二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.361 )
日時: 2014/01/25 14:21
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 《エンド・オブ・ザ・ワールド》は、数ある墓地肥やしカードの中でも、最大級の力を持つ、非常にトリッキーかつリスキーなクリーチャーだ。
「山札からカードを三枚選択して……それ以外のカードは墓地へ」
 《エンド・オブ・ザ・ワールド》の咆哮で、ごっそりとハスターのデッキが削り取られる。
 考えなしに使えばデッキ切れを起こすだけの《エンド・オブ・ザ・ワールド》は、当然ながらコンボに組み込むことが必須と言える。真っ先に思いつくのは墓地利用だろう。墓地に落ちたカードを呼び戻したり、回収したり、または墓地を参照する能力を最大限に活用したりと、いろいろ考えられる。
 一番ありそうな可能性は墓地利用だが、流はその考えを否定した。
(……奴はマナ加速カードとして《ダンシング・フィーバー》を使用していた)
 《ダンシング・フィーバー》も、コンボデッキによく利用されるカードだ。同じ6マナで3マナ加速できるカードには《爆進イントゥ・ザ・ワイルド》があり、こちらはマナゾーンに置くカードがタップされず、他にも効果がある。
 なのでただマナを増やしたいだけならそちらを使うところが、ハスターが使用したのは《ダンシング・フィーバー》。つまり、マナゾーンに落ちて欲しくないカードを取捨選択してマナを加速させた。
(奴の墓地には能力なしのクリーチャーも相当数落ちている……なんらかの手段でこれらを山札に戻し、《神聖祈 パーロック》の能力を発動させるつもりか)
 《エンド・オブ・ザ・ワールド》は墓地を増やす能力に目が行きがちだが、実は残す三枚の山札も好きなように操作できる。つまり、山札操作のカードとしても利用できるのだ。
 流はハスターの目的は山札操作だと読む。そう思った流の行動は早かった。
「《鬼羅丸》はとりあえず置いておくとするか……代わりにこいつを召喚だ。《偽りの名 イージス》!」
 流が召喚したのは《偽りの名 イージス》。バトルゾーンのアンノウン以外のクリーチャーをすべて山札に戻す。
 流のバトルゾーンにはアンノウンしかいないが、ハスターの場にはクリーチャーがい二体、どちらもアンノウンではないので、まとめて山札へと送還された。
 その後、ハスターは山札に戻されたクリーチャーの数だけカードを引くが、山札に戻されたクリーチャーもろともデッキがシャッフルされたため、デッキトップのカードは変わっている可能性が高い。
「これでお前のデッキはかき混ぜられた。デックトップになにを仕込んだかは知らないが、お前の思い通りにはいかない。《レディオ・ローゼス》でTブレイク!」
 さらに《レディオ・ローゼス》で残ったシールドを二枚粉砕する。S・トリガーは出ず、これでハスターはバトルゾーンにもシールドにも、カードはなにもなくなった。
「僕の思い通りにはいかない、ね」
 かき混ぜられた山札を見つめ、ふとハスターは呟く。
「——そうかなぁ?」
 嘲るかのような笑みを浮かべ、首を傾げるハスター。その笑みは、少年らしからぬ不気味さがあった。
「なに……? どういうことだ」
「だってさぁ、君はぼくが山札の“上”にカードを仕込んだ、って思ってるみたいだけど、順番なんて関係ないんだよ。だって」
 一瞬、言葉を区切り、ハスターは続ける。

「ぼくがデッキに残したカード、全部同じカードだし」

「なんだと……?」
 嫌な予感がする。流の背筋に、悪寒が幾度と走り抜ける。
「だから君がいくらデッキをかき混ぜようとも、デッキの総数が減らないんじゃあ意味ないんだよ。確かに《イージス》は強いけど、この場面では意味なかったね」
 それじゃあそろそろお見せしようかな、と一息吐いてから、ハスターは残り少ないデッキからカードを引く。
「まずは《鬼人形ブソウ》を召喚。効果で墓地のクリーチャーを好きな数山札の上に戻すね」


鬼人形ブソウ 闇文明 (3)
クリーチャー:デスパペット/ハンター/エイリアン 3000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、クリーチャーを好きな数、自分の墓地から好きな順序で山札の一番上に置いてもよい。


 せっかく墓地に落としたカードを、再び山札へと戻すハスター。しかし《鬼人形ブソウ》は狙ったカードだけを山札に戻せる。これと《エンド・オブ・ザ・ワールド》を組み合わせることで、山札から不要なカードだけを抜き取ることが可能になるのだ。
「それから《クリスタル・メモリー》で持ってきたこれを発動だ。《転生プログラム》! 《鬼人形ブソウ》を破壊!」
 そして、《鬼人形ブソウ》の能力で積み込まれたカードが、山札の一番上から飛び出す。

「新たなる時代の波に乗れ、そして希え……《神聖祈 パーロック》!」


神聖祈 パーロック 無色 (7)
クリーチャー:オラクリオン 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から、クリーチャー以外のカードまたはカードに能力が書かれているクリーチャーが出るまで、カードをすべてのプレイヤーに見せる。そのカードを自分の手札に加える。その後、残りの見せたカードをバトルゾーンに出す。
バトルゾーンにある自分の、名前に「パーロック」とあるクリーチャーはすべてブロックされない。


 遂に現れた人造の神、オラクリオン。その名も《神聖祈 パーロック》。
 遥か昔、太古の時代にゴッドとの戦いを終わらせるために旅立った《パーロック》。彼は長い旅の中で、時に子供の姿となり、時にエイリアンとなり、時に瀕死の重傷を負ったり、様々な苦難と出会い、そして別れを経験した。
 そんな彼が行きついた先は、彼自身が楽しみを司る神。そう、オラクリオンだった。彼はすべての弱きものを統べる、海賊神となったのだ。
「《神聖祈 パーロック》の能力で、能力なしでないクリーチャー、またはクリーチャー以外のカードが出るまで、山札を捲っていくよ」
 普通に使えば運任せだが、しかしハスターは前のターン《エンド・オブ・ザ・ワールド》を、このターンには《鬼人形ブソウ》を召喚している。
 つまり、《転生プログラム》で踏み倒された《神聖祈 パーロック》の下には、大量の能力なしクリーチャーが眠っているはずで——
「じゃあ捲るね。《パーロック》、《カムバック・マイ・パーロック》、《パーロック〜陰謀に立ち向かえ〜》、《パーロック〜最後の航海〜》、《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》、《パーロック》、《カムバック・マイ・パーロック》——」
 ——山札から、次々と《パーロック》の名を冠するクリーチャーを湧いて来る。
「——《パーロック〜最後の航海》、《パーロック》、《パーロック》、《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》……《鬼人形ブソウ》」
 最後に《鬼人形ブソウ》が出たところで、《神聖祈 パーロック》の効果は打ち止めとなる。しかし、ハスターのバトルゾーンはおぞましいことになっていた。
 《神聖祈 パーロック》が一体。《パーロック》が四体。《カムバック・マイ・パーロック》が二体。《パーロック〜陰謀に立ち向かえ〜》が一体。《パーロック〜最後の航海〜》が三体。《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》が一体——合計十二体のパーロックが立ち並んだ。
 いかに能力なしのクリーチャーと言えども、この数は凄まじい。
「最後の仕上げに、呪文《キリモミ・スラッシュ》! これぼくのクリーチャーはすべてスピードアタッカーだ」
 《クローン・ファクトリー》でこのカードも回収していたので、まさか召喚酔いで攻撃は次のターンに持ち越される、などとは思っていない。このターンに、攻めてくる。
「じゃ、決めちゃいますか……行け」
 次の瞬間、大量の《パーロック》たちが徒党をなして流へと迫る。この数のクリーチャー、一枚や二枚のS・トリガーではとても太刀打ちできないだろう。
「っ……ニンジャ・ストライク! 《威牙の幻ハンゾウ》で《神聖祈 パーロック》を破壊!」
 攻められる前に、まず流は、《レディオ・ローゼス》で手に入れた《ハンゾウ》を呼び出して《神聖祈 パーロック》を破壊する。《神聖祈 パーロック》がいると、ハスターの《パーロック》をブロックできなくなってしまうため、先に潰しておく方がいいのだ。
 とはいえ、十二体のクリーチャーが十一体に減っただけだが。
「ニンジャ・ストライク! 《光牙忍ハヤブサマル》で《ハンゾウ》をブロッカーにし、《パーロック》の攻撃をブロック!」
 これで十体。
「S・トリガー発動だ! 《アクア・サーファー》で《カムバック・マイ・パーロック》をバウンス! もう一枚も《アクア・サーファー》だ、次は《パーロック〜最後の航海〜》をバウンス!」
 二回連続でシールドトリガーを引く流。これで残る《パーロック》は六体。
「S・トリガー! 《ホーガン・ブラスター》で、山札から《真実の名 アカデミアン》をバトルゾーンに! 《パーロック》をバウンス! 続けて《ミステリー・キューブ》! 《真実の名 リアーナ・グローリー》で、《パーロック〜陰謀に立ち向かえ〜》をブロック!」
 もはや奇跡などという言葉では収まり切らないレベルでS・トリガーを引いてくる流だが、しかし《パーロック》の勢いは衰えない。流のシールドは残り一枚、対する《パーロック》はまだ二体残っている。
 最後にシールドが《パーロック》によってブレイクされた。同時に、そのシールドは光の束となり収束する。
「S・トリガー発動!」
 まさか五枚のシールドすべてがS・トリガーという強運に恵まれた流。彼はその光の束を手にし、視線を向けるが、
「……!?」
 次の瞬間、絶望感すら漂う眼差しを、見開いた。

「《深海の伝道師 アトランティス》……!」

 最後のシールドから飛び出したのは、《アトランティス》。神がかりの奇跡を乱発した流だったが、最後の最後で、その奇跡は消えてしまったようだ。
「……ぷっ。あはははは! すっごい勢いでS・トリガー引いてくると思ったら、最後は《アトランティス》? うーわー、タイミング悪っ! もっと早くトリガーしてれば勝てたのにねー」
 なにがつぼにはまったのかは分からないが、軽く腹を抱えて大笑いするハスター。《アトランティス》の能力でクリーチャーを一体残し、それ以外は手札に加える。
 《アトランティス》でバウンスするクリーチャーは各プレイヤーが決定する。流が《アトランティス》を残したように、ハスターもアンタップ状態で場に残っている《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》を残した。
 最後の一撃を防ぎたい流だが、《アトランティス》はその一撃を不正ではくれない。
「じゃ、これで終わりだね。結構楽しかったけど、やっぱこんなもんか。案外君らって大したことないんだね。なんでニャルは負けたのかなぁ?」
 などと言いながら、ハスターは最後の《パーロック》に手をかける。

「《海賊の祈祷師 レディ・パーロック》で、ダイレクトアタック」