二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.380 )
- 日時: 2014/02/08 14:03
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
今にも朽ち果ててしまいそうな、【神聖帝国師団】臨時本部の廃墟。
その一室で、四人の人間が向かい合っていた。
「これでよーやっとみんな集まったねー。まったく、みんな集合遅いんだから」
「私は最初からいましたけどね」
真っ先に口を開いたのは、ハスター。それに対し、ニャルラトホテプは自身を弁護するように指摘する。
「…………」
「…………」
その横でジッと黙っているのは、クトゥルーとクトゥグア。片方はただ無口なだけだが、クトゥグアが黙っているのには理由があった。彼女も口数が多い方ではないのだが、しかし、いまは下手に口を開きたくない事情がある。変に注目されてはならないのだ。
だが、
「それより……クトゥグアさん? あなたの結果報告を聞いていないのですけれど?」
「……ルーには言った」
ニャルラトホテプの声は、あからさまにクトゥグアの神経を逆撫でするようなものだった。クトゥグアはそっぽを向いてボソッと言うが、勿論、ニャルラトホテプはそれを聞き逃したりはしない。
「へぇ、そうですか。ルー、クトゥグアさんの勝敗はどうでした?」
「……対戦相手、光ヶ丘姫乃。結果、敗北」
彼女の問いに、クトゥルーは静かに答えた。淡々と、機械的かつ事務的に。
「ほぅ、へー……そうですかー。負けっちゃったんですね、クトゥグアさん。私なら勝ってたとか、余裕とか、そんなこと言ってませんでしたっけー? ねぇ、クトゥグアさん? 余裕でした? 余裕で負けて来ました?」
「うるさい。そのさん付けもやめて、気持ち悪い」
出撃する前、夕陽に負けたニャルラトホテプを非難したクトゥグアだったが、今度は逆に非難……というより、痛いところを突かれる立場になってしまった。
「てゆーか、ニャル、またキャラ変えた?」
「あ、分かります? 前の“身体”の、双子の妹さんなんですけど、結構いいですねこの性格。楽しいです。ねえ、クトゥグアさん?」
「黙って」
ニヤニヤと口元がにやけているニャルラトホテプと、不愉快そうに目線をそらすクトゥグア、黙ったままのクトゥルーに、呆れ顔のハスター。
こんなコントをしていると、この四人が集まっている理由を忘れそうになるが、勿論忘れてはならない。
「それよりもさ、師団長からの伝言。なんか『太陽一閃』と接触したから、適当な時間に迎えに来いだって」
「……承知」
ハスターの言葉に反応したのはクトゥルーだけだった。他の二人は……言うまでもないだろう。
そして四人は、その場に立ち尽くす。
いつまでも、時が来るまで。
ひまりとジークフリートのデュエル。
ひまりのシールドは一枚。バトルゾーンには《龍聖大河・L・デストラーデ》《インフィニティ・ドラゴン》。
ジークフリートのシールドは三枚。バトルゾーンには《サイバー・N・ワールド》《光姫左神ブラッディ・バレンタイン》とリンクした《真滅右神ブラー》。
《インフィニティ》と《オドル・ニードル》のコンボでジークフリートの攻撃を止めていたひまりだが、度重なる攻撃で遂に《オドル・ニードル》も破壊されてしまった。
「とりあえず……《コッコ・ルピア》《竜のフレアエッグ》《光神龍セブンス》を召喚。クリーチャーを出したから《L・デストラーデ》の能力でシールドを追加」
光神龍セブンス 光文明 (6)
クリーチャー:アポロニア・ドラゴン 5500
バトルゾーンにある自分のドラゴンはすべて「ブロッカー」を得る。
これでひまりのドラゴンはすべてブロッカーとなり、ジークフリートの攻撃を止められるようになる。
「攻め難くなってきたか……なんか来ねえもんか……」
などとぼやくように言いながらカードを引くと、ジークフリートの目つきが鋭くなる。
「……はっ、来たか。《神誕の大地ヘラクレス》を召喚! マナゾーンのゴッドを回収!」
ジークフリートが呼び出すのは《ヘラクレス》。高い打点とパワーを備えている上、ゴッドのコストを大きく下げるため、かなり厄介だ。
「さらに残ったマナで《パールジャム》召喚、マナを追加! 《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》で攻撃! Wブレイク!」
「《L・デストラーデ》でブロック!」
ゴッドの攻撃からひまりを守るべく盾となった《L・デストラーデ》。同時に《インフィニティ》の雄叫びでデックトップが墓地へと落ちる。
悠久を統べる者 フォーエバー・プリンセス 火/自然文明 (8)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター/エイリアン 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
スピードアタッカー
W・ブレイカー
相手がコストを支払わずにクリーチャーをバトルゾーンに出した時、そのクリーチャーを持ち主のマナゾーンに置く。
このクリーチャーがどこからでも自分の墓地に置かれる時、かわりにこのクリーチャーと自分の墓地を山札に加えてシャッフルする。
「あ……」
墓地へと落ちたのは《フォーエバー・プリンセス》だった。
「《フォーエバー・プリンセス》が墓地に行ったから、私の墓地をすべて山札に戻すよ」
ジークフリートのデッキもそうだったが、ひまりのデッキもそれなりにデッキの消費が激しい。普通ならデッキが切れる前に攻め切るのだが、もしもの時のための保険として《フォーエバー・プリンセス》が投入されていた。
「デッキ回復か……まあいい。《ブラー》の能力で手札を捨てろ。そんでターンエンド、《ブラッディ・バレンタイン&ブラー》をアンタップ」
ブロッカーを起こしてターン終了。ひまりのターンが来る。
「私のターンの初めに《フレア・エッグ》の能力発動。山札の一番上を墓地へ」
正直、ここでなにが来ようがひまりはジークフリートにとどめを刺せるだけの戦力が揃っている。とはいえジークフリートの三枚のシールドは《クラフト・ヴェルク》で仕込んだシールドだ。S・トリガーを埋められている可能性が高い。
なのでできればここで、相手クリーチャーを除去できるようなカードが来て欲しいと願うひまりだった。そして、墓地へと落ちたのは、
「……! 《龍神ヘヴィ》! 《ヘヴィ》を破壊!」
「《ブラー》を破壊だ」
ジークフリートはノータイムでブロッカーを残す。
守りが薄いというのなら、ジークフリートのデッキも守りは薄い。シールド追加が多く、《ブラッディ・バレンタイン》もしぶとく残っているのであまりそのように感じさせないが、これらのカードがなければジークフリートの守りはスカスカになっている。
「カードをドローして……《エコ・アイニー》を召喚! 続けて《無双竜機ボルグレス・バーズ》も召喚! マナゾーンのドラゴンを回収!」
クリーチャーがやられても、防御を崩されても、素早く立ち直り、攻めの体勢を見せるひまり。
「《L・デストラーデ》で攻撃! Wブレイク!」
「《ブラッディ・バレンタイン》でブロック!」
バトルに負けた《L・デストラーデ》は破壊されるが、《インフィニティ》の能力で場を離れない。
「《インフィニティ》で《ブラッディ・バレンタイン》を攻撃!」
「なに?」
ひまりは《インフィニティ》でシールドをブレイクせず、《ブラッディ・バレンタイン》を攻撃する。パワーは同じなので相打ちだが、自身の能力で《インフィニティ》は生き残った。
「シールドではなくブロッカーを破壊するかよ……本格的に攻めて来てるみてえだな」
S・トリガーを警戒してこのターンには決めず、次のターンに繰り越す。このデュエル中では何度もそのようにしているが、結局は攻め切れていない。今回のそのパターンにはまってしまいそうだが、逆に言えばジークフリートはそのパターンを作り出さなければならない。
「こっちに守らせて攻撃させないってか。攻撃は最大の防御とは、よく言ったものだぜ」
ひまりの策に乗せられるのは癪だが、しかし今は防御を考えなければいけないのも事実。実に面白くないと、ジークフリートは舌打ちする。
「俺のターン。《真滅右神ジーザス・メリーチェーン》を召喚。《パールジャム》とG・リンク。マナを追加」
《ヘラクレス》の能力でマナが減っているので、それを《パールジャム》で補給する。
お陰でまだマナに余裕はあるが、しかし手札のゴッドではひまりの従えるドラゴンの軍勢に対処することはできない。
「……これに賭けるか」
と言って、ジークフリートは手札のカードを一枚抜き取った。
「呪文《プロジェクト・ゴッド》」
山札の上から五枚を墓地へ送り、その中からバトルゾーンのゴッドとリンクできるゴッドがあればタダでバトルゾーンに出し、リンクさせることができる呪文。
普通のゴッドに使用してもヒット率は芳しくないが、しかしリンク位置のみが指定され、リンク先がフリーなゴッド・ノヴァならばその限りではない。この呪文の能力を、最大限に活用できるだろう。
そして、五枚目に墓地へと落ちたカードが、輝いた。
「! こいつだ……! さあ、現れろ!」
それに目を付けたジークフリートは、間髪入れずにそのカードを墓地から釣り上げた。
そして、神聖にして新星なる、神々しき人類が降臨する。
「《神人類 ヨミ》!」