でブロック」
 当然、場に残っているブロッカーでその攻撃は防ぐ。
「なにやら企んでいるようですね……」
 ここで攻めてきた汐に不信感を抱くルシエル。《スター・イン・ザ・ラブ》で、一度場をリセットしてから決めてしまおうと考えていたが、それは危険な気もする。
 そんなことを思いながら、カードを引き——そして。
 彼女の顔は狂気に歪む。
「……フフッ、ここで来ましたか。いいでしょう。では、貴女には最大級の祝福を授けましょうか」
 ルシエルは手札の《カリイサビラ》をマナへと落とす。これで彼女のマナは9マナ。《ヨサコイ》がいなくとも《スター・イン・ザ・ラブ》は出せるが、彼女が選ぶ一手は《スター・イン・ザ・ラブ》ではない。

「すべてものに絶望の祝福を——《「祝」の頂 ウェディング》」