二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.383 )
- 日時: 2014/02/09 12:34
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ひまりとジークフリートのデュエル。
ひまりのシールドは五枚。バトルゾーンには《龍聖大河・L・デストラーデ》《コッコ・ルピア》《光神龍セブンス》《炎龍王子カイザー・プリンス》《閃光のメテオライト・リュウセイ》《暗黒GUY・ゼロ・ロマノフ》《チッタ・ペロル》。
ジークフリートのシールドは三枚。バトルゾーンには《精霊左神ジャスティス》《神人類 ヨミ》。そして、
「『神話カード』……《支配神話》……!」
「ああ。これが俺の『神話カード』、神々の片割れ、《支配神話 キングダム・ユピテル》だ」
その風貌、雰囲気は、高貴であり、厳格であり、凶悪であった。
正にすべてを支配する王の如き風格。静かで、しかしそれでいて威圧的な眼をひまりに向けている。
「《ユピテル》の登場時能力発動、お前の手札をすべて捨てろ」
「っ……!」
《ユピテル》の視線が強くなる。その瞬間、ひまりの手札が爆散した。
エターナル・Ωで手札に戻った《バトル・ザ・クライマックス》も、他のドラゴン諸共叩き落とされてしまう。
「……《フォーエバー・プリンセス》が墓地に行ったから、墓地のカードをすべて山札に戻してシャッフルするよ」
「だからどうした。《ユピテル》は右G・リンク、ゆえに《ヨミ》の右腕となる」
左腕には《ジャスティス》右腕には《ユピテル》を構える《ヨミ》。しかし、今までさんざんひまりを苦しめた《ヨミ》でさえも、《ユピテル》の前では霞んでしまう。どちらが主たる神なのか、分からなくなる。
いや、主神ははっきりしている。それは中央の《ヨミ》ではなく、紛れもなく右神の《ユピテル》だ。
「さあ、喰らいな……ゴッドで攻撃」
その時、《ユピテル》から一筋の光線が放たれ、《セブンス》が撃ち抜かれる。
「《ユピテル》は攻撃時、相手クリーチャーを一体破壊する。邪魔な《セブンス》を破壊だ」
これでひまりは、ブロッカーを失ってしまった。
そして《ジャスティス》《ヨミ》《ユピテル》の放つ光線が、ひまりに襲い掛かる。その一撃で、ひまりのシールドは四枚まとめて吹き飛ばされるが、その余波が凄まじい。
「くっ、ぅ……っ!」
シールドの破片がひまりの身体をくまなく切り刻む。衝撃波で吹っ飛ばされそうになる。前のターンの《ヨミ》の攻撃はここまで強くはなかった。やはり、《ユピテル》の存在が大きい。
「……私の、ターン」
心身ともにボロボロになりながらも、ひまりは辛うじて体を支え、カードを引く。
「《ポップ・ルビン》と、《偽りの名 バルキリー・ラゴン》を、召喚……」
「ほぅ、そいつで《太陽神話》を持ってくるのか?」
《ポップ・ルビン》のドラゴンをアンタップする能力で《アポロン》のアタックトリガーを連続で使用すれば、《アポロン》のパワーは最大で45000にまで跳ね上がる。それならパワー36000となった《ヨミ》の三体リンクを崩し、残ったクリーチャーで総攻撃をかけることができる。
しかしジークフリートは無駄だと思った。なぜなら、彼のシールドに埋まっているカードのうち一枚は、《クラフト・ヴェルク》で仕込んだ《DNA・スパーク》だ。一斉に攻撃してきたとしても、その攻撃は途中でストップされるし、《復活と激突の呪印》もあるので、片腕がもがれてもすぐに復活できる。
だが、ジークフリートの予想は、外された。
「《星龍グレイテスト・アース》を手札に」
「あ……?」
手札に入れたのは《アポロン》ではなかったのだ。
「《太陽神話》じゃねえ……? シールドに埋まってんのか?」
こちらの仕込みが見抜かれたのかとも思ったが、見抜くもなにも、手札からカードを選んでシールドに置いたのだから、警戒されて当然だ。それに今のひまりは、そんなことを気にしていられる状況でもないはず。
「残ったマナで《ボルバルザーク・エクス》召喚……マナをアンタップして《アバヨ・シャバヨ》を召喚、《アバヨ・シャバヨ》を破壊」
「……《ジャスティス》を破壊だ」
左腕が消し飛び、《ヨミ》の結界が破られる。これでひまりの攻撃は、ジークフリートに通る。
とはいえ、S・トリガーを仕込んでいるため、ジークフリートに焦りなどはない。代わりに存在しているのは、疑惑。
ひまりに対する、疑念だ。
「さらに《星龍グレイテスト・アース》を召喚」
「ひまり先輩、なんで《アポロン》を持って来ないんだ……?」
神話空間の外で戦いを見守る夕陽も、ジークフリートと同じ疑問を抱いていた。
夕陽はジークフリートの仕込んだS・トリガーのことは分からないが、それでもここで《アポロン》を出さない理由はないはずだ。
なにより、《アポロン》はひまりの切り札。彼女を象徴する『神話カード』だ。夕陽がそうであったように、ひまりも幾度となく危機的状況を《アポロン》によって救われた。
なのに、この状況で、この状況だからこそ生きるはずの『神話カード』を、彼女は使おうとしない。
「先輩……あなたは、一体なにを……?」
星龍グレイテスト・アース 光/水/闇/火/自然文明 (8)
クリーチャー:ワールド・ドラゴン 9000+
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに置く時、タップして置く。
相手のパワー6000以上のクリーチャーは、可能であればこのクリーチャーを攻撃する。
パワーアタッカー+4000
スレイヤー
T・ブレイカー
このクリーチャーが破壊された時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選んでタップし、その後、クリーチャーを1体、バトルゾーンから持ち主の手札に戻してもよい。
いつものジークフリートなら、また面倒なクリーチャーが出て来たぜ、などと一笑に付しているところだろうが、しかし今はそれどころではない。
「そういや、こいつのデッキ……」
あまり深く気にしていなかったが、ひまりのデッキは五文明のドラゴンを詰め込んだ異色すぎる連ドラ。各文明の特徴を最大限に生かし、デッキを凄まじい勢いで使い回していくデッキだ。
とりあえずここでは一般的な連ドラの動かし方というものは置いておくとして、ひまりのデッキは奇妙な点がある。今でも十分おかしいが、《太陽神話》を主軸としているという点で見れば、妙な点だ。
まず、色。文明だ。全色構成とはいえ、全ての文明が均等に入っているのではなく、ドラゴンの質が良い火や自然、闇のカードが比較的多く投入されているようだが、その中でも除去やマナ加速など、サポートに向いた自然、闇が目立つ。
つまり、火文明のカードが少ない。今はコンセンテス・ディー能力を発動させるだけのカードが揃っているが、そうでない場合もそれなりに多かった。
次に、ファイアー・バード。ひまりのデッキはドラゴンがメインなだけあり、ファイアー・バードも投入されているが、どうもその数が少ないように思えた。
《コッコ・ルピア》や《エコ・アイニー》は複数枚投入されているようだが、それでも普段のひまりより枚数が抑えられているように感じる。他にも一枚挿しと思しき《チッタ・ペロル》や《ポップ・ルビン》などもいるが、やはり全体的に見てファイアー・バードの数が少ない。
それらを踏まえて、ジークフリートは今までの対戦を振り返る。流石のジークフリートでも、目まぐるしく変化する彼女の墓地やマナゾーンのカードをすべて覚えているわけではないが、今までのデッキの消費から考えて、ほぼすべてカードがジークフリートの目に触れていても不思議はない。ジークフリートも『神話カード』は注意している。だがその中に《アポロン》はなかった。
だとすると、考えられる可能性は——
「っ!」
その考えに至ろうかというその時、ジークフリートのシールドが三枚吹き飛んだ。
「《メテオライト・リュウセイ》で攻撃、《カイザー・プリンス》の能力でシールドを追加しつつ、シールドを一枚ブレイクするよ」
《カイザー・プリンス》の能力も合わせて、合計三枚のシールドをブレイクした《メテオライト・リュウセイ》。しかし、
「S・トリガー《復活と激突の呪印》《DNA・スパーク》《インフェルノ・サイン》。墓地の《リバティーンズ》を復活させ、お前のクリーチャーはすべてタップ。《サイバー・N・ワールド》も呼び戻し、シールドを追加、《リバティーンズ》は《ヨミ》とG・リンク。能力《コッコ・ルピア》と《ポップ・ルビン》のパワーをマイナス2000、破壊だ。最後に《サイバー・N・ワールド》で手札と墓地のカードをすべて山札に戻し、五枚ドロー」
攻撃を止められてしまったひまり。しかし、それは予想の範疇であるかのように、彼女の表情は落ち着いていた。
逆にジークフリートは、どんどん疑念を募らせていく。不可解なひまりの行動、言動、そして表情、仕草。
再び、彼は今までのデュエルを回想した。ひまりの使用した、召喚した、マナに置いた、手札に入れた、墓地に捨てた、シールドから出た、全てのカードを思い返す。
「『太陽一閃』、まさか、てめえ……!?」
そして、一つの仮説に辿り着いた。
「そのデッキ、《太陽神話》を入れてねえな……!」