二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.423 )
- 日時: 2014/02/20 23:23
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
このみと葵のデュエルは、終盤も終盤、決着間近というところまで来ていた。
このみのシールドはゼロ、バトルゾーンにはなにもない。
一方、葵の場には《時空の封殺ディアスΖ》《偽りの悪魔神 バロム・ミステリー》《悪魔聖霊バルホルス》《偽りの羅刹 ミスディレクション》そして《虚構の支配者メタフィクション》が二体。シールドも二枚残っている。
S・トリガーとニンジャ・ストライクで、なんとか《殲滅の覚醒者ディアボロスΖ》の破壊的な支配から逃れ、ダイレクトアタックも阻止したが、このターンで巻き返さなくてはどうしようもない。
ここでどうにかしないと、次のターンには大量の悪魔たちに、今度こそやられてしまうだろう。
「あたしのターン」
このみはいつも通りカードを引く。このみの手の内には、この状況を打開する準備がほとんど整っている。だが、この盤面をひっくり返すには、あと一枚、パーツが足りない。
そのパーツが来れば——そう思いながら、しかし自然体で、このみは山札からカードを手に入れる。
そして、
「……来た」
このみは小さく呟く。さらにその直後、
「さあ、ここからがあたしのが逆転劇だよ!」
叫ぶように、豪語した。
その言葉を真に受けたわけではないだろうが、葵も少し緊張を走らせる。この状況をひっくり返すようなカードがあるのかと疑念を抱くが、今の彼女には、行く末を見届けることしかできない。
「まずは《薫風妖精コートニー》を召喚!」
「《コートニー》……?」
マナゾーンのカードをすべての文明にする《薫風妖精コートニー》。一般的にはコンボパーツとして採用されるようなカードだが、このみのデッキは見るからにビートダウン。このカードの存在は些か奇妙だ。
だが、次にこのみが繰り出すカードを見た瞬間、彼女の思惑に気づかされる。
「行くよ、みんな! 《若頭 鬼流院 刃》!」
若頭 鬼流院(きりゅういん) 刃(じん) 自然文明 (10)
クリーチャー:ガイア・コマンド/ビーストフォーク/ハンター 17000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自然のハンター・クリーチャーを好きな数、自分のマナゾーンからバトルゾーンにタップして出してもよい。
T・ブレイカー
現れたのは、若頭と呼ばれるハンター《鬼流院 刃》。その風格は力強さと勇敢さを兼ね備え、数多の狩人は彼に付き従っている。
「《鬼流院 刃》の能力発動! あたしのマナゾーンのハンターをすべてバトルゾーンへ!」
直後、《刃》が咆号する。その瞬間このみのマナゾーンで眠っていた数多のハンターが目覚め、彼の元へと集結した。
即ち、このみのマナゾーンのハンターがすべてバトルゾーンへと出て来たのだ。
「《コートニー》……そういうわけですか」
本来、《刃》の能力で呼び出せるのは自然のハンターのみ。しかし場に《コートニー》がいれば、マナゾーンのカードはすべての文明となる。つまり、自然文明でもあるため、マナゾーンのハンターをすべてバトルゾーンに出せるようになるのだ。
「このみちゃん、すごい……いつの間にこんなコンボを……」
「だから言ったんですの、このみ様を信じればいいと。見るですの、このみ様の周りに集まるクリーチャーたちを」
「え?」
《刃》ではなく、このみの周りに集まるクリーチャー。ヴィーナスは確かにそう言った。
神話空間内でもないので、姫乃にはクリーチャーの様子など分からない。だが、言われてみれば、このみが《刃》も含めた数多のクリーチャーを従えている——いや、数多のクリーチャーに、寄り添われているように見える。
「このみ様は、夕陽様や姫乃様、汐様、流様たちとは違って、直感で物事判断しているんですの。普段はいいことではないかもしれないですし、そのような判断を嫌う方もいらっしゃいます。ですが、このみ様の周りに集まる彼らは、直感で行動する、自由気ままなこのみ様を好いているんですの」
自由気まま。夕陽から言わせてもらえば、身勝手が過ぎるとでも言うのかもしれないが、彼女のクリーチャーは、そうは思っていないようだった。
「クリーチャーにだって、意志はあるんですの。本人は無自覚のようですが、このみ様はその意志を尊重してくださっているんですの。そして、このみ様の何物にも縛られない、そして屈託のない純真で純粋な無邪気さは、自然そのものですの。だからこそ彼らはこのみ様を好いていて、そんなこのみ様に応えようとするんですの。それが、このみ様の力、ですの」
「このみちゃんの、力……」
直感的であるがゆえに、クリーチャーに好かれるこのみ。言い換えれば、彼女はクリーチャー、それも自然のクリーチャーに近い存在なのかもしれない。
だからこそそのクリーチャーたちは、自分たちに近い存在であるこのみを好き、寄り集まって力となる。
「このみ様の心はとても清らかですの。わたくしも、このみ様の野性的な包容力は魅力的だと思うんですの」
「……ヴィーナスも、このみちゃんと一緒にいたい?」
「やきもちですの? 大丈夫ですの、姫乃様。わたくしの一番のパートナーは姫乃様ただ一人ですの。それだけは変わらないんですの」
「そっか……ありがとう」
このみのクリーチャーに好かれるという性質は理解した。
ここで一度デュエルに戻るが、《刃》の能力でクリーチャーが呼び出されたとしても、このみが勝てるとはまだ言えない。
「《刃》の能力で一気にクリーチャーを呼び出すとは驚きましたが……その能力で踏み倒されたクリーチャーはすべてタップ状態です。このターンには動けません」
つまり、いくらマナゾーンからスピードアタッカーや進化クリーチャーを引っ張り出そうとも、攻撃できないのだ。
「そうだね。でも、場に出た時の能力は発動するよ」
このみが呼び出したのは《俊足の政》《アパッチ・ヒャッホー》《スーパー大番長「四つ牙」》《激流アパッチ・リザード》《若頭 鬼流院 刃》《不敗のダイハード・リュウセイ》《堀師の銀》三体の、合計九体。
《俊足の政》で手札を補充し、その《俊足の政》から《「四つ牙」》へと進化してマナを加速。《アパッチ・ヒャッホー》と《アパッチ・リザード》は、それぞれ《剛腕の政》と《不死身のブースト・グレンオー》をバトルゾーンに出す。
剛腕の政(ビシャモン・キッド) 火/自然文明 (4)
サイキック・クリーチャー:ビーストフォーク/ハンター 3000
覚醒リンク—自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の《不死身のブーストグレンオー》があれば、そのクリーチャーとこのクリーチャーを裏返しリンクさせる。
ハンティング
不死身のブーストグレンオー 火文明 (7)
サイキック・クリーチャー:フレイム・モンスター/ハンター 6000
このクリーチャーは破壊されない。
このクリーチャーがバトルに負けた時、自分の超次元ゾーンに戻す。
W・ブレイカー
だがこれらは、前座に過ぎない。このみにとっての本命は、こちらだった。
「《堀師の銀》の効果発動で、この子自身をマナゾーンへ!」
「私はタップしている《メタフィクション》をマナゾーンへ」
「なら次の《堀師の銀》の効果も発動、もう一度《堀師の銀》自身をマナゾーンへ送るよ!」
「では私は《ディアスΖ》を超次元ゾーンへ戻します」
「まだまだ! 三体目の《堀師の銀》で最初に召喚した《刃》をマナゾーンに送るよ!」
「……ならば《メタフィクション》の二体目をマナに送ります」
《堀師の銀》が出て来たのでクリーチャーがマナ送りにされるが、三体程度なら大丈夫だ。まだ戦力は残る。
——三体だけなら、だが。
「じゃあ最後に《刃》の能力で出た二体目の《刃》の能力発動! マナゾーンの《堀師の銀》二体と《刃》をバトルゾーンに!」
「え……?」
ぞわりと、葵に悪寒が走る。
「二体の《堀師の銀》をマナゾーンに送るよ!」
「……《バルホルス》と《ミスディレクション》を、マナゾーンへ……」
「なら出て来た《刃》の能力発動! さっきマナに送った《堀師の銀》をまたまたバトルゾーンに! 二体の《堀師の銀》をマナゾーンに送るよ!」
「っ……《バロム・ミステリー》を、マナゾーンに送ります……」
《堀師の銀》に《刃》を組み合わせることで能力を使い回し、葵のクリーチャーはすべてマナゾーンへと送り込まれてしまった。
「まさか、こんなことが……!」
正直、このみがここまでのコンボを見せてくるとは夢にも思ってみなかった。傍で観戦している姫乃も驚いている。
「くっ、私のターン。《超次元バイス・ホール》で《時空の戦猫シンカイヤヌス》と《時空の喧嘩屋キル》を呼び出し、《シンカイヤヌス》を《ヤヌスグレンオー》へループ覚醒、その効果で《キル》をスピードアタッカーに。さらに《魔刻の斬将オルゼキア》を召喚し、自身を破壊。そちらは二体破壊してください」
「じゃあ《不死身のブースト・グレンオー》《アパッチ・ヒャッホー》を破壊するよ。でも《ブースト・グレンオー》は能力で破壊されないね」
「……ではG・ゼロで《ブラッディ・シャドウ》を二体召喚です」
これでブロッカーが二体並んだわけだが、恐らく無意味だろう。
「《キル》で、ダイレクトアタックです」
「《ダイハード・リュウセイ》の能力発動、この子を破壊して、このターンあたしはデュエルに負けないよ」
爆散する《ダイハード・リュウセイ》。だがその不敗の魂は残り、葵のとどめの攻撃を防ぐ。
「……ターン、終了です……」
結局、葵はこのターンにこのみを仕留めることができなかった。
そしてこのターンに決められなかったということは、次のこのみのターンに、ほぼ勝負が決することを意味していた。
「よーし、あたしのターン!」
このみのターンが訪れる。その時、《剛腕の政》が吠えた。
《剛腕の政》の咆号に《不死身のブースト・グレンオー》も咆哮する。
「行くよ、二人とも! 覚醒せよ、そしてリンクせよ!」
二体の叫びが重なり合い、そして二体は光に包まれた。
「目指す勝利に全速全開! 爆裂の力で駆け抜けて!」
その光の中で、二体のクリーチャーは、一体となる。
「——《爆裂ダッシュ!グレンセーバー政》!」