二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.377 )
- 日時: 2014/02/04 22:12
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「——『炎上孤軍』」
栗須は、路上でうつ伏せに倒れている亜実を発見した。
「もしやとは思ったが、やはりいたのか」
そう、栗須は呟く。
このエンカウントは偶発的なものだ。栗須は別に亜実のことを探していたわけではない。もしかしたらいるかもしれないと思っていた程度だ。
「この様子を見る限り、負けたのか……隊長クラスに負けたのなら、嘲笑ってやるところだが」
言って栗須は、道路の裏道、陰になっている奥の路地へと目を向ける。
「……これは、貴様の差し金か?」
返ってきた答えは、迂遠ではあるが、肯定。
「そうか……ああ、そうだったな。そもそも、この場所で戦争が起きているという情報は、貴様が発信したものだったな。いや、構わんさ。貴様を非難するつもりはない。【神格社界】に属する以上、そうでなくとも“ゲーム”参加者である以上、敗北は弱さと繋がるだけだ。推理するまでもない」
陰から聞こえてくる笑い声。不愉快だった。その者の有能さは栗須も認めるところだが、しかし一緒にいたい人物ではない。できれば関わり合いにすらなりたくなかった。
「死んではいないようだ。息はある、心臓も恐らく動いている。外傷は酷いがな……言っておくが、僕は助けるつもりなど毛頭ない。貸しを作りたければ、貴様がやれ」
栗須の対応は冷たい。栗須は大抵の相手にはこんな態度だが、相手も相手だ。温和な態度を取る必要もない。
「ところで、『炎上孤軍』は誰にやられた? ……四天王? 『夢海星辰』? ……ああ、奴か。名前なら知っている。そうか、奴と戦ったのか。ならばこの体たらくも納得できる。擁護するつもりはないがな」
そして栗須は、踵を返した。陰からは、問いが飛んでくる。
「帰るのさ。軽く見て回ったが、恐らくこの戦争も、もうすぐ終戦だ。ジークフリートも動き出したようだし、これ以上首を突っ込むと無駄な血を流す。無益な戦いほど虚しいものもないだろう」
その言葉から返ってくるのは、肯定だった。しかし笑い声も込みで。
「……相変わらず、癪に障るな、貴様は。今回の情報提供には感謝するが、それは報酬という形だけで送ったはずだ」
つまり、心からはまったく感謝の念がないということになる。
栗須は陰に背を向け、歩き出す。陰から聞こえてくるのは、別れを告げる言葉。そして、再び合い見えることを仄めかす言葉。
「またなにかあれば連絡は入れる……ん? クリスマス? ああ、パーティーか。貴様は参加するのか。僕は……特に決めていない。なにもなければ、出席してもいいかもしれんな」
最後は【神格社界】らしい与太話となったが、これで本当に、この会話は終わる。
陰からはまだ気配が残っていた。栗須はそれを無視し、流し目で倒れた亜実を一瞥してから、その場を去った。
ひまりとジークフリートのデュエル。
ひまりのシールドは一枚。バトルゾーンには《緑神龍バルガザルムス》《黒神龍グールジェネレイド》《黒神龍オドル・ニードル》《龍聖大河・L・デストラーデ》《インフィニティ・ドラゴン》。
ジークフリートのシールドは三枚。バトルゾーンには《双天右神クラフト・ヴェルク》《紫電左神ヴィタリック》とリンクした《霊騎右神ニルヴァーナ》《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《真滅右神ブラー》。
クリーチャーを殲滅されて窮地に立たされたひまりだったが、S・トリガーで二体飛び出した《オドル・ニードル》でなんとか持ちこたえ、《インフィニティ》と《オドル・ニードル》のコンボで鉄壁の布陣を構築した。
防御面はもう心配ない。あとは攻撃するだけだ。
「とりあえず……《グール》で攻撃、Wブレイク!」
「ちっ……《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》でブロック!」
《ブラッディ・バレンタイン》の発生させる結界に阻まれ、《グールジェネレイド》は弾き飛ばされる。その時、《インフィニティ》が咆哮した。
「山札の一番上を墓地に置いて、ドラゴンかファイアー・バードならバトルゾーンに残るよ」
墓地に置かれたのは《メンデルスゾーン》。呪文なので《グールジェネレイド》は破壊され、墓地へと落ちる。
しかし《グール》はドラゴンが破壊されれば復活するので、墓地にいても不都合はない。
「だが《ブラー》の能力で、バトルに勝ったから手札を捨てろ」
《ブラー》はバトルに勝利すれば、相手に手札を捨てさせ、自分はカードを引くことができる。一応、多少なりともアドバンテージは取れた。
「じゃあ次は《オドル・ニードル》で《ヴィタリック&ニルヴァーナ》を攻撃!」
今度はシールドではなく、ゴッドを攻める。
《グールジェネレイド》が止められたので、このターンにダイレクトアタックを決めるのは不可能。除去カードを引かれる前に攻め切れればいいが、そう上手くは行かないだろう。ならば先にゴッドを攻撃しておき、反撃の芽をできる限り摘み取っておく。
「くそっ……《ヴィタリック》を残す!」
「どっちでもいいよ。こっちは《インフィニティ》の能力で山札の一番上を墓地へ!」
こちらも残り少なくなってきた山札を墓地へと落とした。ドラゴンだったので、《オドル・ニードル》は場に残る。
「《バルガザルムス》でシールドブレイク!」
これでジークフリートのシールドは二枚。またどこかでシールドを追加されるかもしれないが、どうせ《バルガザルムス》ではゴッドを破壊できないのだから、割れる時に割っておいた方がいいだろう。
「くそっ、しゃらくせえ……!」
《インフィニティ》と《オドル・ニードル》の防御陣形は確かに強力だ。特に、今のジークフリートには効果的だった。
「残りデッキもやばいし、粘られたら終わりだな」
ジークフリートのデッキ枚数は、残り一桁の枚数しかない。このまま鉄壁の防御コンボで時間を稼がれれば、デッキ切れで負ける。
そもそも彼のデッキは多量のマナ加速、ド手札補充、シールド追加、墓地肥やしなど、なんらかの方法で山札を削るカードが多い。こうなるのは当然の帰結だろう。
「まあ、だから当然、対策もしてるけどな。つってもこれ、墓地が根こそぎなくなるから嫌いなんだよな……」
などとぼやきながら、そのカードを手札から抜き取る。
「《サイバー・N・ワールド》を召喚。互いの墓地と手札をすべて山札に戻す」
「っ、そう来たか……!」
ひまりとジークフリートの手札、墓地はすべて山札へと送還される。そしてこれでもかというくらいシャッフルされ、山札の上から五枚のカードがそれぞれの手元に戻ってくる。
「手札は……まずまずだな。《戦慄のプレリュード》でコストを下げ《爆裂右神ストロークス》を召喚。効果で《オドル・ニードル》を破壊だ」
しかし《インフィニティ》の能力でドラゴンが落ち、《オドル・ニードル》は生き残る。
「《ヴィタリック》と《ストロークス》をリンク。リンク時能力で再び《オドル・ニードル》を破壊」
だがまたしてもドラゴンが捲れ、《オドル・ニードル》は生き残った。
「くっそうぜえ……! 《ヴィタリック&ストロークス》で《オドル・ニードル》を攻撃!」
「何度やっても無駄だよ。山札の上を墓地へ」
やはり捲れるのはドラゴン。《ストロークス》は破壊され、《オドル・ニードル》は生き残る。
「残った《ヴィタリック》も攻撃だ!」
「《インフィニティ》の能力発動!」
今度はファイアー・バードが墓地へ。《ヴィタリック》も全身に棘が貫通して破壊され、《オドル・ニードル》だけが生き残る。
「やっぱドラゴンの比率が高え……だが、《ヤバスギル・ラップ》や《運命》《メンデルスゾーン》のような呪文もそれなりに搭載されているみてーだし、そのうち当たるだろ。《クラフト・ヴェルク》で《オドル・ニードル》に攻撃!」
シールドを追加しつつ、《オドル・ニードル》を弓矢で射抜く《クラフト・ヴェルク》。爆散した《オドル・ニードル》の棘が全身に突き刺さる。
「《インフィニティ》の能力で山札の一番上を墓地へ——」
そうして捲ったカードを見て、ひまりは一瞬動きを止める。
墓地へ落ちたのは、二枚目の《メンデルスゾーン》。
「あー……遂に破壊されちゃったか」
ドラゴンでもファイアー・バードでもないため、《オドル・ニードル》は生き残れず、自身の効果で破壊される。
しかし《ニルヴァーナ》《ストロークス》《ヴィタリック》《クラフト・ヴェルク》の四体を破壊したのだ。上出来だろう。
「やっと消えたか……なら《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》で《バルガザルムス》を攻撃!」
《インフィニティ》の能力で捲れたのは、またしても呪文。《バルガザルムス》も破壊されてしまう。
「さらにバトルで勝利したので、手札を一枚捨てな!」
そしてジークフリートはカードをドローする。大きくはないが、《サイバー・N・ワールド》では取り難いハンドアドバンテージを広げられた。
「……短い布陣だったなぁ……」
破壊され、墓地へと落ちた《オドル・ニードル》を見て、ひまりはふと呟いた。