二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.472 )
- 日時: 2014/02/28 16:13
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: SMalQrAD)
夕陽と汐のデュエルは、汐が場を支配していた。
夕陽のシールドは四枚、場には攻撃してタップした《ガイアール・アクセル》と《セルリアン・ダガー・ドラゴン》。
汐の場には《一撃奪取 ブラッドレイン》《地獄魔槍 ブリティッシュ》《神豚槍 ブリティッシュROCK》の三体がおり、シールドは残り一枚。
「では、私のターンですね」
S・トリガー発動でドロン・ゴーに繋げつつ、このターンに夕陽を葬るだけの戦力を揃えた汐。
だが、彼女の取った手は、夕陽をこのターンに殺すことではなかった。
「まずは呪文《ボーンおどり・チャージャー》で山札の上二枚を墓地へ、チャージャー呪文はマナへ。続けてもう一枚《ボーンおどり・チャージャー》です」
最初に汐は、マナと墓地を増やす。ここまではいい。
だが、この後だ。
「《ブリティッシュ》で《ガイアール・アクセル》を攻撃です」
「え……?」
汐は夕陽ではなく、《ガイアール・アクセル》を攻撃。そして破壊した。
「クリーチャーが墓地へと落ちたので《ブリティッシュ》で一枚ドローです」
「あ、あぁ……」
このターン、汐には夕陽にとどめを刺せるだけの戦力がいる。しかし、夕陽を攻撃しなかった。
少々驚いた夕陽だが、しかしそのプレイング自体は分からないでもない。夕陽のマナゾーンにS・トリガーはない、公開ゾーンで見えているのは、前のターンに出た《ショパン》だけだ。
(S・トリガーを警戒したのか……でも、僕相手に1ターン引き延ばすのは命取りだ)
御舟らしくもない、と心中で夕陽は歓喜する。
夕陽の手札にはスピードアタッカーのドラゴンが複数いる。次のターンに連続でそれらを呼び出し、一気に勝負を決めることは可能だ。
いつもの汐なら、夕陽のデッキのパターンは分かっているはず。なのでこの状況で勝負を引き延ばすような真似はしないはずなのだが、
(やっぱり、クールぶっていても頭の中では熱くなってるんだな。冷静じゃない御舟なら、怖くはない)
まだ油断はできないが、しかしこれなら、ほぼ勝ちは決定したようなもの。
夕陽は再び、胸中で歓喜する。
「《ブリティッシュROCK》で攻撃、能力発動です」
いくら夕陽が狂喜乱舞していたとしても、今は汐のターン。彼女の攻撃はまだ終わらない。
「攻撃時、山札の一番上を墓地へ。その後、私の墓地のカードの枚数以下のコストの相手クリーチャーを一体破壊です。破壊するのは《セルリアン・ダガー》ですよ」
《ブリティッシュROCK》の槍が《セルリアン・ダガー》を貫き、破壊する。
そして次に、その槍は夕陽へと向けられた。
「クリーチャーが墓地に行ったので《ブリティッシュ》でドロー……そして《ブリティッシュROCK》でWブレイクです」
《ブリティッシュROCK》の槍が夕陽のシールドを二枚、突き破った。さらに、
「《ブラッドレイン》でもシールドをブレイクです」
これで残りシールドは一枚、汐に追いつかれてしまった。
しかし、
「……それで終わりか? だったら僕のターンだ」
このターン生き残っているのなら、まったく問題ない。
「まずは《コッコ・ルピア》を二体召喚! さらに《ボルバルザーク・エクス》を召喚! マナをアンタップして、《セルリアン・ダガー・ドラゴン》を召喚!」
夕陽の場にドラゴンは二体。なので二枚ドローし、
「夕陽!」
「アポロン……!」
引いたカードは、アポロンだった。
「夕陽、オイラを出すんだ!」
「ああ、分かった! 《爆竜GENJI・XX》を召喚! そして《コッコ・ルピア》《セルリアン・ダガー・ドラゴン》《ボルバルザーク・エクス》を、進化MV!」
一体の火の鳥と二体のドラゴンが炎の渦に飲み込まれていく。その中でその三体は、神話となるのだった。
「出て来い《太陽神話 サンライズ・アポロン》!」
呼び出された夕陽の『神話カード』、《アポロン》。
《アポロン》は爆炎を吹き上げて顕現し、汐を、そしてその裏にいるアルテミスを見据える。
『……夕陽、アルテミスがなにを考えているのかは俺にも分からない。汐のことも、俺にはまったく分からない。だが、一つだけはっきりしていることがある』
《アポロン》は視線を夕陽に向け、静かに、しかし熱く、その言葉を発す。
『この勝負には勝たなければならない。汐のことは、悪いがお前に任せるしかない。だが俺は、夕陽の元を離れるつもりはない、俺には夕陽が必要だ、ひまりとの約束もある……だから、勝つぞ!』
「そんなこと、言われるまでもない! 行くよ《アポロン》! シールドを——」
「待ってください」
今まさに攻撃せんとするその時、汐にストップをかけられた。
「その攻撃、本当にシールドに向かってよいのですか」
「……なに? まさか君が、この期に及んで怖気づいた、なんてことはないよね」
「そんなわけないじゃないですか。これは先輩に与えるチャンスです。先輩はシールドではなく、《ブリティッシュ》と《ブラッドレイン》から破壊した方が、よいように思われるですが」
「…………」
ブラフだ、ハッタリだ。
夕陽は自分にそう言い聞かせる。汐は前のターンもプレイミスを犯していた。そのミスに今更気づき、夕陽の攻撃を躱すためのハッタリをかけているだけだ。
恐らく手札に《ヴァーズ・ロマノフ》でも持っているのだろう。《ブリティッシュ》と《ブラッドレイン》が破壊された後に墓地進化で呼び出し、《ブリティッシュROCK》と共に攻撃するつもりなのだろう。
そんなトラッシュトーク紛いの行為をしてまで勝ちに来るほど、汐はこの勝負にかけているのだろうか。夕陽はそんな風に考えた。
そして、
「《アポロン》……シールドブレイクだ!」
『ああ!』
夕陽は、シールドブレイクを選択する。
『俺の能力! クリーチャーを呼び出す! 来い《ボルシャック・スーパーヒーロー》!』
「そして《ボルシャック・スーパーヒーロー》をマナに送って《ブラッドレイン》は破壊だ!」
《ブラッドレイン》は破壊された。そして直後、《アポロン》の放つ熱線が、汐のシールドを突き抜ける——
「——S・トリガー発動です」
「な……っ!」
が、そのシールドは、暗い光の束となって、汐に手中に入るのだった。
「呪文《ブータン両成敗》」
ブータン両成敗(ジャッジメント) 闇文明 (3)
呪文
S・トリガー
相手は自身のクリーチャーを1体選んで破壊し、その後、自分のクリーチャーを1体破壊する。
飛び出たS・トリガーは《ブータン両成敗》。そのカードに、安どの溜息を漏らす夕陽。
「……ふむ、もしこの感覚が外れていたら、私はただのルールとマナー違反者になっていたところですが、あの青崎という人の言うことも、間違いではなかったようですね。思った通り、本当にS・トリガーでした」
一方汐は、まるでこのトリガーが発動することを予測していたかのようなことを呟いているが、夕陽の注意はそこには向かない。
「互いにクリーチャーを破壊だろ……なら僕は《ボルシャック・スーパーヒーロー》を破壊するよ」
もしこれが《地獄門デス・ゲート》などであれば、《GENJI》が破壊され、墓地からブロッカーを呼び出されて攻撃が止められていた。
しかし、安心するには早い。いや、安心など、本来できるはずがない。
夕陽は気付くべきなのだ。《ブータン両成敗》の真価は、自分のクリーチャーを破壊するところにある。そして汐にとって、自身のクリーチャーが死ぬことは、新たな力を得ることと同義であった。
「私は《ブリティッシュROCK》を破壊です」
《ブータン両成敗》の効果で、汐もクリーチャーを破壊しなければならない。破壊したのは《ブリティッシュROCK》。
「《ブリティッシュROCK》が破壊されたので、ドロン・ゴー発動です」
「え……?」
失念していた。ドロン・ゴーで大きくなったクリーチャーでも、ドロン・ゴーはできるということを。たとえば《ブリティッシュ》を破壊したとしても、汐の手札に二枚目の《ブリティッシュ》がいれば、もう一度その《ブリティッシュ》を呼び出せる。
だが《ブリティッシュROCK》に限っては、そうはいかない。《ブリティッシュROCK》が破壊されたからといって、呼び出されるのは、次の《ブリティッシュROCK》ではないのだ。
その時、世界が震撼する。常識を粉砕する、神聖なる偽りの、無法の神の降臨に。
無法と神託の力を得た《ブータンPOP》《ブリティッシュROCK》には、さらなる力が内包されている。
「……支配せよ、神聖の国家。死した民たちは不滅の奴隷、神鎗の神の降臨です——」
そしてその、最終の力が、解き放たれた。
「——《神聖牙 UK パンク》」