二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.447 )
- 日時: 2014/02/25 19:05
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
(……頭の中、ぐちゃぐちゃですね……)
今日はいろいろと考えさせられる一日だった。それが良いか悪いかは分からないが、今日考えさせられたことは自分の根本の部分に関わっているような気がしてならない。そう思うと、頭の中身が知っちゃかめっちゃかに掻き混ぜられるような感覚に襲われる。
(これは私の欠けている記憶に関係しているのでしょうか……いや、それはないですね)
なんとなくだが、断言できる、ような気がする。
仮に関係あっても、それは直接的ではなく間接的、関係ではなく関連と言うべきような関係のはず。
ならば、これはなんだ。この、蝕まれたような感覚は。
(……私も、真の意味で“ゲーム”に関わり出したから、でしょうか……)
奪われて初めて気づく、事の重大さ。いや、奪われて気付いたのではなく、敗北して気付いたのかもしれない。
(私は先輩たちと違い、一歩引いた位置で“ゲーム”に関わっている……つもりです。ですが今日、初めて『神話カード』を奪われたことで、その一歩引いた位置からずれてしまった……)
それも要因の一部かもしれない。だが、やはりしっくりこない。この落ち着かない気持ちの根っこは、もっと自分にあるような気がする。
(やはり、私の頭の中身なのですか……今までは特に感じて来なかったものが、今日にいたって発現した……)
今日という日はどういう日だ。クリスマス? 違う。そんな記念日のことなど関係ない。
今日は、【神格社界】と深く関わった。界の長と戦った。そして、
(無法の力に触れた、ですか……)
それも、強い力を、だ。
その力に触発され、汐の欠けた記憶に浮かぶ虚像が、今までよりはっきりと、しかし曖昧になる。そして、自分の知る“先輩”の姿と、被って見える。
(わけがわからなくなってきた、です。一体なんなのですか、これは。私の欠けている記憶は一体。私にとって先輩とは——)
と、その時だ。
背後から気配を感じた。
「……先輩」
そこにいたのは、自分がよく知る少年。一つ年上の、先輩。
「……一人にしてくださいと、言ったと思うのですが」
とはいえ、彼の性分ならここまでついてきてもおかしくはない。少し迷惑と思いながらも、その気遣いは嬉しかった。
なのに、
二人は、神話が支配する空間へと誘われた。
「……なんのつもりですか、先輩」
しかし、彼は答えない。
ここは神話空間。つい数時間前、自分が敗北を喫した空間。ここで受けた攻撃は、ダメージとしてフィードバックされる。ダメージが蓄積すれば傷となり、傷が蓄積すれば死に至る。そんな、危険極まりない空間だ。
「答えてください、先輩。一体、これはどういう——」
汐が言い切る前に、目の前に五枚の盾が展開された。同時に五枚の手札が、彼女の前で浮遊する。
「……なぜですか、先輩」
汐の言葉には答えず、戦いは進む。
汐の場にはなにもなし。《霞み妖精ジャスミン》《フェアリー・ライフ》《再誕の社》を使い、マナは7マナ。
だが相手のマナも7マナだ。《メンデルスゾーン》と《エコ・アイニー》による超高速マナブーストで、汐のスピードにいついている。いや、気を抜けば汐が追い抜かされる加速力だ。
「僕のターン……《レグルス・ギル・ドラゴン》を召喚して、ターン終了」
「私のターンです」
こうして向かい合い、戦っていることに納得がいかないまま、汐はカードを操る。
その手捌きにも、どこか迷いがあるように思えた。
「呪文《プライマル・スクリーム》です。山札の上から四枚を墓地へ送り、《ジャスミン》を回収。さらに再び《プライマル・スクリーム》」
連続《プライマル・スクリーム》で一気に墓地を増やす汐。墓地には進化を含む大型デーモン・コマンドが多く落ち、さらに、
「……《「謎」の頂 Ζ—ファイル》を回収です。ターン終了」
切り札も呼び込めた。これで次のターンにマナを溜め、その次のターンには切り札を召喚できる。
だが、それでいいのだろうか。
目の前いる、自分が今戦っている相手は、どう見ても自分の先輩だ。
倒しても、いいのだろうか。
そんな彼女の迷いは断ち切られず、
「僕のターン……《エコ・アイニー》をマナチャージ」
そして、スペース・チャージ発動。
「《レグルス・ギル・ドラゴン》のスペース・チャージで、このターン《レグルス・ギル・ドラゴン》のパワーは+5000、さらにシールドを一枚追加でブレイクし、攻撃時に1マナ追加できる」
さらに、
「《鬼カイザー「滅」》を召喚。まずは《レグルス・ギル・ドラゴン》で攻撃」
その時、《レグルス・ギル・ドラゴン》の能力が発動する。
マナを一枚追加するのだが、この時落ちたカードは、《メンデルスゾーン》。
「自然のカードがマナに落ちたので、再びスペース・チャージ発動で、《エコ・アイニー》を指定。さあ、Tブレイクだ」
「……っ」
《レグルス・ギル・ドラゴン》によるTブレイクが、汐のシールドに炸裂する。
砕け散る盾の破片、ここまで吹いてくる熱風。精神だけでなく肉体までも、汐の傷は広がる。
「《エコ・アイニー》でWブレイク」
続けて《エコ・アイニー》が汐の残ったシールドをすべて粉砕する。S・トリガーはない。
「っ、シールドが……」
彼女を守る盾も、なくなった。
「《鬼カイザー「滅」》で——」
最後に残った龍が、汐を睨みつけている。
だが、汐が見ているのは、その主だけだった。
「先輩……なぜ、こんなことを——」
するのですか。
彼女の言葉は彼には届かず。
「——ダイレクトアタック」
最後の龍の一撃が、彼女のすべてを焼き尽くした。
「——先輩」
自分は今、どうなっているのだろう。目の前には暗い闇が広がっているが、背中が冷たい。よく見れば、遠くに小さな光も見える。小粒の光が散りばめられているのが分かる。
「なぜ、こんな……」
体が動かない。いや、まったく動かないわけではないが、動かせないし、動かしたくない。
また意識が朦朧とする。いや、朦朧としているのは、自分の中で混沌としている、様々な思い。
なにも考えられない。なにも考えたくない。
そんな彼女の視界に入る、彼の姿。
「どうしてですか……先輩——」
その姿は、星月と聖夜の闇の中へと、溶け込んでいった——