二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.373 )
- 日時: 2014/02/02 15:25
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ひまりとジークフリートのデュエル。
ひまりのシールドは二枚。バトルゾーンには《コッコ・ルピア》《神託の王 ゴスペル》《偽りの名 ヤバスギル・スキル》。
ジークフリートのシールドは四枚。バトルゾーンにはなにもない。
《ゴスペル》のアタックトリガーによって唱えられた《ヤバスギル・ラップ》。その能力で出て来た《ヘヴィ》の効果も合わせてリンクしたゴッドが一度に排除されてしまったのだ。
「ったく、面倒だぜ……俺のターン」
ジークフリートは気だるげににカードを引く。しかしそれは、無気力でやる気のないこととは違う。
先ほどはままよ、などと言ったが、実際のところジークフリートはそれなりに先を見据えてゴッドを破壊しなかった……より正確に言うなら、《ヘヴィ》を無駄撃ちさせたのだった。
「《戦慄のプレリュード》を発動。そしてコストを5軽くし《精霊左神ジャスティス》召喚! その能力で山札の上から五枚を捲り、呪文発動! 《大地と永遠の神門》で、墓地から《爆裂右神ストロークス》をバトルゾーンに!」
一気にリンクしたゴッドを除去したひまりだが、ジークフリートも1ターンで左右の神をリンクさせる。
「G・リンク! 《ストロークス》の能力で《コッコ・ルピア》を破壊!」
ドラゴンの召喚をサポートする《コッコ・ルピア》がやられる。さらにこのリンクしたゴッドは、さっき破壊したゴッドとは違う点がある。
「この《ジャスティス&ストロークス》のパワーは15000。余裕で《ゴスペル》を破壊できる。つーわけで《ゴスペル》に攻撃だ!」
《ジャスティス》の放つ光弾と《ストロークス》の放つ業火。左右の腕から繰り出される攻撃を受け、《ゴスペル》は墓地へと沈んでいく。
「俺のターンはこれで終わりだ。さあどうする? 仮に返しのターンでこの《ジャスティス&ストロークス》を除去できたとしても、俺は《ジャスティス》を残す。《ジャスティス》はコスト7だから《ヤバスギル・スキル》の効果じゃ破壊できねーし、殴り返そうにも相打ちが精々だ」
だが下手に相打ちで場数を減らしてしまうと、次のジークフリートのターン、また連続でゴッドを呼び出されでもした時の対処が遅れてしまう。ここは慎重になるべきだ。
「うーん、参ったな……」
《ヘヴィ》を無駄撃ちさせたのは、除去される可能性をできる限り取り除こうとしたからだろう。《ヤバスギル・スキル》の能力は召喚時と攻撃時にしか発動しないので、墓地の《ヘヴィ》を回収しようと思えば一度攻撃する必要がある。かといって攻撃してからでは回収した《ヘヴィ》でゴッドを除去することができない。
「……引いてきたのはこれか。まあ、そうなるよね、仕方ない」
言って、ひまりはマナゾーンのカードをタップする。
「《コッコ・ルピア》を召喚! 続けて《黒神龍アバヨ・シャバヨ》を召喚!」
《黒神龍アバヨ・シャバヨ》。4コストとドラゴンの中では軽いクリーチャーで、召喚時に自分クリーチャーを破壊すれば、相手自身もクリーチャーを破壊しなければならない。つまり、コストが軽くなった分ドロー効果のない《ヘヴィ》だ。
「私が破壊するのは《アバヨ・シャバヨ》自身だよ」
「また破壊か……リンク解除、《ストロークス》を破壊し、《ジャスティス》を残す」
やはりジークフリートは《ジャスティス》を残してきた。ここで《ストロークス》を残そうとするものならなにか裏があると踏んで手を変えるつもりだったが、そうではない。
ジークフリートの手は、強力ではあるが単純だ。ならば対処することも、難しくはない。
「《ヤバスギル・スキル》で《ジャスティス》を攻撃! 効果で墓地の《ヘヴィ》を回収するよ」
クリーチャーは破壊できないが、墓地の《ヘヴィ》を再装填できただけで十分だ。そもそもこのデッキにおける《ヤバスギル・スキル》とは、そういう役割を持っている。
「相打ちかよ。そんなにG・リンクされるのが怖いか?」
「勿論。当然でしょ」
ジークフリートの軽い挑発にも、事もなげに返すひまり。その様子に、ジークフリートの頬はますます緩む。
「……はっ。素直な奴だな。だが、確かに左右のゴッドがやられるときついぜ……」
無色のゴッド・ノヴァは、ほぼすべてが6マナ以上の大型クリーチャー。そのため、一度に何体も召喚できるものではないのだ。コスト軽減や踏み倒しを活用すればその限りではないが、というかそもそもジークフリートのデッキはそういう構成になっているのだが、そう立て続けに連続召喚できるような手は来ない。
「ま、まともなクリーチャーがいないのは向こうも同じなわけだし、焦らず行くか。《邪眼右神ニューオーダー》を召喚し、ターンエンドだ」
言葉通り、いくらゴッドを破壊されようとも、ジークフリートはまったく焦りを見せない。平然と次なるゴッドを呼び出してくる。
しかし焦りを見せないのはジークフリートだけではないし、次々とクリーチャーを呼び出すのも彼の専売特許と言うわけではない。
「私のターン。《偽りの名 バルガ・ラゴン》《龍神ヘヴィ》を召喚! 《ヘヴィ》の能力で《ヘヴィ》自身を破壊!」
「《ニューオーダー》を破壊だ」
召喚された傍から破壊された《ニューオーダー》。さっきは焦りを見せない、などと述べたが、焦らずともジークフリートは不愉快そうに舌を鳴らす。
「ちっ、出した瞬間に破壊しやがって、つまんねえぜ……もっと面白いこと出来ねえのかよ」
「面白いことするつもりで、こんなことやってるつもりはないからね。ターン終了だよ」
ジークフリートに取り合うこともなく、ターンを終えるひまり。
このターン、ゴッドの破壊に目が行きがちだが、ひまりも隙を見つけては攻めの姿勢を見せている。次のターンから《バルガ・ラゴン》で攻撃し、ドラゴンを展開していくつもりなのだ。
しかしジークフリートも、やられっぱなしではない。
「お、これを引いたか。なら賭けてみるか……《霊騎右神ニルヴァーナ》を召喚。効果で《コッコ・ルピア》をタップ。さらにG・ゼロ、呪文《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》」
このターン引いてきた《ニヤリー・ゲット》でカードを探す。ジークフリートは、捲られた三枚のうち二枚を掴み取った。
「大当たりだ。《戦慄のプレリュード》と《イズモ》を手札に。そして呪文《戦慄のプレリュード》! からの《イズモ》を召喚! 《ニルヴァーナ》とG・リンク!」
今度は左右のゴッドではなく、中央とその右腕となるG・リンクだ。
「《ニルヴァーナ》のリンク時能力で《バルガ・ラゴン》をタップ! そんでそのまま、二体神《イズモ》で《バルガ・ゴン》を攻撃!」
タップされた《バルガ・ラゴン》は、一度も攻撃できないまま右神とリンクした《イズモ》に殴り返され破壊される。
「破壊されちゃった……どうしよっかな」
ゴッドと同じく、ドラゴンも軽いクリーチャーではない。《コッコ・ルピア》がいるとはいえ、そうポンポン召喚できるものではないのだ。特に、今のひまりのデッキなら。
ゆえにコスト踏み倒し手段の一つである《バルガ・ラゴン》が破壊された損失は大きい。
「んー……《緑神龍バルガザルムス》と《ガンリキ・インディゴ・カイザー》を召喚」
ガンリキ・インディゴ・カイザー 水文明 (7)
クリーチャー:ブルー・コマンド・ドラゴン/ハンター 7000
相手がクリーチャーを召喚した時または呪文を唱えた時、このターン、相手のクリーチャーは、攻撃またはブロックできない。
W・ブレイカー
「うぜぇのが出たなぁ……」
ひまりの召喚したクリーチャーを見て、ジークフリートはうんざりしたように息を吐く。
ジークフリートのデッキは、展開力はそれほど高くないため、ゴッドが破壊された時のことを考えて、毎ターンゴッドをバトルゾーンに出す傾向にある。だがそうした場合《ガンリキ・インディゴ・カイザー》の能力で攻撃が止められてしまう。
攻撃を止めてしまうと、今度は相手からの反撃を喰らいかねない。そうするとせっかく出したゴッドがまたやられ、そのゴッドを補填するとまた攻撃できず、反撃を受け……といった具合に、堂々巡りとなってしまう。
「お前のシールド残り二枚だからな、このまま殴り切ってもいいが……」
そこでジークフリートは、『太陽一閃』、朝比奈ひまりという人物についての報告を思い出す。
今こうして向き合っている限りでは、そこまでの異常さは感じない。当然だ、彼女はそういう存在なのだから。“ゲーム”参加者としては異常なほど異常さがない、普通の存在。特殊なんてものはありえない。
しかしそこから生じる結果は、彼女の普遍性からは考えられないほど異常だ。彼女の行動、性質が、結果、結末と合致しない。手なりに進めているデュエルでも、どこから曲がるか分かったものではない。
「なんかあっても困るしな……俺の性分じゃねえんだが、しゃーねぇ、安全策だ。《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》を召喚し、《イズモ》とG・リンク!」
右腕には《ニルヴァーナ》、左腕には《ブラッディ・バレンタイン》と、両腕を得た《イズモ》。《インディゴ・カイザー》の能力で攻撃はできないが、《ブラッディ・バレンタイン》はブロッカーなので、スピードアタッカーでとどめを刺されることもないだろう。