二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.358 )
日時: 2014/01/21 19:59
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「さあ、すべてを焼き払って。《P・サファイア》で攻撃」
 《がっつりガッツマン》の効果を受け、ブロックされなくなった《神青輝 P・サファイア》。しかしよくよく考えてみれば、それもそこまで脅威ではないと、姫乃は思い直す。
 《P・サファイア》は本家《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》といくつか相違点があり、その相違は欠点も利点もある。
 欠点としては、やはりブレイクしたシールドすべてが墓地に送られるのではなく、S・トリガーが発動してしまう点だろう。後はドラゴンでないので、ドラゴンのサポートを受けられなくなったことなどか。
 とはいえその欠点も、考えようによってはそこまで酷いものでもない。デュエル・マスターズの逆転要素と言えばS・トリガーだが、実をいうとS・トリガーは相手の攻撃を止める、その場凌ぎにしかならないことも多い。発動するだけで場面をひっくり返すようなS・トリガーというのは、ほとんど見られない。
 それよりも重要なのが、シールドブレイクによって手札に入るカード。要するに手札だ。コントロール系のデッキが最後にまとめてシールドをブレイクしてとどめを刺すように、シールドブレイクは相手に手札を与え、選択肢を広めてしまう。そうすれば、円滑に場を進めることもできなくなってしまうのだ。
 だが《P・サファイア》は、それを封じる。その場はS・トリガーで凌げても、手札が増えないのであれば、そこからの逆転も難しい。確かに《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》と比べると見劣りするが、そもそもプレミアム殿堂と比べて強い弱いと言う方がナンセンス、と考えるべきだろう。
 ここで話を戻すが、《P・サファイア》には《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》にはない利点もある。それが、

「アタック・チャンス発動……《破界秘伝ナッシング・ゼロ》」


破界秘伝ナッシング・ゼロ 無色 (7)
呪文
アタック・チャンス—無色クリーチャー
自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。こうして見せた無色カード1枚につき、このターン、バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体はシールドをさらに1枚ブレイクする。見せたカードはすべて、好きな順序で山札の上か下のどちらかに戻す。


「アタック・チャンス呪文……!」
 オラクリオンとなり、ゼロ文明のクリーチャーとなったことで、《P・サファイア》はアタック・チャンスの恩恵を受けることができるようになったのだ。
「ついでに《黄泉秘伝トリプル・ZERO》も使用。まずは《ナッシング・ゼロ》の能力を発動」
 《ナッシング・ゼロ》で、最大三枚ブレイク数を増やすことができる。ここで二枚以上無色カードが捲れれば、姫乃のシールドはまとめて吹き飛ぶことになる。
 そうなると、ブロッカーを並べても押し切られてしまう可能性が高い。
「効果の対象は《P・サファイア》。山札の上から三枚を捲る」
 捲られたのは《墓地の守護者メガギョロン》《リーフストーム・トラップ》《戦慄のプレリュード》。
「無色カードは二枚。だから、このターン《P・サファイア》はシールドを五枚ブレイクする。《P・サファイア》でシールドブレイク」
 《P・サファイア》は飛翔し、上空から白き灼熱の光線を放つ。
「う、あっ、うぁ……っ!」
 次々と焼き払われていくシールド。《光器パーフェクト・マドンナ》《勝利の女神ジャンヌ・ダルク》《魂と記憶の盾》《純潔の信者 パーフェクト・リリィ》《コアクアンのおつかい》……逆転に繋がりそうなカードはすべて焼き尽くされ、墓地へと落ちて行った。
 これで姫乃のシールドはゼロ。しかも、手札は一枚たりとも増えていない。
「続いて《トリプル・ZERO》でシールド、手札、マナを一枚ずつ追加。ターンエンド」
 守りまで固められ、一気に苦しくなってしまった姫乃。
 ブロッカーを並べて攻撃を防ぎつつ、ちまちまと殴っていく手もあるが、それも厳しい。こちらのブロッカーの数を上回るアタッカーを出されたら押し切られてしまうし、二枚目の《がっつりガッツマン》を引かれても、その前に《P・サファイア》を除去しなければやはり負ける。
「とりあえず、今は逆転手を探しつつブロッカーを並べないと……二体目の《ロードリエス》を召喚して、二体分の効果が発動するから二枚ドロー。さらに《ハッチャキ》で攻撃して、手札から《王機聖者ミル・アーマ》をバトルゾーンに。ブロッカーが出たから、もう一回二枚ドローするよ」
 そしてクトゥグアのシールドがブレイクされる。
「続けて《パーフェクト・リリィ》でも攻撃、その時《パーフェクト・リリィ》の効果で《ニヤリー》をタップするよ」
 《パーフェクト・マドンナ》オラクルとなり、防御の力を失った《パーフェクト・リリィ》だが、代わりに攻撃時に相手クリーチャーをタップする能力を得た。バトルゾーンを離れない能力もあり、相手クリーチャーの動きを封じながら単騎で切り込んで行ける点が強みだ。
「最後に《ロードリエス》で《ニヤリー》を攻撃して破壊! ターン終了」
 姫乃が選んだ選択は、守りを固めながら地道に攻めていくことだ。幸いなことに、バトルゾーンにいるアタッカーは攻撃するたびにブロッカーを増やせる《ハッチャキ》と、パワーがゼロにならない限り場を離れない《パーフェクト・リリィ》の二体だ。手札さえあれば攻撃しながら防御を固めることは容易で、除去を受けずに攻め続けることもできる。
 なので問題は、クトゥグアにキーカードを引かれてしまうことだが、
「……私のターン。呪文《セブンス・タワー》。メタモーフで3マナ追加。さらに《ニヤリー》を召喚」
 捲られた三枚は《墓地の守護者メガギョロン》《黄泉秘伝トリプル・ZERO》《破界秘伝ナッシング・ゼロ》。すべて無色なので、三枚とも手札に入る。
「続けて呪文《グローバル・ナビゲーション》。アンタップ状態の《ロードリエス》をマナゾーンに送り、マナゾーンの《ニヤリー》を回収」
 クトゥグアもブロッカーを除去しつつ、着実に場数を並べていく。
「《P・サファイア》で攻撃、アタック・チャンス発動。《黄泉秘伝トリプル・ZERO》を二枚、及び《破界秘伝ナッシング・ZERO》」
「え……?」
 ここで《P・サファイア》が攻撃すること自体はおかしくはない。手札に《トリプル・ZERO》を握っているのだから、使わない手はないだろう。
 だが《ナッシング・ゼロ》をここで発動する意味はないはずだ。姫乃のシールドはもうゼロ、今更ブレイク数を増やしても無意味。それならマナチャージでもなんでもすればいい。
 しかし、すぐに姫乃は、クトゥグアの魂胆を知ることになる。
「まずは《トリプル・ZERO》の効果でシールド、手札、マナをそれぞれ二枚追加」
 これでクトゥグアのシールドは四枚。また攻めるのが難しくなってしまった。
「次に《ナッシング・ゼロ》の効果発動」
 残り少ない山札の、上から三枚が公開される。表向きになったのは《ピクシー・ライフ》《リーフストーム・トラップ》《がっつりガッツマン》の三枚。ゼロ文明のカードはないため、ブレイク数の増加はない。
 しかし、
「そして、この三枚を好きな順序で山札の上に置く」
「っ……!」
 ここで姫乃はクトゥグアの行動の真意に気づく。
 意外と見落としがちだが、《ナッシング・ゼロ》で捲った三枚は、“好きな順序で山札の上か下”に置けるのだ。そのため、疑似的なサーチカードとして運用することも可能なカードなのである。
 ほぼ確実に、クトゥグアは《がっつりガッツマン》をデッキトップに積み込んでいるはず。
 つまり、次の姫乃のターンでなんとかしなければ、次に訪れるクトゥグアのターンで、アンブロッカブルと化した《P・サファイア》がとどめを刺しに来る。
「《P・サファイア》でダイレクトアタック」
「あ……《パーフェクト・マドンナ》でブロック!」
 アタック・チャンスに気を取られて忘れていたが、今は《P・サファイア》の攻撃中だ。姫乃は慌てて《パーフェクト・マドンナ》でその攻撃をブロックする。
「……ターンエンド」
 それ以上の攻撃はせず、クトゥグアは静かにターンを終えた。
 そして、姫乃はこれが最後になるかもしれない、自分のターンを迎える。