二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.424 )
- 日時: 2014/02/21 01:49
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
爆裂ダッシュ!グレンセーバー政(まさ) 火/自然文明 (15)
サイキック・スーパー・クリーチャー:ビーストフォーク/フレイム・モンスター/ハンター 12000+
このクリーチャーは破壊されない。
ハンティング
T・ブレイカー
リンク解除
《剛腕の政》とその盟友である《不死身のブースト・グレンオー》が覚醒し、リンクした姿。それが《爆裂ダッシュ!グレンセーバー政》だ。
「これで逆転だよ! まずは《鬼流院 刃》で残るシールドをブレイク!」
「《ブラッディ・シャドウ》でブロックです!」
「なら二体目の《刃》でもブレイク!」
「同じく《ブラッディ・シャドウ》でブロック……!」
二体の《刃》の攻撃を《ブラッディ・シャドウ》で防ぐ葵。だが、それでは全然足りていない。
「念のために《堀師の銀》で《キル》を攻撃、《アパッチ・リザード》でも《ヤヌスグレンオー》を攻撃!」
葵のクリーチャーを殲滅するこのみ。葵の手札には《ダイヤモンド・ソード》があるのであまり意味があるようには思えないが、この際無意味でも構わない。
この攻撃さえ通れば、なんでも構わないのだ。
「さあお待たせ、今度こそ! 《スーパー大番長「四つ牙」》で攻撃! Wブレイク!」
ブロッカーを失った葵のシールドを守るものはおらず、《「四つ牙」》による攻撃が叩き込まれ、シールドが砕け散る。
もしここで《DNA・スパーク》のようなS・トリガーが出れば、葵にも逆転の逆転を起こすチャンスがある。
「……S・トリガー発動!」
割られたシールドは、光の束となって収束する。葵はそのカードを手に取った。
そして、そのカードは、
アポカリプス・デイ 光文明 (6)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにクリーチャーが6体以上あれば、それをすべて破壊する。
「っ……!」
歯噛みする葵。確かに、葵の場にはなにもいないが、このみの場には六体のクリーチャーが存在している。この《アポカリプス・デイ》が不発に終わることはない。
だがいくらこのみのクリーチャーを破壊しようとも、破壊できないクリーチャーというのが、今のこのみの場には存在するのだ。
「残念! 《グレンセーバー政》は破壊されない。だから、《アポカリプス・デイ》も効かないよ!」
刹那、このみのバトルゾーンにいるクリーチャーが爆散する。大爆発に巻き込まれ、ほぼすべてのクリーチャーが吹き飛んだ。
しかし、《グレンセーバー政》だけは、悠然と立ち、敢然としている。
結局、葵は《グレンセーバー政》を除去することも、止めることもできなかった。
「じゃあ、これで終わりだよっ!」
このみ同様、シールドもクリーチャーも失った葵に、紅蓮の大剣が振りかざされる。
「《グレンセーバー政》で、とどめだぁー!」
デュエルが終わった。
様々な知略、戦略、策略が交錯し、逆転に次ぐ逆転で何度も盤面はひっくり返された戦いであったが、その結果は、このみの勝利だった。
「ふぅ……なんとかなった……」
「このみー!」
一息つくこのみに、プロセルピナが飛びつく。
「ルピナは信じてたよ、このみーなら勝つって! やったよこのみー! ありがとー!」
「あはは……どういたしまして」
このみの周りをくるくると旋回するプロセルピナ。正に狂喜乱舞だ。
「このみちゃんが、勝ったね……」
「ですの」
「ヴィーナスは、この結果が分かってたの?」
「デュエルの結果は分からなかったんですの。正直、地力ではこのみ様よりも、少しだけ葵様が上手だったと思うんですの。だからこのみ様名が負ける可能性の方が高いのではと、わたくしは思っていたんですの」
だが、
「このみ様のクリーチャーを愛し、愛されるその魅力がクリーチャーたちを集めて、このみ様の力となったんですの。足りない実力は仲間の力で補ったんですの。でもそれも、このみ様の力、ですの」
「そっか……なんていうか、このみちゃんらしいね」
単独ではなく仲間を集めて戦う。それはこのみ自身にも言えることだし、彼女の所有する《萌芽神話》でも言えることだった。
そう考えると、やはり《萌芽神話 フォレスト・プロセルピナ》は、このみが持つべきカードなのだろう。
「…………」
そんな風に喜ぶ者がいる一方で、そうでない者もいる。これはある種の賭け。賭博には勝つ者がいれば、負ける者もいる。
このみが勝者なら、敗者は葵だった。
葵は俯いたまま、動かない。
「……向田さん?」
「あおいん?」
その様子に、盛り上がっていた空気は一気に沈下する。プロセルピナもヴィーナスも、不安げな目で彼女を見つめていた。
「負けて、しまいました……また、こうして、出会えたのに……」
うわ言のように、声を漏らす葵。後悔、自責、慙愧の念がこもった、酷く重たい声。
心なしか、彼女の目元も、潤みつつあるように見える。
「…………」
気まずい。プロセルピナですらなにも言わない、重苦しい空気。
このみはジッと葵を見つめ、そして意を決したように、しかしやや控えめに、葵へと言葉をかける。
「やっぱり……返そうか?」
「え……」
「このみちゃん!?」
「このみ様?」
「このみー!」
四者同様の反応。ただ、葵は呆然、姫乃は吃驚、ヴィーナスは疑念、プロセルピナは非難がこもっていた。
「なんで!? このみーは勝ったんだよ! 渡す必要なんてないじゃん!」
「いや、だってあおいんの大切なカードなら、あたしが持ってるより、あおいんが持つべきなんじゃないかなって……プロセルピナも、あんまりわがまま言ってちゃダメだよ」
「でも……ルピナはやだ! このみーと離れたくない! このみーと一緒にいたい! 離れ離れはやだよ!」
「なに言ってるの」
このみは、さも当然、とでも言うように、
「あおいんはあたしたちの友達なんだから、離れ離れじゃないでしょ。いつでも会えるじゃん」
言い放った。
「っ……!」
その言葉になにより驚いているのは、葵だった。
認識の違い、と言ってしまえばそれまでだが、このみと葵の間には、ここまでの違いがあった。
それを、思い知らされる。
「そういうわけだから、プロセルピナ」
「うー……わかったよ。このみーがそう言うなら、いやだけど、いやいやだけど、わかったよ……」
プロセルピナは、渋々葵の元へと滑るように飛び、
「……よろしく」
と言って、拗ねた子供のようにすぐにカードに戻ってしまった。
「そういうわけだから、その子はあおいんに返すよ」
「……いいんですか。あなたにとっても、このカードは……」
「いいのいいの。そりゃあちょっと寂しいけどさ……【師団】の人とかなら絶対に渡したくないけど、あおいんならいつだって会えるもん」
それに、とこのみは続ける。
「あたしのデッキにいなくたって、みんな友達で仲間だからね。だから他の人の手にあるから離れ離れとか、そういうのって、違う気がする」
「…………」
カードを手に、葵は呆然と、しかし様々なことを思う。
自分はこのカードが大事だ。それこそ、元々一クラスメイトでしかなかった少女と対立するほどに大切なものだ。だがそれは葵だけでなく、このみだって同じはず。思い入れに差があったとしても、大事だという気持ちに遜色はない。
だが、カードに、そしてクリーチャーに対する考え方には、大きな差があった。頑としてでもこのカードを手中におさめたかった葵。それは自分の元にあったそのカードを失ったからこそだ。だがこのみは、それを手放しても、失ったと考えているわけではない。
度量が広い、というわけではない。単純に、純粋に、考え方の違いだ。だが、
「……やはり、これはお返しします」
葵は、《プロセルピナ》を、このみに差し出す。
「え? いやでも……」
「いいんです。春永さんの言葉でなんとなくわかりました。このカードはもう、私が持つべきカードではないような気がするんです……これは、あなたが持つべきカードではないかと、思いました」
それに、と葵も続けた。
「このカードがなくても、私と彼女は、まだ繋がっているはずですから」
「……? よく分かんないけど、あおいんがそういうなら……」
いまいち釈然としないというか、疑問は残るものの、このみは返された《プロセルピナ》を受け取る。同時に、プロセルピナがカードから出て来た。
「……いいの? ルピナ、いらない?」
「いらないとまでは言いません。でも、あなたは春永さんと一緒にいるべきなんじゃないかって、思っただけです。でも、また今度、私とデュエルしてください。またあなたと戦いたいです」
「……うんっ! ルピナも負けないよっ!」
再戦の約束を交わす葵とプロセルピナ。
その様子を、安堵の表情で見つめている姫乃とヴィーナス。
「……とりあえず、これでめだたしめでたし、なのかな」
「ですの。わたくしもここまでは予想外ですの。流石はこのみ様、ですの」
このみの純真無垢な心が葵を軟化させた、などと言ってしまえばこのみを美化しすぎているように思うが、しかしこのみの純真さに感化されただろうことは、言うまでもない事実だった。
「じゃあどうする? 早速もう一戦しちゃう?」
「……では、せっかくですし、そうさせてもらいますね。今度は負けませんよ」
「あ、ではわたくしたちはその次の対戦を所望したいんですの。姫乃様、どうですの?」
「うん、いいよ。わたしも向田さんとデュエマしたいな」
そんなこんなで、《プロセルピナ》を巡る争いは円満に解決した。
和気藹々と再びデュエマを始める三人。そんな時、
カランカラン
来店を告げる鈴が鳴り響く。
「あ……プレートかけ忘れてた!」
「そういえば、そうだったね……」
そもそも、そのために葵がここにいるようなものだ。いや、彼女の本来の目的を考えれば、かけていても入ってたかもしれないが。
だがこの時も、かけ忘れていることはさしたる問題にはならない。
なぜなら、
「おーいこのみー、またプレートかけ忘れて……ん? 光ヶ丘と……向田? なんで君がここに?」
「ゆーくんじゃん」
店に入って来たのは、夕陽だったからだ。
夕陽が『popple』を訪れた理由は、はっきりいってなかった。友人の家に遊びに行くような(実際、親友の家に遊びに行っているわけだが)感覚だ。
なので適当な時間になると、夕陽は普通に帰宅した。
「しっかし、向田まで巻き込んだのか……そろそろ僕らの活動も、色々なところに影響でてるな……」
実際のところ、葵は夕陽たちとはあまり関係のないところで巻き込まれているが、元を辿れば夕陽たちに行きつくので、夕陽たちの責任と言えなくもない。
「でもいいじゃねぇか、一緒に戦う仲間が増えたんだぜ」
「そんな簡単に言うなよ。僕らには安全安泰な日常ってものがある。それを投げ打ってまで、一緒に戦ってほしいとは思わないよ」
「そうなのか? オイラにはよくわかんね」
「そのうち分かるよ、っていうか分かれ」
日も暮れ、道に人はいない。実体化したアポロンとそんな会話をしながら、帰路を進んでいく。
「……そろそろ家だから、もう戻れ。誰かに見られたりしたら大変だからな」
「おう、合点だ」
アポロンはプロセルピナと違ってわりと従順だ。夕陽がそう言うと、あっさりカードに戻った。
「はぁー……そういえば、もうすぐクリスマスだな。今年はまだこのみからなにも聞いてないけど、あいつ、今度はなにをしでかすのやら」
などと言いながら、ほぼ無意識に郵便受けを探る夕陽。こんな時間に探ってあまり意味がないように思うが、半ば癖となってしまっているから仕方ない。
それに、今回に限って言えば、意味はあった。
「ん? なにこれ? 手紙?」
かさりと、夕陽の手になにかがふれた。
取り出すと、それは手紙だ。白い便箋に入った、シンプルな手紙。
「『空城夕陽様へ』……? なんだ、誰からだよ——」
妙に畏まったものを感じながら、差出人を確認する。その瞬間、夕陽は絶句した。
「……!」
目を見開く夕陽。まさか、こんなところでその名を目撃するとは思っていなかった。予想外すぎる。
その、差出人は——
「【神格社界】……!」