二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.411 )
日時: 2014/02/18 22:50
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

「楽しそうだねぇ、君たち」
 汐、流、零佑の三人で《海洋神話》を用いたデッキを構築している最中、カランカランという鈴の音と共に、客が訪れた。
 汐と零佑はその人物に対し、特になんとも思わなかったが、流だけは激しい反応を見せた。
「お前……!」
「や、久し振り。『大渦流水モスケスラウメン』くん」
 その人物は、フランクに片手を上げる。
 黄色いコートが特徴的な、金髪の少年だ。歳は汐よりも下に見える。
「おいリュウ、誰だ?」
「……【神聖帝国師団】の四天王の一人だ」
 そして、流が負けた相手でもある。
 相手の正体が割れるや否や、汐は身構え、緊張も高まる。
「そ、ハスターだよ。前にそこの水瀬流くんと遊んでもらったんだ。ぼくの圧勝だったけどね」
 少年らしい悪戯っぽい笑みを浮かべるハスター。
「なんの用だ? また戦争を吹っかけに来たのか?」
「べっつにー? 正直、君たちに用はなかったんだよねぇ」
 白々しく言うハスターだったが、事実、彼は狙ってこの場所のいるわけではなかった。
「ぼくはカードショップの穴場を巡るのが趣味でね、ニャルと一緒に事後処理に勤しみつつ、いろいろこの町の穴場を探してたんだよ。その中で見つけた店の一つがここってわけ」
 まあ、店名から君らと関係ありそうだとは思ってたけど、とハスターは付け足す。
「本当はちょっと店を見てすぐ帰ろうと思んだけど……この場所に『神話カード』が二枚もあるのなら、それを見逃す手はないよね」
 デッキを見せつけつつ、ハスターはニヤリと微笑む。明らかに、戦う意思を見せていた。
「…………」
 流は腕を押さえた。あの時の傷が疼く。
 ダイレクトアタック時に受けるプレイヤーのダメージは、とどめを刺したクリーチャーのパワーが関わってくる。ひまりや亜実と違い、流にとどめを刺したのはコスト3のバニラクリーチャー。なので傷自体はそこまで大きくなかったが、服の下にはまだ包帯が巻かれている。
「ここは私たちの店です。あなたのようなお客さんには早く出て行ってもらいたいのですが——」
「待て」
 汐がカウンターから出ようとするのを、流は制止する。
「俺が行く」
「水瀬さん……ですが」
「俺にやらせろ」
 二言目は、命令形だった。
「俺は以前、こいつに敗北した。その雪辱戦だ」
「へぇ、君もそういうの気にするタイプなんだ? クールに見えて意外と熱い? ま、なんでもいいけど。君も今は持ってるんだろう? 《海洋神話》。なら先にそっちを貰っとくよ」
「できるものならな」
 流も、今しがた完成したばかりのデッキを手に、ハスターと相対する。
「リュウ……」
「ナガレだ。俺は大丈夫だ、任せろ」
 零佑も抑えつつ、流とハスターは、歪んだ空間に飲み込まれていく。
「じゃ、新しくデッキも組んだことだし、それの実験台になってもらうよ」
「奇遇だな。俺たちも新しくデッキを組んだばかりだ。その試運転をさせてもらう」
 そして二人は、神話空間へと突入する。



 流とハスターのデュエルは、まだどちらも大きな動きを見せていない。
 お互いシールド五枚。
 流の場には《青銅の鎧》《飛散する斧 プロメテウス》の二体。
 ハスターの場は《薫風妖精コートニー》のみ。
「ぼくのターンだね。マナチャージして、ターンエンド」
 ハスターはマナを溜めるだけで特に行動を起こさない。マナ加速すらしていないほどだ。
「なにを考えているかは知らないが……そちらが動かないのなら、こちらの準備を整えるまでだ。まずは《ライフプラン・チャージャー》を発動、山札の上から五枚を見て《蒼狼の始祖アマテラス》を手札に加える。さらに残りのマナで《アクア・スーパーエメラル》を召喚。手札とシールドを入れ替える」
 流のデッキは、三人の意見をいろいろと中途半端に取り込んでしまった感があり、デッキの方向性は《海洋神話》を出す、という一点を除いて一貫していない。だが逆に言えば、様々な戦術があり、その場その場で様々な手段を講じることができる、ということでもある。
「よーし、じゃあぼくのターン。これで5マナ溜まったよ」
 マナチャージして、ハスターは溜ったマナ全てをタップする。
「呪文発動! 《超次元フェアリー・ホール》! マナを一枚追加して、呼び出すのはこのサイキック! 開け、超次元門! 《エイリアン・ファーザー<1曲いかが?>》!」


エイリアン・ファーザー<1曲いかが?> 闇/火文明 (4)
サイキック・クリーチャー:エイリアン 4000
バトルゾーンにあるエイリアンはすべて「スレイヤー」を得る。
覚醒リンク—自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の《マザー・エイリアン<よろこんで>》があれば、そのクリーチャーとこのクリーチャーを裏返しリンクさせる。


 超次元の門より現れたのは、エイリアンの父《エイリアン・ファーザー》。それが母と一体となる時の片割れである。
「《エイリアン・ファーザー<1曲いかが?>》か……またなにかのコンボを狙ったデッキのようだな」
「コンボはロマンだからね。難易度の高いコンボを決める時ほど気持ちいものはないよ」
「【師団】のわりにはまともなことを言うな。俺のターンだ」
 《エイリアン・ファーザー<1曲いかが?>》に限らず、覚醒リンクしたクリーチャーは厄介だ。だが、覚醒リンクさえしなければ、対処しようはある。
「《蒼狼の始祖アマテラス》を召喚。山札から《スパイラル・ゲート》を発動。《エイリアン・ファーザー<1曲いかが?>》をバウンス」
「あぁ、戻されちゃった」
 サイキック・セルが手札に戻されたが、ハスターはくすくすと笑うだけだった。
「まあ戻されても、また出せばいいだけだしね。呪文《超次元エナジー・ホール》! 一枚ドローして、開け、超次元の門! 《マザー・エイリアン<よろこんで>》!」


マザー・エイリアン<よろこんで> 光/水文明 (7)
サイキック・クリーチャー:エイリアン 6000
バトルゾーンにある自分のエイリアンはすべて「セイバー:エイリアン」を得る。
W・ブレイカー


 次に現れたのは、母なるエイリアン、《エイリアン・マーザー》。その父と一体となる時の片割れ。
「さらに《霞み妖精ジャスミン》を召喚して即破壊! マナを追加してターンエンド!」
 《ファーザー》を除去したら今度は《マザー》が出て来たが、流のすることは変わらない。
「《キング・ケーレ》を召喚。《マザー・エイリアン<よろこんで>》をバウンス。続けて呪文《セブンス・タワー》、メタモーフでマナを三枚追加」
 さらに、
「追加したマナを払い、《神秘の宝箱》。山札から自然文明以外のカードをマナゾーンへ」
 流は山札から一枚のカードを抜き取り、マナへと落とす。
(……奴のデッキは、光、水、自然の三色、ならば除去カードそう多く積んでいないはず。こちらの軽量クリーチャーが一掃される心配はなさそうだな)
 流はまだハスターのコンボに時間がかかると読み、そのままターン終了。
「ゆっくりだねぇ。ま、正直ぼくの方が出遅れてるけど。手札も微妙だし、ここは手札補充しといたほうがいいかな」
 カードをドローしつつ、ハスターは手札を眺める。そして、
「まずは《再誕の社》を発動。墓地のカードを二枚マナゾーンに置いて、次は《超次元ガロウズ・ホール》! 《プロメテウス》をバウンスして、《アクア・アタック<BAGOOON・パンツァー>》をバトルゾーンへ!」
 《プロメテウス》をバウンスされ、新たなサイキック《アクア・アタック<BAGOOON・パンツァー>》も並ぶ。超次元ゾーンを見る限り覚醒リンクを狙うためではなく、純粋な手札補充のために投入しているようだ。
「…………」
 流のデッキも除去カードばかりはいっているわけではないので、出て来た《<BAGOOON・パンツァー>》を除去できない。
「……仕方ないな。《プロメテウス》を召喚し、マナを二枚追加。マナゾーンから《ネプトゥーヌス》を回収」
 戻された《プロメテウス》を再度召喚し、前のターンに《神秘の宝箱》で仕込んだ《ネプトゥーヌス》を回収する。マナの枚数は足りているので、次のターンには普通に進化して召喚できる。
「ターン終了だ」
「《海洋神話》が手札に入っちゃったか。怖い怖い」
 などと言うが、ハスターは笑っている。怖いと言う状況を楽しんでいるようだ。
「《<BAGOOON・パンツァー>》の能力で、ターンの初めに一枚ドロー。続けてターン最初のドロー」
 一気に二枚手札を補充するハスター。さらに、
「呪文《スパイラル・ゲート》で《アマテラス》をバウンス! さらにこいつだ! 《サイバー・N・ワールド》を召喚!」
「っ!」
 呼び出されたのは《サイバー・N・ワールド》。その能力で、互いの墓地と手札が掻き混ぜられる。
「《ネプトゥーヌス》が……!」
 せっかく手札に加えた《ネプトゥーヌス》と、先ほどバウンスされた《アマテラス》が、他の手札もろとも山札に戻されてしまう。
(分かってはいたが、やはりこいつ……!)
 以前、負けた経験が、流の焦燥を加速させる。
 そしてハスターの強さを、より強く刻み込む。