二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.384 )
- 日時: 2014/02/09 16:02
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
ひまりとジークフリートのデュエル。
ひまりのシールドは三枚。バトルゾーンには《龍聖大河・L・デストラーデ》《炎龍王子カイザー・プリンス》《閃光のメテオライト・リュウセイ》《暗黒GUY・ゼロ・ロマノフ》《チッタ・ペロル》《偽りの名 バルキリー・ラゴン》《星龍グレイテスト・アース》。
ジークフリートシールドは一枚。バトルゾーンには《サイバー・N・ワールド》《神人類 ヨミ》とリンクした《封魔左神リバティーンズ》《支配神話 キングダム・ユピテル》。
「……ばれちゃったか」
ひまりは特になんと思うでもなく、目を閉じて、静かに言葉を漏らした。
彼女の『神話カード』——即ち《太陽神話 サンライズ・アポロン》。それは彼女を象徴するようなカードであり、そして今まで何度も彼女を勝利へと導いてきた、彼女の力そのもの、いやさ彼女そのものとさえ言えるカードだ。
それを、ひまりは、デッキに入れていなかった。
その事実には、夕陽も、このみも、姫乃も、汐も、少しだけだがシャルロッテも、驚きを禁じ得なかった。
しかし最もそのことに驚き——いや、感情を高ぶらせたのは、ひまりと相対する男だけ。
「……はっ、ははっ。《太陽神話》を抜いたデッキな……」
ジークフリートは片手で顔を覆った。そのまま俯き、乾いた笑い声を漏らしている。
そして、
「——っざけてんじゃねぇぞッ!」
激怒した。
露わになった彼の表情からは、怒りしか読み取ることができない。今までの戦い、どんな状況であれ、舌打ちしようが目つきを鋭くしようが、苦笑であれ失笑であれ、軽く笑い飛ばしていた。
だが今は違う。空間すらもひび割れてしまいそうなほど空気が震撼し、怒声が響き渡る。この上ない怒りの激情が迸る。
「お前、この期に及んで俺が何者か、知らないとは言わせねえぞ。【神聖帝国師団】師団長、ジークフリート・フォン・パステルヴィッツだ! 自分でもおこがましいとは思わねえ、戦績無敗、歴代“ゲーム”最強と謳われる、この俺だ。それを相手に、『神話カード』抜きで戦いを挑みに来ただと? 舐めた真似しやがって、ふざけんな!」
ジークフリートの怒りの根底にあるのは、自分に対する評価の低さ。この戦いでは、結局《太陽神話》を手に入れられないという苛立ちもあるが、それ以上にひまりのこの戦いに対する臨み方が彼を激昂させている。
強い相手には、それ相応の力で臨むべき。ジークフリートは、叩きに対してはそのような考えを持っている。一部例外を除き、誰に対してもその考えを貫いているし、相手にもそれを要求する。そもそもジークフリートを相手にして、手を抜ける者などはいないのだが。
しかしひまりは、彼女がジークフリートを打破しうる、最も強力な力、『神話カード』を持たず、彼と戦った。それも、命を懸けた、死ぬか生きるかという戦いで、だ。
いくら言葉で挑発されようと、ジークフリートは揺れない。しかし彼の言うひまりの「舐めた真似」は、ジークフリートの神経を逆撫でする。
「……別に、舐めてるつもりはなかったけどね。このデッキは、私が今まで作った中でも最高最強のデッキだよ。《アポロン》は、あなたと戦うに当たっては必要ないかなって、思っただけ」
「それを舐めてるつってんだよ! くそが! 胸糞悪ぃ……!」
怒りが頂点に達したように、ジークフリートは地面を踏みつける。その足踏みだけで大地が割れてしまうのではと思ってしまうほどの勢いがあった。
「今まで何百何千何万というデュエリストと戦ってきたが、こんな屈辱は初めてだ。この俺を相手に、『神話カード』抜きで戦いに臨むなんざ、論外だろうが。くそっ、ムカつく、イラつく……!」
怒りの形相などという言葉では収まり切らないほど、ジークフリートは憤慨していた。獣どころか魔獣のような鋭い目つきで、ひまりに引き裂くような視線をぶつけている。
「こんな舐めた真似されて黙ってられるかよ……ぶっ殺す! 俺のターン!」
ひまりのクリーチャーは《DNA・スパーク》ですべてタップ状態。このターンはもう動けず、ジークフリートのターンとなる。
「《ニヤリー》を召喚! 山札の上三枚から無色カードをすべて手札に!」
捲られたのはすべて無色カード、なので三枚とも手札に入る。
「呪文《戦慄のプレリュード》! 《イズモ》を召喚! リンク解除で《リバティーンズ》とG・リンク! 《チッタ・ペロル》を破壊! 続けて《戦慄のプレリュード》! 《双魔左神ディーヴォ》を召喚! リンク解除!」
リンク解除で、ジークフリートは《リバティーンズ》《ディーヴォ》《イズモ》《ヨミ》の四体をリンクさせずに残した。
この不可解なリンク解除は二度目、これでジークフリートの意図に気づかないひまりではなかった。
「《リバティーンズ》《ディーヴォ》《イズモ》、お前らの命はあいつのものだ。そして女神の糧となれ!」
切り離された三体のゴッド・ノヴァは、神々しく煌々とする光の中に取り込まれる。
「……くる」
《太陽神話》を持たないひまりに、いまだ吃驚している夕陽たち。シャルロッテも同様に驚いていたが、今はその驚きも消えていた。
シャルロッテは激昂するジークフリートをぼうっと見つめながら、なにかに憑かれたように、小さく呟く
「かみとめがみ、あわせてかみがみ——そのかたわれは、せいたんのかみ。しんじゃをしたがえ、せいいきをつくり、せかいのすべてをかのものとせん」
舌足らずだが、重く静かな声。それは神々の片割れたる女神を呼び出す儀式の言葉。
太陽も、焦土も、萌芽も、賢愚も、慈愛も、海洋も、守護も、月影も、豊穣も、冥界も、支配も——すべてを包容し、生誕させる神の前では、神であれ神話であれ、有象無象の赤子同然。
そして今、神々の片割れが——
「かみがみよ、せいたんせよ。しんかメソロギィ・ボルテックス」
——降臨した。
「——《生誕神話 サンクチュアリ・ユノ》」