二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.469 )
日時: 2014/02/28 03:53
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)

 いきなり神話空間に連れて来られた汐は、目の前に浮かぶ五枚の手札を取りながら、男を睨むように見据える。
「……私は今、機嫌が悪いのです。手加減なしで完膚なきまでに叩きのめして墓地に埋めるですよ」
 そして始まった、汐と男のデュエル。
 互いにシールドは五枚あり、汐の場には《暗黒導師ブラックルシファー》が一体。男の場には《白骨の守護者ホネンビー》が一体。
 汐も男も、序盤から墓地を増やしており、墓地を利用する戦術であることは見え見えだ。だが汐は、爆発的なマナ加速に成功しており、既に11マナもある。
 だが、男のターン。
「ウ、ウ、ウゥ、墓地進化GV……《大邪眼B・ロマノフ》を、召喚……!」
 墓地の三体のクリーチャーを進化元にして、《B・ロマノフ》が召喚される。一足早く、大型クリーチャーを出されてしまった。
「ウ、ウア、アガァ……《B・ロマノフ》で、Tブレイク……!」
 さらに、メテオバーン発動。
 《B・ロマノフ》の下にあるカードを一枚墓地に置き、汐の残り一枚の手札は、山札の底へと沈められる。
 そして、Tブレイク。
 汐のシールドが三枚、吹き飛ばされた。
「……それだけですか」
 割られた三枚のシールドを手札に加えつつ、呟く汐。
「なら、このターンで終わりですね」
 さらにカードを引き、宣言する。
 それは、悪魔復活の宣言であった。
「私のターン。《「謎」の頂 Ζ—ファイル》を召喚です」
 召喚されたのは、昨日の記や彼とのデュエルでは出せなかった《Ζ—ファイル》。だが今は、その凶悪なる姿が顕現している。
「《Ζ—ファイル》の召喚時能力発動、私の《ブラックルシファー》を破壊です」
 そして墓地に溜まっている、大量の悪魔が呼び戻される。
「墓地の《ブラックルシファー》《ガル・ヴォルフ》《オルゼキア》《ハンゾウ》、《ヴァーズ・ロマノフ》《ドルバロム》、そして——《偽りの悪魔神王 デス・マリッジ》をバトルゾーンへ」


偽りの悪魔神王(コードコマンド) デス・マリッジ 光/闇文明 (10)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド/デーモン・コマンド/アンノウン 15000
マナゾーンに置くとき、このカードはタップして置く。
進化—自分のデーモン・コマンドまたはエンジェル・コマンド1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるデーモン・コマンドとエンジェル・コマンド以外のクリーチャーを全て破壊する。その後、各プレイヤーはマナゾーンにある呪文をすべて、持ち主の手札に戻す。
T・ブレイカー
相手は呪文を唱えることができない。


 《ハンゾウ》と《オルゼキア》からそれぞれ進化した《ドルバロム》と《デス・マリッジ》。
 闇単色の男のデッキに《ドルバロム》は効果がないが、《デス・マリッジ》はそんなことなど無関係に、破壊と束縛をもたらす。
「《デス・マリッジ》の能力で、お互いのデーモン・コマンド、エンジェル・コマンド以外のクリーチャーをすべて破壊」
 刹那、男の場にいた《B・ロマノフ》と《ホネンビー》ば消滅する。
「さらにお互いのマナゾーンの呪文をすべて手札に戻すですよ」
 突如、男のマナゾーンにある呪文がすべて持ち主の手札へと戻っていく。
 大量の悪魔、それも単体だけでも凶悪な力を持つデーモン・コマンドが復活し、男の場はボロボロ。《Ζ—ファイル》が出た時点で、汐の勝利は確定した。
「《ヴァーズ・ロマノフ》でWブレイク、《デス・マリッジ》でTブレイク」
 そして二体の進化デーモン・コマンドによる攻撃が放たれる。男はS・トリガーを引いたようだが《デス・マリッジ》の効果で呪文は唱えられない。
 為す術のない男に、最後の悪魔神が迫る。
「《ドルバロム》で、ダイレクトアタックです」



 神話空間が閉じ、汐は元の世界の地へ降り立つ。
「……お話にならないですね」
 そして、倒れた男の言い放った。
「なにが目的かは知らないですが、あなたの素性くらいは聞いておくですよ。何者です」
 しかし、返事はない。本当にただの屍のように、ピクリとも動かない。
「……まさか本当にゾンビなんてことはないですよね」
 完全に白目をむいており、流石に死んではいないだろうが、気を失っているだけのようだ。
「どうすればいいのでしょうか、この人……放っておくのも危険な気がするのですが、あまり関わりたくもないですし——」
 と、汐が男に近づこうとした、その時だ。

「あなた、やっぱりいいわね」

 どこからともなく、声が聞こえてくる。
「……誰です。どこですか」
「ここよ。今出るわ」
 次の瞬間、男の中から白い靄のようななにかが飛び出した。
 そのなにかは少しずつ実態を現していき、最後には確固とした形を持つ存在となる。
 それは、一言で言えば妖精、のように見える少女。二頭身程度の矮躯、真っ白な長い髪に、裸体を包むのも真っ白な一枚布。だがその布は、裾へと向かうにつれ滲むように黒くなっている。
「……誰です」
「あら、ピンとこないかしら。この姿、似たようなものを見たことがない、なんてことはないと思うのだけれど」
 彼女の言う通り、確かに見覚えはある。彼女そのものは初めて見たが、これとよく似た存在を。
「まあ、それについては今はどうでもいいわ。それよりあなた、ちょっといいかしら」
「なんですか。私は今、あなたのような意味不明な妖精さんに関わっている暇はないのです」
「知らないわ、あなたの事情なんて。でも、あなたにとって決してマイナスばかりのことでもないと思うわよ」
「……どういうことです」
「アタシの目的とあなたの目的と、接点がないわけでもない、と言っているの」
 無視しようかと思った汐だが、しかしこの存在に関しては、流石に無視を決め込むことはできない。
「……話だけは、聞いてもいいですよ」
「なら聞いてもらうわ。どの道、あなたにとっても悪いことではないと思う」
 その前に確認なんだけど、と今更のように彼女は尋ねた。
 だが、確認というものは、結果だけを言えば相手がそのことを知らない場合のみに意味をなす。この場合は無意味だ。
 なぜなら、彼女が確認を求めたものは、汐にとってはこの上なく既知のことだったからだ。

「——《アポロン》とその所有者について、知ってるかしら?」