二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology オリキャラ募集 ( No.41 )
日時: 2013/07/13 17:50
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
プロフ: http://www27.atwiki.jp/duel_masters/pages/1.html

 空城夕陽。春永このみ。御舟汐。
 各々諸事情あって、デュエル・マスターズを用いた戦争“ゲーム”に参加することとなってしまった少年少女たち。
 とある六月中旬の休日、三人はいつものように『御舟屋』——ではなくカフェ『popple』——でもなく、市立の公共図書館だった。
 テストが近いからそのための試験勉強、などというわけではなく、彼らが囲んでいる机の上に置かれているのは、恐らく中にデュエル・マスターズカードが収められているのだろうカードファイルと、ギリシャ神話、ローマ神話、天体図鑑など、妙に繋がりの薄い書籍だった。
「——というのが、私が聞いたゲームの概要です」
 この図書館に来た目的は、彼らが参加する羽目になったゲーム、その情報交換をするためだ。
 三人は三人とも、近い時期に参加したことになるのだが、それぞれの間でそのゲームに関する話はあまりしていない。なのでここで一度、情報を整理することにしたのだ。『御舟屋』や『popple』でしないのは、単に彼女たちの兄や姉に聞かれたくないからである。
「デュエマを用いた戦争ねぇ……で、十二枚の、『神話カード』だっけ? を集めると。なんか、壮大なのかなんのか分かんないな……」
「ですが、大事に巻き込まれてしまったのは確かでしょう。先輩たちは、見て分かる怪我をしているではないですか」
「ん、まあそれは……」
「あはは……」
 汐の言う通り夕陽もこのみも、絆創膏やら包帯やらが、なるべく目立たないようにはしているものの、見て取れる。
「なんにせよ、今後もこういう事態が起こりうる可能性は高いですそのために、この『神話カード』は使わない方が良いでしょう」
「え? なんで?」
 このみが疑問を投げかける。
「ゲームで奪い合うのはこのカード、このカードがあれば狙われる、逆に言えば、このカードさえなえれば私たちは安全ということです。流石にこれを捨てるのはカードに悪いのでしないですが、もしこれを狙う人が現れれば、素直に渡してしまうのが良いでしょう」
「えー? なんかそれってつまんないなー……」
「一理あるけどね」
 とはいえ夕陽はこの中で唯一、『神話カード』を使用している。説得力はあまりない。
「カードが実体化して、シールドをブレイクされればそのダメージが返ってくる、か。恐ろしいもんだよ、このカードも」
「そう言えば汐ちゃん、このカードについても話するって言ってたよね? ゲームについては分かったけど、そっちはどうなの?」
 この集まりを持ちかけたのは汐。相手が相手だったため、三人の中では汐が最も多くの情報を持っている。だから情報の交換というよりは、彼女が夕陽やこのみに情報提供しているようなものだ。
 そして汐は今まで見たことのないカードの力を見て、『神話カード』について考察してきたらしい。
「はいです。まず先輩たちの『神話カード』を出してくださいです」
 言われて夕陽は《太陽神話 サンライズ・アポロン》と《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》を、このみは《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》を、そして汐は《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》をそれぞれ机の上に置く。
「まずこれらのカードですが、言うまでもなくどのクリーチャーも強力な効果を持っているです。それは先輩方も身をもって分かっていると思うのですが」
「うん、まあね」
「確かに強かったよ」
 夕陽とこのみ、そして汐も思い出す。それぞれの相手が繰り出した、これらのクリーチャーの力を。
「まずこれらのカードの共通点ですが、すべて進化クリーチャーですね」
「そうだな。ただ、進化方法が特殊だよね。指定された種族一体と、指定された文明二体を重ねて進化。進化MVだっけ」
「MVでメソロギィ・ボルテックスって、なんか進化GVみたいだね」
「はいです。メソロギィというこのクリーチャー限定の種族のように、独立したものもあると思うのですが、そんな感じでこのクリーチャーたちは既存クリーチャーとそれなりの接点はあるようです。たとえばこの《太陽神話 サンライズ・アポロン》ですが」
 と言って、汐は夕陽の《アポロン》を指差す。
「先輩、《アポロン》の効果はなんですか」
「え? 《アポロン》の効果は……えっと、コンセンテス・ディーっていう、これも『神話カード』固有の能力だよね——で、進化元となった火文明のクリーチャーのコスト合計を数えて、それが6以上なら自分のファイアー・バード、ドラゴン、火文明のクリーチャーにスピードアタッカーを追加する。9以上なら、攻撃の際に山札の一番上を捲って、それがファイアー・バード、ドラゴン、火文明のクリーチャーならコストを踏み倒して場に出る、だよね。こうしてみるとかなり強いな、こいつ……」
 強化された《トット・ピピッチ》や《竜星バルガライザー》と思えば、相当強力な能力だ。
「もう一つ、あるはずですよ」
「え?」
「コンセンテス・ディー能力は一体の『神話カード』に三つあるはずです。最後の能力は何ですか」
「ああ、そういうことか……これは僕もまだ使ってないんだけど、えっと」
 汐に促され、夕陽は《アポロン》の最後の能力を読み上げる。
「CD12:このクリーチャーが攻撃する時、自分のマナゾーンにあるドラゴン、ファイアーバード、火文明のクリーチャーをそれぞれ1体
ずつ選び墓地に置いてもよい。置いたなら、このクリーチャーは次の自分のターンの初めまで、パワー+15000され、ワールド・ブレイカーを得て、相手はこのクリーチャーを選ぶ時、自分自身のマナゾーンにあるカードを全て墓地に置く、か」
 これもこれで相当強力な能力だ。だが、どこかで聞いたことのある能力でもあった。
 そして汐もそれは分かっていたようで、
「この能力、他のクリーチャーに似てないですか」
「え? うーんと……あ!」
 夕陽は思い出した。確かに、これとよく似た効果を持つクリーチャーは存在している。
「はいです。これを見てほしいです」
 と言って汐がカードファイルから、スリーブに入ったカードを抜き取って机に置く。夕陽とこのみはそのカードを覗き込んだ。


超神星アポロヌス・ドラゲリオン 火文明 (6)
進化クリーチャー:フェニックス/ティラノ・ドレイク 15000+
進化GV—自分のドラゴン3体を重ねた上に置く。
メテオバーン:このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードを1枚墓地に置いてもよい。そうした場合、このクリーチャーは「パワーアタッカー+15000」と「ワールドブレイカー」を得る。
相手は、このクリーチャーを選ぶ時、自分自身のマナゾーンにあるカードをすべて墓地に置く。
T・ブレイカー


「《アポロヌス・ドラゲリオン》……確かに、《アポロン》の最後の能力はこの効果にかなり近いな」
「パワーとかコストとかも同じだよ」
「それだけじゃないです」
 と言って、今度は二枚のカードをファイルから抜き取り、これも机に置く。


超神星マーズ・ディザスター 火文明 (5)
進化クリーチャー:フェニックス 13000
進化GV—自分のティラノ・ドレイク、ドリームメイト、ヒューマノイドのいずれか3体を重ねた上に置く。
メテオバーン—このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーの下にあるカードを1枚選び墓地に置いてもよい。そうした場合、パワー4000以下のクリーチャーをすべて破壊する。
T・ブレイカー


超神星マーキュリー・ギガブリザード 水文明 (5)
進化クリーチャー:フェニックス 15000
進化GV—自分のグレートメカオー、グランド・デビル、リキッド・ピープルのいずれか3体を重ねた上に置く。
メテオバーン—呪文の効果が実行される時、このクリーチャーの下にあるカードを1枚選び墓地に置いてもよい。そうした場合、その呪文は効果を失い、持ち主の墓地に置かれる。
T・ブレイカー


「《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》も、この二体の進化クリーチャーと効果が似ているのです」
「本当だ……《マルス》はブレイク・ボーナスで4000以下を破壊するところが《マーズ》と似てるし、《ヘルメス》の呪文無効化も《マーキュリー》と似てる……」
「汐ちゃんよくこんなの見つけられたね、エスパー?」
「そんなわけないですよ……」
 溜息を吐く汐。汐はカードを仕舞い、今度は神話の本を机の中央に移動させた。
「ちゃんと根拠はあるのです。それが、これです」
 そして彼女は、その本を開く。
 ギリシャ神話とローマ神話——その中のオリンポス十二神というものが載っているページを開き、その横に天体図鑑の惑星のページを開いて並べる。
「まず分かりやすいところから言うと、《焦土神話 フォートレシーズ・マルス》そして《超神星マーズ・ディザスター》……この二つを見て、なにか気付かないですか」
 と促す汐。先に応えたのはこのみだ。
「名前が似てるね。《マルス》と《マーズ》で!」
「いや、そんな単純なわけ……」
「いえ、このみ先輩、正解です」
「え? マジで?」
 唖然とする夕陽と胸を張るこのみに向けて、汐は言う。
「ギリシャ神話ではアレスと呼ばれているのですが、ローマ神話では《マルス》という軍神が出ているのです。そしてこれは、火星を意味するマーズという英語の語源です」
 続いて、今度は《賢愚神話 シュライン・ヘルメス》を指した。
「《ヘルメス》という名も、ローマ神話ではメルクリウス……そして天体の水星を表す語はマーキュリー、これらはすべて繋がっているのです」
「ってことは、《アポロン》も?」
「はいです。これは分かり難いのですが、《アポロン》はギリシャ神話における太陽神、ローマ神話だとアポロと呼ばれているのです。そして《超神星アポロヌス・ドラゲリオン》の《アポロヌス》という語は、恐らくそのアポロ、もしくはアポロンが元だと思うのです」
 《マルス》と《マーズ》、《ヘルメス》と《マーキュリー》、《アポロン》と《アポロヌス・ドラゲリオン》……一見すれば全く別のものに見えるが、まさかそんな観点から共通点を探し出せるとは思いもしなかった。
「って、ちょっと待って! だったらさ、あたしの《プロセルピナ》は?」
 とそこで、このみが割り込んで来る。
 だが確かに汐の話の中では《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》が完全に無視されていた。それに対し汐は、
「残念ですが、《プロセルピナ》に関しては何も言えないです……超神星のサイクルには《プロセルピナ》に該当するカードがないですから。《プロセルピナ》の効果も、流石にそれは他に類を見ないですし」
「えー……そんなぁ」
「別に良いだろ、分かったところで何が変わるわけでもないし」
「いえ、そんなことはないですよ」
 夕陽の言葉を否定し、汐が続ける。
「この考察から、他の『神話カード』がどのようなものか、推測できるはずです。つまり神話カードはすべてギリシャ神話やローマ神話、そのオリンポス十二神がモデルとなっている。そしてそれらのカードの効果は、十二神と対応する天体の名を冠している超神星の能力と通ずる部分がある。相手もいきなりデュエマを吹っかけて来ることもあるかもしれないですから、そういうことを留意してプレイングすれば、切り抜けられるかもしれないです」
 なかなか先々までしっかり考えている後輩だった。
「特に先輩は注意した方がいいですよ」
「え? 僕が? なんで?」
 名指しで注意されたので思わず聞き返すと、
「先輩は『昇天太陽サンセット』などという格好良い二つ名がつけられてしまっているようですからね。ということはそれだけ有名で、相手から狙われやすいということではないでしょうか。なぜ先輩だけなのかは謎ですが……私たち以上に注意した方が良いですよ」
「……ああ、そうだね」
 後輩の忠告を素直に受け取り、夕陽たちはその場を片付ける。
 そして三人だけの集会はお開きとなり、各々帰路についた。