二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.431 )
日時: 2014/02/22 13:00
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 流れるようなドロン・ゴーでシールドと手札を一気に削り取られてしまった夕陽。S・トリガーの《オドル・ニードル》でなんとか凌いだが、それでもささみの場にはまだ《百仙閻魔 マジックマ瀧》《突撃奪取 ファルコン・ボンバー》の二体が残っている。このターンにどうにかしなければ、そのままダイレイクとアタックを決められてしまうのだ。
 逆に言えば、このターンでなんとかすればいいだけの話なのだが。
「……《スケルトン・バイス》ってさ、強いよね」
「は? なによ、いきなり」
「だからさ、4マナで二枚も手札を破壊する《スケルトン・バイス》は、流石プレミアム殿堂入りするだけあって、強力だよねって」
 あまりに唐突過ぎる夕陽の発言に面喰うささみだが、その内容自体には同意を示す。
「そりゃそうでしょ、2コストマナブーストから繋げれば早期に撃てるから、より強力になる。まあ普通に二枚ハンデスでも強いけどね。だからその《スケルトン・バイス》を内蔵しているこの《瀧》も、強力なクリーチャーよ」
 しかもブロックされないWブレイカーだ、弱いはずがない。それには夕陽も同意するが、
「そうだね、確かに《瀧》は強い。けど、弱点もあるよね」
「弱点? エグザイル・クリーチャーだから、同名クリーチャーを並べられないこと? でも、他のエグザイルと違ってドロン・ゴー先の《クーマン》なんかは並べられるし、そこまで弱点ってわけでも——」
「違うよ。ハンデスの方の弱点だ」
 ささみの言葉を遮って、夕陽は続ける。
「《瀧》のハンデスは強い。でも、それはアタックトリガーでしか発動しない。攻撃しないと能力が発動しないから、能力を発動させるためには攻撃しなければならない。クリーチャーを殴り返すのならそれでいいけど、相手にタップされているクリーチャーがいないなら、シールドをブレイクするしかないよね」
「……なにがいいたいのよ」
 迂遠に語り続ける夕陽。痺れを切らしたように、ささみは単刀直入に尋ねた。そして夕陽も、素直に答えた。
「シールドを割ってくれたおかげで、ハンデスされても手札ができたってことだよ」
 次の瞬間、夕陽のデッキが爆裂したように弾ける。いや、実際にはそんなことは起きていないが、ささみにはそう見えた。
「僕のターン! 《コッコ・ルピア》を召喚! さらに《ボルバルザーク・エクス》を召喚! マナをすべてアンタップして、《セルリアン・ダガー・ドラゴン》を召喚!」
 手札を使い切ってクリーチャーを並べていく夕陽。だがその手札も、《セルリアン・ダガー》の能力で補充される。
「よしっ、ベストなカードを引いた。《無双竜鬼ミツルギブースト》を召喚して、即マナへ! そしてパワー6000以下の《ファルコン・ボンバー》を破壊! 続けて《爆竜GENJI・XX》を召喚! 《GENJI》で《瀧》に攻撃、相打ちだ!」
 次々とささみのクリーチャーが破壊され、彼女のバトルゾーンにはなにもなくなってしまった。対する夕陽は、まだドラゴンが残っている。
「手札がないから、ドロン・ゴーもできないよね? ターン終了だよ」
「うっ、くぅ……!」
 悔しそうに歯噛みするささみ。事実、彼女は《マジックマ瀧》の高速ドロン・ゴーを決めた代償として、激しく手札を消費してしまっている。なので《マジックマ瀧》が破壊されても、ドロン・ゴーができない。
「あ、あたしのターン……《命水百仙 しずく》を召喚……」


命水(ウォーター)百仙(バイト) しずく 水文明 (3)
エグザイル・クリーチャー:アウトレイジMAX 3000
このクリーチャーはブロックされない。
ドロン・ゴー:このクリーチャーが破壊された時、名前に「百仙」とあるエグザイル・クリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の、名前に「しずく」とあるエグザイル・クリーチャーをバトルゾーンに出すことはできない。


 引いた来たクリーチャーをそのまま召喚するが、スピードアタッカーを引けなかったのは痛い。
 残念だが、ささみの勝ち目はもうほとんど残っていないだろう。
「ターン、エンド……」
「なら、僕のターン!」
 意気消沈しかけているささみと、対照的に活力が漲ってくる夕陽。この様子だけでも、夕陽の優位が見て取れる。
「《偽りの名 バルキリー・ラゴン》を召喚! 山札から《闘龍鬼ジャック・ライドウ》をサーチしてそのまま召喚! そして、《アポロン》、出番だよ!」
「合点だ!」
 連続サーチで《アポロン》を手札に呼び込む夕陽。前のターンにも決めようと思えば決められたが、決めるなら確実に決めたい。そして、このカードなら、それが可能だ。

「《コッコ・ルピア》《ジャック・ライドウ》《バルキリー・ラゴン》の三体を進化MV! 《太陽神話 サンライズ・アポロン》!」

 三体のクリーチャーの力が集い現れたのは、《太陽神話 サンライズ・アポロン》。夕陽の相棒たる『神話カード』。
「行くよ《アポロン》!」
『ああ! 任せろ!』
「《アポロン》で攻撃! そして能力発動! まずはCD9! 山札の一番上を捲るよ!」
 こうして捲られたカードは、《メンデルスゾーン》。クリーチャーではないので手札へ。
「さらに! CD12!」
 夕陽はマナゾーンの《コッコ・ルピア》《無双竜鬼ミツルギブースト》《爆竜トルネードシヴァXX》の三枚を墓地へと落とす。
『これで俺のパワーは30000! そしてシールドをすべてぶち破るワールド・ブレイカーだ!』
 《アポロン》の周囲を旋回する小型太陽がどんどん加速し、頭上の疑似太陽も巨大化する。《アポロン》はそれらの太陽から膨大なエネルギーを得て、そのエネルギーを凝縮した熱線を、解き放つ。
「う、くっ……S・トリガー発動! 《月面ロビー・スパイラル》《地獄門デス・ゲート》!」


月面(ムーンサルト)ロビー・スパイラル 水文明 (6)
呪文
S・トリガー
相手はバトルゾーンにある自身の、タップされていないクリーチャーを2体選び、手札に戻す。


 ささみは決死の思いで二枚のS・トリガーを発動。夕陽の《ボルバルザーク・エクス》と《コッコ・ルピア》をバウンスし、《セルリアン・ダガー》を破壊して《ファルコン・ボンバー》を蘇らせた。
 だが、そこまでだ。
 彼女にはブロッカーはいない、シールドもない。だが夕陽の場にはまだ、アタックできるクリーチャーが残っている。

「《エコ・アイニー》で、ダイレクトアタック!」



 神話空間が閉じ、四人はほぼ同時に現実の世界へと戻って来た。
「ご、ごめんね、ささちゃん。負けちゃった……」
「いいのよ、うさ。あたしも負けたし……完敗よ」
 敗北したささみとうさみは、大人しく身を退いた。特に噛みついてきたささみは、あっさり道を空ける。
「約束よ、この先に進みたいならご自由に」
「ど、どうぞ……」
 二人に促され、顔を見合わせる夕陽たち。少々あっさりしすぎているのではと疑ってしまうが、
「……通してくれるなら、行こうか」
 そもそもここを通ることが目的なのだから、そこを疑っていては話にならない。
 夕陽たちはささみ、うさみの横を通り抜け、会場へと続く扉を、押し開ける。



「……ささちゃん、よかったの? あの人たちを、中に入れて……」
 夕陽たちが会場に入ってから、うさみはささみへと問いかける。
「なんで反対してからそういうこと言うのよ……まあでも、別にいいんじゃない。さっきはああ言ったけど、戦ってみて分かったわ。少なくとも『昇天太陽サンセット』は、あの人が喜ぶ相手よ」
「だから、ここを通したの? かいちょーさんを、喜ばせるために……?」
「そんなんじゃないけど……もしあたしが勝ってれば、突っ撥ねるつもりなのは変わらなかったと思うわ」
 うさみとそんな会話をしながら、ささみは数々の名前が記入された名簿を眺める。どうせ偽名もいくつか入っているのだろうが、こんなものは形の上だけの受付だ。本来不必要なものである。
 “ゲーム”の世界での種火となる『昇天太陽サンセット』が危険だと判断し、追い返そうとしたのは確かだが、その種火に対して、逆に燃え上がる相手もいる。そのことを深く考えれば、彼らを通さない理由はない。
「……久々に、楽しいパーティーになりそうね」
「ささちゃん、かいちょーさんが楽しそうだと、嬉しいもんね」
「なっ、いやちがっ……そんなんじゃないから!」
 焦ったように赤面しながら、うさみの言葉を否定するささみ。
 その直後だ。
「っ……うさ」
「う、うん……たぶん、かいちょーさん、だよね……」
 この扉の向こうで、一つの空間が展開された気配を感じた。いくら無礼講のクリスマスパーティーだからといって、会場内でそんな馬鹿げたことをする輩は一人しか思いつかない。
「……前言撤回。今年は去年以上に、大変なパーティーになりそう……」
 そのことを考えると、ささみはげんなりと、溜息を吐く。
 扉の向こうで起こっているだろう現象を、思いながら。