二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.356 )
日時: 2014/01/20 01:11
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「祝」の頂 ウェディング 無色 (11)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 13000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、相手はバトルゾーンの自分のクリーチャーまたは自身の手札から合計4枚選び、新しいシールドとして裏向きにし、自身のシールドゾーンに加える。
このクリーチャーがシールドをブレイクする時、相手はそのシールドを自身の手札に加えるかわりに墓地に置く。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


 現れたのは、闇のエンジェル・コマンドを束ねる天頂の存在——《「祝」の頂 ウェディング》。
 《ウェディング》が召喚してバトルゾーンに出た時、相手はバトルゾーンと手札のカードを四枚選び、シールドに埋めなくてはならない。
 パッと見ると、シールドが最大で四枚増え、しかもタイミングが合えば手札のS・トリガーもシールドに仕込めるのだから、悪いことばかりではないように思える。
 しかし、それは大きな間違いだ。シールドにカードを封じられることは、カードの封印としてはかなり強力な部類に位置する。シールドに埋められてしまえば、回収が難しくなるのだ。シールドからカードを回収するカードはデッキを選ぶうえに、数も多いとは言えない。山札や墓地以上に回収が困難なゾーンだ。シールドをブレイクされれば手札に入るが相手依存になるためそう都合よくシールドを割ってはくれない。
 加えて《ウェディング》はブレイクしたシールドをそのまま墓地へ送ってしまう能力も持つ。つまり、S・トリガーを仕込んでもそのまま焼き払われてしまうのだ。
 祝福だと思ったら、それは大きな絶望だった。そしてその絶望こそが祝福——それが《「祝」の頂 ウェディング》だ。
「貴女の場にいるクリーチャーは三体、手札のカードは一枚。さあ、すべてのカードをシールドに送りなさい!」
「…………」
 汐は口を閉じたまま、自分の三体のクリーチャー、そして手札のカードを一枚、シールドゾーンに置く。シールドこそ五枚にまで回復したが、これで汐は、バトルゾーンも手札も空になってしまった。
「さらに《ブラック・オブ・ライオネル》でWブレイク!」
 そしてすぐさま《ブラック・オブ・ライオネル》による攻撃が放たれる。ブレイクされたシールドは、《ガル・ヴォルフ》と汐が手札からシールドに置いたカードだ。どちらもS・トリガーではない。
 汐のデッキはマナ加速からの大型デーモン・コマンド召喚に重点を置いているため、S・トリガーはあまり多くない。あるとしても《フェアリー・ライフ》や《デーモン・ハンド》が精々だ。
 《フェアリー・ライフ》はともかく、《デーモン・ハンド》なら前のターンに使用して、ルシエルのブロッカーを除去していただろう。それをしなかったということは、少なくともS・トリガーではない。クリーチャーなら、デメリット持ちでない限り頭数を増やすために召喚するはずなので、呪文だと考えられる。マナがあるにも関わらず使用しなかったところを見ると、マナを加速させるような、この場面では役に立たない呪文なのだろう。
 以上のような推測から、現状で最も能力が生かしにくい《ガル・ヴォルフ》と、使い道のなさそうなカードをブレイクしたルシエル。恐らく、次のターンに残った三枚のシールドを《ウェディング》で焼き払い、《ブラック・オブ・ライオネル》でとどめを刺すつもりなのだろう。
「私のターンは終了。さあ、貴女の最後のターンです、精々足掻けるだけ足掻きなさい」
「……そうですね」
 確かに、これが最後のターンになる。

 ——このデュエルにおける。

「……これで、終わりです」
 ゆっくりとカードを引いた汐。残り二枚の手札で、汐は最後の行動を起こす。
「《霞み妖精ジャスミン》を召喚です」
「《ジャスミン》? なにをシールドに埋めたのかと思えば、そんなクリーチャーですか」
 嘲笑するようなルシエルの声。しかし彼女は、ここで気付くべきだ。前のターン、なぜ汐が《ジャスミン》を召喚しなかったのかを。
 破壊せずに場に残せば、アタッカーとして運用できる《ジャスミン》。この局面で、わざわざ手札に温存する必要はなかったはずだ。
 しかしそれを手札にキープしていたのは、れっきとした理由がある。
「……《スター・イン・ザ・ラブ》を警戒しての行動だったのですが、出て来たのが《ウェディング》とは、少し驚きでした。しかしあなたがのこクリーチャーのシールドを割ってくれたお陰で、このターンに終わらせることができそうです」
「はぁ?」
 なに言ってんだこいつ、とでも言いたげな視線を、ルシエルは汐へと向ける。だがその答えは、すぐに明らかとなる。
「確かに私のデッキは、高速で《ドルバロム》などの重量級デーモン・コマンドを呼び出す構築です。しかし、本当の、本来の、本命はこちらなのですよ」
 最後に残った一枚。残りのマナを全て使い切り、今しがた引いたばかりのそのカードを、曝け出す。

「——《「謎」の頂 Ζ—ファイル》」


「謎」の頂 Ζ—ファイル 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 13000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分の他のクリーチャーをすべて破壊してもよい。そうした場合、デーモン・コマンドをすべて、自分の墓地からバトルゾーンに出す。
T・ブレイカー
エターナル・Ω


 顕現するのは、またしても天頂の存在。かの《「呪」の頂 サスペンス》の盟友、闇のデーモン・コマンドを率いるゼニス——《「謎」の頂 Ζ—ファイル》だ。
「《Ζ—ファイル》……!? まさか、こんな局面で……!」
 驚きを隠しきれないルシエルは、一歩後ろへと後ずさる。
 汐が手札に《ジャスミン》をキープしていてのは、この《Ζ—ファイル》のためだ。《Ζ—ファイル》は召喚時に凄まじい能力を発動するが、その条件として、自分の他のクリーチャーをすべて破壊しなければならない。破壊できなければ効果が発動しないので、場のクリーチャーを一掃される可能性を鑑みて、汐は手札に《ジャスミン》を温存していた。
「《Ζ—ファイル》の能力発動。私の《ジャスミン》を破壊です。そして——」
 直後、生贄となった《ジャスミン》の魂が、墓地の悪魔たちに新たな生命を吹き込み、最後に《Ζ—ファイル》が咆号する。
「私の墓地のデーモン・コマンドをすべてバトルゾーンへ」
 新たな命を得た悪魔たちは、次々と墓地から這い出てくる。序盤から墓地も同時に増やしていた汐の墓地には大量のデーモン・コマンドが眠っている。それがすべて、呼び覚まされたのだ。
 《「謎」の頂 Ζ—ファイル》は、闇のデーモン・コマンドを統率するゼニス。《Ζ—ファイル》の前には悪魔しか存在することが許されず、また悪魔には死すらも許さない。死んだ悪魔を、他の死んだ魂を呼び水にして、再び戦場へと舞い戻らせるのだ。
「墓地より復活です。《死神の邪険デスライオス》《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》《魔刻の斬将オルゼキア》——」
 おびただしい数の悪魔たちが舞い戻ってくる。そして最後には、
「《デスライオス》進化《悪魔神ドルバロム》。《オルゼキア》進化《死神明王ガブリエル・XENOM》。そして《ブラックルシファー》進化《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》」
 呼び戻されるのは、ただの悪魔だけではない。悪魔神——進化デーモン・コマンドをも呼び戻すのだ。
「《ドルバロム》で互いのバトルゾーンとマナゾーンにある、闇以外のカードをすべて墓地へ。《ヴァーズ・ロマノフ》の能力で、生き残った《ブラッディ・シャドウ》を破壊」
 蘇った《デスライオス》や《オルゼキア》でボロボロになったところに、さらなる追い打ちをかける。マナを潰し、辛うじて生き残った《ブラッディ・シャドウ》も《ヴァーズ・ロマノフ》によって破壊される。
 これでルシエルのバトルゾーンは全滅。マナはそれなりに残っているが、手札はほとんどない状態。シールドもゼロ。そして立ちはだかるのは、三体の悪魔神。
「なっ、ば、馬鹿な……こんなことが……!」
 ルシエルが顔を歪め、狂気と憤怒の込められた眼差しで、射殺すように汐を睨みつける。
「この、神の供物にしかならないような、愚物の文才でぇぇぇ!」
「……私が供物か愚物かはこの際でうでもいいですが、とにかく、これで終わりです」
 発狂したように叫ぶルシエルも、汐は軽くあしらう。平静を失った人間ほど、弱いものはなく、恐れるものはない。
 守る術を完全に失ったルシエルに、汐の悪魔神が魔手を伸ばす。

「《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》で、ダイレクトアタックです」