二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology オリキャラ募集 ( No.45 )
- 日時: 2013/07/14 02:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://www27.atwiki.jp/duel_masters/pages/1.html
自宅へと帰る途中、夕陽は一枚のカードを眺めながら歩いていた。
「《太陽神話 サンライズ・アポロン》……御舟はお前を使わない方が良いって言ってたけど、僕としては——お前の力に助けられた僕としては、もっとお前の力を引き出したいんだよな」
『炎上孤軍』とのデュエマでは、三つのうち二つまでしか能力を発揮していなかった《アポロン》。それだけでも十分強いのだが、どうせならもっと、最大限まで力を引き出したいと思うのがデュエリストの性だ……と、夕陽は思う。
「それに、お前の名前は僕と似てる。僕が夕陽で、お前は朝陽。そしてどっちも太陽だ。これって偶然なのかな」
偶然か必然かと言えば、当然ながら偶然だ。そもそも《アポロン》と出会ったのは家のポストである。情緒もへったくれもない。
だが、それでも、その偶然はただの偶然以上に意味があるように思える。
「……一応、《アポロン》を切り札にしたデッキは作っておこうかな。となると、泣く泣く《ライジング・NEX》を抜いて、別のデッキに——」
《アポロン》をデッキケースに仕舞い、デッキ構築についてぶつぶつと独り言を始めた夕陽の前に、一人の女が立ち塞がった。
まだ若く歳は大学生くらいで、半袖の無地のTシャツにジーンズと、良く言えばラフ、悪く言えば安っぽい恰好の女だった。
あまりに唐突で、しかもあからさまに夕陽の進行を妨げるようにしてその女が足を止めたため、夕陽も言葉と一緒に足を止めざるを得なかった。
突然の事態に困惑する夕陽。あまり広い道ではないのでこのように通せん坊をされると、脇を抜けていくということができないのだ。困惑というよりは困っている、率直に言うなら面倒、悪く言うなら鬱陶しい。
だがそんな感情も、女が発した次の一言で綺麗に吹っ飛ぶ。
「『昇天太陽』」
「……! その呼び方……!」
このみから聞いた。『神話カード』を持つ少女がこのみを襲った時に、その少女は『昇天太陽』なる人物を探していると言っていたらしい。
サンセットとは、意訳すれば夕陽という意味だ。そして昇る太陽は、英語ならサンライズとも言う。夕陽が持つ『神話カード』は《太陽神話 サンライズ・アポロン》。
これらの要素を組み合わせれば、その奇々怪々な呼称が空城夕陽という一人の少年を表すという事実に辿り着く。まだ確定こそできないが、十中八九間違いないだろう。それにまさか、少女のみならずこの女までもが人違いをしているということもないだろうし。
「『昇天夕陽』、《アポロン》のカードを渡して」
「直球だな……」
強い語調で、前置きもなく言い放つ。しかも女の手には、既にデッキケースが握られており、やる気満々だった
(さて、どうするか……御舟は抵抗しないで渡した方が良いって言ってたけど、個人的な話、こいつをむざむざ渡すのは嫌なんだよなぁ)
と思いつつ、夕陽もデッキケースを取り出して蓋を開き、一番上にある《アポロン》を見つめる。
そんな夕陽に痺れを切らしたのか、女はデッキケースから勢いよくデッキを取り出し、次の瞬間、場の空気が一変した。
「っ、これって……クリーチャーが実体化する時と同じ状態……」
「最初から分かってたけど仕方ない、無理やり奪い取る」
「……御舟の言った通りだ」
苦笑しつつ、溜息を吐く夕陽。
「話し合いもせずいきなり戦いを吹っかけて来る輩もいるもんだな……」
突如現れた女と夕陽のデュエル。ターンは進み、夕陽の番。
「僕のターン」
デッキからカードをドローし、それを見遣る。すると夕陽の顔からほんの少しだけ笑みがこぼれた。
引いたのは《太陽神話 サンライズ・アポロン》
(ここで《アポロン》を引けた……あと一体火文明のクリーチャーがいれば、進化できる)
ちらりと、夕陽は確認の意味も込めて場を見渡す。
シールドは互いに三枚で、夕陽の場には《コッコ・ギルピア》《ルピア・ラピア》《フレイムバーン・ドラゴン》がいる。対する女の場には《浮魂 ターメリック》《失楽のカルダモン》《舞踏のシンリ マクイル》の三体。
(光と闇のオラクルデッキ……キーカードが出る前に勝負を決めたいところかな)
胸中で呟きながら、夕陽は手札から二枚のカードを抜き取る。
「《翔天幻獣レイヴン》と《コッコ・ルピア》を召喚! さらに《ルピア・ラピア》でシールドをブレイク!」
「《ターメリック》でブロック!」
《ルピア・ラピア》の特攻は《ターメリック》に止められてしまう。しかも《ターメリック》はブロック中にパワーが上がるため、《ルピア・ラピア》が一方的に破壊された。しかし、
「《ルピア・ラピア》の効果発動! こいつをマナに送って、マナから《ボルシャック・NEX》を回収し、ターンエンド」
《カルダモン》がいることを考えると、無闇に攻撃するのは得策ではない。これ以上は攻撃せず、夕陽はターンを終える。
そして女のターン。
「来た……! 《策士のイザナイ ゾロスター》を召喚! さらに《ソーラー・チャージャー》で《ゾロスター》と《ターメリック》を選択。二体はこのターンの終わりにアンタップされる」
普通に考えれば、召喚酔いで攻撃できない《ゾロスター》と、ブロッカー特有の攻撃不可能力を持つ《ターメリック》にアンタップ呪文をかけたところで無意味だ。しかし夕陽には、次の女の一手が読める。ご丁寧に、《ソーラー・チャージャー》のチャージャー効果で光の一マナが余っている。
「そして《転々サトリ ラシャ》を召喚して、無色以外のクリーチャーを全てタップ!」
場のクリーチャーが一斉にタップされ、生き残ったのは《マクイル》のみ。
「《マクイル》で《コッコ・ルピア》を攻撃!」
その《マクイル》は杖を振るい、そこから放たれる波動で《コッコ・ルピア》を破壊した。
「これでターンエンド。でもこの時、《ゾロスター》の効果が発動! 《ラシャ》を生贄に、デッキからコスト7以下の無色クリーチャーをバトルゾーンに呼び出す!」
《ゾロスター》は《ラシャ》を魔方陣の中に閉じ込め、存在を消滅させる。それは彼ら教団における、上位の者を呼び出す為の生贄だった。
「呼び出すのは——《告別のカノン 弥勒》!」
「げ……」
夕陽の顔が引きつる。
《告別のカノン 弥勒》は、登場と同時に相手の手札を見て、その中から一枚を選びデッキの底へと沈めるクリーチャー。
「効果で手札を見て……《アポロン》を山札の一番下に!」
「やっぱりか……!」
切り札を封じられてしまった夕陽。《ボルシャック・NEX》でシャッフルはできるが、《アポロン》が戻って来るのを悠長に待っていたらすぐにやられてしまう。もう諦めるしかないだろう。
これで女のターンは終わりだが、《ソーラー・チャージャー》の効果で《ゾロスター》と《ターメリック》がアンタップされる。防御に抜かりはないようだ。
「《弥勒》か……さて、どうしたものか」
とカードを引く夕陽からは、またも笑みがこぼれる。
「……だよね。《アポロン》がダメなら、君に頼るしかない」
笑みを消し、真剣な眼差しで女を見据える夕陽。
「まずは《クリティカル・EVOチャージャー》を発動。《ターメリック》を破壊してマナチャージ。そこから《レイヴン》進化《火之鳥ピルドル》!」
ブロッカーを破壊し、《レイヴン》を進化させる。しかしこれではまだ、攻撃手が足りない。
なので夕陽は残った五マナを惜しまず使い切る。そして現れるのは、
「《火之鳥ピルドル》——究極進化! 《神羅ライジング・NEX》!」
夕陽の元々の切り札《神羅ライジング・NEX》だ。
《ライジング・NEX》の効果で夕陽の《コッコ・ギルピア》と女の《マクイル》が破壊される。攻撃手は減ったが、そんなことは全く問題ではない。
「《ゾロスター》を守ろうとしたのが裏目に出たな。《ライジング・NEX》でT・ブレイク!」
女のシールドが、《ライジング・NEX》の炎で全て吹き飛ぶ。S・トリガーはなく、女を守るものは何一つなくなった。
「続けて《フレイムバーン・ドラゴン》で、ダイレクトアタックだ!」