二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.408 )
- 日時: 2014/02/18 04:28
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
亜実と栗須のデュエルは、接戦になりながらも、亜実が押されていた。
間違えて夕陽の作ったデッキでデュエルすることとなった亜実の場には《守り屋ジョーオニー》が一体。シールドも一枚。
対する栗須の場には《偽りの名 スネーク》が一体。シールドは二枚。
亜実は手札が切れかかっており、クリーチャーも小型ブロッカーが一体。栗須は、シールドこそ二枚だが、手札もマナも豊富にあり、場のクリーチャーは大型ときた。
亜実にとってかなり厳しい展開のまま、栗須のターンが訪れる。
「僕のターン。呪文《ホーガン・ブラスター》」
栗須が最初に放った呪文は《ホーガン・ブラスター》。その効果で、山札がシャッフルされる。
「そして山札の一番上のカードを使用する。さあ、なにが出る……?」
シャッフルされたデックトップが表向きになった。
「《ミラクルとミステリーの扉》を発動。さらに山札の上四枚を表向きにする」
捲られたのは呪文の《ミラクルとミステリーの扉》。《ホーガン・ブラスター》の能力で唱え、四枚のカードが公開される。
ここからさらに栗須のクリーチャーが増えるわけだが、栗須はそれらのカードを見るや否や、少しだけ目を細める。
「…………」
捲られたのは《超次元ジャイニー・ホール》《神託の王 ゴスペル》《ポジトロン・サイン》《サイバー・N・ワールド》の四枚。亜実はここからクリーチャーを一体選ぶのだが、
「《サイバー・N・ワールド》だ」
即決即断だった。迷いなく《サイバー・N・ワールド》を選択する。
「《サイバー・N・ワールド》……ついていたな」
バトルゾーンに出て来るのは、《サイバー・N・ワールド》。栗須にとっては、あまりありがたくないクリーチャーだ。
《サイバー・N・ワールド》は、手札補充として考えれば、互いに五枚のカードを引かせるので、アドバンテージを得ずらい。なので相手の手札が多く、逆に自分の手札が少ない時に出すのがベターだ。
だが今は、栗須は手札が多く、亜実は手札が少ない。亜実の枯渇している手札に、恵みの雨をもたらしているようなものだ。
「……まあ、呪文濃厚化だ、出て来てしまったものは仕方ない。互いの墓地と手札をすべて山札に戻しシャッフル、その後五枚ドロー」
亜実と栗須は、互いに墓地と手札をすべてリセットし、新たに五枚のカードを補充する。
「《裏切りのペッパーシウバ》を召喚。《スネーク》で最後のシールドをブレイクだ」
「《ジョーオニー》でブロック!」
亜実のシールドは残り一枚。流石にその一枚を簡単に割らせるわけにはいかないので、《ジョーオニー》で守る。
だがこれで、ブロッカーもいなくなってしまった。
「……あたしのターン」
《サイバー・N・ワールド》で手札は増えたが、この状況を打破するカードは来ない。
「マナも多くないし、進化して追撃かけるのもままならない……とりあえず《鬼斗マッスグ》を二体召喚して、ターン終了だ……」
亜実は《マッスグ》を二体召喚するだけで、ターンを終える。
そして、栗須のターン。栗須の場には《スネーク》と《サイバー・N・ワールド》《ペッパーシウバ》……三体のアタッカーがいる。そして亜実のシールドは一枚。
「最後はS・トリガー頼みか、惨めだな。だが、決死のS・トリガーはそう珍しいことでもない。念のためだ、呪文《ミステリー・キューブ》」
栗須の山札が掻き混ぜられ、その頂点が捲られる。
「……《偽りの名 シャーロック》をバトルゾーンに!」
「っ、《シャーロック》……!」
現れたのは、よりにもよって《シャーロック》、栗須の切り札だった。
選ばれないので並みの除去カードでは太刀打ちできない《シャーロック》。このターン生き延びても、次のターンには確実にとどめを刺しに来る。
「さらに《アクア・スペルブルー》と、《スペルブルー》の能力で手札に入った《エメラル》も召喚。そして、これで終わりだ。《偽りの名 スネーク》で、最後のシールドをブレイク!」
《スネーク》の触手が、亜実の最後のシールドを粉砕する。
「っ……S・トリガー発動! 《地獄門デス・ゲート》で《サイバー・N・ワールド》を破壊! そして戻って来い《守り屋ジョーオニー》!」
割られたシールドは光の束となって収束し、地獄の門が開かれる。
《デス・ゲート》で《サイバー・N・ワールド》は破壊され、代わりに亜実の墓地から《ジョーオニー》が蘇る。続く《ペッパーシウバ》の攻撃は、《ジョーオニー》が防いだ。
「運がいいな。だが、このターンは凌げても、貴様に次はない。ターンエンドだ」
栗須の言う通り、このターンは凌げたが、次のターンはどうしたって防ぎ切れないだろう。今の手札、バトルゾーンから鑑みれば、それは明白だった。
(あたしの場には《マッスグ》が二体。このターンで進化クリーチャーを引ければ、手札のヒューマノイドを出して即進化させれば、勝機はある)
だが、栗須は《エメラル》で手札とシールドを入れ替えている。入れ替えたカードは、S・トリガーと見るべきだろう。それも、亜実の攻撃を止められるような。
(くっ、間違ってあいつのデッキを使ったとはいえ、また負けるのか、あたしは……!)
悔しさが滲む。夏に負けてから約半年。亜実はその間、ほとんど成長していないことになる。
自分の半年という時間は無為だったのか。そんな風に考えてしまう。
この絶望的な状況に、亜実は思わず手を下す。その時だ。
「もう、終わりか……」
——なにを諦めている
「っ!? 誰だ?」
どこからか声が聞こえてくる。武人のような、低く静かな声。しかしその裏では、燃えるような熱を感じる。
——お前は、この程度の逆境で諦めるような戦士ではないはずだ
「誰だ……どこにいる!」
「……『炎上孤軍』?」
突然叫び始めた亜実を、栗須は訝しげに見るが、亜実はそれどころではなかった。
謎の声の正体がつかめない。だが、その声の主は、彼女から最も近いところにいた。
——早くカードを引け。そこで俺の力を、解き放つんだ
「カードを引く……?」
言われるがままに、亜実はデッキからカードを引いた。
刹那、そのカードから、クリーチャーの影が飛び出す。
「久しいな、アミ。俺が来たぞ」
そのクリーチャーは、気取った風に口を開く。
「! お前……マルス、か……?」
デフォルメされ、全身の重火器も小型化してしまっているが、間違いない。見間違えようもない。
それは、亜実のかつての力の象徴《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》だった。
「いかにも。さあアミ、俺の力を使え。さすれば道は切り開かれん」
言うだけ言って、マルスはまたカードの姿へと戻ってしまう。
「……《マルス》」
少しだけ手元にそのカードがある懐かしさを感じ、亜実はすぐさま思考を切り替える。
(さて……)
亜実は場と手札を確認する。栗須のシールドは二枚あり、ブロッカーはいない。代わりにシールドの一枚に、《エメラル》でカードを仕込んでいる。
「……いいだろう。《マルス》、お前の力、使わせてもらうぞ!」
亜実はマナゾーンのカードをタップする。そして呼び出されるのは、
「《地獄のケンカボーグ》と《鬼ウッカリ 爆丸》を召喚!」
二体のヒューマノイドだ。
「《爆丸》はマナゾーンのクリーチャーの数だけコストが軽減される。あたしのマナゾーンのクリーチャーは六体、だからコスト2で召喚だ」
亜実のマナは7マナ、このターン使ったのは4マナ。なので残るマナは3マナ。
たった3マナでは、《マルス》は召喚できない……普通なら。
「あたしの場には《マッスグ》が二体いる! 《鬼斗マッスグ》の能力発動! あたしの進化ヒューマノイドの召喚コストを2軽減する!」
二体いれば、合計軽減コストは4。つまり、7マナの進化ヒューマノイドを、3マナで出せてしまうのだ。
「さあ、出撃だ! 《地獄のケンカボーグ》《鬼斗マッスグ》《鬼ウッカリ 爆丸》を進化元に!」
三体の戦士が、それぞれ炎に包まれる。三つの炎は一つとなり、巨大な爆炎となった。
「硝煙より出でよ、焦土の神! 右手に剣を、左手に槍を! 大地を割り、天を衝け! 我が戦友ここに進軍す! 神々よ、調和せよ! 進化MV!」
次の瞬間、爆炎が吹き飛ぶ。同時に、三体の戦士の力を得た焦土の神が、爆誕する。
「——《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》!」