二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.374 )
- 日時: 2014/02/02 17:07
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ひまりとジークフリートのデュエル。
ひまりのシールドは二枚。バトルゾーンには《コッコ・ルピア》《緑神龍バルガザルムス》《ガンリキ・インディゴ・カイザー》。
ジークフリートのシールドは四枚。バトルゾーンには《霊騎右神ニルヴァーナ》《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《イズモ》。
互いにクリーチャーの除去合戦や、《インディゴ。カイザー》による攻撃ロックなどで牽制し合っており、なかなか場が進まない。
しかしひまりのターン、彼女は攻めに出た。
「《ブラッディ・バレンタイン》……ブロッカーで、しかも三体でリンクしたゴッド。除去するのは難しいけど、結局は一体しかいないわけだし、無理やり突破できなくもないよね」
そんなひまりの言葉に、妙な感覚を覚えるジークフリート。彼としてはそのような認識はないが、人はそれを、悪寒と呼ぶのだ。
「呪文《運命》!」
どこからか、重い旋律が響き渡る。
ひまりが唱えるのは、《運命》。《「戦慄」の頂 ベートーベン》の専用アタック・チャンス呪文だが、ドラゴンの比率が高いひまりのデッキなら、普通に唱えても十二分に効果を発揮する。
「つーか、そんなカードを連ドラで手打ちする方がおかしいだがな……」
ぼやくように言いながら、ジークフリートは空気を震撼させる旋律を聞く。
「山札からカードを五枚ドロー。そして……さあ、あなたの運命。あなたが決めて」
ひまりの手札は、裏向きのままジークフリートの目の前へと移動。そこから選んだ三枚が、ジークフリートの行く末を決める。
「……はんっ、運命な。んなもん、とっくの昔に確定してるっつーの」
乱暴に三枚のカードを掴み取ると、その三枚をひまりへと投げ飛ばす。残ったカードはひまりの手札へと戻った。
「ほら、さっさと選んだカードを見せな」
「……いいよ。じゃあ、公開ね」
裏向きになっている三枚のカードが反転し、表向きとなる。
「《吠えろ魂!鬼ビルダー「轟」》《暗黒GUY・ゼロ・ロマノフ》《光神龍ダイヤモンド・グロリアス》の三体をバトルゾーンへ!」
暗黒GUY(ガイ)・ゼロ・ロマノフ 闇文明 (7)
クリーチャー:ダークロード/ドラゴン・ゾンビ/ハンター 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中から闇のカードを1枚選び、自分の墓地に置いてもよい。その後、山札をシャッフルする。
このクリーチャーが攻撃する時、コスト6以下の闇の呪文を1枚、自分の墓地からコストを支払わずに唱えてもよい。その後、その呪文を自分の山札の一番下に置く。
W・ブレイカー
光神龍ダイヤモンド・グロリアス 光文明 (8)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、そのターン、自分の他のクリーチャーが相手プレイヤーを攻撃することができない効果はすべて無効になる。(召喚酔いや、「このクリーチャーは攻撃することができない」または「このクリーチャーは相手プレイヤーを攻撃できない」などの効果が無効になる)
W・ブレイカー
選ばれたのは、三枚ともドラゴン。しかも、最悪とまでは言わないが、ジークフリートにとってはかなり厄介な三体だ。
「まずは《鬼ビルダー「轟」》の能力で、ブロッカーを破壊して」
登場時に、相手に自身のブロッカーを三体選ばせ破壊する《鬼ビルダー「轟」》。リンクしたゴッドは一体のクリーチャーとして扱われるので、破壊できるのは一体だけ。だがブロッカーでない《イズモ》や《ニルヴァーナ》も、ブロッカー能力を得ていることになり、破壊対象となりえる。
「……《ニルヴァーナ》を破壊だ」
《イズモ》は自身の右腕を切り落とす。《鬼ビルダー「轟」》の咆哮により、切り離された《ニルヴァーナ》は消滅した。
「続けて《ゼロ・ロマノフ》の能力で、山札から《黒神龍グールジェネレイド》を墓地へ。さらに《ダイヤモンド・グロリアス》の能力で、このターン《ダイヤモンド・グロリアス》以外の私のクリーチャーの召喚酔いはなくなるよ」
つまり、《ダイヤモンド・グロリアス》を除いて、ひまりのクリーチャーはすべて攻撃可能になったということだ。ジークフリートは《イズモ》の片腕も破壊され、ブロッカーは一体のみ。ご丁寧に《ゼロ・ロマノフ》で《グールジェネレイド》まで落としている。シールドが四枚あるとはいえ、かなり危ない。
「まずは《ゼロ・ロマノフ》で攻撃、《バルガザルムス》の能力で山札を捲って、ドラゴンだから手札に。そして効果発動! 墓地の《ヤバスギル・ラップ》を発動させるよ!」
《ゼロ・ロマノフ》は、種族こそ差異があるが、基本的に《邪眼皇ロマノフⅠ世》と同じ性能だ。かのクリーチャーと同じように、一度撃った呪文を再び放つことができる。
そしてジークフリートはまた、苦渋の決断を強いられることとなった。
「ゴッドを破壊するか、次のドラゴンが出てくるかのどっちかだよな……今度こそ、マジでどうすっか。どっちを選ぼうがブロッカーは残るが、《インディゴ・カイザー》がいるせいで、攻撃を通してS・トリガーが出ればブロックはできなくなる。ニンジャ・ストライクも無意味だしなぁ……」
後続のドラゴンが出て来るのは嫌だが、ここで《イズモ》を失いたくもない。しかしそうして《ゼロ・ロマノフ》をブロックしても、墓地から《グールジェネレイド》が復活する。
「……畜生が、鬱陶しいと思ってたが、ちっとは楽しくなってきたじゃねえか。いいぜ、ゴッドは破壊しない」
「だったら墓地から《GENJI》をバトルゾーンに出すよ。《ゼロ・ロマノフ》でWブレイク!」
狩人の魔銃を構える《ゼロ・ロマノフ》。だがその前に、片腕の神が立ち塞がる。
「通さねえよ。その攻撃はブロックだ!」
「それなら《ゼロ・ロマノフ》破壊されて、墓地から《グール》をバトルゾーンに!」
ひまりの墓地にはもう闇の呪文がないので、《ゼロ・ロマノフ》を生かしておく必要はないのだが、《インディゴ・カイザー》がいるせいで先にブロックしておかなければ、もしS・トリガーが発動した時に困る。
「《GENJI》で攻撃、Wブレイク!」
続けて《GENJI》の刃が、ジークフリートのシールドを二枚、切り裂いた。
「っ、やっぱ来るよな。S・トリガー発動《地獄門デス・ゲート》! 《インディゴ・カイザー》を破壊し、墓地の《ニルヴァーナ》をバトルゾーンに! 《イズモ》とリンクし《鬼ビルダー「轟」》と《ダイヤモンド・グロリアス》をタップだ!」
斬られたシールドのうち一枚は光の束となって収束する。その光はやばて闇へと変換され、地獄へと繋ぐ門を形成。門の内より悪魔の腕が伸び、《インディゴ・カイザー》を引きずり込む。
そして《インディゴ・カイザー》の命と引き換えに呼び出されたのは、先ほど破壊されたばかりの《ニルヴァーナ》。その能力で《鬼ビルダー「轟」》《ダイヤモンド・グロリアス》をタップして止める。
「あー……攻めきれないか。だったら《バルガザルムス》と《コッコ・ルピア》でもシールドブレイク!」
立て続けにシールドを割られ、ジークフリートのシールドはゼロ。かなり追い詰められてしまった。
しかし、
「いいぜ、なかなか面白くなってきたじゃねえか。やっぱ最高だ、『太陽一閃』。俺の目に狂いはなかった……!」
そんな状況下でも、いや、そんな状況下だからこそ、ジークフリートは笑っていた。酷く好戦的な眼差しを、ひまりに向けていた。
「こんなに強いなら、もっと早くにこっち来ればよかったな。失敗したぜ」
「……なに? もしかしてあなたって、戦闘狂ってやつなのかな? あの【神聖帝国師団】のトップが。意外だね」
高揚しているジークフリートに対して、ひまりは素直な感想を述べたが、本人には否定された。
「馬鹿か、そんもんと同じにすんな。俺の目的はあくまで『神話カード』、戦うこと自体じゃねえ。俺は【神格社界】の馬鹿野郎じゃねえんだよ」
「じゃあ、なんなの?」
純然たる興味から尋ねるひまり。ジークフリートはその問いに対して、あっさりと答える。
「そんな難しい話じゃねえよ。無力な奴から『神話カード』を奪ってもつまらねえだろ。事務的に、機械的に『神話カード』を集めても虚しいだけだ。それなりに張り合いのある相手から手に入れてこそ、充足感もあるってものだ。だから俺は、【師団】内の『神話カード』は最も安全な手元に置かず、手に入れた団員に一任している。もしそいつがやられて他の奴の手に渡れば、その野郎はそいつよりも強いってことになる」
その結果が悲惨なんだがな、と言って締め括る。要するに、やりがいの問題、ということだろうか。
「お前みたいな強い奴から《太陽神話》を蒐集できると思えば、多少ハイにもなる。ま、そういうわけだ、『太陽一閃』。お前の『神話カード』、奪わせてもらうぜ」
「……そう上手く行くかな」
初めて、《太陽神話》略奪を宣言したジークフリート。対してひまりは、どこか遠くを見つめるような表情で、呟いた。