二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.375 )
- 日時: 2014/02/02 20:46
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「なんだ、このデュエルは……」
ひまりとジークフリートが戦う様を見て、夕陽は——いや、夕陽だけでなく、このみも姫乃も汐も、吃驚していた。
「まりりんせんぱい、すごい……」
「凄いって言うか、ひまり先輩、いつもと違うよ……」
「ですね……」
ひまりの様子、雰囲気もどこか違うが、目に見える範囲——デッキの内容という観点から見ても、ひまりは変だ。
「いつものひまり先輩のデッキは火と自然、オーソドックスなステロイドの連ドラに、タッチで闇を加えた三色」
「なのに今使ってるデッキは、それに光と水、ゼロ文明も加えたオールカラーのデッキ、だよね」
「ドラゴンばっかりのデッキだけど、あんなデッキ、まともに動かせるの?」
傍から見て、ひまりのデッキはかなり異色だ。これまで見たカードだけでも、このみがデッキの回転を気にするほど滅茶苦茶な構成になっている。
だがそんな構成でも十全に戦っている、彼女のプレイングの凄まじさも同時に理解する。今まで何度も彼女と戦ってきたが、その時々によって勝ったり負けたりと、結果は様々だった。確かに強いが、こんな異常な腕はしていなかった。
それが今は、違う。いつものひまりとは、明らかにかけ離れている。
「……先輩」
そんなひまりを見つめる夕陽は、言葉を漏らす。意味はない、いや、ある意味では多重の意味を込めた呟きだ。その中の意味には、ひまりに向けたものもある。
しかし、その呟きがひまりに届くことは、ないのだけれど。
ひまりとジークフリートのデュエル。
ひまりのシールドは二枚。バトルゾーンには《コッコ・ルピア》《緑神龍バルガザルムス》《吠えろ魂!鬼ビルダー「轟」》《光神龍ダイヤモンド・グロリアス》《爆竜GENJI・XX》《黒神龍グールジェネレイド》。
ジークフリートのシールドはゼロ。バトルゾーンには《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》《霊騎右神ニルヴァーナ》とリンクした《イズモ》。
《運命》からのドラゴン大量展開でジークフリートを追い詰めたひまりだったが、対するジークフリートは敗北の色をまったく見せない。
「……ちっとばかしお喋りが過ぎたか。俺のターンだ」
先ほどまで意気揚々と熱を入れて語っていたジークフリートは、急に冷めたようにカードを引く。
しかしそれでも、彼の熱は引き切っていないように見えるが。
「このまま攻めてもいいんだが、やっぱS・トリガーが出た場合も想定しとかねえとな……クリーチャーは潰せるだけ潰しとかねえと後が面倒だ。まずは《インフェルノ・サイン》で墓地の《双天右神クラフト・ヴェルク》を復活。さらに《戦慄のプレリュード》でコストを5下げ《紫電左神ヴィタリック》を召喚」
ジークフリートは、またしても一気に二体のゴッドを呼び出す。そして次の瞬間、パキンッとなにかが割れるような音が響いた。
「リンク解除。《イズモ》から《ニルヴァーナ》のリンクを外すし、《クラフト・ヴェルク》と《ヴィタリック》はG・リンク」
中央G・リンクを持つ《イズモ》の能力、リンク解除によってできた布陣は、《ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《イズモ》、《ヴィタリック&クラフト・ヴェルク》、《ニルヴァーナ》の三体だ。
要するに、《ニルヴァーナ》のリンクを外しただけなのだが、勿論このリンク解除には意味がある。
「アタッカーを増やして私のクリーチャーを殲滅するつもり……?」
「正解だ。んじゃ、まずは二体神《イズモ》で《GENJI》を攻撃、破壊だ!」
《イズモ》と《ブラッディ・バレンタイン》の光線により、《GENJI》は破壊された。
リンク解除は、基本的にゴッド・ノヴァのリンク時能力を使い回したり、ゴッドのパワーを調整したり、より強力な腕に付け替えるためにある。
しかし、付けるばかりがG・リンクではない。ゴッドはリンクしてしまえば一体のクリーチャーとなり、最終的な打点、攻撃回数が落ちてしまうこともある。だがリンク解除を用いれば、必要なところでそのリンクを外し、攻撃回数を増やすことができるのだ。
「《ヴィタリック&クラフト・ヴェルク》で《鬼ビルダー「轟」》を攻撃! その時《ヴィタリック》の能力でアンタップ、《クラフト・ヴェルク》の能力で一枚ドローし、手札を一枚シールドへ!」
攻撃と同時にアンタップした《ヴィタリック&クラフト・ヴェルク》。《鬼ビルダー「轟」》を破壊しつつ、シールドも増やす。
「再び《ヴィタリック&クラフト・ヴェルク》で《ダイヤモンド・グロリアス》を攻撃、《クラフト・ヴェルク》の能力でカードをドローしつつシールド追加! 《グロリアス》を破壊!」
弓矢で射抜かれ刀で切り裂かれた《ダイヤモンド・グロリアス》も破壊され、シールドは二枚まで回復する。
「《ニルヴァーナ》で《コッコ・ルピア》を攻撃!」
最後に《ニルヴァーナ》の突風が《コッコ・ルピア》を吹き飛ばし、これも破壊。ひまりの場に残ったのは《バルガザルムス》と《グールジェネレイド》だけだ。
「これで攻撃は終了だ。ターンの終わりに《ブラッディ・バレンタイン》の能力でリンクした《イズモ》をアンタップ」
防御に抜かりはない。シールドを追加しただけでなく、ブロッカーを起こして守りを固める。パワーもそれなりに高い上、次のターンにはまた新しくリンクされてしまうので、今の戦力では強引な攻めも難しい。
「この手札じゃ突破は厳しいな……とりあえず《竜のフレア・エッグ》と《光神龍シャイニング・エッジ》を召喚!」
竜のフレア・エッグ 火文明 (3)
クリーチャー:エッグ 1000
自分のターンのはじめに、自分の山札の上から1枚目を墓地に置く。そのカードが進化ではないドラゴンであれば、このクリーチャーを破壊してもよい。そうした場合、そのドラゴンをバトルゾーンに出す。
このクリーチャーは攻撃することができない。
光神龍シャイニング・エッジ 光文明 (7)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン 6500
相手のクリーチャーが攻撃する時、相手はバトルゾーンにある自身のタップされていないクリーチャーを1体選び、タップする。
W・ブレイカー
「攻撃は……しないでおこう。ターン終了」
「なんだ、急に弱気になったな? さっきまでの威勢はどうしたんだ? もっとガンガン来いよ」
「こっちにもいろいろ考えってものがあるんだよ」
好戦的になっていくジークフリートとは逆に、どこか冷めたような態度で平静を維持し続けるひまり。やはりひまりの様子は、いつもとどこか違う。
「ちっ、まあいい。だったらその考えとやらに期待しとくぜ」
舌打ちつつカードを引き、目を細めるジークフリート。彼の視線は、自らのデッキに向いている。
「……まあ、まだなんとなるか。《真滅右神ブラー》を召喚。《イズモ》のリンク解除発動」
また、パキンッとなにかが分断するような音が響く。
「まずは《ヴィタリック》と《ニルヴァーナ》をリンク。《シャイニング・エッジ》をタップだ。続けて《ブラッディ・バレンタイン》と《ブラー》をリンク、《イズモ》と《クラフト・ヴェルク》をリンク」
出来上がったのは、《ヴィタリック&ニルヴァーナ》《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》そして《クラフト・ヴェルク》とリンクした《イズモ》の三体。
アタックトリガーを連発できる《ヴィタリック》と《クラフト・ヴェルク》のリンクを外したのは、山札がなくなることを危惧してのことだろう。ジークフリートのデッキは、マナ加速、手札補充、墓地肥やし、シールド追加などでかなり削られており、残り少ない。《クラフト・ヴェルク》の能力は強制なので、連続で使用したくはないのだろう。
「つっても、このターンで終わらせるつもりだけどな。まずは《ヴィタリック&ニルヴァーナ》で《シャイニング・エッジ》を攻撃だ」
「っ、なら《シャイニング・エッジ》の能力発動! そっちのクリーチャーを一体タップして!」
攻撃と同時に《ヴィタリック&ニルヴァーナ》がアンタップし、さらに《シャイニング・エッジ》の光の鎖が放たれる。その鎖の行先を決めるのはジークフリート。
「《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》をタップ。《シャイニング・エッジ》を破壊!」
《ヴィタリック》の刃に切り裂かれた《シャイニング・エッジ》も破壊される。相手が攻撃するたびにタップさせるので、ジークフリートの攻撃を止めようと思ったのだが、早々に潰されてしまった。
「これで邪魔なクリーチャーはいねえ。覚悟しな」
《ニルヴァーナ》とリンクした《ヴィタリック》の刃、そして《イズモ》を主人とする《クラフト・ヴェルク》の弓が、ひまりへと向けられる。彼女を斬り、射抜くべく。
神の腕が、彼女に牙を剥く。