二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.362 )
- 日時: 2014/01/25 21:54
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「……随分とあっさり行かせたな」
神話空間へと引きずり込まれた亜実は、直立不動で黙しているクトゥルーを睨みつける。
わざわざ夕陽の前に立ち塞がったにもかかわらず、こうも簡単に対戦相手を変更するとなると、なにか裏があると読んでも不思議はないだろう。
「お前たちの目的は《太陽神話》なんだろうが……それ以外にもなにか企んでいるのか? それとも、そのための策略か? あたしが『昇天太陽』と交代した時には、あたしと戦う気だったようにすら思えるが」
「…………」
亜実の問いに対し、クトゥルーは口を開かない。答える気は毛頭ないようだ。
「……まあいい。お前たちの目的がどうあれ、あたしはあたしの目的を完遂するだけだ。【師団】の四天王……お前たちのトップの側近と戦うのであれば、相手にとって不足はない」
亜実とクトゥルーのデュエル。
「《一撃奪取 トップギア》召喚!」
先攻、2ターン目に亜実は《トップギア》を召喚。まだクトゥルーのデッキの内容が分からないので、どの程度の速度で攻めるかは決めきれない。
「……《ピクシー・ライフ》」
対するクトゥルーは、返しのターンでマナを加速させる。その一手で、亜実はこのデュエルでの方針を決定した。
(マナゾーンのカラーは光と自然……《ピクシー・ライフ》でマナ加速しているということは、ゼロ文明のクリーチャーを主軸に据えたコントロール系デッキ、か? ゼニスかオラクリオンかは分からないが、起動は遅そうだな)
亜実は手札に視線を落とす。この手札の状況で、相手はコントロール気味のデッキ。ならばここは、速攻で殴り切る。
「あたしのターンだ! 《トップギア》進化! 《金属器の精獣カーリ・ガネージャー》!」
《トップギア》の能力でそのターン最初に召喚する火文明のクリーチャーの召喚コストは1軽くなる。そのため、3マナで《カーリ・ガネージャー》を呼び出し、攻めに出た。
「お前がなにを考えているかは知らないが、あまり悠長にマナを溜めていると、置いていくぞ。まず《カーリ・ガネージャー》の登場時能力で一枚ドロー。そして《カーリ・ガネージャー》で攻撃し一枚ドロー、Wブレイク!」
早速二枚のシールドを叩き割る。まだクリーチャーも出せていない状態でシールドを三枚に減らされてしまったクトゥルー。とはいえ、まだ三枚だ。先は分からない。
「……《青銅の鎧》、《予言のファミリア オラクルト》を召喚」
「ブロッカーか。それにまたマナ加速……」
これでクトゥルーのマナは6マナ。ゼニスが出て来るのであればまだ余裕はあるが、オラクリオンならそろそろだ。
「なら、これだな。呪文《スーパー獄門スマッシュ》で《オラクルト》を破壊! 《カーリ・ガネジャー》でWブレイク!」
最初からそのつもりではあったが、亜実は速攻で攻めていく。速度が衰えることはない。
ブロッカーを破壊され、またしてもクトゥルーはシールドを二枚失ってしまう。もう残り一枚だ。
「……《無頼聖者スカイ・ソード》、《信心深きコットン》召喚」
しかし今度はブロッカーやマナだけでなく、シールドまで増やしてくる。防戦一方にはなっているが、なかなかしぶとい。
「ならば、手数で勝負だ。《熱湯グレンニャー》《腐敗電脳ディス・メルニア》を召喚! 《カーリ・ガネジャー》でWブレイク!」
《グレンニャー》と《カーリ・ガネージャー》により、手札を減らさないまま攻め手を増やしていく亜実。さらに《ディス・メルニア》がいればブロッカーも意味をなさず、大型クリーチャーが出て来たとしても素早く対処できる。
とりあえず今はブロッカーが邪魔なので、《ディス・メルニア》で牽制しつつ、《コットン》にブロックさせようとするが、
「なに……っ?」
クトゥルーは《カーリ・ガネージャー》の攻撃をスルーした。
(どういうことだ? ここでシールドがゼロになれば、次のターンにはアンブロッカブルの《ディス・メルニア》でほぼ確実にとどめを刺せる。それとも、手札に除去カードの類があるのか……?)
そんな風に考える亜実だったが、除去カード以前の問題であった。
「S・トリガー発動《DNA・スパーク》」
「っ、なんだと……!」
刹那、螺旋状にうねる雷光が放たれ、亜実のクリーチャーたちは、縛り付けられるようにその光を受けた。
これで亜実が並べたクリーチャーはすべてタップ状態。そしてシールドが二枚以下なので、クトゥルーはシールドを一枚追加する。
さらに、
「《雷鳴の守護者ミスト・リエス》を召喚。呪文《超次元ホワイトグリーン・ホール》、《勝利のプリンプリン》をバトルゾーンへ」
今までマナ加速やブロッカーを並べてばかりだったクトゥルーが、違う動きを見せた。
「《プリンプリン》の効果は《カーリ・ガネージャー》を指定。《ホワイトグリーン・ホール》の効果でマナゾーンから《DNA・スパーク》を手札に加える。手札を一枚シールドに置く」
《カーリ・ガネージャー》は攻撃を封じられ、あからさまにS・トリガーも仕込み、
「《コットン》で《グレンニャー》を攻撃。《青銅の鎧》で《ディス・メルニア》を攻撃」
タップされた亜実の小型クリーチャーを殲滅していく。これでは迂闊に攻撃できないどころか、攻撃することすらままならない。
(速攻で決めるつもりだったが、持ちこたえられたか……こうなると、今度はこちらが立て直さなければ、厳しいか……)
亜実のデッキは単純な速攻ではない。というか速攻とは言えないデッキであり、ビートダウンとしてみても相当異質なデッキなのだが、速攻の観点としてみれば、早期に決着をつけられなければ敗北とほぼ等号で結ばれる。
速攻デッキというのは、ひたすら速さを追い求めたデッキとも言えるため、デュエル・マスターズにおける他の要素をとにかく排して、スピードよる攻撃、その一本に特化しているのだ。ゆえに息切れを起こす前にとどめを刺せなければ、まず巻き返される。
とはいえ先ほども述べたように、亜実のデッキは速攻ではない。コントロールデッキとも言えず。異色のビートダウン、というのが一番適切か。乱暴に言ってしまえば中途半端なビートダウン、ということになるだろうが。
それは速さが足らなくなり、今のように攻め切れなくなってしまうことが多く出て来てしまう、ということに繋がるのだが、同時に速攻デッキや攻めに特化したビートダウンでは難しい、立て直しが利く、ということでもある。
つまり、クトゥルーが本格的に動き出すまでに体勢を立て直せるかが、彼女が勝利を掴む鍵となるだろう。
「このターン《カーリ・ガネージャー》は攻撃できないか……ならば。まずは呪文《ボーンおどり・チャージャー》! 山札の上から二枚を墓地へ送り、続けて《リバース・チャージャー》! 墓地の《グレンニャー》を回収だ!」
体勢を立て直す。状況によって立て直すものは変わって来るが、今の亜実の場合は次の一手を叩き込むための準備を整えることだ。クトゥルーに守りを固められてしまっているため、その防御を突破することが必要。そのための準備である。
「《オラクルト》と《青銅の鎧》を召喚。《スカイソード》を召喚」
追加のブロッカーを並べ、マナを加速させ、さらには《ミスト・リエス》の効果で引いてきた《スカイソード》でシールドを増やすクトゥルー。クリーチャーの数も多くなってきたため、処理するのも難しくなってきた。
「……とりあえず《グレンニャー》を召喚だ」
ここでなにか、状況を打破するカードが引ければ、そんな思いでカードを引く亜実。
そしてその思いにデッキが応えた、とでも言うのか、今現在最も必要としているカードが手に入った。
「こいつだ……無法の叫び、雑兵どもを蹴散らせ! 《演奏と真剣のLIVE》!」