二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.432 )
日時: 2014/02/22 15:06
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 扉を押し開けて会場へと入った夕陽たち五人。その会場——大ホールは、正に圧巻の一言に尽きた。
 奥の壁が見えないほど広大で、ここは天国かと思うほど輝かしいシャンデリアが無数に釣り下がっている天井に、煌びやかな装飾を施した内装。
 ホールのいたるところには純白のテーブルクロスが欠けられた丸テーブルが置いてあり、そこにはいかにも三ツ星シェフが作りましたと言うような料理の数々。それを食する人々の意匠もまた、豪奢であった。
 絵に描いたというか、夢に見たとでもいうような豪華さ。あまりにも場違いな自分たちが悲しくなってくるが、そんなことも吹き飛ばすほど、その光景は凄まじかった。
 夕陽たちがその景色に圧倒され、言葉を失っていると、一つの人影が夕陽たちに近づいてきた。
「来たか。遅かったな、お前たち」
「あ、亜実……」
 その人物とは、『炎上孤軍アーミーズ』こと火野亜実だった。周りがスーツなりドレスなりと正装をしているにもかかわらず、彼女は男っぽいカッターシャツとジーンズという、趣味全開の普段着だ。
「亜実……なんでお前、そんな恰好なんだよ……」
「第一声がそれか。別に構わないだろ、正装していなければならないというルールはない。他にもちらほらと、普段着で着ている連中はいる。それに、あたしにああいう服は似合わないしな」
 確かに亜実の言う通り、たまに普通の服を着ている者もいる。中にはピエロやらナースやら宇宙服やら、おかしな恰好をしている者もいるが。
 それでも、やはり正装をしている者が多い。
「うーん、逆に似合うと思うけどなぁ」
「うるさい。そんなことよりもだな——」
 と、その時。
 また新たな影が、疾駆する。
「!?」
 その影は一直線に夕陽へと向かってきていた。道中のパーティー参加客を文字通り撥ね飛ばしながら、まっすぐに、夕陽へと突っ込んで来る。

「『昇天太陽サンセット』!」

 そんな叫びと同時に、その人影と夕陽は、神話空間へと飲み込まれた。



「な、なんなんだよ、一体……!」
 急に人に突っ込まれて名前を叫ばれたと思ったらいつの間にか神話空間でデュエルすることとなった。急展開過ぎてついていけない。
「『昇天太陽サンセット』! 俺と戦え! 戦うぞ! 戦うんだ!」
「だからなんなんだよお前は! 何者だ!」
「俺のターン!」
 無視された。というか夕陽の言葉が聞こえていないのかもしれない。
「くそっ、わけ分からねぇ……! ああもう! やるしかない!」
 そんなわけで始まった、夕陽と謎の男とのデュエル。
 夕陽の場には《コッコ・ルピア》が一体、シールドは五枚。
 男の場には《正々堂々 ホルモン》《飛散する斧 プロメテウス》の二体、シールドは五枚。
「なんか意味不明なままデュエルすることになってるし……なんなんだ!」
「落ち着け夕陽! いいじゃねえか、こうして戦うのなら分かりやすいだろ」
「そういう問題じゃないって……まあでも、あいつはまともに取り合ってくれる気ないみたいだし、速攻で終わらせて聞き出してやる」
 夕陽は勇みながらカードを引く。
「ここでコスト6のドラゴンを出してもいいけど……」
 相手の場に視線を送る。男に場にいるのはどちらもパワー1000のクリーチャー。数でこそ負けているが、《ホルモン》も《プロメテウス》も召喚すればもうほとんど用済みのクリーチャー。放っておいても問題ない。
「まだ攻めてこないみたいだし、こっちも準備を整えておくか……《エコ・アイニー》を召喚! マナを追加して、マナゾーンに落ちたのがドラゴンの《ミツルギブースト》だから、もう1マナ追加!」
 まだ夕陽も攻めず、マナを増やしてターンを終える。
 そして、男のターン。
「俺のターン! 《一撃奪取 トップギア》《一撃奪取 マイパッド》《蛙跳び フロッグ》を召喚!」
「うわ……っ」
 一気にクリーチャーを並べてきた。小型ばかりとはいえ、これはこれで厄介だ。
「やっぱ前のターンにドラゴンを出すべきだったか……いや、もうそんなこと悔やんでも仕方ない。僕のターンだ!
 夕陽はカードをドローし、手札を一枚マナへ。
「これで7マナか……なら《無双竜機フォーエバー・メテオ》を召喚! そして、《フォーエバー・メテオ》で攻撃、Wブレイク!」
 クリーチャーに攻撃できればそのまま殲滅できたのだが、残念ながらそれは叶わない。だが、先手は取れた。
「《エコ・アイニー》でもシールドブレイク!」
 《コッコ・ルピア》では攻撃せず、夕陽はターンを終える。
(次のターンにスピードアタッカーを引かれるかもしれないけど、ここで残りシールドを二枚にしておけば、次のターンに《エコ・アイニー》が破壊されても、《フォーエバー・メテオ》で残りのシールドをブレイクして、《コッコ・ルピア》でとどめを刺せる)
 それにもしこちらがスピードアタッカーを引ければ、S・トリガーが出てもとどめを刺せる確率が高くなる。
 やや分の悪い賭けではあるが、夕陽はこれが最善手だと思い選択した。
 しかし、
「俺のターン!」
 男の背後から、強大な覇気が、放たれる。

「無限の攻撃と無限の防御! 無法の皇よ、三千年の秘技を解き放て! 《無限皇 ジャッキー》!」


無限皇(インフィニティ・ビート) ジャッキー ≡V≡ 水/火文明 (8)
クリーチャー:アウトレイジMAX 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
スピードアタッカー
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目を墓地に置いてもよい。そのカードが進化ではないアウトレイジであれば、バトルゾーンに出す。
W・ブレイカー
相手の呪文を唱えるコストは無限のマナを必要とする。


「《ジャッキー》だと!? まずい……」
 現れたのは、水文明を代表するアウトレイジ、《ジャッキー》。数あるアウトレイジの中でも屈指の実力派であり、無限流と呼ばれる三千年の年月をかけて研磨された秘技は、その名の通り無限の攻撃と無限の防御を実現する。
 《ジャッキー》はスピードアタッカー、これだけでも夕陽のシールドをすべて割り、ダイレクトアタックに繋げるほどの打点があるのだが、加えて《ジャッキー》は攻撃時に山札からアウトレイジを呼び出すことができる。いわば、アウトレイジ版の《竜星バルガライザー》だ。
 さらに、呪文を唱えるコストも無限となり、実質的にコストを支払っての呪文を唱えられなくなる。夕陽のデッキは呪文は少ないものの、仮にS・トリガーなどでこのターン生き残ったとして、返しのターンに除去呪文が撃てない。
「行くぞ! 《ジャッキー》で攻撃!」
 夕陽に考える間など与えず、即座に《ジャッキーが》殴りかかってくる。その時《ジャッキー》の咆哮により、山札、そしてこの神話空間までもが震撼する。
「山札の一番上を墓地へ!」
 《ジャッキー》の雄叫びがデックトップを吹き飛ばした。そのカードがアウトレイジならば、そのままバトルゾーンに出すことができる。
 そして、バトルゾーンに現れた無法者は——