二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.443 )
日時: 2014/02/24 05:33
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 記の陰謀で始まった、汐と記のデュエル。
 汐の場にはなにもないが、シールドは五枚。《霞み妖精ジャスミン》でマナを加速させている。
 対する記の場には《封魔ゴーゴンシャック》、シールドは五枚。
「私のターンです」
 とりあえずドローしてマナチャージする汐だが、そこから手が止まる。
(《ゴーゴンシャック》……厄介ですね。これでは《プライマル・スクリーム》が撃てないです)


封魔ゴーゴンシャック 水文明 (3)
クリーチャー:グランド・デビル 2000
呪文を唱えるコストは2多くなる。


 汐のデッキは、いつかのルシエル戦で使用した、マナを加速しまくって《ドルバロム》や《Ζ—ファイル》などの重量級クリーチャーにつなげるデッキだ。
 だがマナ加速は勿論、墓地肥やしもある程度呪文に頼っているところがあるので、このような呪文の詠唱を妨害するカードが出て来ると困ってしまう。
「とりあえず、4マナで《フェアリー・ライフ》。マナを追加してターン終了です」
「あはは! たかだか《フェアリー・ライフ》で4マナも使うなんてね。早く重いカードを使うためのマナ加速なのに、それ自体が重いなんて、滑稽だね」
 その滑稽な状況を作り出しているのは他ならぬ記本人なのだが、彼も分かって言っているのだろう。
「じゃ、僕のターンかな。《救急機装レスキュー・スペース》召喚!」


救急(けっぱれ)機装レスキュー・スペース 水文明 (4)
クリーチャー:グレートメカオー/アンノイズ 2000
自分のグレートメカオーの召喚コストを最大2少なくしてもよい。ただし、コストは1より少なくならない。


「メカオー……グレートメカオーのデッキ、ですか」
 これだけで記のデッキの内容が、大まかに理解できてしまう。《ゴーゴンシャック》が気になるものの、恐らくデッキのほとんどをグレートメカオーで固めているのだろう。
「これで6マナ……《プライマル・スクリーム》を使用です」
 《ゴーゴンシャック》のせいで呪文が唱えづらいが、なんとか墓地を増やすことに成功した汐。山札の上から四枚を墓地へと落としていく。
「墓地から回収するのは《ガル・ヴォルフ》です。ターン終了」
 記のデッキが種族デッキと読んでの《ガル・ヴォルフ》だ。手札を落としつつ、シールドも破壊できる。
「《ガル・ヴォルフ》は怖いなぁ……」
 などと言いながら、記は自身の手札を眺める。
「この手札なら……これかな。《レスキュー・スペース》でコストが2下がってるから、2マナで《騒音機装DJアフロ・スピーカー》を召喚。続けて残った3マナで二体目の《ゴーゴンシャック》を召喚だ」
 《DJアフロ・スピーカー》はともかく、《ゴーゴンシャック》二体はきつい。これで呪文を唱えるコストは4も大きくなってしまう。
「……ですが、とりあえずこのクリーチャーを召喚です。《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》」
 汐はすかさず、前のターンに回収した《ガル・ヴォルフ》を召喚。《ガル・ヴォルフ》が出た時、種族を一つ選択肢、相手の手札を見て、選んだ種族を持つカードがあれば叩き落とし、しかもシールドまで墓地に送れる。
 種族がバラバラのデッキに対しては当たりづらいが、記のこのデッキのように、種族を固めているデッキならヒット率も格段に上がる。
「選択するのは勿論グレートメカオーです。さあ、手札を見せてください」
 記のたった一枚の手札が公開される。
 《ゴーゴンシャック》を複数枚積んでいることから、記のデッキはあまり呪文が入っていないはず。なので手札に呪文がある可能性も低い。はいえ次のターンにほぼピーピングハンデスが確定している状況で、グレートメカオーではない《ゴーゴンシャック》を出していることから、その可能性も否めない。
 だがこの時、汐が見たのは彼女の予想の斜め上を行くものであった。


機械提督サウンドシューター 水文明 (7)
クリーチャー:グレートメカオー/キカイヒーロー 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。その中にあるすべてのグレートメカオーとキカイヒーローを自分の手札に加え、残りを好きな順序で山札の一番下に戻す。
相手のターン中にこのクリーチャーが手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに出してもよい。


「っ、《サウンドシューター》……」
 相手ターン中に手札から捨てられると場に出て、最大で三枚の手札を補充する提督サイクル、通称マッドネス。記はそれを握っていた。
「《ガル・ヴォルフ》能力は強制じゃないから、捨てなくてもいいけどね。捨てさせるならシールドを破壊できるけど、代わりに《サウンドシューター》が出て、手札も補充できるよ。どうする?」
 苦渋の選択だ。
 ここで記のシールドを潰しておきたい気もするが、しかし展開スピードでは圧倒的に汐が出遅れている。グレートメカオーは展開力に優れた種族で、《レスキュー・スペース》もいる。
「……手札は、捨てさせないです」
 ならばここは、下手にクリーチャーを並べさせない方がいい。手札は捨てさせず、汐はターンを終えた。
「懸命だね。じゃあ、とりあえずハンデス牽制の《サウンドシューター》はチャージして、《特警機装パトロール・ファンクション》を召喚。登場時能力で自分のメカオーの数だけカードを引けるよ」
 記の場にいるグレートメカオーは《パトロール・ファンクション》を含め、《レスキュー・スペース》《DJアフロ・スピーカー》の計三体。
「よって三枚ドロー! 続けて二体目の《レスキュー・スペース》、さらに《氷結カッチ・コチーン》を召喚!」
 《レスキュー・スペース》によるコスト軽減と《パトロール・ファンクション》による手札補充から、次々とグレートメカオーが並んでいく。
「《カッチ・コチーン》の能力で、《ガル・ヴォルフ》をタップ! 次のターン、アンタップもできないよ」
 攻撃も封じ、記のターンは終了。
「……私のターン」
 このターン《ガル・ヴォルフ》はアンタップできず、攻撃できない。マナを加速させることができないので、場に出たデーモン・コマンドでとにかく殴ろうかと考えていたが、それも未然に防がれてしまった。
「なら……墓地です。《暗黒導師ブラックルシファー》を召喚」
 加速はできないが、向こうだってまだ攻めるわけではない様子だ。《ブラックルシファー》を召喚し、効果で墓地を増やす。墓地に落ちたのは、《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》《フェアリー・ライフ》《ボーンおどり・チャージャー》《死神の邪険デスライオス》《暗黒の悪魔神ヴァーズ・ロマノフ》。
 かなりいい感じに墓地が肥える。これなら上手く《Ζ—ファイル》を引ければ、一気に巻き返せるかもしれない。
「……ターン終了です」
「大人しいねぇ……そういう娘は嫌いじゃないけど、でも、大人しいと大抵は痛い目見るんだよねぇ」
 カードを引き、マナを溜めつつ、そんなことを言う記。挑発目的なのかもしれないが、汐は無視した。
 無視したところで、彼のプレイングが変わるわけではないが。
「《パトロール・ファンクション》を召喚。僕の場にメカオーは六体だから、六枚ドロー。さらに引いてきた《賀正電士メデタイン》《DJアフロ・スピーカー》《ゴーゴンシャック》、さらに《王機の神兵 ヴォルビック》を召喚。《ヴォルビック》で《ブラックルシファー》をバウンス」
 大幅なコスト軽減と大量ドローから、凄まじい勢いでグレートメカオーが並んでいく。きっちりバウンスで妨害も忘れず《ブラックルシファー》が手札に戻された。
 そして、極めつけが、
「さらにさらに、こいつも召喚だ。《害悪のカルマ スタバック》!」


害悪のカルマ スタバック 水文明 (7)
クリーチャー:オラクル/グレートメカオー 7000
誰も自身のマナゾーンにある呪文をアンタップできない。
W・ブレイカー


「《スタバック》……」
 また厄介なクリーチャーが現れてしまった。
 《ゴーゴンシャック》三体で、呪文によるマナ加速が妨害され、《スタバック》で手札にあっても邪魔な呪文をマナにしても、一度使えばアンタップできなくなってしまう。
 幸か不幸か、汐のマナゾーンには呪文がない。つまりそれは、墓地に落としたいクリーチャーもマナにいるということなのだが。
「ですが、このターンで使えるマナがあるなら、それにこしたことはないです。私のターン」
 この圧倒的戦力差に戦々恐々としながらも、汐はカードを引く。そして、
(《Ζ—ファイル》……)
 引いたカードは、《「謎」の頂 Ζ—ファイル》だった。
 墓地にあるカードでは、この《Ζ—ファイル》を出しても逆転はできない。しかし、墓地に落ちるカード次第では、逆転も不可能ではない。
(私のマナは8マナ、このターンにチャージすれば9マナ、次のターンには10マナ。そして手札には《ブラックルシファー》……)
 しばし逡巡し、決めた。
 ここは、賭けに出る。