二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.407 )
- 日時: 2014/02/23 22:54
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
「《地獄のケンカボーグ》でシールドをブレイク!」
亜実と栗須のデュエル、真っ先に攻撃を仕掛けて来たのは亜実だった。
亜実の場には《地獄のケンカボーグ》と《心機一転!云鬼バケル》。栗須の場にはなにもない。
「単調な攻撃だな」
ブレイクされたシールドを手札に加えつつ、栗須は非難するように言う。
「貴様が“ゲーム”の世界において評価されている点は、貴様の類まれなる状況判断力だ。的確に状況の流れを理解し、どの道が正しいかを高い精度で導き出す。こちらは守っても貴様の手により潰され、攻めても芽を摘まれる……貴様のストロングポイントは、その対応力の高さにあった。貴様は、その変幻自在な攻め方こそが強みだ」
だが、と栗須は続ける。
「貴様の場と、マナゾーンを見る限り、そのデッキは火と闇の速攻。単調にただ攻撃するだけでは、僕は倒せない」
「そういうのはあたしに勝ってから言うんだな。ターン終了だ」
強気に言い返す亜実だが、しかし内心では彼女が一番焦っている。
ざっと見ただけで、このデッキの細かい部分まで亜実は知らない。とりあえずデッキの方向性だけは分かるので、その通りに動いているが、そんなあやふやな戦術で栗須に勝てるとも思えない。
「僕のターン。《氷牙フランツⅠ世》を召喚してターンエンド」
栗須もやっと動き始めた。それだけで亜実に緊張が走るが、
「いや、まだ大丈夫だ……あたしのターン! 《友情の炎獄ゲット》を召喚!」
《炎獄ゲット》は召喚時、自分のハンターの数以下のコストのクリーチャーを破壊する。
「あたしの場にハンターは三体、コスト3以下の《フランツ》を破壊だ! そして《ケンカボーグ》と《バケル》でシールドをブレイク!」
《ケンカボーグ》と《バケル》による攻撃が、栗須のシールドを叩き割る。これで栗須のシールドは残り二枚だ。
案外、このまま攻めて行けば勝てそうに見えるが、栗須もそんなに甘くはない。
「S・トリガー発動《ミステリー・キューブ》」
「《キューブ》か……見たところ、前より踏み倒しに特化させているようだな」
「ああ、まさか以前と同じ手を使うと思っていたのか?」
「まさか」
“ゲーム”の世界で戦う以上、ある程度名が知られれば、デッキの中身を研究されることはよくある。
なのでポリシーを持ってデッキを構築している者でも、定期的にデッキの中身を改変するものだ。一枚二枚、カードを入れ替えるだけでも、それなりに効果はある。中には一時間おきでデッキを入れ替えるような輩も存在するほどだ。
その例に従い、栗須はデッキの中身を以前戦った時と変えている。以前も重量級クリーチャーが多く投入されていたため、踏み倒し手段はいくつかあったが、今回はその点をさらに特化させているようだ。
「山札をシャッフルし、一番上を公開。《偽りの羅刹 ゼキア・エクス・マキア》をバトルゾーンへ」
「《ゼキア・エクス・マキナ》か……」
偽りの羅刹(コードファイト) ゼキア・エクス・マキナ 無色 (8)
クリーチャー:デーモン・コマンド/アンノウン 8000
このクリーチャーが攻撃する時、相手は自身のクリーチャーを1体選び、破壊する。
相手の、無色ではないクリーチャーが破壊された時、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加えてもよい。
W・ブレイカー
攻撃するたびにクリーチャーを一体破壊され、しかもそれが無色でなければシールドまで追加される。
「そして僕のターン。《セブ・コアクマン》を召喚」
捲れた三枚は《超次元シャイニー・ホール》《偽りの名 スネーク》《真実の名 バウライオン》の三枚。
「三枚とも光か闇のカードなので手札へ。《ゼキア・エクス・マキナ》でシールドをWブレイク!」
《ゼキア・エクス・マキナ》の斬撃が繰り出される。同時にその切っ先から衝撃波も放たれた。
「さあ、クリーチャーを一体破壊しろ」
「……なら、ここは《バケル》を破壊!」
そしてこの時《バケル》の能力が発動する。
「山札からハンターをサーチ! 《鬼神!ヴァルボーグなう》を手札に! あたしのターンだ!」
《ゼキア・エクス・マキナ》で破壊するクリーチャーは、相手プレイヤーが選ぶ。なので攻撃対象を破壊されて攻撃が無駄にならないようにシールドを狙ったのだろう。
だがシールドがブレイクされたお陰で、亜実の手札が増えた。亜実のデッキは速攻で、手札が枯渇しやすい。数枚程度のシールドブレイクなら、むしろありがたい。
「まずは二体目の《ケンカボーグ》を召喚! そして進化! 《鬼神! ヴァルボーグなう》!」
召喚した《ケンカボーグ》をそのまま《ヴァルボーグ》なうへと進化させる。
これで亜実の場にはWブレイカーが一体、他のアタッカーが二体で、合計四打点。栗須の残りシールド三枚を割り、そのままとどめまで持って行ける。
「喰らえ! 《ヴァルボーグなう》でWブレイク!」
《ヴァルボーグなう》の攻撃が栗須のシールドを粉砕する。さらに、
「《炎獄ゲット》でシールドブレイク! これでお前のシールドはゼロだ!」
「ふん……だが、S・トリガー発動だ。《ミステリー・キューブ》」
栗須がトリガーしたのは、またも《ミステリー・キューブ》。山札がシャッフルされ、その一番上のカードが公開される。
「……《恵みの大地ババン・バン・バン》をバトルゾーンへ! マナを四枚追加だ!」
「だからどうした。今更マナを増やそうとも、あたしの攻撃は止まらない。《ケンカボーグ》でダイレクトアタック——」
と、その時。
《ケンカボーグ》の首が吹き飛んだ。
「……なに?」
「マナが増えた意味を、もう少し考えるべきだったな。ニンジャ・ストライク発動《威牙の幻ハンゾウ》を召喚、《ケンカボーグ》のパワーを6000下げ破壊だ」
手札から飛び出したのは《ハンゾウ》。その能力で、パワーがゼロとなった《ケンカボーグ》は破壊される。
栗須は手札に《ハンゾウ》を握っていたが、マナが足りずニンジャ・ストライクできない状態だった。
だが《ミステリー・キューブ》で《ババン・バン・バン》が出て来たことでマナが増え、ニンジャ・ストライクできるようになったのだ。
「さらに、無色以外のクリーチャーが破壊されたので《ゼキア・エクス・マキナ》の能力でシールドを追加」
「くっ……!」
このターンにとどめを刺せなかったのは痛い。どころか、栗須の反撃の手筈が整ってしまった。
「残念だったな、貴様の負けだ。《偽りの名 スネーク》を召喚」
偽りの名(コードネーム) スネーク 水/闇/自然文明 (8)
クリーチャー:アンノウン 11000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーまたは自分の他のクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを1枚引き、その後、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。
このクリーチャーが攻撃する時、自分の墓地のカードを裏向きにしてシャッフルし、山札の一番下に置く。
W・ブレイカー
ダメ押しとでも言うように《偽りの名 スネーク》が召喚される。能力で栗須は手札とマナを増やし、
「《ゼキア・エクス・マキナ》で攻撃、貴様のクリーチャーを破壊し、シールドをWブレイク!」
「《炎獄ゲット》を破壊だ……!」
亜実のクリーチャーは破壊され、栗須のシールドは増える。
さらに《ゼキア・エクス・マキナ》の攻撃で亜実のシールドが二枚、ブレイクされた。
「……! S・トリガー発動! 《待ち伏せオニゾウ》と《デッドリー・ラブ》!」
亜実はブレイクされたシールド二枚から、決死のS・トリガーを発動させた。
「まずは《オニゾウ》を召喚し、効果で《セブ・コアクマン》のパワーをマイナス2000、破壊だ! さらに《デッドリー・ラブ》で《オニゾウ》を破壊し、《ババン・バン・バン》を破壊!」
「……だが、《オニゾウ》が破壊されたのでシールド追加だ」
なんとか栗須の攻撃を凌ぐ亜実。だが栗須の場にはまだ《ゼキア・エクス・マキナ》と《スネーク》がいる。
「やはり《ゼキア・エクス・マキナ》は厳しいな……なら」
カードを引きつつ、亜実は手札のカードを抜き取る。
「まずは《守り屋ジョーオニー》を召喚! 続けて呪文《スーパー獄門スマッシュ》! 《ゼキア・エクス・マキナ》を破壊!」
なんとか《ゼキア・エクス・マキナ》は破壊する。これでこちらのクリーチャーが破壊されることも、シールドが追加されることももうない。
「そして《ヴァルボーグなう》でシールドをWブレイク!」
「そうはさせない。ニンジャ・ストライク《光牙忍ハヤブサマル》を召喚し、《スネーク》をブロッカーに。《スネーク》でブロック」
《ヴァルボーグなう》の攻撃はブロッカーと化した《スネーク》に防がれ、破壊された。
「くそっ、また防がれたか……!」
しかも、こちらの攻撃手まで削られた。
「まずいな……」
眼前に立ち塞がるのは、巨大な未知なる存在。その圧倒的な存在感に戦慄を覚える。
そんな彼女の剣となる力はまだ、デッキの底へと、沈んでいた——